蝦夷共和国(えぞきょうわこく)とは、明治元年12月15日(1869年1月27日)から明治2年5月18日(1869年6月27日)の5ヶ月間だけ蝦夷地(北海道)に成立した旧幕府軍の政府の俗称。
欧米の外交文書や新聞などに”republic”として紹介されたことからのちに共和国の俗称がついたが、国家として独立をはかったわけではなく自ら「共和国」と名乗った事実もない。しかしヨーロッパに留学経験があり、国際法の知識、外交手腕共に長けていた榎本の尽力でイギリス・フランスなどの列強からは「デ・ファクト(事実上の政権)」として承認を受けた。
その目的はロシア帝国の南下政策に備えること、路頭に迷う旧幕府の遺臣に蝦夷地を開拓させることで救済するとともに産業を発展させる「富饒(ふぎょう)の郷」を築き上げることであった。しかし統一国家を作りたい明治新政府がそんなことを許すはずもなく、1868年には新政府軍との間で戊辰戦争の一環となる激しい戦い(箱館戦争、または五稜郭戦争)が繰り広げられたが、抵抗も甲斐なく1869年5月18日に無条件降伏をし、蝦夷共和国も解体された。
その経緯と目的から「旧徳川将軍家遺臣による蝦夷地開拓団」と呼ぶべきという意見もある。
主なメンバー
主な首脳陣
総裁 | 榎本武揚 |
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副総裁 | 松平太郎 |
陸軍奉行 | 大鳥圭介 |
陸軍奉行並 | 土方歳三 |
海軍奉行 | 荒井郁之助 |
会計奉行 | 榎本対馬 川村録四郎 |
開拓奉行 | 澤太郎左衛門 |
松前奉行 | 人見勝太郎 |
江差奉行 | 松岡四郎次郎 |
江差奉行並 | 小杉雅之進 |
箱館奉行 | 永井尚之 |
箱館奉行並 | 中島三郎助 |
陸海裁判官 | 竹中重固 今井信郎 |
歩兵頭 | 本田幸七郎 古屋佐久左衛門 |
海軍頭 | 松岡磐吉 |
その他
『ゴールデンカムイ』における蝦夷共和国復活構想
明治時代の北海道を舞台とした漫画作品『ゴールデンカムイ』の中でも蝦夷共和国が登場する。作中では箱館戦争で戦死したと思われていた土方歳三は生きていたという設定であり、アイヌの埋蔵金である二万貫の黄金(75トン、1メートル四方の箱4つが満タンになる量で現代での価値に換算すると8000億円に相当する)を巡る抗争に参加していく。
金塊争奪戦に参加した理由には様々な背景があるが、一番の目的は「蝦夷共和国」の復活である。
アイヌの埋蔵金を元手に北海道独立を果たした後、北海道の経済基盤を森林資源の枯渇が予想される林業から[炭鉱業>炭鉱]]に移す。その炭鉱開発を担うのは各国から募った「[移民]」である。この発想に至る理由として極東の少数民族やロシア人と共存してきたアイヌならば他民族との‘‘つなぎ‘‘になることが可能だと考えたからだ。
国力を増強させ、最終的に共和国はロシアの南下から本州を守る緩衝国となる。そもそも榎本武揚もロシアと日本の近さを脅威に感じたことから緩衝国として蝦夷共和国を設立させたのだ。日露戦争に勝ったとはいえ、賠償金どころか樺太半分しか日本は得られずロシアの南下政策は留まることをしらない。また明治政府の主導も限界に近い。ゆえに北方の守りを蝦夷共和国に委ねさせることで本州の国内発展に注力させる。
つまるところ土方が構想していたのは「ロシアによる南下を食い止める多民族国家」なのである。
余談ではあるが作中の黒幕と土方の思想が一致したことが物語の根幹に深く関わっているので、何気に重要な構想である。