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楽しませろよ、ベイビー*

CV:斉藤壮馬

概要

グレムリン』の正規メンバーである魔術師

碧眼に中性的な顔立ちの少年。

線の細く色白な肌と腰まである長い金髪が相まって、どこか少女的な印象を与える。

黄色と黒を基調としたぴったりとした上着とズボンを着用し、肩にはストールを纏っている。

純粋な個人としての力で戦争という状況を実現するという破格の実力から、「戦争代理人」の異名を持ち、『グレムリン』の中でも特に直接的な戦闘行為を担当する。

名前や能力の由来はもちろん北欧神話の神、トールから。

人物

トール行動原理は、

より強い「力」を求める

その過程で助けられる人には手を差し伸べる

の二つ。

もはや「人を助けるために力を求めている」のか「力があるから人を助ける気になった」のかは本人も分からなくなってしまっているが、この行動原理に従い、強敵と戦闘を行い、「経験値」を得る事で『成長』し、その過程で助けられる人は助ける……というサイクルを繰り返している。

この性質上、決して悪人ではなく、人を助けることもあるし、全てを流血沙汰で解決しようとするほど狂った感性をしているわけではないのだが(スプラッター映画は苦手だし、お化け屋敷に入りたいとは思わないとのこと)、同時に「経験値」を得るために端から見ると無意味な戦闘を行うケースもある。

「直接戦闘専門を突き詰めた結果、それが戦争という形にまで発展してしまう」 と自他ともに認めるほどの力を持ってしまったのと、自身の「戦争」に周囲の人々を巻き込むのを「後味悪い」と感じる程度の良識は持っていたために、「自分と戦うに値するほどの強敵が中々居ない」「それほどの力を持った敵と全力で戦えば周囲の人間を巻き込んでしまう」というジレンマに陥ってしまい、経験値を得る機会が中々無い事に悩んでいる。

とあるシリーズのキャラの中では、いそうでいなかったバトルマニア

しかしある程度の良識を保っており、科学サイドの方針や技術などにも大した偏見は持っていない。

恋愛感情にもそれなりに関心を抱く描写があり、御坂の上条への接し方を見て他人事のように楽しんでいる。だが、それでも最終的に戦闘や人助けなどを追い求めてしまうためか、あくまで目的のために魔術などを磨いている魔術師や、科学への探求心がいきすぎて倫理観がずれはじめている者と、その被害者などがくすぶっている禁書目録シリーズのなかで少々浮いた存在となっており、上記の悩みに拍車をかけてしまっている。

なお、このトールの性質を作者はあとがきにて

「雷神トールの原動力は、系統としては初期の一方通行に近いはず。あの状態で『一線を踏み外さないまま、順当に成長する』と、あんな風になっていく訳です」

とコメントしている。

能力・術式

雷神

『雷神』の名の通り、両手両足にはめたグローブ(ヤールングレイプル)の指先より灼熱のアーク溶断ブレードを展開する術式。

溶断ブレードは通常2m程まで展開する事ができ、軽く横薙ぎに振るうだけで電柱やコンクリを焼き切るほどの熱と切れ味を持つ。

発火や切断以外にも、一気に噴出した際の空気の膨張を利用して自身の動きを加速させたり、地面に放って落下の勢いを殺す、逆に弱く短く噴出して包み紙に文字を書くなど、単純であるが故に様々な応用が効く。

グローブを投擲の槌と接続して、魔力の供給を受けることも可能。供給を受けると溶断ブレードの火力が増し青白色となり、同時にトールの目や髪の色も青白く変化する。この強化溶断ブレードは最大で2キロまで伸長し、腕の一振りで学園都市の学区一つを破壊し尽くすことすら可能。さらに投擲の槌からの永続的な魔力供給により、「魔女狩りの王」同様幻想殺しでも打ち消せない。

メギンギョルズ

トールが腰に巻いている、ヤギの頭を模したシルバーブローチでピン留めした、黄と紫の2つのベルトの形をした霊装。使用すると「聖人」並の怪力を発揮でき、作中では幹線道路の1ブロックを素手で持ち上げ15mほど真上に投げ飛ばした。

