本項では、テレビドラマ版の「MOZU」について記述する。
概要
2012年に制作された『ダブルフェイス』に続く両局の合作ドラマ第2弾である。
監督は『ダブルフェイス』に引き続き羽住英一郎が担当し、スタッフも同作のスタッフが携わっており、『ダブルフェイス』で起用された西島秀俊や香川照之等、同作に起用されていたキャストの何人かが再び起用されている。
原作はハードボイルド作家逢坂剛の『百舌の叫ぶ夜』 『幻の翼』の2作で、TBSが『MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜〜』、WOWOWが『MOZU Season2〜幻の翼〜』として放送された。
あらすじ
Season1
東京・銀座の繁華街で爆弾による爆発事件が起こる。白昼の惨劇に多くの人々が巻き込まれ、警視庁公安部に所属する倉木尚武の妻・倉木千尋(石田ゆり子)が犠牲になり死亡する。
計画的なテロか、誤爆なのか、倉木は妻が死んだ理由を知るべく独自に調査を開始する。
一方、爆発事件の現場に居合わせていた公安部の明星巡査部長は、特別任務である人物を追っていた。その人物はプロの殺し屋、新谷和彦。事件の鍵を握る重要人物として新谷を追う。
そして筧の暗殺とICチップの回収を依頼していた大企業アテナセキュリティの東和夫も、ICチップを手に入れるために新谷を追っていた。
Season2
倉木は妻が精鋭部隊として参加した公安の極秘裏潜入捜査グラークα作戦の真相を一人で追っていた。
なぜ6名の潜入捜査官の中で千尋だけが生還したのか。
拘束されていた空白の72時間の真相を解く手がかりをロシアのスパイ、イワン・タイラーが握っていると知り、タイラーの正体と所在を突き止めるべくロシアのグルジブ共和国に詳しいフリージャーナリストの名波汐里(蒼井優)に接触する。
そして一方では、首の後ろをアイスピック状の凶器で殺害された死体が発見される。
死んだはずの新谷宏美と同じ手口を不審に思う倉木と大杉、そして明星は爆破されたエネルギー施設の防犯カメラに新谷と同じ顔の男が映っているのを確認する。それは宏美の一卵性双生児の兄で、銀座爆弾事件後に口封じのため、東の部下に断崖絶壁から海に突き落とされ死亡とされていた新谷和彦だった。
その裏では空港爆弾テロ事件の真相を知った池沢公安部長(佐野史郎)が、新たな陰謀を推進していた。
劇場版
公安部エースの倉木は妻の死の真相に辿り着き気力を失い、捜査一課の大杉も警察への不信感を強め退官し探偵事務所を開いていた。
倉木が妻の死の真相に辿り着いてから半年が経ったある日、とあるテロ集団による高層ビル大規模強盗・脅迫事件とペナム大使館襲撃事件が同時に発生し、倉木と大杉はかつてともに捜査をしていた明星とともに事件に巻き込まれ、この事件を捜査していくことになる。
捜査を進めるうちに、この事件には「ダルマ」が大きく関わっていることが分かり、ペナム共和国を舞台に「ダルマ」の正体を追っていく。
登場人物・キャスト
ドラマ版キャスト
演 - 西島秀俊
警視庁公安部特務第一課捜査官。階級は警部。1975年7月20日生まれ。
警察庁警備局警備企画課のゼロ出身で、「公安のエース」と呼ばれている。
ドラマ版では、爆弾テロによって妻の千尋を失い、彼女の死の真相を求めて捜査を行っていく。
常に冷静な性格であるが、千尋の死に執着するあまり捜査のためには強引な手法も辞さない一面を持つ。
劇場版では、大規模同時多発テロをきっかけに、娘の雫の死の真相を追っていく。
演 - 香川照之
警視庁刑事部捜査一課捜査官。階級は警部補。
現場からの叩き上げで、直情径行型の熱血漢。
倉木には及ばないものの、高い格闘能力を持つ。
