概要
EU離脱とは、ヨーロッパ連合加盟国が脱退を宣言する又はその準備を行うことである。近年においては、反EU勢力に煽られる形で実施されたイギリスの国民投票による離脱の決定が記憶に新しい。
ヨーロッパ連合の歴史
ヨーロッパ連合は元来争いが絶えなかったヨーロッパで平和を保つために誕生した同盟であり、オランダとベルギーが最初に経済的な協力によって成立し、その後西ドイツとフランスが中心となって誕生した共同体である。この共同体はまた、ソビエト連邦を初めとした東ヨーロッパ諸国で、具体的には共産主義各国の影響を防ぐために作られたが、ソ連を初めとした社会主義国が崩壊したため、その影響下にあった一部の東ヨーロッパの国もヨーロッパ連合に加盟あるいは加盟を申請し、ヨーロッパの国境を各種検査無しに行き来が可能となるシェンゲン協定を初めとする各種条約・統一通貨であるユーロなどが定められ、グローバリズムの見本状態となっている。
ただ良い点ばかりでは無く、近年は悪い点も見え始めている。例えばヨーロッパ連合各国の貧富の差によって国をまたいだ移民が大量に発生し、経済力のある国に溢れる・ユーロ採用により経済力の弱い国はさらに不景気となる・逆に経済力をさらに増したドイツとフランスに各国が搾取される構図が発生し、各国の貧富の差がさらに激しくなる。
2005年にドイツではアンゲラ・メルケルが首相に就任する。2009年にギリシャの粉飾問題をきっかけとしてユーロが下落し、ユーロ圏の外貨建て債権に問題が発生した。そしてスペイン・ポルトガルなどの経済危機が発生し、ヨーロッパ連合はそれらの国に対して国の支出を減少させて国家財政の黒字化を目指す緊縮財政を提案した。これにより富の再分配が行われなくなり、各国の格差・貧困が増大し、さらにヨーロッパ連合に不満を持つ人が激増して極右(いわゆる新右翼や民族主義者)・極左(いわゆる新左翼や地域保護主義者)政党などのヨーロッパ連合懐疑派の得票が伸び始めてきた。
さらには2015年以降のテロなど、例えばフランスのパリ同時多発テロや、その一因となるドイツの無計画な難民の受け入れの影響などにより、国の持つ独自文化・風習の破壊も顕著になっており、ヨーロッパ連合の存在そのものが疑われ始めた。
ヨーロッパ連合離脱の流れ
ギリシャ
最初に反旗を翻したのは2015年のギリシャである。問題発生以降選挙によって与党となった急進左派連合(以下「SYRIZA」)がヨーロッパ連合及び国際通貨基金の緊縮財政に反対する国民投票を実施し、反対が多数となった。ただしギリシャはユーロ採用国であり、この問題を放置するとギリシャ・ヨーロッパだけでは無く、本当に全世界に影響が出るため、結果として国際通貨基金とヨーロッパ連合の圧力に負けてしぶしぶ受け入れを表明した。
グレグジット(グリーク・エグジット、すなわちギリシャの脱退)は発生しなかったが、これは今後のヨーロッパ連合の運営に影を落とすこととなった。また、観光立国であるギリシャの経済を立て直すにはユーロ離脱は必須との意見もギリシャ内外にある。
イギリス
伝統的にイギリスは大陸のヨーロッパと距離を置いていたことに加えて旧植民地諸国との結束も強いため、比較的ヨーロッパ連合への懐疑派は多かった。加えてイギリスがヨーロッパ連合の内政干渉とも取れかねない各種の条約の押しつけ・移民の増加などを嫌ったこと・反EU派の画策もあり、当時のキャメロン首相が何を思ったのかブレグジットに関する国民投票を実施することとなった。
当初「賢明なイギリス人は離脱に賛同することは無いだろう。」と楽観的な見通しであったが、その後反対派は力を付け、結果として2016年6月23日に離脱派が勝利し、首相であったキャメロンは辞任に追い込まれた。その後紆余曲折の末に2020年2月1日、イギリスは正式にヨーロッパ連合を離脱している。
その後
ヨーロッパ連合離脱を巡ってイギリスが混乱状態になった事もあり、加盟国の間で騒がれていた離脱論は急速にしぼんではいるが、依然として反EU派の活動は続いている。
離脱で生じる問題
- 経済規模の縮小
ヨーロッパは規模の小さい国が多いが、共同体を作ることでアメリカ・ロシアなどの超大国に対抗する道を選んだ。単独で他の国と貿易協定を締結することは一見自由に思えるが、現実は国力の差で譲歩を迫られて不利な協定を締結する事も多く、巨大な共同体の力は大きい。無関税・仕事資格の共通は巨大な市場へのアクセスで非常に大きな意味があり、規模の小さい一国だけでは得られない経済的な利益がある。貧しい国には補助金も出るため、離脱はその利益を手放す可能性が高い。
共同体にいるから恩恵がある訳であり、そこを出れば他人である。イギリスでは離脱した途端にヨーロッパ連合に輸出していた生鮮魚介類の関税手続き復活で鮮度が悪化し、競争力を落とした。
- 社会の混乱
離脱は多くの制度変更がある為、もっとも今までの当たり前は変化する。関税手続きの復活は物流を遅らす為、スーパーに並ぶ商品の鮮度が悪化して海外からの労働者のビザが必要になり、人手不足などがある。
離脱を支持する政治家など
政治家
- チプラス( ギリシャ、前述 )
- ボリス・ジョンソン(イギリス、保守党所属、イギリスの前首相。反対する立場の与党所属にもかかわらず旗振り役になり、EU離脱に追い込んだ張本人。)
- ヘルト・ウィルダース
ヨーロッパ連合諸国以外の政治家も離脱を支持する場合がある。これは他国の不安定を煽り、漁夫の利を得るためである。
政党
右翼政党で特に新右翼政党が多いが、左派政党も見られる。これはグローバリズム化による貧富の差が発生しており、その受け皿となっているためである。以下は議会などに議席を所有していた主要政党であり、その他に中規模及び小規模な政党は存在する。
- SYRIZA( ギリシャの左派政党 )
- 黄金の夜明け( ギリシャの極右政党 )
- 国民戦線( フランスの極右政党 )
- ドイツのための選択肢( ドイツの右派政党 )
- スウェーデン民主党( スウェーデンの極右的右派政党 )
- デンマーク国民党( デンマークの極右的右派政党 )
- ポデモス( スペインのポピュリズム傾向のある左翼政党 )
- 法と正義( ポーランドのカトリック保守主義的右派政党 )
- 五つ星運動( イタリアのポピュリズム政党 )
- オーストリア自由党( オーストリアの極右ポピュリズム政党 )
- オランダ自由党( オランダの極右政党 )
国
ここで述べるのは公的な報道機関などでヨーロッパ連合への離脱などについて賛同した国のみであり、例えば中国などは声明を発表していない為、態度は不明である。
離脱した国
- イギリス
- 2016年6月23日に国民投票で離脱が残留を上回り、離脱が決定的となった。この結果2年間の手続きを経て2020年2月1日に離脱した。