概要
異世界(位相,階層)の法則を表層の現実世界に適用することで、様々な超自然的現象を引き起こす技術。この分野の異能を行使する者を「魔術師」と呼ぶ。
その様式は千差万別。後述のように儀式、身振り手振り、『霊装』を介して発動する。
突き詰めると神話や伝承の法則をもとにした何でもありの異能力だが、基本的には上記の定義を満たす行為全般を指す。
本作の魔術は、原石や何らかの宗教的奇跡に対する羨望から開発された分野らしく、
「真の奇跡に人の手で追いつこうとする事」「神話の内容を切り取り、分割し、拡大解釈まで行い自分のものにする行為」「才能の無い人間がそれでも才能ある人間と対等になる為の技術」とも表現される。
作中では「超能力」と対極の存在として扱われる。ちなみに学園都市の能力開発を受けた者(レベル0でも)が使えば凄まじいデメリットが発動する。
類感魔術と感染魔術
魔術は大まかには「類感」と「感染」の2つ。これは学者フレイザー(フレーザーと表記された事も)により提唱された現実にも存在する大雑把な分類。
類感魔術
形の似ている物は相互に影響し合うという理論で、下記の「霊装」の根本法則。
例えば丑の刻参りのように、見立て人形に釘を打ち付けて特定の手順で破壊すると憎い対象にも同様の効果が得られる効果などは日本でも有名か。
本編では名前を変えて「偶像崇拝の理論」「偶像の理論」として最初期から出ていた。しかし本編で正式名が登場したのは新約7巻、意外にもかなり遅い。
番外編SSで説明されている事だが、「霊的蹴たぐりのクロウリー」など高い技能を持つ魔術師は、相手の霊装・術式を見様見真似で即興で再現するなんて芸当も可能。
感染魔術
一度接触したもの、元々一つだったものは相互の繋がりを持つ。例えば標的のパーツを特殊な手順で破損することで、標的を遠隔地から呪い殺すというもの。新約7巻で土御門元春が使用した際に名前が登場した。
類感が「形状の似たなにかを見立てる」のに対し、こちらは「標的の一部あるいは身体的接触があった何か」を媒介にして作用させるという考え方。有名所では自分の体毛をお守りの護符に封入する行為などもこれ。
霊装
類感魔術の原理で構築された魔術を補助する専用道具。ベースとなる逸話を再現をする際に使用される儀礼用のレプリカで、本編やSSで取り上げられた一例だと「神の子が処刑された十字架の模倣品が本物と同じような神性を獲得する」とも。
形と役割さえある程度整っていれば、本物から0.00000数以下でも力を得られる。このように本物から力を得る方式を、「類感」あるいは「偶像(偶像崇拝)の理論」という。
インデックスの「歩く教会」やレッサー達の「鋼の手袋」なども、形が違う何かに本物の霊的意味を持たせた代表例だろう。
大規模な儀式の再現から、あらかじめ魔術的記号を封じて面倒な儀式やコマンドを簡略化する実戦(実践)的な戦闘ツールとして用いられる。
魔道書
魔術の使用方法が記された書物。『原典(オリジン)』とその写本、偽書が存在する。
力ある魔術師によって作成され、常人では『原典』クラスの毒は受け止められないため一般的な魔術師は記述を改変・削除したり、部分的に抽出するなどして毒の純度を落とした写本や偽書を読んで知識を習得する。
しかし一般人、特に宗教観念の薄い人間は目を通しただけで廃人確定。中身を学んでそれを弟子に伝える者を魔導師と呼ぶ。
本編で特に密接に関わってくる「法の書」も魔導書の原典に該当。明かされている物の殆どは現実に存在する、もしくは伝説・伝記に由来する書物である。
インデックスは10万3000冊、新約完結時点で10万3001冊もの書を記録している。
位相
魔術の根本法則がある「重なった異世界」の総称。階層とも。
分かりやすい所では「天国」「地獄」「六道」「四界」「黄泉」「ユグドラシル」「アースガルド」「ニライカナイ」「オリンポス」「冥界」「妖精の島」といった神話や宗教概念の世界観。これらは確かに実体を持って存在し、表層世界に影響を及ぼすことさえある。
土御門曰く、人間の感じ取れない“高周波”や“低周波”の様に現実と重なり合っているが干渉できない力場。
学園都市に内在するAIM拡散力場も科学的な「異界」に該当する。
使用方法
手順としては、まず自分の生命力で『魔力』を精製する所から始める
具体的には呼吸法、食事制限、瞑想、準備運動...つまり血液の流れや内蔵の活動リズムなど、自身の体内を望むまま制御することで生み出す。
体内器官という自分の意思で操れないものを無理にいじると、普段手に入らないエネルギーを精製できるが当然無理に体内をいじるのには危険が伴い、適切な知識なく手を出すとしっぺ返しを食らうリスクがある
魔力が得られたら、自分の血管や神経、霊装に魔力を通し、身振り手振り・呪文の詠唱・文字の筆記・道具の使用などで記号を示すことで魔術は発動する。
地脈・龍脈のような惑星を廻るエネルギーや、天使の力(テレズマ)のような「位相」のエネルギーを魔術に使用する際でも、魔力を使ってこれらのエネルギーを「呼び込む」という手順がある
生命力≒魔力である為、不老不死の存在である吸血鬼などは文字通り無限の魔力を精製できることになるため、存在は懐疑的に扱われている。
主な魔術系統
十字教 | 神の子や天使に由来する術式群 | 主な使用者:神の右席 ミーシャ=クロイツェフ |
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近代西洋魔術 | 黄金夜明が確立した系統、「黄金系」 | 主な使用者:レイヴィニア=バードウェイ |
magickの魔術 | アレイスターが構築した魔術体系 | 主な使用者:アレイスター=クロウリー ローラ=スチュアート |
カバラ | ユダヤ教から派生した術式 | 主な使用者:シェリー=クロムウェル エステル=ローゼンタール |
北欧神話 | 武具を使う術式が多い | 主な使用者:マリアン=スリンゲナイヤー トール |
ケルト神話 | ケルト民族の宗教・伝承体系 | 主な使用者:去鳴 |
アステカ神話 | 生と死に関する術式が多い | 主な使用者:エツァリ ショチトル |
民間伝承系 | 童話やおとぎ話、異教を矮小化した教え等 | 主な使用者:ワシリーサ サンドリヨン |
錬金術 | 知る事が目的の学問 | 主な使用者:アウレオルス=イザード |
陰陽道 | 地脈や龍脈を呼び込み発動する | 主な使用者:土御門元春 |
ルーン魔術 | 24文字のルーン記号を使う術式 | 主な使用者:ステイル=マグヌス |
神道・仏教 | 日本神話、仏教由来の術式 | 主な使用者:神裂火織 闇咲逢魔 |
リスク
魔術は等価交換の原則を騙し、一の出費で十の成果を得るのだが、幾重にも重なった位相に干渉しており、 位相同士の接触・軋轢を誘発してしまう。 こうした軋轢から生じた運命を「火花」といい、人々の運命そのものである
人の出会いや別れ、そして人の生死からコイントスの表裏さえもが、薄く広がった「火花」と重なる位相の影響を受けている。
どのような魔術にもこのリスクは付き纏うが、特にヘルメス学、近代西洋魔術等といった多数の神話伝承を統合した魔術は
多数の位相に干渉するため、「火花」の量やもたらされる影響が大きい。
ある意味、魔術師達は悲劇を覆す為に魔術に手を出し火花を誘発、その影響でより多くの人々の運命を狂わせる悪循環をしている