概要
スズキから発売されている軽4輪自動車。
アルト、キャリイ/エブリイ等とともに2014年3月までマツダにOEM供給され、「AZオフロード」の名称で販売されていた。
軽自動車におけるヘビーデューティー4WDの開拓者であり、現在では全長4mを切るヘビーデューティモデルとして世界でも唯一無二の存在。日本国外ではトレッド及びフェンダーの拡大と1.5Lエンジンを搭載して販売されており、日本国内では小型自動車仕様は「ジムニーシエラ」の名がつけられる。
日本国内では歴代モデルともショートボディのみだが、インドでは全長4010mmのロングボディのモデル(後述のSJ413型マルチ・ジプシー)がある。
モデルライフ
モデルサイクルが非常に長く、現在に至るまで3回しかフルモデルチェンジしていない。
第1期(1970年~1981年 LJ10~SJ10)
第2期(1981年~1998年 SJ30~JA22)
第3期(1998年~2018年 JB23)
第4期(2018年~現在 JB64~)
と、1~3期はいずれも10年以上のロングライフモデルである。
特に第3期ジムニーは実に20年にわたって生産され続けた国内屈指のロングセール車種であった。もっとも、これはジムニーという車種の特殊性からフルモデルチェンジの必要性が低かったためで、マイナーチェンジを続けるほうが理に適っていたのである。初代デボネアや3代目キューブのように「放置」されていたわけではない。販売から20年近くが経過しても小幅なアップデートは随時続けられており、モデル初期と末期はモデル構成やインパネのデザインや装備などが大きく異なる。
2010年代も後半になると、さすがに安全性能が後付けで何とかなる水準ではなくなったため、2018年2月から横滑り防止装置(ESC)の装着が義務づけられたのをきっかけに、K6AエンジンからR06Aエンジンへの変更に合わせて、20年ぶりのフルモデルチェンジが行われることになった。
発売された全ての形式にコアなファンがついており、特にSJ30などは20万以上という、同年式の他車からするととんでもない高額で取引されている。
ちなみに一番人気がないのは550cc4ストターボのJA71で、ボディが同じSJ30やJA11の部品取りにされた後、あっさり廃車にされてしまうことが多い。(特に、SJ30の5速化改造に必要なトランスミッションを抜かれる場合が多い)なお、SJ30形は現在のところ日本で形式登録認定された最後の2ストロークエンジン搭載4輪車である。
当初のジムニーの開発コンセプトは「どのような悪路も走行できる軽4輪貨物車」であり、オープントップの幌ボディのみ、1972年に箱型ボディが追加された後も、長年4ナンバー(貨物車)で、しかもマニュアル車のみだった。しかし、1984年に5ナンバー(乗用車)版が、1992年に3速AT搭載車が登場。現在国内で新車販売されているジムニーは全て箱型ボディの乗用車モデルであり、4ナンバー(商用)は存在しない。
登録車バージョンは1977年に発売された「ジムニー8」が最初で、「ジムニーシエラ」の名になったのは1993年からになる。
前身
前身は軽オート三輪で一世を風靡したホープ自動車が開発したホープスターON型4WDである。この車両は形式登録に至ったものの、ホープが自動車製造・販売から撤退した為結局18両の製造で終わった。
ホープは自動車部門の整理に当たって、ホープスターON型の権利売却を軽4輪メーカーだったスズキと新三菱重工(現三菱自動車)(←!)と交渉したが、それまでホープにON型4WDのエンジンやパーツを供給していた三菱はジープのライセンス生産をしていたため辞退、一方スズキは当時スズキ東京の社長の鈴木修の強い意向で製造権を買い取った。幹部からは「売れなくて撤退した車の製造権を買ってどうするのか」、「もしこんなものが売れたら社内をちょうちん行列で歩いてやる」などの批判が相次いでいたという。
軽乗用車「フロンテ」で鳴らしたスズキは、オート三輪メーカー設計のホープスターON型4WDに乗用車の快適性を持たせ、ボディデザインも洗練されたものに変更された。こうして1970年、商標名も新たに「ジムニー」として発売。それまでのオフロード車は最小が三菱のジープ(米ウイリス・オーバーランドのライセンス生産版)で、他はトヨタランドクルーザーや日産パトロールという比較的大型の車種しかなく、「最小のクロカン車」の登場は歓迎された。
こぼれ話
宇宙刑事ギャバンでは初代ギャバン(一条寺烈)が保有。変身前の移動に使用していた。また、宇宙刑事から見ても魅力的で便利なクルマだったのか、後任であるシャリバン、シャイダーも保有している。ただし、軽モデル(SJ30)を所有していたのはギャバンのみで、シャリバン、シャイダーのそれは白ナンバーモデル(SJ40)である。一方で二代目ギャバン(十文字撃)はJB23を所有していた。
