騒速は、坂上田村麻呂が播州清水寺に奉納したと伝えられる兵仗用の大刀（直刀）。
弯刀を指す「太刀」ではなく、直刀を指す「大刀」の表記が用いられる。
ソハヤノツルギ（ソハヤの剣、ソハヤ丸など）の逸話が仮託される。
なお楚葉矢の御剣とされることもあるが、騒速は楚葉矢の御剣ではない。
概要
奈良時代末期から平安時代初期にかけての作とされる。兵庫県・播州清水寺所蔵、東京国立博物館保管。
重文指定名称は「大刀 三口 附拵金具十箇」で、三口の大刀と十箇の拵金具を合わせて登録されている。
三口のうち切刃造の大刀を「1号大刀」、鋒両刃造（小烏丸造）の大刀をそれぞれ「2号大刀」「3号大刀」としている。
特徴として、1号大刀は同時代の作とされる切刃造の大刀と比べ、鎬筋がやや中央に寄って浅い反りがある。
平安時代中期に直刀から弯刀へ変化する前段階、日本刀が誕生する兆しの名刀と評され、騒速の資料価値は極めて高い。
逸話
安綱作
観智院本『銘尽』には安綱の作として「田村将軍そは矢の剣 作上手也」と記されている。
実際のところ、平安時代初期の坂上田村麻呂と中期の大原安綱では活動していた時期が合わないと考えられている。
鬼切りの大刀
騒速には坂上田村麻呂伝説に登場するソハヤノツルギの逸話が仮託されている。
播州清水寺の寺伝では「桓武天皇の頃に征夷大将軍坂上田村麻呂が丹波路より播州清水寺に参拝し、聖者大悲観音の加護を得て陸奥国の悪事の高丸を討ち、鈴鹿山の鬼神を退治した。その感謝として愛刀の騒速と、副剣の二振りを奉納した」とされる。
源頼光が日本三大妖怪に数えられる大江山の酒呑童子の首を刎ねた童子切安綱と同じく、田村麻呂が日本三大妖怪に数えられる鈴鹿山の大嶽丸の首を刎ねている。
楚葉矢の御剣
滋賀県・田村神社の重宝に楚葉矢の御剣があるという。同じ坂上田村麻呂のソハヤということで混同されやすい。
物語のなかの騒速
ソハヤノツルギ
『源平盛衰記』「剣巻」に登場する髭切の逸話が京都府・北野天満宮所蔵の鬼切安綱に仮託されるように、『鈴鹿の草子』『田村三代記』などに登場するソハヤノツルギの逸話が播州清水寺所蔵の騒速に仮託される。
物語中では「そばやの剱」「草早丸」「素早の剣」「素早丸」「神通剣」など、作品ごとに表記揺れが見られる。中には「そはや丸」と「こんじゃく丸」という二振りの刀剣を振るうバージョンもある。
夫婦刀
創作作品において騒速は大通連と夫婦刀として設定される事がある。
『Fateシリーズ』に登場するJKセイバーの宝具のうち、大通連を真名解放した天鬼雨の説明に「展開数は250本だが、夫が持つ夫婦剣の素早丸（そはやまる）と連動解放することで500本の剣の雨で敵陣を蹂躙することができる。」とある。
おそらくは夫婦刀の意味で夫婦剣と設定したのだろう。
