※最初に「注意事項」をしっかり読んだ後、以下ネタバレほか閲覧注意。
注意事項
この記事自体がテイルズオブゼスティリア、あるいはテイルズオブシリーズ全体に対して問題を提起する為に作成されたものであり、見方によっては非常に批判的な内容になっています。
同時に、この事件をもってテイルズシリーズが炎上し、IPが衰退し、続編が長期間出なかったことも事実です。自分が好きな作品がけなされるのはつらいことですが、どれだけ時間が経っても炎上したという事実も受け止めてください
テイルズオブゼティリア(またはテイルズオブシリーズ)を純粋に楽しみたい方や、この一連の問題は知っていても特に問題視していない・一連の問題や本記事にそこまで共感出来ないという方はブラウザバックを推奨します。
特定キャラクターへの同情心や行きすぎた正義感等から、好意的に作品を投稿するプレイヤーや解釈違いに対して、コメントやタグでのバッシングが一部で見られます。→アンチ
度を越したキャラクター・ファン・声優・キャラクターデザイナーへの批判はやめましょう。
本記事内容をどう見るかは自分次第です。人に押し付ける事はやめて下さい。
当記事を閲覧する方々、当記事で初めてこの事件を知る方々は、上記の事を踏まえた上で、閲覧して頂けると幸いです。
編集者に対する注意点
現在では事件から数年経ち、複数の解釈が生まれているため、必ずしも中立性を保っているわけではありません。
編集される方は中立性を持った編集を心がけてください。
また、よく「真の仲間=ゼスティリアの炎上騒動」のこと、という誤解をする人がいますが、
- 真の仲間
元々はただの劇中に登場する台詞。
シナリオ自体が説明不足だったことが災いし、湾曲したかたちでよくゼスティリア炎上騒動の代名詞として持ちあげられる。
- ゼスティリアの炎上騒動
ゲーム『テイルズオブゼスティリア』に関する炎上事件を総括した便宜的な名前。
ゼスティリアの炎上のきっかけ及び全体の経過を指す代名詞。
…という具合に、本来は「似て非なるモノ」であります。
つまり、「真の仲間≠ゼスティリアの炎上騒動」が正しいため、当記事を追記・修正する編集者達も充分に注意を払い、誤解を招く内容を書かないよう極力気をつけて編集活動を行うようお願い致します。
概要
ゲーム『テイルズオブゼスティリア』に関連する炎上騒動及び関連の出来事を指す。
騒動の主な原因として、シナリオ中に登場する台詞である「真の仲間」疑惑を始め、システム・シナリオ・宣伝の不評など、複合的な要素が重なって起きてしまった。
ゲームを発売した当初からこの騒動は起きており、発売からしばらく経った現在も(当初ほどの熱は伴っていないものの)進行形で細々と続いている。
このような性質上、結果として多くのプレイヤーとキャラクター、関係者が振り回される形となってしまった。この炎上騒動はまさにテイルズオブ史における非常にデリケートな問題であり、かつ戒めでもある。
何があったのか
本件に関する説明が中立性の名の下に非常に長大化、冗長化しているため、ある程度何が起こったのかを短く記載する。
詳細は下記の膨大な中立的文章に任せるとして、当時の事実のみ書き起こす。
下記の文章には引用性を持たせないため、記事リンクなどの一切を廃する。
■発売前
1.テイルズオブゼスティリアの発売前、アリーシャに注目が集まる。
2.これはメディア展開での露出頻度の多さ、扱いの良さから、アリーシャがメインヒロインではないかというユーザーの見方が強まった為であって、ヒロインは未確定であった。
3.事実、公式から「ヒロインは秘密」という発言がなされ、ヒロインは誰かという議論が起こった。
■発売直後
1.ゲームとしての完成度が低く、特にカメラワークやコンボ性の低いゲームデザインについて批判が募る
2.ストーリー進行上、「アリーシャが永久離脱する」ことが判明する。ただし、実際には終盤でスポット参戦した為、あくまで発売直後の攻略途中に判明したネタバレが大きく拡散された。
3.アリーシャのストーリー上での扱い、及びシナリオの粗雑さが特に取り沙汰され、まとめブログなどを通じて誇張され「馬場P」「真の仲間」「んほぉ」などの単語と共に炎上トレンドとして拡散される。
■発売後
1.当時のプロデューサー、馬場Pの公の場での発言が掘り返され、尾ひれがついて拡散。炎上は更に広がる。この馬場Pの発言内容に深く絡んだ本作のヒロイン、ロゼのキャラクター性への批判が強まる。
2.アリーシャ離脱を着火剤に、ゲーム性の低さ、ボリュームの少なさへの複合的な批判でレビューは低迷し、クソゲーとしてのイメージが広まってしまう。
3.しばらくしてDLCが発売し、離脱したアリーシャをピックする内容だったのだが、多くのユーザーが求めたシナリオ内容ではなく、またボリュームも微妙で更に炎上を重ねた。
