ヒュッケバイン問題
ひゅっけばいんもんだい
前提知識
勘違いされがちだが、当時ガンダムシリーズの版権を持っていたのはバンダイ(現バンダイナムコ)ではなく、株式会社サンライズと創通であった点に注意(そもそもバンダイがガンダムシリーズに正規参入したのは『機動戦士ガンダム』の放送終了後である)。
その後、サンライズは1994年4月、創通は2020年3月にバンナムに買収された。
概要
ヒュッケバインのデザインは機動戦士ガンダムシリーズの主役機ガンダムタイプの特徴を多く含んでおり、第4次参戦時はカラーカスタムでトリコロールカラー(白を基調に胸が青、細部が赤)も選択できた。メカニックデザインも数多くのガンダムシリーズを手掛けたカトキハジメによるものである(ただし初代「ガンダム」のデザイナーは大河原邦男)。
「スーパーロボット大戦」というガンダムを含む多数のロボットアニメが参戦するゲームのオリジナルロボットという立ち位置でキャラクターが作成されたため、当時より故意犯的なデザインであり、パロディ的な意味であえて既存の作品に似せていると思わせる所もあったのだが、元がお祭りゲームの主人公機ゆえ「ガンダムの版権元からも大目に見られているのだろう」という空気がファンサイドでは形成されていたため、当時は特に大きな問題にはならなかった。
その後、αシリーズで後継機種が登場、版権作品の登場しないOGシリーズでも参戦し、独自の人気を確立していく。
しかし、2006年のスーパーロボット大戦OGアニメ化発表時、ネット上には「ガンダムに似ているせいでアニメにヒュッケバインは登場しない」という情報が流れるようになる。実際にテレビアニメ版「ディバイン・ウォーズ」では原作のロボットのうちヒュッケバインだけは胴体や腕、脚部は映っても顔は映さないという処置が施された。
ヒュッケバインはゲーム中の設定で、開発経緯から「バニシング・トルーパー」と揶揄され不吉な機体とされていたのだが、実際の問題として版権という厄介な問題を抱えることになり、2006年に公式広告やPVから一気に差し替えられるように消されたため「リアルバニシング・トルーパー」とも皮肉られた。
スーパーロボット大戦OGs発売前に公式ブログで、大きな声では言えないもののファンを安心させるための措置として、文中に「ひゆつけハ出ます」と読み取れる縦読みを混ぜるなど、この問題に関する伝説は多い。
立体物
当然ながら模型・フィギュア等の立体物にも影響は及んでおり、ヒュッケバインの商品展開がほぼ存在しなかった空白期間が存在する。時期的には、DW前後の封印からスパロボVでの復活までのおよそ十年間。この期間、デザイン上で配慮された派生機や量産型を除けば、正式な「ヒュッケバイン」はプラモデル・完成品ともに長らく「封印」状態にあった。
かつてスパロボOG関連機体のプラモデルを多数、製作・発売していたコトブキヤも、公式サイトや関連書籍からもヒュッケバインに関する情報・資料は完全に抹消されている。ガンプラとの競合を考えれば到底、容認はされなかったのだろう。
その後
2010年10月に放映開始されたアニメ版の続編「ジ・インスペクター」では量産型ヒュッケバインMk-Ⅱの代わりに「量産型ビルトシュバイン」が登場。また既存の機体もヒュッケバインにSRX風のゴーグルマスクをつけて偽装した「エクスバイン」、Mk-Ⅲをガーリオンのパーツで偽装した「ガーバインMk-Ⅲトロンベ」と言った新規機体を登場させることで誤魔化すなどしており、設定上の凶鳥の系譜は脈々と受け継がれている事が示された。また、メキボスが月を襲撃した際には「ヒュッケバイン」の名前が登場しており、名前自体の使用には問題がないであろう事が判明。
2012年11月発売の『第2次スーパーロボット大戦OG』では衝撃の展開が発生。なんと、アーマラ・バートンとガリルナガンの手によって、ヒュッケバイン系列機が全機オーバーホール中であった所を襲撃・破壊されてしまう(→該当場面の動画)。これ以降、ゲーム本編でもガンダム顔のヒュッケバインは断絶する事になる。
しかし、同作品では失われたヒュッケバインの魂を継ぐ新型機が作られるという展開がなされ、エクスバイン・アッシュ、そしてエグゼクスバインという形で凶鳥の系譜は受け継がれることになった。
一方、その裏で「それまでの愛機であったヒュッケバインMk-Ⅲを失ったリョウト・ヒカワ」と「合体する相手が居ないAMガンナーに乗るリオ・メイロン」(と二人のファン)は地獄を見る事になった。
なお、DS版『魔装機神LOE』で顔デザインが変更されたデュラクシールや、「ツインアイ・V字アンテナという記号性」を持たない量産型Mk-Ⅱといった関連機・派生機については特に問題なく続投している。
2016年6月発売の『スーパーロボット大戦OGムーン・デュエラーズ』では前述のエクスバイン二体がゲームでも登場。
タイプR・タイプLそれぞれにAMボクサー・AMガンナーが用意されているほか、APT-LINKシステムによって念動力者でなくてもGソード・ダイバーが扱えるようになっているが、ノーマル状態のエクスバインへの分離換装は出来ない。
2017年2月発売のスーパーロボット大戦Vでは「ニコラ・ヴィルヘルム研究所の開発したパーソナルトルーパー」という設定でグルンガストと共に再登場。初回購入特典で機体の早期使用が可能となるプロダクトコードが封入され発表時には大きな話題となった。上述の問題に関して水面下でどのような交渉・契約があったのかは不明だが、「OGでは認められないが、ガンダムが参戦する版権スパロボでは特別に許可が下りたのだろう」というのがスパロボファンの間では大方の見解となっている。
2020年2月、八房龍之助による漫画版『スーパーロボット大戦OG -ジ・インスペクター- Record of ATX』の連載にて、リン・マオの駆る008Lがまさかの登場。ゲームでは叶わなかったエクスバインとの共闘を実現し、読者を大いに驚愕・歓喜させた。
広く展開されるアニメやゲームとは違い、限られた熱心なファンのための媒体である漫画版ではヒュッケバイン登場に関する障壁も低いのであろうか?
2020年3月には、スーパーロボット大戦X-ΩにヒュッケバインMk-Ⅲが参戦。プレイヤーユニットとしてはOG外伝以来の復活となった。パイロットはリョウト・ヒカワ。
2021年10月発売予定のスパロボ30周年記念作品『スーパーロボット大戦30』にて主人公機がヒュッケバイン30という機体になることが発表されている。
現在、創通はバンダイナムコホールディングスの子会社となっており、それに伴ってか様々な媒体でヒュッケバインの登場が解禁されつつある。
現状では「ヒュッケバイン問題」は前向きな方向で和解・解決に向かっていると言えるだろう。