概要
夫婦刀とは、創作界隈にて夫婦で所持している刀剣の意味で広く使われている。
いつ頃から「夫婦刀」という呼称が使われ始めたのかは不明であるが、
サブカルチャーにおいて坂上田村麻呂のソハヤノツルギと鈴鹿御前(立烏帽子)の大通連が夫婦刀として扱われている。
例えば、とある作品の考察で、ごく一部であるが登場キャラクターが所持する長刀と短刀の元ネタはソハヤノツルギと大通連ではないかとされ、その考察の中で夫婦刀という呼称が使われていた様である。
この作品の考察に限らず、インターネット界隈では2000年代にはソハヤノツルギと大通連を夫婦刀としていたことが確認出来る。
ソハヤノツルギと大通連
お伽草子『鈴鹿の草子』や奥浄瑠璃『田村三代記』などの物語で語られる、田村将軍と鈴鹿御前(立烏帽子)のエピソードからソハヤノツルギと大通連が夫婦刀であると考えられはじめたのであろう。
鈴鹿御前を見つけた田村将軍がソハヤノツルギを投げかけると、鈴鹿御前は大通連を投げ返す。
ソハヤノツルギが烏に変化して飛びいれば、大通連は鷹に変化して追い出した。
ソハヤノツルギが火焔となって燃入れば、大通連は水流となってそれを消す。
他にも剣を持っている鈴鹿御前は、為す術のなくなった田村将軍に対して婚姻を切り出し、二人は夫婦となった。
天にあらば比翼の鳥、地にあらば連理の枝、釈迦大悲の弓を手に立ち給う、涅槃の中は替わるとも、我ら中は替わるまし
この剣合わせの場面では白居易の『長恨歌』(ちょうごんか)から比翼連理の詩を引用して締め括られているが、刀剣についても人間のような意識や感情を有するかのように人格的に表現されている。
その後、田村将軍が鈴鹿御前の閨で夫婦の契りを交わして娘の小りん誕生までが描かれていることからも影響を受けたのだろう。
なお、諸本によっては同じエピソードでも田村将軍が、
「そはや丸・こんじゃく丸」という2振りの剣を使っている。
こんじゃく丸と小通連が対になっているため、
そはや丸と大通連の前例でいえば、この2振りも夫婦刀と言えなくもない。
夫婦剣との違い
夫婦剣は、古代中国の説話に語られる雌雄一対の双剣「干将・莫耶」が有名。
刀工・干将とその妻・莫耶が協力して制作した剣であり、できばえのあまりに剣に自分達夫婦の名前をそのままつけた剣というところが「夫婦剣」としての由来になる。
対してソハヤノツルギと大通連は、田村将軍と鈴鹿御前の剣合わせに使われた剣であり、
その後も夫婦二人による数多の鬼退治に使われた剣という点で大きく異なっている。
創作における夫婦刀
創作作品ではソハヤノツルギと大通連は夫婦刀として設定される事がある。
Fateシリーズ
『Fateシリーズ』に登場するJKセイバーの宝具のうち、大通連を真名解放した天鬼雨の説明では、
「展開数は250本だが、夫が持つ夫婦剣の素早丸(そはやまる)と連動解放することで500本の剣の雨で敵陣を蹂躙することができる。」とある。
おそらくは夫婦刀の意味で夫婦剣と設定したのだろう。