データー
機体番号: | AVS-98 |
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機体名: | (設定なし) |
開発メーカー: | 篠原重工 |
全高: | 8.02m |
全幅: | 4.37m |
総重量: | 5.89トン |
装甲材質: | FRP CFRP |
211号機フォワード: | 石和巡査部長 |
212号機フォワード: | *古賀巡査 |
概要
晴海埠頭で猛威を振るったシャフト・エンタープライズ・ジャパン企画7課のTYPE-J9グリフォンの出現で、新型パトレイバー導入の見直しを迫られた警視庁と篠原重工が、AV-98イングラムの設計を煮詰め直して完成したのが本機である。
(操縦者の技量にもよるが)グリフォン相手に相当善戦するほどで、イングラムの後継機として相応しい性能を有している。また操作性等もイングラムより向上している他、篠原重工開発部帆場暎一のHOS(劇場版とは別物)の搭載により、ソフトもより最適化された。
武装やオプション関連はイングラムの物を踏襲しているほか、リボルバーの収納位置も同様なため右腕の伸縮機能も残されている。
篠原重工で初期型が3機建造され、新設予定であった特車二課第三小隊に配備予定であったが、諸事情で第三小隊は保留となり、老朽化が著しい96式改に替わって2機が第一小隊に配備され、残り1機は訓練学校に配備された。 アニメ版にも登場するが、アニメではAV-0ピースメーカーが新型機として採用されたので、立ち位置は異なる(後述)
劇中の主な活躍
廃棄物13号との戦いの少し後に完成し、完熟訓練の後に第一小隊に配備される。
初の実戦となるテロリスト集団「地球防衛軍」の改造レイバー相手に、石和巡査部長の211号機が挑み、これを圧倒するも、実はこの事件は企画7課によるグリフォンのデモンストレーションの為の囮であり、別方向から現場に向かっていた古賀巡査の212号機が奇襲を受けてしまった。212号機は不意打ちにもかかわらずかなり奮戦するも、リボルバーカノンを奪われて頭部を破壊されて機能停止してしまう。
続けて改造レイバーを片付けた211号機が戦闘に入り、格闘戦でグリフォンを取り押さえる寸前まで追い込むも、水路に落ちて機体に不調を起こしてしまい、駆けつけた第二小隊の援護も上手く機能せず敗退してしまう。
終盤では特車二課を襲撃してきた企画7課の率いるレイバー「ハヌマーン」相手に、5体3という圧倒的不利な状況の中で奮戦するも、212号機が不意打ちで破壊され、残る211号機と太田のイングラム2号機も、福島課長が人質に取られた為に止む無く武装解除し降伏した。
派生機体
AVS-98「エコノミー」
機体番号: | AVS-98(アニメのみ) |
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機体名: | エコノミー(関係者間での仮称で正式名称ではない) |
開発メーカー: | 篠原重工 |
全高: | 8.02m |
全幅: | 4.37m |
総重量: | 5.89トン |
装甲材質: | FRP CFRP |
劇中の搭乗者: | 篠原遊馬巡査 |
次期パトレイバー候補として試作されたイングラムの量産試作機。
漫画版とアニメ版、どちらも同じ立場で登場しているが、アニメ版ではこの機体に「AVS-98」の機体番号が振られている。
廉価版(エコノミー)のあだ名の通り、イングラム1機を下取りに出せば10機は買えると言われるほどの低コスト機。
以下は国際レイバーショウの展示品として持ち込まれていた試作機の構造だが、判明しているだけでもかなりの簡素化が行われている。
簡略化が乗り心地の向上に繋がり、居住性だけはイングラムを上回る反面、コックピットは胴体前面に透明キャノピーを設けた半解放型で、カメラモニターは補助システムに格下げ、センサー類も最低限のものに絞られている。
後に「非人間的な乗り心地」とまで煽られたイングラムに比べ、パイロットへの負担軽減重視なのか下半身のサスペンションも柔らかい。篠原重工お得意の高度なオートバランサーのおかげで姿勢制御こそ高性能なのだが、柔らかすぎて踏ん張りが利かず、格闘で大きく機体を動かすような状況では沈み込んで姿勢を崩してしまう。
展示用の試作機とはいえ操縦席も殆ど民生用の自動車同然で、搭乗者の身体を固定する器具に至っては腰の2点式シートベルトのみ。上半身を覆うジェットコースターのようなガードが装備されたイングラムに比べ、格闘での激突を前提にした仕様とは言い難い状態の機体であった。
案の定と言うべきか、テストと称して遊馬が独断で乗り込んだままグリフォン襲撃に巻き込まれ、酷い目に遭っている。
グリフォンがレイバーショウ会場に侵入し太田の2号機に襲い掛かったため、救援にと割って入ったものの、イングラムでさえ歯が立たない相手にこんな安物で勝負になるはずもなく、ラリアットで叩き伏せられたあげく太田の撃ったリボルバーカノンの盾にされ大破、太田機に向かって放り投げられ激突してしまった。
一応、いきなりグリフォンに詰め寄られた最初の攻撃は大きく姿勢を崩しながらも回避、二度目はアンテナを吹き飛ばされながらも直撃を免れるだけの運動性は見せているのだが、これは動作学習を繰り返したイングラム1号機の起動ディスケットを借用していたからでもあった。
その上で、脱出し野明にディスケットを返却した遊馬は「安物の機体ではイングラム前提のプログラムに対応できなかった(要約)」と発言しており、思った以上に操作感が良くなかった模様。
