演:伊東四朗、CV:大平透(1989年版)、玄田哲章(NEW)
『この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかりそんな皆さんのココロのスキマをお埋め致します~。いえいえ、お金は1銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。さて、本日のお客様は・・・』
概要
『笑ゥせぇるすまん』の主人公。だが、ゲストである「お客様」が物語の中心となって動いているため、役回りは狂言回しや語り部に近い。
タイトルが指し示す通り、常に笑顔を浮かべているセールスマン。しかしその表情は、タレ目+ジト目に歯を露出させた笑いとなっており、全身黒づくめという服装も相成って、胡散臭さやある種の不気味さを醸し出している。
台詞は常に敬語口調で、「ホーッホッホッホ」という独特な笑い声で笑う。基本的にその姿勢は紳士的で親切だが、ちょっとふてぶてしい。
無邪気だがちょっと悪戯好きなところのある性格で、たまに見ず知らずの他人(たいていは後で客になる)に悪戯をしかける時がある。
人物像・能力
- 困っている人を見かけると、『ココロのスキマ、お埋めします』と書かれた名刺と共に自己紹介をし、その人の悩みを解決する策を(時には条件を提示した上で)与える。
- 喪黒の与える策はいずれも魅力的な内容であり、時には魔法や空想科学を思わせる不思議な手法も登場する為、たいていの客は欲望を刺激されて約束を破ってしまう。約束が無い場合も喪黒が与えた策にのめり込んでしまうことがほとんどである。
- 喪黒との約束を破る、欲に溺れ過剰なサービスを要求する、精神的に追い詰められる、喪黒を騙すなどの行為をした客にはペナルティや更なる解決策を与える。その際「ドーン!!!!」という掛け声と共に相手に指さしをするのがお約束であり、この作品の代名詞ともなっている。
- ドーンを受けた客は昏倒する不可思議な描写が降りかかり、ほとんどの場合バッドエンドへ直行する。
- ただしドーンによってハッピーエンドを迎えた場合もあるため、必ずしも死刑宣告のように用いられている訳ではない。(護身術として使った場面もある)
- 客の迎えるバッドエンドは家庭崩壊などの破滅や死亡といったとてつもなく重いものから、解決策を剥奪され元の木阿弥となる、単に叱られるだけなど比較的損害が軽く済む場合まで多岐にわたる。一見すると悲惨な結末だが客にとっては良い方向で決着した、所謂「メリーバッドエンド」も少なくない。
- あくまで契約者が約束を破ってしまったゆえの、自業自得的な結末が多いが、中にはまったく理不尽に親切と後のペナルティを押し売りしたことも何度となくある。
- 逆にドーンを受けずとも、抑えきれない欲望を満たそうと行動した結果、破滅に至ったケースもあり、結局のところ欲張りは後で懲らしめられる運命にあるようだ。
- 与えた解決策を客以外の第三者による悪意ある行動で台無しにされた場合は、解決策を復活させると同時に、その第三者に制裁を加えたり(『カンヅメのペット』)、客自身に救済策を施す(『月夜のオーキッド』)などのフォローを行うが、あくまで喪黒流のフォローなので、客観的に見るとフォローとは言い難いものとなっている。(前者は制裁には成功したものの、結局は客自身も破滅する事を匂わせる終わり方をしており、後者については救済策の結果として客が涙を流しながら歓声を上げるという、喜びとも悲しみとも取れない様相となった)
- 本人は、あくまで親切のつもり、困っている人を見ると放っておけないと言っているが、正確には「悪意のない悪戯が大好き」というのが本当のところらしい。実際「お金は一銭もいただきません」の台詞通り客から金を徴集したことはほぼなく、金を取った場合も最終的に寄付している。