しかし、あくまで力だけであり、聖人のように高速移動には使えない。

変装術式

トールがフレイヤに変装した伝承に基づく、女性限定の変装術式。服装を含む外見や声まで変えられるが、変装であるためその人物の持つ能力は使えない。 なお、トール自身の術式は使えるため、病弱お嬢様が怪力になったりと人物次第では中々シュールなことになると思われる。

作中では御坂美琴に変身して上条に近づいた。

山羊の毛の術式

足元に山羊の毛を撒き、水面の上に直接立てる術式。山羊の毛を用いるのは、トールの戦車を引く山羊の象徴を利用して組み上げたことに由来しているため。

作中では、『グレムリン』に潜入中のオッレルスが偽装の一環で使用した。これを見たオティヌスも特に疑問を抱いていないため、トール自身も使用できる術式と推測される。

身体能力

上条をパンチで数メートル飛ばしたり、ハイキックで意識を刈り取ったりと、魔術だけでなく、素の身体能力・格闘術も高い。

また、脇腹を銃で撃たれて深手を負ったまま『溶断ブレード』を酷使した戦闘を行ったり、列車に轢かれた後すぐに自力で這いでて会話をしたりと、上条さん同様普通の人間とは思えないほど異様に打たれ強い。

このように数々の強力な魔術や戦闘の才を持つが、トールは『』や『魔神』、『世界を救う力』などといった特殊な体質ではなく、あくまでも通常の魔術師である。そのため特別肉体が頑強だったり特別な霊装・魔術の保護などはなく、溶断ブレードの噴出による高速移動なども多用すれば反動で肉体にも強烈な負担が生じてしまう。

しかし、本人はそれに一切頓着しておらず、むしろ、負担やダメージを戦闘ができている証と思っているのか、ただでさえ負荷のある魔術を使用していながら、わざわざハンデまで用意する始末。経験値のためとはいえ無茶しすぎである。

『全能』の力

上記のように強力な実力を誇るが、これは"『雷神』としてのトール神"の力であり、本来のトールの力を最大限に抑え込んだ程度のものでしかない。

今でこそ人の都合によって『雷神』とされているトール神であるが、そもそものトール神とは農耕・製造・気象・季節・天候・災害などあらゆる全てを司った『全能』の神であり、その名を冠するトール自身の本来の力もまた『全能』である

彼もまた「全能としてのトール」の術式を突き詰めており、その力は魔神オティヌスに次ぎ、彼女がいなければグレムリンの頂点となっていたとされており、すなわちグレムリンのNo.2である。

その力の正体は、『相手との戦闘で必ず勝てる位置に自動的に瞬間移動する術式』

厳密にはトール自身が移動しているのではなく、それ以外の世界すべてを移動することで擬似的に瞬間移動を行なっている。

この術式を使ったトールはあらゆる攻撃を自動で回避し、トールからの攻撃は全て思い通りの箇所に確実に命中する。また、相手から見て「トールが消えた時点でトールは既に攻撃を終えている」ため、消えてから防御・回避を行っても攻撃命中後のため既に遅く、消える前から防御・回避を行っても位置調整前のため意味はない。

ようは回避100%、命中100%、クリティカル100%、自動カウンターが付与された無敵状態であり、相手が誰だろうが一方的に攻撃することができる。

さらに「世界に対するテレポート」のため、通常のテレポート対策も一切役に立たない。例えトールが知覚できない場所に隠れたり転移先に罠を張ったりしても、どこに隠れようが自動で懐に潜り込み、罠を自動で避けて攻撃が命中する。

この状態のトールを倒すためには、世界全てを破壊して回避の余地を無くすしかない。

さながらボタンを適当に押すだけで勝てる格ゲー状態であり、この術式を使ってどれだけ戦っても全く戦闘の経験値を得られない。トールが「経験値」に執着する戦闘狂になったのは、この無敵の術式によるところも大きいのかもしれない。

しかし一見無敵に見えるこの術式にも弱点のようなものが存在し、それは対象の相手『のみに』勝てる位置にしか移動できない、つまり相手との戦いに関係ないものには対処が間に合わない点である。

