概要
1954年、ハンブルク生まれ。牧師である父の仕事の都合で東ドイツへ移住。
出生名はアンゲラ・ドロテア・カスナー。
ライプツィヒ大学を卒業後、物理学者となる。専攻は理論物理学だった。
この時期に最初の結婚をしたが4年後に離婚、現在も当時のメルケル姓を使っている。
現在の夫は量子物理学者のヨアヒム・ザウアー。
ベルリンの壁崩壊後、学者から政治活動に本格転向、1990年に初当選。初当選でいきなり閣僚入りという抜擢を受ける。これには、時の首相ヘルムート・コールが統一ドイツとして初の内閣を組むにあたり、東ドイツに住みながらキリスト教徒としての信仰を捨てない、若く有能な女性を探しているところにメルケルが熱心に売り込んだためとされる。
彼女はたちまちコールのお気に入りとなり、彼からは "Mein Mädchen"(私のお嬢ちゃん)と呼ばれた。それにあてこする形で「コールの娘」、地味で垢ぬけない髪型と服装から「灰色のネズミ(ネズミは大抵灰色、つまり凡庸という意味)」などと揶揄された。さらには"Mutti"(野暮ったいお母ちゃん的なニュアンス)というあだ名も頂戴することになったが、こちらの方は首相となり長期政権化してゆくうちに堅実でしっかりもののドイツ家庭の母親、あるいは国母的ニュアンスで使われるようになった。
2000年よりキリスト教民主同盟 (CDU) 党首となり、2005年より第8代ドイツ連邦共和国首相。
女性として、戦後生まれ、東ドイツ出身者としては初のドイツ首相であり、就任時史上最年少者でもある。
2015年に起きた難民問題の対処により支持率が低迷し、2017年9月24日のドイツ選挙では首相こそ維持したもののCDUは大敗、連立を組んでいた社会民主党も議席を減らした上、新右翼政党のドイツの為の選択肢が第3党となるなど、連立政権の見直しに追われた。
当初社会民主党は連立を拒んでおり、自由民主党や緑の党が連立相手として候補になっているものの、自由民主党は連立を拒否された上、CDU内部からも彼女を首相から降ろす動きがみられた。
その後社会民主党がようやく連立政権樹立に応じ、第4次政権がスタートしたものの、地方選挙(州議会選挙)に相次いで敗北したことから党首選挙に出馬せず、CDUの党首の座を降りることとなった。
2021年10月、地方選での与党敗北を受け任期満了を持って退任し党首選にも出馬しないことを発表。
任期終了間際、抑え込みに成功したと思われていたCOVID-19がドイツ国内で爆発的に再拡大するなど最後まで波乱が続く政権となった。
しかし、任期中は慢性化していた財政赤字の解消とGDPの拡大、2019年時点では東西統一後最低水準の犯罪率を記録するなどドイツ社会の経済的発展と社会秩序の改善に貢献したと概ね見なされており、就任以降一度も支持率が過半数を割ったことのない安定政権であった。
2021年11月26日をもって退任8年以上の長期政権になることが多い戦後ドイツの憲政下においても、かつての師コールに並ぶ長期政権となった。
その他
- 青年期に噛まれた経験から犬は嫌いで、その時乗っていた自転車も以降は乗ることがない。ウラジーミル・プーチンと会談した際には、プーチンが愛犬と伴って臨むというハプニングがあった。プーチンは知らなかったと釈明したが、相手の人となりや好き嫌いについて事前のレクチャーがなされる外交の場での常識からわざとであると看做す見方が強い。
- 学生時代はウクライナに語学留学しており、ロシア語コンテストで優勝するほど堪能。プーチンとの対談でも一部ロシア語を使用することがある。
- 大のサッカー好きで、ワールドカップの応援観戦も欠かさない。2014年のブラジル大会ではブラジルに特に用もないのに公費で応援に駆け付けたことが問題視された。
- 公的な場で写真撮影を受ける際には体の前で指が触れあうように手を置くハンドジェスチャーをとる事が多い。このポーズは「メルケルの斜方形」と呼ばれている。
- 2016年に公開された映画「エンド・オブ・キングダム」ではメルケルをモチーフにしたと思われる女性のドイツ首相が登場している。なお、2019年に公開された続編の「エンド・オブ・ステイツ」では2017年のG20サミットの際に撮影された映像が作中のニュース番組に引用されており、合成映像ではあるがメルケル本人がアメリカ大統領役のモーガン・フリーマンと共演している。
関連動画
- “Ruf mich Angela:Angela Merkel performed by Klemen Slakonja”