Belle(竜とそばかすの姫)
べる
「歌よ、導いて」
CV:中村佳穂
並外れた歌声とエキゾチックな美貌により、仮想世界『U』の50億のアカウントで一番注目されている絶世の歌姫。
そのオリジン(ユーザーの正体)は、高知県の片田舎に暮らしている自分に自信のない女子高校生・すず(内藤鈴)。過去の辛い出来事のために現実世界で心を閉ざしていた彼女は、『U』という新しい世界に降り立ったことをきっかけに自身が秘める歌の力を解き放ち、多くの協力者やファンを得ながら世界屈指のバーチャルシンガーへと登りつめていった。
そのような輝かしい成功のさなかにある彼女は、自身にとって最大規模のライブを行うなか、突如として『U』の荒くれ者である「竜」との出会いを果たす。彼の乱入によってライブは滅茶苦茶にされてしまうものの、ベルは竜の見せた孤独と苦悩の姿を気にかけ、その正体と本心を知るために彼を探し求めるようになる。
容姿
非現実的な桃色の長い髪と海のように深い青の瞳、そして両頬に刻印されたそばかすを思わせる斑点が目を引く、文字通りの絶世の美女。白い腕や長い脚といった彼女の肢体もまた、美人という形容に相応しいすらりとした美しさを内包している。
『U』の世界に降り立った当初は、シンプルな白のロングドレスに身を包んでいたものの、その後『U』の世界で爆発的な人気を得るようになってからは、高名なデザイナーAsのコーディネートによる特製の衣装を身にまとっている。作中のオープニングにおいても、ダリアやガーベラなどといった花々をあしらったグラフィカルな深紅のドレスに身を包み、華々しく歌を披露する様子が登場している。
余談だが、彼女のキャラクターデザインは、ディズニー映画の『アナと雪の女王』にも参加したジン・キム(Jin Kim)氏が担当している。
歌唱力
彼女の自信にあふれた歌声は、壮大で圧倒的な力強さのなかに親しげな繊細さを宿しており、聴く者を強く惹きつけて離さないような魅力をはらんでいる。(小説版、8ページ、11ページ、16ページ)
あらゆる生を祝福するかのような高らかな歌声、オリジンの感性が強く反映された歌詞や情感は多くのAsたちの心をつかみ、「僕のために歌ってくれている気がする」「私にだけ聴かせてくれているみたい」などといった聴く者の琴線(きんせん)に触れるような思いを抱かせている。
その他
- 『U』の世界にアカウント登録した当初の名前は、オリジンであるすずの名前の英語読みである"Bell"であったものの、そののち『U』の世界で歌姫として人気を博するようになると、フランス語で「美しい」を意味する"Belle"こそが彼女の名前に相応しいとする声が上がるようになり、ベルはその声を汲んで改名を行っている。
- 小説版におけるベルの一人称は「わたし」であり、オリジンであるすずの一人称の「私」と比べ、成熟した女性のイメージがより強く押し出された形となっている。
粉雪の舞う年の暮れに『U』の世界に現れたベルは、オリジンであるすずの鬱屈(うっくつ)とした境遇を込めたアカペラの歌を雑踏のなかで披露したものの、その当時は特に見向きもされず「変な曲」「気取ってんじゃねえ」などと小馬鹿にされていた。
しかし、そののち偶然にもそのアカペラの歌が音楽に心得のある何人かのAsたちの耳に留まり、コード(和音)や楽器を加えられてさまざまなジャンルの音楽にアレンジされて相次いで公開された。その多彩さや完成度の高さ、そしてベル自身の圧倒的な歌唱力や美貌が相まって、彼女の存在は「何これすげー」「気になって仕方がない」などといったAsたちの興味とともに瞬く間に知れ渡ることになった。
この急激な盛り上がりに、ペギースーをはじめとする既存の『U』のバーチャルシンガーたちは「あんな子全然たいしたことない。でしょ?」などとこき下ろそうとする動きを見せ、実際に一部のAsたちもそれに同調して批判の声を上げたものの、結局は興味のもとにベルの魅力を肯定しようとする動きが『U』内の大多数を占めるようになり、彼女への反感は完全に勢いをなくして細々とした嫉妬と怨嗟(えんさ)へと変わっていった。
『U』ミュージックのグローバルバイラルチャートへのランクインや、『U』のメインストリーム上でクジラの鼻先に乗りながら歌声を披露するなど、ベルの人気と活躍ぶりは留まるところを知らず、世界中のAsたちから「仮想世界『U』が生み出した、最高の美女」「ベルは僕らの新しいディーバ」などといった熱狂的な注目を浴びるまでに至っている。
竜
『U』の世界で大勢から忌み嫌われている、竜の姿をした凶暴な謎の存在。