どうやらこの術式は標的を一人(または一つ)にしか設定できないようで、新約10巻ではそこを突かれて上条に敗北している。

さらに『世界の方がトールを必ず勝たせる位置に調整する』術式の関係なのか、トール自身も次はどこに移動するのか把握し切れていない(今まで意識していなかっただけかもしれないが)ようで、実際に作中では轢かれる直前まで自分が列車のレールに誘われている事に気がついていない様子であった。

新約10巻にて、『ここに来るまでに世界は何回滅びた?』と言っていることから、新約9巻で何が起こったかをある程度察している。

作中の行動

初登場は新約5巻。『グレムリン』の象徴オティヌスを魔神として完成させるべく、『主神の槍』の完成に必要となる全体論の超能力者の素体としてフロイライン=クロイトゥーネの確保のために学園都市へと潜入した。

だが、トールは『槍』の完成のためにハワイ諸島やバケージシティで行われた騒乱を見てオティヌス、ひいては『グレムリン』に愛想をつかしており、密かに上条当麻と接触。フロイライン=クロイトゥーネを彼女を幽閉していた学園都市や『グレムリン』、オティヌスの完成を阻止すべく動くオッレルス陣営から助け出すべく独自に行動を開始する。

その後、上条を餌にして美琴を引き込み、フロイライン=クロイトゥーネを狙う『聖人』シルビアと激突。互角の戦いを繰り広げるが、バードウェイが上条に無力化されたため、決着はつかずに終わった。

他の『グレムリン』メンバーやオッレルスが撤退し、第21学区で上条の見送りの元学園都市を去ろうとする時、

「そろそろ本題に入ろうっつってんだよ、上条当麻」

これまでないほどの大きな笑顔を見せ、トールは上条に勝負を挑む。

彼は最初から「戦うに値するほどの強敵」であると同時に、「魔術を打ち消す」能力により全力戦闘を行っても周囲の被害を抑えられるであろう上条当麻に目を付けていたのだ。

最大に展開された溶断ブレードは幻想殺しでも消しきれず上条の右手に負担を与えるが、それは同時に通常受け止められることなどないトールの腕にも負担を与えるものだった。互いに手首が折れるまで全力で腕をぶつけ合い、勝負は互角と思われたが...

「……悪い、上条ちゃん」

「トールってのはさ、たかが雷神ごときで収まる器じゃねえんだわ」

『全能神トール』としての力を解放し、何が起こったのかもわからぬまま上条を一蹴。上条に「後の事は心配すんな」と言い残し、学園都市を去っていった。

その後、実は一端覧祭で自分に化けたオッレルスと入れ替わるように『グレムリン』を抜け、次のステップへ向けて歩き出す。

次の登場は新約10巻。裏切ったオティヌスを粛清するために集った『グレムリン』の正規メンバー達と合流し、一度全員の意見をまとめる代表者を決める体で100人以上もの魔術師達と戦う。

無傷で全員を倒し、上条当麻とオティヌスに再会。オティヌスの無間地獄に数々の強敵達との戦いを経て十分に楽しめる経験値となった上条へ、再戦を挑んだ。

始めから『全能神』としての力を解放し、一方的に上条を殴り続けるトール。しかし拳と言葉の殴り合いをしながらも彼は望んだ経験値は得られないと悟り、自分の心が冷めていくのを感じた。

だが『標的との戦いに関係ないものには対処できない』という術式の欠点を、決して諦めなかった上条に見破られてしまい、レールの上に誘導されて貨物列車に轢かれた事で敗北する。

ギリギリのところで標的の設定を上条から列車に切り替え、正面衝突を避けた(それでも血まみれのボロボロ)トールは満足そうな表情だった。

「今のは良い経験だった。言葉の殴り合いも込みでな」

その後、オティヌスを助けるためにデンマークまで来た上条の目的を聞き、「らしい」と答えた後にトールは告げる。

「最後の敵は俺じゃねえ。考えてみりゃ誰にだって分かる事じゃねえか」

そしてトールの考え通り、今まで傷ついてきた上条を助けるためにオティヌスは自分が救われるのを拒み、『弩』発動の自殺により自らを罰しようとする。そんな彼女の幻想をぶち殺すため、右の拳を突き付けた上条当麻の背中を、トールは見送った。

以降は出番が無いまま『新約』編が完結。

創約』ではマリアンや『投擲の槌』同様、再登場が望まれる。

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