正式名称「Zoning and Emotional Range Omitted System」(直訳すると「領域化及び情動域欠落化装置」)で、それを略したものが「Z.E.R.O.System」である。
ゼロシステムとは
超高度な情報分析と状況予測を行い、毎秒毎瞬無数に計測される予測結果をコクピットの搭乗者の脳に直接伝達する戦術、戦略インターフェースである。
端的に言えば未来を見せる事が可能のシステム。
近い未来から先の未来、更にはパイロットが搭乗していない状況で起動し、別の場所にいるパイロットに先の未来を見せるなどもしている。
また、コクピットの高性能フィードバック機器がパイロットの脳をスキャンし、神経伝達物質分泌量を制御や、通常の人間では決して耐え切れない急加速や急旋回などで起こる衝撃を緩和、または欺瞞させ、通常不可能とされる制御行動が可能になる。
ウイングガンダムゼロはその基本スペックすらもこれまでのモビルスーツとは次元の違う性能であり人間には決して扱えない程の負荷を与えるものであったが、このシステムにより更にその戦闘力を増強と同時に、人間には決して扱えないものを更に冗長させてしまう。
このシステムは基本として「相手を倒す、勝利を得る」事を目的としたもので、目的達成のためならば人道や倫理などお構いなしで、他人や仲間の犠牲、更には自分の自爆ですら躊躇せずひとつの可能性として提示する。
大規模な戦場における戦術や又は戦略全てを把握することも可能な程の情報量は、精神力の弱い者には、時に現実なのかシステムの予測なのかわからなくなるほどのものとなり、パイロットの精神的負荷は計り知れない。
そのため、ゼロシステムに精神が負けてしまうとシステムが提示した行動のまま暴走を始めるか、耐え切れずに精神を破壊され、最悪死に至る可能性まである危険な代物。
5博士がウイングゼロを封印したのはウイングゼロの圧倒的高性能もさることながら、ゼロシステムのこの挙動を欠陥であると判断して世に出すことをよしとしなかったからである。
ゼロシステムと同種のシステムはガンダムエピオンにも搭載されており、機能面だけで言えば同じものだが、こちらはトレーズが独力でゼロシステムを再現した代物でもある。
ちなみにエピオンとウイングゼロが対峙した際、ウイングゼロのシステムとエピオンのシステムが相手を凌駕しようと働き、最終的にオーバーフローを起こして停止した(ときた版ではゼロが「戦闘は無意味」と判断した)。ただし最終決戦時にはウイングゼロにヒイロが、エピオンにゼクスが乗っていたためオーバーフローしなかった。
また、宇宙戦艦リーブラのゼロシステム用の特設ルームや限定的だがガンダムサンドロック改など、システムを運用した事例は多い。
システムに触れた人間
劇中ではウイングガンダムゼロを完成させたカトル・ラバーバ・ウィナーをはじめ、ガンダムパイロットの五人は全員何らかの形でゼロシステムを体験している。
この内、システムを制御できなかったのはデュオ・マックスウェルだけだったりする。(呑まれかけた時に『ちくしょう! 自爆装置は、どこだ!?』と爆破しようとした。)
トロワ・バートンは少し違うかもしれないが、一応システムの命令を跳ね除けた。(ゼロシステムによって記憶を取り戻した)
カトルは最初は悲しみを増幅されて暴走してしまったが、ガンダムサンドロック改にゼロシステムの一部をヒイロ・ユイによって搭載された時は、なんとかシステムを使いこなしていた。
そして張五飛はただ一人、初体験の時点でシステムにほとんど惑わされずシステムの命令を跳ね除けて自身の道を見る事が出来た。これは五飛が、他の悩み続けたガンダムパイロット達と違い確固たる意思と精神力があったためと思われる。
トレーズ・クシュリナーダも使ったらしいが彼に至っては確固たる信念に加え明確な未来を見据えていたのでシステムは最初から何も見せなかったそうだ。
他にはゼクス・マーキスと、OZのトラント・クラーク特尉も体験している(トラントはシステムに耐え切れず死亡)。
ドロシー・カタロニアはモビルスーツではなく、モビルドール統率の制御装置としてではあるが使用し、かつ使いこなしていた。
