JR東日本が最高速度360km/hでの営業運転を行うための試験車両として製造された。親記事のファステックの説明にあるように高速走行時の各種性能や騒音、乗り心地などの試験を行った。6M2Tの8両編成となっており、中間電動車は試験データ収集のため2両ずつ異なる主制御機、モーターを搭載している。また、1号車と8号車は形状が異なっており高速走行に最適な形状を試験するとともに、最適な形状の車両で試験できるように入れ替え可能になっている。(ちなみに新幹線/在来線直通型のE955形(FASTECH 360 Z)は全電動車ため先頭車の入れ替えは不可)
電動車ユニットの走行機器構成
各ユニットの力行・回生制動時の特性は同一になっており、全車両とも主変換機の半導体素子はIGBTを採用している。ちなみに設計上の最大速度は405km/h。
2、3号車
- 主変圧機:容量3650kVA強制風冷式。
- 主変換機:3レベルVVVF走行風冷水冷式
- モーター:定格出力370kWの三相誘導モーター8基
4、5号車
- 主変圧機:容量3600kVA強制風冷式。
- 主変換機:2レベルVVVF強制風冷沸騰冷式(コンバータ回路は3レベル)
- モーター:定格出力355kWの三相同期モーター8基
6、7号車
- 主変圧機:容量3600kVA走行風冷+強制風冷式。
- 主変換機:2レベルVVVF強制風冷水冷式(コンバータ回路は3レベル)
- モーター:定格出力350kWの三相誘導モーター8基
台車
全車両車体傾斜装置搭載(空気ばね式)ボルスタレス台車であるが、軸箱支持方式は1・2・5~8号車は軸ばり方式、3・4号車は支持板方式と異なったものを採用している。
パンタグラフ
落成時はE2系1000番台と同形式のものが2号車と7号車に取り付けられていたが、後に多分割して架線への追随性を強化したパンタグラフに交換されて試験された。
因みに試作パンタは通常の2つ折り型シングルアームパンタグラフと一本足型シングルアームパンタグラフが其々搭載されて比較試験が実施され、試験の結果前者の2つ折りパンタグラフがE5系に採用された。
また、落成時にはZ字断面形状をした遮音板が集電装置の両脇に装着されていたが、2006年以降に両端が30度となる平板形状の遮音板に変更された
空気抵抗増加装置(通称猫耳)
各車両に4か所設置された空力ブレーキで、丸みを帯びた扇形の板で通常走行時は車両の側面上部に収納されており、緊急制動時にのみ車体中央側の付け根を軸に約60度回転し屋根肩部にせり出す。
コレは時速360キロで走行中に地震等の緊急時が発生しても制動距離をこれまでの新幹線の275km/hからの制動距離と同等またはそれ以下に抑えることを目指して搭載された。
後に量産車であるE5系では最高速度が320キロで登場し、通常のブレーキユニットでも従来の275km/h台の制動距離が確保された為に猫耳と評されたこの空力ブレーキは不採用となった。
先頭車形状
E954系にはストリームラインとアローラインと称した先頭車形状を採用しており、前者はE2系と500系の中間のような形状、後者はE4系の発展型のような形状をしている。また、アローライン側にはE955系と連結運転をする為に分割併合装置を備えている。
2種類の先頭車形状の比較試験の結果、アローラインがストリームラインと比べて10%近い騒音軽減効果が得られ、結果アローラインがE5系に採用された。
因みに鉄道ファンの中では圧倒的にストリームラインが人気だったとのこと。