その他の特徴
- 小田急線沿線に在住しており、バー『魔の巣』によく訪れる。
- 「お客様」を『魔の巣』に誘い、酒を酌み交わして悩みを聞いてあげたり、また冒頭の台詞で勧誘したりする事もある。
- 弟がおり、名前は「喪黒福次郎」。こちらは代償なく困った人を救済する一般的な善人で、この福次郎を主人公に据えたスピンオフ作品、「喪黒福次郎の仕事」という短編集がある。
- 『笑ゥせぇるすまん』として連載する前の短編『黒ィせぇるすまん』では「友愛事業団 外務主任」と書かれた名刺を用いており、指さしも掛け声のないただの指さしであった。
モデル、モチーフなど
作者の藤子A氏曰く、容姿やふてぶてしさのモデルは大橋巨泉氏だという。だが、巨泉氏本人は、「トリビアの泉」でインタビューされるまで「知らなかった」とのこと。アニメでは大平透氏が喪黒を演じていくうちに、喪黒=大平で定着して似てきてしまったともいわれている。
正体は不明だが、作者によると『人間ではない存在』とだけ決めてあるという。モチーフとしては、人を誘惑する悪魔・メフィストフェレスのような存在であるという。
一方で警告者の側面もある事からその面をクローズアップした役割で違法行為防止キャンペーンのキャラクターとして採用された事もあった。
共通点を持つキャラクター
『魔法少女まどか☆マギカ』より。同じく、客の願いを叶える営業マン的存在として、よく比較の対象にされるが、喪黒の場合は忠告を守れば、問題はなく、契約違反のペナルティによって結果的に客が破滅する事が多いのに対し、こちらは客を破滅させる事自体が目的という違いがあり、願いを叶えるのも破滅させるための手段でしかないので、願いを叶えてもらったが最後、ほぼ確実に破滅してしまう。客の破滅が前提という点において、時には本当に人を救う喪黒よりタチが悪いといえる。
『週刊ストーリーランド』より。不思議な効果を持つ商品を販売する正体不明の老婆。無表情で、ほとんどテンプレ通りの台詞しか喋らない様は、ある意味、喪黒以上に不気味。喪黒と違い、商品は有料であるが、使い道について口出しする事はなく、客が商品の力で幸せになろうが、不幸になろうが、どちらでも構わないというような姿勢である。商品は基本的に有益な効果のものばかりだが、中にはデメリットしかないものや期待通りの効果を発揮しないものもあるため、必ずしも客の願いを叶えるわけではないものの、便利な商品で欲望を刺激する点は共通しており、原則として善人はハッピーエンドを迎え、悪人や欲張りはバッドエンド(もしくは、客観的に見るとバッドエンドだが、少なくとも本人にとってはハッピーエンド)を迎える点も同じ。
『魔法少女サイト』より。謎のWebサイト「魔法少女サイト」を運営する謎の存在。おかめやひょっとこ等の不気味な風貌をした18人のサイト管理人がいじめや虐待などの不幸に見舞われる少女達にステッキを与え、魔法少女にするという様はある意味キュゥべえと似ているが、ステッキを使うごとによって寿命が減る上に能力や使い方次第で自身や周囲が破滅する事になってしまう。しかし、「ステッキを回収する」目的の下、管理人自らが魔法少女の暗殺に出向く等、その正体や目的自体が一切謎に包まれている。
『ショコラの魔法』より。チョコレートの悪魔「カカオ・テオブロマ」と契約し、黒き魔女となったショコラティエの少女。彼女が作る魔法のチョコレートは食べるとどんな願いも叶えてくれるが、客の1番大切なものが代償となる。客が誠実に対応したり、何かをやらかしても反省すれば、「本人の弱い心」や「喪っても努力すれば補いが効くもの」といった「無い方が良いか、無くても問題ないもの」が代償となるが、悪事が動機だった場合や増長した態度を取った場合などは「その後の人生」や「命」等の「冗談抜きで取り返しの効かないもの」を取り立て、黒き闇へ突き落とす。原則として善人は白き光に捧げられてハッピーエンドを迎えるが、悪人は黒き闇へ落とされバッドエンドを迎える点も同じ。