刑事部を無視して捜査を行う倉木たちを苦々しく思っていたが、爆弾テロの真相を迫っていくうちに仲間意識が芽生えていく。
明星美希
演 - 真木よう子
Season2では公安部外事第四課作業班の捜査官。階級は巡査部長。
大杉とは対照的にクールで女性ながらも高い格闘能力の持ち主。
爆弾テロが発生した際に現場付近におり、のちに津城俊輔(小日向文世)の指示で倉木や大杉に情報を流す。
父(=明星洋人)も元公安捜査官で高校生時代に行方不明になり、現在も所在が分からない。
新谷和彦
演 - 池松壮亮
宏美の一卵性双生児の兄。
アテナセキュリティから殺人の依頼を請負っていた。
過去のある出来事による深いトラウマを抱えており、宏美のために陰となり日向となって生き続けてきた。
能登半島の崖から突き落とされて死亡したと思われていたが、グルジブ共和国のテロリストグループ「アジ・アルハド」の一員になり、宏美の死の真相を知るために武装工作員として日本へ上陸。
宏美を「空港爆破テロ」の犯人に仕立て上げ、死の要因となった者達に対して復讐を果たした後、行方を晦ます。Season2から本格的に登場し、宏美同様にアイスピックを武器として使用する。
演 - 池松壮亮
幼少時より強い殺人衝動を抱えており、それが昂ぶった時は自分の手を噛んで抑える。
常人離れした身体能力を持ち、主に「アイスピックや千枚通しなどの有尖無刃器を用いて、運動神経の束が通っている頸椎を刺して殺す」という方法で殺人を行う。
演 - 長谷川博己
アテナセキュリティシニアアドバイザーにして、犯罪エージェント。
東京中央大学卒業。元公安部捜査官。1975年8月20日生まれ。
殺人などの犯罪を請け負い実行する裏の顔を持つ。
常に冷静な性格だが、Season1終盤ではより狂気に満ちた本性が前面に押し出され、人を喰ったような言動が目立つ。Season2以降では、本性を露わにしながら、数々の陰謀に暗躍するが、目的は不明。
その本性から、倉木や和彦には「イカれている」と評されるが、本人はそれを「最高の褒め言葉」として受け取っている。
華奢な体躯ながら襲いかかってきた宏美を一瞬で返り討ちにし、明星を不意打ちするほどの実力の持ち主。また、射撃能力と運転テクニックにも長けている。
ある目的の達成の為に、倉木を事ある毎に自身と同じ道に誘おうとする。
演 - 吉田鋼太郎
1959年2月29日生まれ。
アテナセキュリティマーシャルアーツアドバイザー兼殺人実働部隊長。
頭脳明晰な武闘派で、ハイテンションかつ狂気に満ちた言動が特徴。
倉木と互角に張り合えるほど格闘術に優れ、アーケード街の屋上からコンクリートの地面に落ちても無傷でいるほどの強靭な身体能力の持ち主。
戦闘の際にはよく奇声を発する癖があり、ナイフを使うことが多い。
中島葵美(有村架純)に重傷を負わせ病院に入院していた所を再び襲撃して拉致し、凄惨な拷問を与え殺害する。その後、記憶を取り戻した新谷宏美と激しい死闘を繰り広げるが、頸椎をメスで刺され、窓ガラスに頭部を打ちつけられて殺害される。
倉木たちが到着したときには百舌の早贄のように串刺しにされた遺体で発見される。
劇場版キャスト
吉田 駒夫(よしだ こまお)/ダルマ
演 - ビートたけし
「日本事件史の闇」とも言われており、事件の裏でとある犯罪計画を企てている。その正体は終戦後から現代日本社会、及び経済界を支配しているフィクサー。
「グラークα作戦」にも何らかの形で関わっていたらしく公安にも存在を認知されているが、公安を初めとする主要な組織にスパイを配置しているため、倉木達にも実態は知られていない。
高柳と共に倉木の娘を殺害し、その様子を倉木に嬉々として語るなどサディスティックかつ残虐な一面を持つ一方で、高柳や部下からは「先生」と呼ばれ崇拝されている。
