概要
SNKが1986年に開発・製作したアクションシューティングゲームで計3作品(番外編も含めると4作品)シリーズ化されている。武器強化アイテムなど、システムは『メタルスラッグ』の前身とも言える所が見られる。
1Pはラルフ・ジョーンズ大佐、2Pはクラーク・スティル少尉。後にKOFシリーズやメタルスラッグシリーズに登場するあの二人である。
▼左がクラーク右がラルフ
ラルフは当時年齢は20代後半(現在は39歳)で階級は『T・A・N・K』から引き継ぎ大佐でクラークは現在ラルフより5つ年下(現在34歳)なので20代前半という事になる。当時の階級は少尉。
クラークがこの年で少尉であるのが何とか分かるが、ラルフがこの若さで大佐というのは普通ならばまず有り得ないことである。(ラルフが20代で大佐となっていることについてはシリーズ1作目の取説で詳しく書かれている)。
当時の彼らはバンダナの色が違うだけでグラフィック、髪の色も一緒(黒髪)で見分けがつきにくく、しかも服装も上半身が裸にハチマキのみという暑苦しいものだった。
この格好は、「KOF97」でラルフ、クラーク、麻宮アテナでチームを組んだ時のエンディングで見ることができる。(因みにアテナは何故か先祖のアテナ姫の格好である。ついでに言うと椎拳崇はサイコソルジャーの時の服装である。)
そもそもゲーム及びキャラのモデルはシルヴェスター・スタローン主演の映画「ランボー」とその主人公ジョン・ランボーをモデルとしており、実際に版権元の映画会社と交渉してライセンスの許可を貰うところまで進んでいたが、現地のアーケードマシン展示会で当作品を出展した際、予想以上の人気を得た為、版権作品として出す必要性が無くなったのである。
なお、海外版では何故かキャラ名がラルフがポール、クラークがヴィンスに変更されており、そのせいでKOFが発売された時は日本版基準だったため、多くの混乱を招く羽目となった。
・・・だから初めから変えるなっとと何度も言ってるのに。
開発経緯として、『T・A・N・K』の開発を終えて一段落した頃に『T・A・N・K II』の開発の話が上層部から降りてきた際、『T・A・N・K』に『戦場の狼』と『フロントライン』の面白さ、つまり人間同士の戦いと戦車からの脱出という要素を追加したものを、という注文事項があった。これを元に開発がスタートした。
面白さの要素としては、
- 人間を大きくし、対人戦闘を可能にし、プレイヤーの感情移入をしやすくする。
- 戦車に乗り込む事によって変身する感覚を与え、脱出しなければならない状況を作り出す事によって緊張感を与える。
- 爆発を派手にする事によって爽快感を持たせ、攻撃という行為に対する結果を最大限に発揮させる。
- 敵同士の殺し合いや誘爆を存在させ、戦場の臨場感を表現する。
- 激しい攻撃の部分を作り、メリハリをつける。
- 敵の攻撃によるプレイヤーに対する心理的衝撃の連続を、プレイの方法によって変化させる。
といった点が挙げられた。 また、シーケンスの構成としては、「心理的衝撃の連続した形態は、慣れてしまう事によって衝撃ではなくなる」という『T・A・N・K』での反省から、心理的な慣れを引き起こすまでの時間の引き延ばしを主眼とした。
また、『T・A・N・K』の開発の際に考えられていた「ゲームとは、開発した人間の思想を表現している」という思考をさらに進めて、「開発した人間の思想を表現し、なおかつ、プレイヤーに対しての心理的な影響をあらかじめ計算し、操作する事が可能である媒体としての役割を持つ」という思考に達したため、人工知能によるシーケンス制御の試作品のようなゲームとなった。そのため、ゲームのシーケンス自体としてはかなり不安定な部分が出来てしまったが、これの反省を元に続編の『怒号層圏』が開発される事になった。
作品概要
8方向の「ループレバー」と呼ばれるレバーと2つのボタンで操作する。