『人間回収車』より。必要とされない人間を回収する「人間回収車」の業者の一人。
喪黒同様、普段から常に笑みを浮かべ、どんな相手にも礼儀正しく敬語を使うが、時々目を見開き不気味な笑みを見せることがある。
上記の特徴や黒づくめの出で立ち、そして人間回収車に回収された者達の行く末を見届けるその様は正に喪黒そのものだが、時に回収品が善人だった場合、優しい言葉で諭すこともあるが、「虫唾が走る」と発言するなど、複雑な心情を見せることも少なくない。
アリス
『ブラックアリス』より。不思議の国で作った様々なアイテムを人間界の住人(特に少女)に提供する。
アリスはアイテムを手にした者たちが増長して、破滅していく結末を楽しみとしているが、自分以外の者を優先した場合、助けてあげることにしている。
『魔石商ラピス・ラズリ』より。人間の心の中にある『心の宝石箱(ジュエルパクト)』の中に入れられている『心の宝石(ハートジュエル)』と引き換えに、持ち主の願いを一つだけ叶える能力または道具を創り出す魔力を込めた宝石『ラピス・ラズリ』を渡している。
だが、真の目的は夢を叶えた者を絶望にたたき落とし、自分のコレクションとなった心の宝石をより輝かせることにある。キュゥべえと同じく客の破滅が前提であり喪黒よりもタチが悪い点は同じだが、こちらは最終回にてこれまでの客を全員助ける手引きをしている。
『ウルトラシリーズ』より。心に闇を抱えた者達の前に現れては、その人物の願いを叶えてやろうと何らかの選択を持ち掛けてくる悪のウルトラマン。だが、その実態はというと選択肢はどちらを選んでも当人が不幸になる道しかなく、選択の結果悲劇に見舞われた者を嘲笑うという、キュゥべえらと同じく客の破滅が前提であり喪黒よりも邪悪な存在である。
その動機も建前上は「自分が面白いから」、実態は「破滅した被害者を自分に当てはめ、それを嘲笑うことで自己嫌悪から悦に浸る」という傍迷惑極まりないものであった。
ただしその一方で、トレギア本人が手をかけたり破滅に追いやったりしてきた対象は、いずれも怪獣や、悪人や哀しい過去を背負った闇堕ちの兆候のある者、あるいはトレギア自身が利用価値を見出した者がほとんどであり、意外にも無関係の善良な人物に直接手を出したことは一度もない。
『それいけ!アンパンマン』より。善良なキャラクターだけでなく、悪役のばいきんまんやドキンちゃんまで無差別に夢も希望もない、どこにでも入口のある闇の世界に陥れる。基本的に闇の世界から脱出するのは不可能。はじめに接する際には穏やかで丁寧な言葉遣い、高笑いするところが、喪黒福蔵にそっくりである。歯の特徴も似ている。また、2代目声優が、どちらも玄田哲章である。
マグロン
『コロッケ!』より。影と一体化する能力を持つバンカー。どちらかと言うと容姿や名前の響き、笑い方、口調が喪黒と酷似している。所謂カップやきそば現象である。
『アウターゾーン』より。アウターゾーンに関連した様々なアイテムを提供。
使用者が悪人の場合、ロクでもない結末を迎え、善人の場合、ハッピーエンドを迎えるという王道パターン。
ザビエール
『Y氏の隣人』より。「幸福の伝道師」を自称し、悩める人間に「不思議な道具」を与えるなどして世話を焼き幸せに導こうとするが、大半の人間が欲望を抑えられず破滅する。
自らの警告を無視する等利己的な行動を取った人間が破滅した場合は冷めた反応を返したり嘲笑したりするが、悪人とは言えない者が不幸に見舞われた場合は少なからずショックを受けた様子も見せており、基本的には善意で行動している事が窺える。