アメリカ軍
あめりかぐん
概要
アメリカ軍(アメリカぐん、英語:United States Armed Forces、別名:合衆国軍、米軍)は、アメリカ合衆国(米国)が保有する軍隊。6軍で構成され、大統領が軍の最高司令官である。
国防総省に属する陸軍・海軍・空軍・海兵隊・宇宙軍の常備軍と、国土安全保障省に属する沿岸警備隊が存在するほか、陸軍と空軍については各州に州軍(州兵)が編成されている。アメリカ軍と呼ばれるのは主に連邦政府の指揮下にある連邦軍で、州軍は州知事の指揮下にあるが、連邦軍に編入され海外に派遣されることもある。また沿岸警備隊は通常は警察機関として活動するが、戦時に海軍の指揮下に入る事が定められている。
米国の軍事組織としてはこのほか、各州が独自に編成した州防衛軍があるが、連邦政府からの部分的な統制及び支援を受けてはいるものの、州軍とは異なり連邦軍の指揮下に入ることはない。
世界展開
世界最強の軍隊を自負しており、世界規模で展開して統合軍として編成している。地域別では北アメリカ・中南米・ヨーロッパ・アフリカ・中東・アジア・太平洋に6区分し、機能別では特殊作戦・統合戦略(予備戦力訓練と研究開発)・戦力(核戦力と宇宙軍)・輸送の4つに分かれる。
世界各地に駐留し、駐留国が自国防衛の見返りとして駐留費用の一部を負担している。日本にも安全保障条約(日米相互協力及び安全保障条約)によって沖縄・横田・三沢・横須賀・岩国・佐世保などに在日アメリカ軍がおり、日本は最大の在外駐留拠点となっている。基地周辺ではその存在が政治的問題としてしばしば浮上する。
連邦政府の予算の逼迫に伴ってアメリカ軍の規模は縮小傾向にあるが、中国人民解放軍・ロシア連邦軍の急速な軍拡に対抗するため、東アジアにおける軍事的プレゼンスはこれまで通り維持するとしている。
歴史
今や世界最強の称号を自他共に認めるアメリカ軍であるが、その起源はイギリスのアメリカ東部十三植民地各地で自主的に結成された民兵に過ぎなかった。この民兵たちが後にアメリカ独立戦争で活躍することになる。しかし民兵たちは本来、イギリス国王に忠誠を誓って米大陸に割拠するフランス軍やインディアンたちと戦って来た経歴を持ち、ほとんどは反乱など考えてもいなかった。だが、イギリスとの対立の深まりによって、マサチューセッツ植民地の指導者たちは民兵からイギリスよりの将校を排除した新部隊を組織する。これがミニットマンminutemanである。独立派を逮捕しコンコードにあった武器庫の破壊を試みたイギリス軍に対し、ミニットマンは1775年4月19日にレキシントンで衝突する。このレキシントン・コンコードの戦いからアメリカ独立戦争が始まった。各植民地の代表は大陸会議に集合し、6月には民兵組織を改変してイギリス軍と戦う為の大陸軍Continental Armyを結成する。司令官に任命されたのがジョージ・ワシントンである。この大陸軍の結成が一般にアメリカ軍の誕生と見なされている。ただし、発足当時はボストン周辺のごく僅かなミニットマンだけがワシントンの指揮下にあったのみである。7月には各州で同様なミニットマン部隊の組織が生まれて、大陸軍に兵力を供給した。大陸軍は1976年9月には88大隊6万人、12月には110大隊7.5万人の組織に拡大し、数万人の兵力を投入したイギリス軍に対抗できるようになる。数々の困難な戦いを乗り越えフランスやスペインなどの援護も得て、将軍ワシントン率いる大陸軍はイギリス軍を打ち破った。
こうして生まれたアメリカ軍であるが、独立戦争が終結するとワシントンが率いる大軍は議会に警戒されるようになる。次々と軍縮の議決が行われ、一時はその規模数百人にまで縮小してしまう。ワシントンの猛抗議と運動によって一万人前後にまで復活するが、彼の懸念は続く英米戦争で現実のものとなる。英国と組んだインディアンとの戦争を有利に進めたい思惑、勝って英国領カナダを奪取したい思惑などから、1812年6月に米議会は英国に宣戦布告する。しかしアメリカ軍の正規軍は少数で主力は数十万人の民兵であった。そして民兵には所属する州を離れて活動すると急激に戦力が低下する弱点があった。カナダ侵攻は当初こそ順調であったが、クイーンストン・ハイツの戦い、ストーニー・クリークの戦いなどに敗れて撤退に追い込まれる。さらに英国本国からの援軍が押し寄せて1814年6月のブラーデンスバーグの戦いに敗北、首都ワシントンが陥落して大統領官邸や米議会議事堂が炎上するという惨敗になる。米国軍は抗戦を続け地の利を生かして長期戦に持ち込み講和に行きついたが、この戦いは多くの戦訓を生むことになった。
かくしてその後のアメリカ軍は質量ともに大規模化を進めていくことになり、アメリカの歴史において決定的な役割を果たしてきた。1947年9月に採択された国家安全保障法は現代のアメリカ軍の枠組みを構築し、この法律は国防長官が率いる国家軍事施設を設立し、空軍省と国家安全保障会議を設立した。1949年8月の法改正で国家軍事施設は国防総省に改称され、陸軍省・海軍省・空軍省が国防総省に統合された。
機構
軍種 | 発足 | 特徴 |
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アメリカ陸軍(United States Army) | 1775年6月 | 1775年4月から1783年9月まで続いた独立戦争を戦う為に発足した大陸軍がルーツである。 |
アメリカ海軍(United States Navy) | 1775年10月 | 原子力空母11隻・揚陸艦31隻・原子力潜水艦71隻などを有する世界最大規模の部隊。 |
アメリカ空軍(United States Air Force) | 1947年9月 | 7000機以上の航空機を有するなど世界最大の部隊であり、世界各地に空軍基地を持つ。 |
アメリカ海兵隊(United States Marine Corps) | 1775年11月 | 海外での武力行使を前提とし、アメリカの国益を維持・確保する為の部隊。 |
アメリカ沿岸警備隊(United States Coast Guard) | 1915年1月 | 6軍で唯一国土安全保障省の配下にある部隊。ちなみに他の5軍は国防総省の配下にある。 |
アメリカ宇宙軍(United States Space Command) | 2019年12月 | 2019年12月に国防権限法及び宇宙軍法の成立によって発足した部隊。 |