ループレバー(ダイヤルスイッチとも呼ばれる)はスティックの上部にダイヤルがついたもので、倒すことで自機を進行、回転で攻撃方向を調整する。ダイヤルは1周12方向となっていて、例えば180度反転させる場合でも操作は120度回転で済み、手首を無理に捻る必要が無いように考慮されている。 ボタンは主に、銃と手榴弾の使用に用いる。
色違いの敵兵を倒すとアイテムが出ることがある。このゲームでは銃弾、手榴弾ともに弾数制限があるので、アイテムは単に各種パワーアップのためだけではなく、残弾を補給するためにも拾わなければならない。
味方の空戦車の傍で手榴弾ボタンを押せば戦車に乗り込むことができる。これもガソリンメーターが無くなれば止まり、そして爆発するので、やはりアイテムを拾って補給しなければならない。戦車から降りる時も手榴弾ボタンを押す。
エリアの切れ目には全部で5つのゲートがあり、これは手榴弾か戦車砲でなければ破壊できない。
特殊なレバーを用いる操作や、敵弾だけでなく自分や味方の弾に当たってもミスとなるなど、従来のゲームに無かった仕様を持つ。これらの仕様からうまれる独特のゲーム性を評価し、この作品を初期SNKゲーム作品における傑作のひとつとして位置づけるファンも多い。
手榴弾を投げると移動して避ける、など、敵はこちらの攻撃を避けるといった動作を行う。
FCゲームの例にもれず全シリーズとも難易度は高く設定されている。
クラウムズ
このゲームプログラムには『クラウムズ』と呼ばれる擬似人工知能が搭載されており、それによってゲームの基本的シーケンスが制御されている。
基本的に、プレイヤーがどれくらいの時間でどれだけの敵を排除したかを監視している。短時間で多くの敵を排除できるプレイヤーは上手、逆に、いつまでたっても少しも敵を殺せないプレイヤーは下手だと判断。それに基いて、敵をどこでどれぐらい出すか、パワーアップアイテムの出す場所や数はどうするか、等のシーケンスの変更を行っている。また、プレイヤーを意図的に惑わす方向性で設計されており、パワーアップアイテムをなかなか取らないでいると徐々に出さないようにもする。
シリーズ
怒 IKARI
記念すべきシリーズ1作目でキャッチコピーは「俺が生き残るためなら相棒でも倒す!」
ナチス・ドイツの残党から国連へ世界征服するという通達があり、その事実を確かめるべく国連安保理により制定されたラルフ大佐以下四名と新顔のクラーク少尉の精鋭部隊が戦場に送り込まれるも飛行機が作戦開始直前に墜落し、助かったラルフ大佐とクラーク少尉がたった2人で敵軍と戦うストーリーである)
因みにこのゲームのザコ敵の服装がKOF99以降のクラークの服装と非常に似ている。
FC版ではマップが原作のおよそ三倍の長さと4ステージ構成で、アーケード版では使用出来なかったヘリコプターへの乗車が可能だったりとゲームそのものがかなり異なる内容となっている。また、アイテムとしてアテナ人形なるアイテムや偽ラルフ(偽クラーク)なる敵兵も追加された。4面目は途中からスターウォーズの帝国軍兵士みたいな敵兵も登場するが、AC版のエンディングでSNK川崎英吉社長がモデルのカワサキ将軍は登場せず(ねぎらいの言葉はある)と変更になっている。
なお、FC版の購入理由のそのほとんどが、実に“カプコンから少し前に発売された「戦場の狼」がお店で品切れで買えなかったからそうだが、中には戦場の狼ではなく元からこっちを選んだという人もいるとか。
因みにこのゲームが稼働する前はSNKは倒産の危機に陥っていたが、見事にヒットしたためなんとか倒産を免れたという。
なおこの時点ではイラストおよびラルフ、クラークのキャラデザインを漫画家のたがみよしひさ氏が担当。
現在知られているラルフとクラークのデザインとは違うものの、タフでマッチョな二人の勇姿は必見である。
怒号層圏
シリーズ2作目でキャッチコピーは「選ばれし者達よ、その手で闇を打ち砕け!」
とある任務を遂行したのラルフ大佐とクラーク少尉がアメリカ本国へ期間中突然異世界に飛ばされ、現実世界に戻るべく再び壮絶な戦いが始まる。