(モビルドール統率は遠隔操作のため使用者の死の確率が低く、その分負担も少ないと思われる)
完璧に使いこなして使い続けたのはヒイロとゼクスの二名だけであり、期間で言えばマリーメイア軍の反乱時点でもウイングガンダムゼロに乗っていたヒイロが最も長い。
また、スーパーロボット大戦DDではゼロが搭乗するウイングガンダムゼロリベリオンは
「ゼロシステムの提示する戦術プランよりも優れた案をパイロットが提示する」
事によりゼロシステムを制御し、操縦補助としてのみ活用している。
バリエーション
「新機動戦記ガンダムW ~ティエルの衝動~」で、ウイングガンダムセラフィムとガンダムルシフェルにもゼロシステムが搭載されている。
セラフィムのゼロシステムは「Ver.2.5」で、一般兵士にも扱える程度に改良れている。
ルシフェルのゼロシステムは「Ver.2.0」で、パイロットの目的に応じた解答をそのまま強制的に精神にぶつけるため、完全に危険な欠陥プログラムとなっていた。
「Frozen teardrop」ではAC145年時の初期型が登場。この頃はまだ脳に干渉するなどの機能はなく、戦闘機用の自動操縦システムのようなものだった。これをH教授がMSに最適化したものが、現在のゼロシステムの原形とされている。極めて高い学習能力のあるAIだったようで、作中も飼い猫を模倣している。もしかすると、トールギスではパイロットが機体に追いつけない、ならばパイロットを強化して機体に対応させようと考えたのかもしれない…
因みに
第2次スーパーロボット大戦Z再世篇ではゼロシステムがイオリア・シュヘンベルグの計画のひとつとして組み込まれている。
本来はツインドライヴ搭載型のガンダムに組み込む事によって覚醒したイノベイターがゼロシステムの負荷に打ち勝つことが前提だった様だ。
計画の途中経過でコロニーが、ソレスタルビーイングの介入対象となるのを恐れたドクターJを始めとする5博士たちに依って持ちだされた、という設定が加えられている。
結果として『2つのゼロ』が共に戦う事になり、イオリア・シュヘンベルグの計画は遂行されたと言えるだろう。
なお、同ゲームでビリー・カタギリが研究のためにこのシステムを使用した際に「クジョウに最初から利用されていた」というビジョンをシステムに叩き付けられて辛うじて理性で押しとどめていた精神の均衡が崩壊してしまい、傍から壊れたのではないかと心配され、親友のグラハム・エーカー(当時はミスター・ブシドー)をして「彼も修羅道に・・・いや、魔道に墜ちたのか・・・。」と驚愕されるほど。
それ以降彼は目的のためならばいかなる非道な真似も平然とやってのけるような狂科学者に変貌してしまった。
逆に第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇ではシャアがゼロシステムを体験した事で、世界の特異点として生きる事を覚悟。自身の影とも言えるフロンタルを看破できる程に迷いを振り切っている。
また、システムを搭載した機体同士が交戦するとシステム同士が干渉しあい緊急停止する事もあった。
原作ではあり得なかったゼロシステムを以てしても勝利の可能性が見出だせないという事態も何度か描かれている。
64では敗北の未来しか見せないためにヒイロはシステムの干渉を跳ね除けて戦わざるを得なくなり、Wではガウルンと対峙した際に不確定要素を除けば確実に全滅するという未来を見せ、スクランブルコマンダー2ではユキムラ相手に勝利の可能性が全く無いために完全に沈黙するという事態が起きている。
各種アンソロなどでは危険な側面はどこへやら、麻雀やら占いやらカーナビやらに活用(?)されている。スパロボでもとある迷子を探すためにゼロシステムが引っ張り出されたことがある。
関連タグ
ヒイロ・ユイ カトル・ラバーバ・ウィナー ゼクス・マーキス ミリアルド・ピースクラフト
ペイルライダー(ガンダム)…世界観こそ異なるものの、ゼロシステムと性質が酷似したインターフェース「HADES」を搭載している。
フォント・ボー…こちらも世界観は異なるが、未来の予測を自身の思考のみで再現できる能力を有している。当然ながらゼロシステムのようにパイロットの能力の強化や遥か先の未来を見るなどは不可能。