概要
2016年6月23日に国民投票が行われ、離脱が多数票を獲得した。
経緯
先の大戦の反省から欧州を政治的な地域統合体として一体化を目的に成立したEU。EU内では関税を撤廃して、人と物の移動を自由にした。イギリスも筆頭的な加盟国であった。
しかし、リーマンショックやギリシャ金融危機などの経済混乱が起こると、対応に欧州各国で足並みが揃わず、各国での負担も格差に不満が増大。EUの共通の法律や規制に対する不満も表面化。さらに移民の増大によって貧困の格差、労働者や失業者の問題が拡大し、公共福祉対応も追いつかなくなった。そしてシリア内戦やIS問題で中東難民が急増し、イスラム過激派テロリストが難民に紛れて侵入してテロを起こし、さらなるテロの危機も高まった。
これらの問題を背景にイギリスを始め、欧州各国でナショナリズムが目立ち出し、2016年2月にEUの離脱論争への国民投票の実施が決まった。
6月に入って残留派議員が離脱支持者に暗殺される事件が起こり、残留支持の勢いが高まり、国内外でも残留決定の予想が多かった。
しかし、結果は残留票47%に対し離脱票51%の僅差で離脱が決定した。
影響、反応
EU残留派だったデビッド・キャメロン首相は辞意を表明、後任が選ばれる10月の党大会までは続投。
日本時間24日昼頃に開票結果の大勢が判明し、先進国の金融市場で唯一開いていた日本では日経平均株価が1286円33銭(7.92%)下げ、値幅では史上8位、率では史上9位の暴落。
為替市場は円高、ポンド安に大きく動いた。1ドル=106円台から一時99円台へ。1ユーロ=121円台から一時109円台へ。1ポンド=160円台から一時133円台へ。1ポンド=1.50ドルから一時1.33ドルへ、1ユーロ=0.76ポンドから0.83ポンドへ。
残留票が多かったスコットランドと北アイルランドではEUに残留するため、イギリスから独立しEU加盟を求める声が上がっている。
直ちに離脱と言うわけではなく、EUや世界各国との協議や調整の末に2年後の2018年に正式に離脱する予定。一方のEU側は離脱するならできるだけ早く離脱するよう求めている。
ところが、離脱決定後のイギリス国民の間では後悔の声が増えており、離脱支持派政党が離脱した場合の公約を反故する動きが起こり、投票やり直しの声も上がって、さらなる混乱が続く様相。
各国の支持
アメリカ
バラク・オバマ大統領は残留を支持して企業も同様の傾向があったが、離脱決定後はイギリス国民の意思を尊重すると発言。ドナルド・トランプ氏は離脱を支持し、離脱決定を賞賛。
中国
習近平は残留支持派。混乱の影響でEU向け輸出が滞って中国経済悪化の可能性があり、ユーラシア構想が実現困難となり、さらに台湾やチベット、ウイグルなどの独立推進派を勢いづかせる可能性もあり、中国としては困る要素が多い。
日本
安倍晋三首相や経済界を含めて残留を支持した。但し、三橋貴明さん等の反米保守や社会主義左翼は離脱を支持している。
離脱決定後の影響で上述の円高、イギリスとEUとの輸出入などですでに混乱が生じ、みんなが総スカンした伊勢・志摩サミットで安倍首相が主張した「リーマンショック級の世界的経済混乱の再来」が現実味を帯びてきていることに戦々恐々している。
ドイツ
アンゲラ・メルケル首相はイギリスに追随して離脱が相次ぐEU崩壊の懸念から、残留を支持している。
フランス
オランド大統領は残留支持だが、マリーヌ・ルペン女史は離脱を支持している。
ロシア
ロシアのプーチン大統領は、他の指導者とは一線を画して、離脱を支持しているものの公には出していない。
イギリスが離脱すればEUが弱体化し、対露制裁も弱まって、うまくいけばEUがロシアに対抗できない勢力になることを目論んでいる。事実、ラジオスプートニクの報道では完全に離脱支持を明言した。
イラン
イランのロウハニ大統領は声明を発揮していないが、パールス通信の報道の傾向だと英国のEU離脱を支持した。
関連項目
Grexit Greece+exit ギリシャのユーロ圏離脱。2012年6月のギリシャ議会総選挙の結果、ユーロ圏残留を選択した。