操作系は前作に引き続きループレバーと2ボタン。アイテムを手に入れることで強力な武器を使用することが出来る。各ステージにはボスが設定されており、倒すと次のステージに進むことができる。
武器には剣、ブーメラン、バズーカ砲、銃、手投げ弾などがあるが、特に前作からの大きな違いは剣であり、これを使って敵の攻撃を弾き返すことが可能でこれが攻略のカギとなる。永久パターン防止のミサイルさえ弾き返せる。ある意味でループレバーらしさを演出したフィーチャーの追加となっている。FC版ではラスボス戦では剣と手榴弾以外の武器は使えなくなるので必須アイテムとなっている。
時折、異次元パネルなるものが飛来し、それに触れてしまうと、異次元空間へと落ちてしまう。異次元空間は避けることができたが、接触判定がとても大きかったり、地面に設置される前から接触判定をもつため、出現場所を覚えていなければほぼ確実に異次元に吸い込まれてしまうようになっていた。異次元ではパワーアップアイテムが一切出現せず、不気味なBGMと共に敵が出現する。エリア最後にボスがいる場合は、これを倒さなければ異次元から出ることはできなかった。
継続プレイの方式も前作と異なっており、ゲーム中にクレジットを入れてスタートボタンを押すと残人数が増えるようになっていた。
前作以上に難しく敵がこれでもかというぐらいわんさか登場し、四方八方から高速で飛来しつつ弾を撃ってくるうえ、地形に阻まれて自由に身動きできないこともあり、鬼畜ゲーとなっている。
FC版では冒頭部分での文字がモールス信号のように打ちこまれている演出がされており、この演出に対し俺は今から怒るぜ状態になったプレイヤーは多かった。
設定も細かくなっており、異世界のズーダがラックルピケル島を征服したザンゲルドとザンゲルドの軍勢を倒してほしいためラルフ達を呼んだという事になっている。もちろんラスボスがこのズーダとなっている。
BGMもRPGっぽくなっており、AC版より明るくなっている。また、店などもあるためよりRPGみたいになっている。
どうでもいいが、冒頭デモのラルフとクラークの絵がマサルさんに見える。さらにイラストレーターが変更された結果、クラークが黒人になってしまっている。
余談ながら、怒ともども天野ゲーム博物館所有の筐体が唯一現在も現役で可動している。
怒Ⅲ
シリーズ3作目。ストーリーは政権交代を快く思っていないある国の妨害により次期大統領の息子(FC版では娘)が誘拐され、公に行動ができない政府は事件解決をラルフ大佐とクラーク少尉に託したというものである。
トップビュー型アクション。全6面。
ゲームシステムは今までと違い、主人公のラルフとクラークは銃ではなくパンチやキックをメインに肉弾戦となっている。そのためライフ制も取り入れられ、今までの怒シリーズとは違った物になっている。が、ボス戦では何故か銃が使えるようになっている。最初っからそうすればええやん!
敵を倒すとアサルトライフルやナイフ、手榴弾が手に入る。特にアサルトライフルを手に入れるか入れないかでゲームの難易度がガラリと変わる。
操作は確認した限りはBでパンチ、Aで回転キックABでジャンプキック。
敵、味方共にダメージを喰らった後の無敵時間が無いため、ハメることもハメられることもある。
コンテもその場で復帰なので、怒1、2とは比べ物にならないほどの難易度。瞬殺可能。
1、5面ボスは戦車で結構強いものの、それ以外のボスは人なので容易にハメれるため弱い・・・もちろんラスボスも。といってもラスボスは他の面でも出てきた指揮官っぽいザコ敵4体だが。
「いいかラルフ、クラーク。兵器系のボスには気をつけるんだ。以上。」
その他
主人公のラルフ大佐とクラーク少尉は後年、KOFやメタルスラッグにも登場。また、SNKのファミコンゲーム『ゴッドスレイヤー』では彼らをモチーフとしたキャラが登場。(他にもサイコソルジャーのプレイヤーキャラの麻宮アテナや椎拳崇をモチーフとしたキャラクターも登場している)