ベルは竜のことを「あなた」と呼んでおり、対する竜は「君」と呼んでいる。
ある日、自身にとって最大規模のAsを集めてライブを行っていた際に、突如ライブ会場に竜が乱入してきたことでふたりは初めての出会いを果たす。追ってきた自警集団『ジャスティス』を相手取って大立ち回りを見せつけ、ライブに集まっていた観衆たちからのブーイングを浴びながら飛び去っていった竜の姿に、ベルは「あなたは、誰……?」と孤独と苦悩を感じ取り、彼に興味を抱くようになる。
そののち、独自に竜の住処である城を探していたベルは、天使Asの導きによって竜のもとへとたどり着き、そこで彼の凶暴な見た目とは真逆の繊細な思いやりの姿を目にする。ベルは思わず「あなたの、本当の姿は、どっち?」と素直な疑問を竜に投げかけるが、竜はそれには答えず彼女を締め出してしまう。その幾日後、ベルは竜へ贈る歌のプレゼントを用意してふたたび城を訪れ、彼の背中のアザを心配して寄り添おうとするが、自身の秘密を明かしたくない竜から強引に突き放され、悔しさでたまらない気持ちになりながら城を立ち去ることになる。
竜から突き放された帰り道で、ベルは彼女の事情を怪しんだジャスティス軍団に取り囲まれて窮地に陥るが、そこに竜が現れて彼女をさらい、攻撃を受けてボロボロになりながらも身を挺して助け出す。城に戻り、ぐったりとする竜を見たベルは、「たったひとりで苦しんでいる彼の力になりたい」という素直な想いを胸に、彼へのプレゼントである自作のラブソングを歌い上げる。そのまま竜とふたりきりの舞踏会を過ごし、互いに身を寄せるなかで、ベルは竜の見せる戸惑いや無防備に身を委ねる姿に、苦しいほどの愛おしさが芽生えてくるのをはっきりと自覚している。(小説版、191~192ページ)
ヒロちゃんAs(別役弘香)
ベルのオリジンであるすずの親友、弘香が所有しているAs。
ベルは弘香のAsを「ヒロちゃん」と呼んでおり、対する弘香のAsは「ベル」と呼んでいる。
ベルが初めて『U』の世界に降り立った翌日に彼女のフォロワーになり、「鈴(Bell)最高。私何でもやるし」と親友としての意気込みをあらわしている。その後は彼女をプロデューサーとして頼り、歌やダンスの手ほどきをしてもらったほか、ベルが人気を獲得するようになってからは衣装デザイナーとの打ち合わせやライブの進行管理といったマネジメントも任せるようになっている。
また、竜の乱入によって自身のライブが潰されて以降は、現実世界と『U』の世界の双方で竜にまつわる情報の収集に協力してもらい、ベルが竜とふたたび顔を合わせるきっかけを作ってもらっている。
天使As
白い妖精、もしくはクリオネのような姿をした不思議なAs。
天使Asはベルのことを「ベル」と呼んでいる。
ベルが初めて『U』の世界に降り立って歌を披露した際に、周りのAsたちが見向きもしないなか彼女のそばへやってきて「キミハ、ステキ。キミハ、キレイ」と褒めており、彼女を喜ばせている。
それから半年が経ったのち、天使Asは竜の正体を探そうとするベルの前にたびたび姿を現し、あるときは何も言わずに立ち去り、またあるときは道に迷うベルを誘って竜の城へ案内してくれるなど、ベルと竜をつないでくれる重要なキャラクターとして登場している。
また、ベルが竜とふたりきりの舞踏会を行った際には、特製のドレスに変わる『秘密のバラ』を彼からプレゼントしてもらっており、ベルはその出来栄えに「素敵」と微笑みを返している。
ジャスティン
『U』の正義と秩序を守ると主張している自警集団『ジャスティス』のリーダー。
ベルはジャスティンのことを「あなた」と呼んでおり、対するジャスティンは「君」と呼んでいる。
自身のライブに竜が乱入してきた際に、大勢の隊員を引き連れて登場したのが顔を合わせたきっかけとなっており、ベルはその際に、竜の正体を強引に暴いて制裁を下そうとするジャスティンの行いに「誰だって、そんなことはされたくない。そんなことは、あってはならないのではないか?」という疑念を抱いている。(小説版、110ページ)
そののち、ベルは彼女と竜との関係を疑ったジャスティンによって幾度となく引き止められる。当初は「竜との関係を説明しなければ君の正体を暴く」と迫る彼の脅しに恐怖するだけだったものの(小説版、183ページ)、ベルにとって竜が守るべき存在へと変わってからは「あなたは正義なんかじゃない。ただ他人を屈服させたいだけ。だから言わない」などと、毅然(きぜん)とした面持ちで立ち向かう様子を見せている。
赤ドレス姿
白ドレス姿
ピンクドレス姿