グリフォンのパイロットからも「ぜんぜん相手にならない」と嘲笑され、もはや「簡易量産型なのでイングラムのようにはいかない」「武装を装備していなかった」「コスト度外視の戦闘用レイバーであるグリフォンでは相手が悪い」といった言い訳では済まされない醜態を晒す事になった。
結果、次期主力機には不適当とされ開発は中止された。
この経緯を基に各部を見直したものが、「フルスペックのイングラムをベースに改修した」形となる下記のスタンダードである。
更なる発展型と言えるヴァリアントも後の時代に配備されたが、これらの機体にも、頭部形状の簡素化やキャノピー型コクピットなど、エコノミーと共通する構造が見受けられる。
なお、戦闘に巻き込まれる以前の時点で既に、第1小隊長の南雲からは「現場にいると優れたものをかぎ分けられるようになる」「仕様書のスペックだけではなんとも…」と、エコノミーが警察用として不十分なものと疑うような発言があり、直感的に不信感を持たれていたようだ。
レイバーショウの現場でも、内海の飛ばした「イングラム並の性能を実現させた量産機なのか?」、「重量級のタイプ7あたりと対等に渡り合えるか?」といった質問にキャンペーンガールが答えに詰まる様子を見せていたため、この辺りは読者からの印象も悪い。
さらに一部の読者からは、篠原重工の社員が遊馬の試乗を制止した事も性能不信の根拠だと槍玉に上げられる事もある。もっとも、勤務中の警察官が上司に連絡もせず私用で持ち場を離れて撤収作業中の企業ブースに押し掛け、社長の息子だからとコネを振りかざし「こいつは張子の虎かよ」などと因縁をつけて、展示品に試乗させろ、警察用レイバーから勝手に抜いてきた起動ディスクを使わせろなどと言い出しているのは、常識的に考えて制止しないほうが異常な状況なのだが…。
惨敗の結果はともかく、商品としてのレイバーという観点で見ると、エコノミーはイングラムの量産型ではなく簡易量産型と言うべき位置づけの機体であり、単騎の性能に妥協してでも数の有利で相手を抑え込む思想の機体だったと言える。
世界一運動神経の良い警察官は素晴らしい存在だが、それが一人二人だけでは対応できる現場は常に一つに限られてしまうし、疲労回復やメンテのローテーションを組む事もできない。
「最強だろうが数が少なければ役目は果たせない」というのは現実の警察や軍隊でも普通に見られる運用思想であり、劇中の警視庁上層部が何度も「過度な妥協はできないがパトレイバー隊の増勢は急務」と言っていた通りでもある。
しかし、篠原重工の関係者が「晴海と有明でとんでもないものを見せられて大慌て」など、グリフォン級の相手を前提にせねばならない大幅な見直しを迫られているように、エコノミーの問題点は単なる機体性能の高低ではなく、グリフォンという特異点があったにせよ篠原重工がレイバー技術の発展速度を読み損ね、コストと妥協点の設定を間違えたという、製品開発計画の根本的な部分にあった。
偶然とはいえ展示品の段階でその開発思想の読み違いが明らかとなり、スタンダードという発展改良型へと舵を切る事ができたのは、状況的失敗作を世に出さずに済んだ篠原重工にとっても、十分に練られた後継機を得られた特車2課にとっても、ある意味では幸運だったと言える。
それにしても「性能上も立場上も咬ませ犬のような劣化版」としてとして描かれ、主人公機の立場が政治的に脅かされるという流れや、篠原重工の裏金疑惑が噴出した事などを受けて、パトレイバーファンの中には「性能が大きく劣るエコノミーを採用させて故障する回数を増やし、修理用パーツを大量発注させて利益を上げるためわざと低スペックにしたのではないか」「大量に採用させて大量に故障させ、金食い虫にして利益を吊り上げる狙いがあったのではないか」といった陰謀論を唱える人も出るなど、かなり印象の悪い扱いをされがちな機体である。
AVS-98MK2「スタンダード」
機体番号: | AVS-98MK2 |
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機体名: | スタンダード |
開発メーカー: | 篠原重工 |
全高: | 8.02m |
全幅: | 4.37m |
総重量: | 5.89トン |
装甲材質: | FRP CFRP |
劇中の搭乗者: | 泉野明巡査、五味丘巡査部長、他数名 |
エコノミーの発展改良機で、漫画版のAVS-98とほぼ同じ物である(カラーリングが黒)。第一小隊へ配備へ向けたデーター向上の為に特車二課の面々が試乗している。
エコノミーの機体性能があまりにも貧弱である事を踏まえ、足回りをイングラム同様のサスペンションに交換、コックピットに仕様変更を施しセンサー周りを改修した機体である。ただし有視界キャノピーは視界確保のためそのまま残している。イングラム同様に学習型のソフトを採用しているためハード・ソフト共に引けを取らない性能となり、まさに「スタンダード」の名にふさわしい仕様となった。
しかし、イングラムとの模擬戦において惨敗、「まだ搭乗者の工夫で性能差を覆せる」という事が明らかとなったため、南雲隊長の「イングラムに確実に勝てる機体を待とう」という意見により採用は見送られた(それから再三改良を加えて完成したのがピースメーカーである)。
その後、警備用に機体色を変更され一般販売されている。仕様そのものは警察仕様に銃火器を除いた物(一般用なので装備できない)であり、性能自体はほぼそのままである。一般人にも入手できる事が災いし強盗や盗難に利用されたりしたが、ピースメーカーによって取り押さえられるという皮肉な結果となった。