モノコックボディ全盛の世にあってラダーフレーム構造を貫いており、山道で転んだ程度では走行不能にならない(凹みはするが)強靭さを持つ。ベンツと衝突してもベンツの方がつぶれる軽自動車である。
また、軽規格のジムニーで泣かされるのがタイヤ。175/80R16というほぼ軽ジムニー専用のタイヤサイズを使っている。ジムニー自身が長年このサイズを履き続けてきたため国内タイヤメーカーはほぼ出しているものの、ニッチサイズであるため値引きが渋いことが多い。輸入タイヤはナンカンを除きめぼしいものはほぼ皆無。スタッドレスなどそれを履いたまま車検を通す気がないのだったら15インチの他車の中古ホイール拾ってきて外径の合うタイヤを履いてしまった方が安上がりな場合も。
ちなみに、ホイール穴が軽モデルは6穴、15インチワイドタイヤを履く登録車モデルは(SJ40Tを除き)5穴になっている。これは、SJ20 ジムニー800(SJ10のエンジンを4スト800ccのF8Aとしたモデル)を発売する際、当時の運輸省(現・国土交通省)から形式認可の際、軽ジムニー用のタイヤを安直に登録車ジムニーに付け替えられないようにするという条件をつけられたために採用された。
ジムニーは第2期後半よりAT車もラインアップされているものの、現在も、基本的にMTを主眼に置いて開発されており、第4期に移行した2018年以降でもAT車はカタログ燃費が大きく劣る(2018年現在スズキではFR車用トルクコンバーター式ステップATの開発は行っておらず、サプライヤーから供給を受ける形となっているため)。このため、ジムニーは中古車市場ではAT車の評価が低く、手頃な値段で手に入る。
国外での車名
ジムニーの輸出名として知られる「サムライ」だが、これは北米(カナダ・アメリカ合衆国)用の愛称である。なお「サムライ」は1988年からアメリカ合衆国において「転倒しやすい欠陥車」として槍玉に挙げられ集団訴訟を起こされ(裁判はスズキの全面勝訴)、翌年アメリカ連邦政府が小型SUVの関税を10倍に上げた為、販売中止となった。この為、JB23系列の白ナンバー車(JB33、JB43)は「サムライ」ではないので要注意である。
また、国内でもJB31(形式号はJBだが世代的にはJA11相当の白ナンバー車)以降の白ナンバージムニーに使用されている「シエラ」は、欧州・オーストラリアでの愛称である。日本では「ジムニーシエラ」だが、現地では単に「シエラ」である。
また、インドにおけるスズキ子会社のマルチ・スズキ社が、ノックダウン生産しているマルチ・ジプシーがある。こちらはスズキの本家がJB23シリーズに移行した後もSJ30~JA22系列の設計のまま現在も生産されている。オリジナルには存在しないロングボディ4ドア車が存在する。スズキ設計のマルチ車はインド政府官公庁ご用達なので、ザ・世界仰天ニュースや世界まる見え!テレビ特捜部などで背景に写ったりする。
類似車種
1994年から2017年まで販売されていた三菱自動車のパジェロミニが唯一無二のライバル。悪路走破性はジムニーに一歩譲るが舗装路での乗り心地には優れ、当初はRVブームの中でかなり売れ行きを伸ばしたものの、この性格は乗用車ベースのクロスオーバーSUVと比べても似通ったものになり、後発のテリオスキッドやKei、そしてハスラーなどに押されて撤退を余儀なくされた。同車なき今では、日本国内にジムニーの競合モデルは皆無である(強いて言えば軽トラか)。
そのほか、かつてダイハツが販売していたテリオス/テリオスキッドとそのOEM版のトヨタ・キャミ、そしてホンダ・Zをライバルに含める場合もあるが、これらの悪路走破性はクロスオーバーSUVの枠を出るものではなく、パジェロミニや4WDの軽トラにも劣る。いわんや生粋のクロカン車であるジムニーの前では問題になるレベルではない。
世界的にはかつてジープ・ラングラーがライバルであったが、ラングラーは3代目以降大型化と豪華化が進み、今では競合モデルとしてみなすのは難しいだろう(それでも、インターネットではラングラーとジムニーのオフロード走行性能を比較した動画を現在もよく見かける)。
また近年は、ロシアのアフトヴァースが製造するラーダ・ニーヴァと比較されることもあるが、こちらは車格は類似するものの乗用車ベースでクロスオーバーSUVの先駆け的な車。ニーヴァがヘビーデューティー車と誤解されるのは、元がソ連時代の設計で今やジムニー以上にスパルタンな位置づけのクルマと化しているためである。