権藤 剛(ごんどう ごう)
演 - 松坂桃李
青髪でオッドアイが特徴の、レザージャケットを着用した青年。
残虐非道な暗殺専門の殺し屋で、テロ集団においては犯罪実行部隊を率いるリーダー的な存在。
新谷宏美を崇拝しており、彼同様にアイスピックを凶器として使う。
高柳 隆市(たかやなぎ りゅういち)
演 - 伊勢谷友介
冷静沈着に犯罪計画を立案する犯罪プランナー。
テロ集団においてはブレーン的な存在で、大規模同時多発テロ事件の実行者。
ナイフを投擲武器として、巧みに使用しているほか、倉木を圧倒する格闘術から、頭脳面だけでなく戦闘面にも秀でている。倉木の娘の死に大きく関わっている。
用語
共通用語
百舌
千枚通しやアイスピックなどの有尖無刃器を用いて殺人を行う殺し屋。
原作では、新谷宏美および新谷和彦を指すが
ドラマでは新谷兄弟の間でのみの通り名であり、それ以外の人物に呼ばれることはない。
公安省
森原(瑳川哲朗)が構想している治安組織。
警察庁と都道府県の警察本部を統合させ、公安を中心に組織される新しい治安組織とされている。
盗聴・隠蔽・裏工作等の手段を合法的に使い、森原が絶対的な国家権力を掌握するために構想された組織だが、権力が集中し、国の秩序が乱れる危険性を孕んでいるため、倉木や津城たちはこの陰謀を阻止するべく、奔走することとなる。
season1に関する用語
アテナセキュリティ
日本最大手のセキュリティ会社。
裏では東や中神をはじめとする一部の役員や従業員らが暗殺や裏工作などの依頼を請け負っている。
サルドニア共和国
中東に位置するとされる架空の国家。
大統領暗殺を狙う左翼ゲリラによるテロ攻撃や暗殺が幾度も行われており、治安はきわめて悪い。
室井玄(生瀬勝久)はサルドニア共和国の大統領を暗殺しようと、今回の暗躍を企てる。
season2に関する用語
グラークα作戦 :リンクに詳細を記載。
国民監視システム
1980年代後半に、公安警察が秘密裏に開発したあらゆるサーバー上にある情報を傍受するネットワークシステム。
ロシアによって国民監視システムの暗号が盗み出されシステムは乗っ取られたが、グラークα作戦当時には国民監視システムは機能していなかった。
グルジブ共和国
ロシアから独立したとされる架空の国家。
ロシアと対立しており、独立国の体制を取ってはいるが、テロリストによる紛争が続いており、治安はきわめて悪い。
アジ・アルハド
グルジブ共和国のテロリストグループ。
創始者はイワン・タイラー。
グルジブ民族主義を唱えたタイラーが過激なテロを行ったことから始まり、現在ではグルジブ共和国で2番目に大きい独立派武装勢力で、国外にも頻繁にテロ攻撃を行っている。
season2で、新谷和彦が在籍していたテログループである。
イワン・タイラー
ロシア連邦保安庁・FSBのスパイ。
グルジブ人で、グラークα作戦に失敗して捕虜になった倉木千尋ら公安警察官を拘束していた人物。
グルジブ共和国の人々のあいだでは、「その名を口にすれば殺される」と極端に恐れられている。
正体
日露戦争時に大日本帝国軍の暗号解読を担当した諜報員であり、すでに故人である。
しかし、KGBやFSBの二重スパイにその名前がコードネームとして与えられており、幾多もの諜報員にその名が付けられていた。
現在のタイラーである明星洋人は4代目。
孤狼島
北海道の最北端にある架空の無人島。
本編開始時点から25年前、大地震が起きると発表され、日本政府主導で島民は本土に移住させられたため、無人島となった。
実は、漂着したロシアの潜水艦を国民から隠すために住民を追い出した。
関連
リンク
mozu(TBSサイト)