■最終的に
・DLCは一つのみで終了、実質ゼスティリアの展開は凍結された。
・上記に加えテイルズシリーズは以後6年半、コンスタントに発売していたCSでの新作IPが停止した。21年にテイルズオブアライズが発売。
・馬場Pこと馬場英雄プロデューサーはバンダイナムコを退社していたことが後に判明
・ゼスティリアのTVアニメシリーズはゲームと大きく異なるストーリー展開、いわゆるアニオリになったことから(これ自体は制作側に罪はないとはいえ)、更にゲームへの悪印象が強まってしまった。
・SNSなどでは未だにこの炎上の禍根は根深く、中立的観点ではともかく、「大炎上したゲーム」としてタイトル名が挙げられることがある。
・余談だが、21年6月にサービス終了したスマホゲーム「サクラ革命」に、馬場プロデューサーが関わっていたとするネット記事が出回った際にも、このタイトルが「馬場Pが作った同類のゲーム」だとして、悪い意味で再注目されてしまった。
以下、それぞれの項目について詳しく記述する
不完全版商法への怒り
「未完成」すぎる本編
本作は、DLCや関連作品が出る事を見越した甘えから、システム・シナリオを未完成のまま発売したのではないかとして大きな批判を受けている。
劣悪なカメラワーク、未完成なシームレスバトル、海・雪国・闘技場ステージなし、天族キャラの掘り下げが少ない、シナリオが短いといった従来のテイルズオブシリーズらしからぬ欠点を多く抱えている。
闘技場ステージについては「穢れの坩堝」という代わりのステージが登場するが、指定されたキャラでただひたすら雑魚モンスターを倒して終わりというお粗末な展開である。
また、謎を残せば今後のメディアミックスの売上が伸びる、という思惑からか謎を残し過ぎたのが、プレイヤーを激怒させた原因の一端でもある。キャラの掘り下げはサブイベ、世界観を知る為の会話もサブイベで、謎は謎のまま放置され本編で説明されない。メインシナリオから必要な説明を切り離した結果、支離滅裂なものになってしまっている。
ここまで未完成になった理由としては、シームレスバトルシステムの開発に手間取ったのではと推測されている。本作は「前作までに作ったシステムのベースを全部作り直すことが開発の出発点だった」と語られており、馬場氏「本当に大変だった」、長谷氏「シリーズに関わって一番大変だったのは間違いない」とのコメントが攻略本にある。
そもそも、テイルズにシームレスバトルは必要だったのだろうか。過去作のシステムを踏襲した上での操作性の進化こそが求められていたはずだ。
発売を急いだ理由として、年度末の決算、「20周年」という記念イヤー、宣伝TVアニメのための放送枠、発売後に開催予定の「テイルズオブフェスティバル」、次回作「ベルセリア」の製作、20周年展、オーケストラ音楽会などがあったと思われる。
未完成でも開発延期が許されないバンダイナムコ社の組織上の欠陥を指摘する声もある。
このようなバンダイナムコ社の姿勢は「有料β版」「未完成版」「不完全版」「機能削減版」と揶揄されている。これが俗にいう『バンナム商法』である。
テイルズが機種を変えリメイクを繰り返すことは実は初めてではない。「ヴェスペリア」のXbox版には実はパティのデータも入っていたが、PS3版を出す事を見こして登場させなかったという噂があった。この炎上は、溜まりに溜まったバンダイナムコゲームファンの不満が爆発したものでもある。
DLC販売への批判
アリーシャのアフターエピソードが期間限定で無料配信されることが決まったが、当初は1300円になる予定だったようだ。これは週刊少年ジャンプなどの記事や公式サイトの表現などからもうかがえる。
よく批判される分割商法だが、課金要素が悪いのではない。
「派生作品を買わせる事を前提とした本編」であるのが問題なのである。
発売からたった5日で発表されたハイペースでのDLCから、最初からサブシナリオとして製作していたのではないかという推測もある。それをDLCとして分割するために本編にあえて入れなかったといういわば「不完全商法」を匂わせている事も批判の槍玉として挙げられる。
DLCとは「買わなくても本編だけで十分に楽しめるが、買えばさらに楽しめる」と言う要素に対して付けられるべきものである。
だが、本作の場合、「DLCがなければ、アリーシャについては完全に不完全燃焼」であり、これでは分割商法と誹られても仕方ないだろう。
ただ、DLCの舞台としては本編エンディング終了の3ヶ月後であり、主人公スレイはマオテラスを浄化する為に数百年の眠りについてるため不在である。ゼスティリアの主人公はスレイなので、そのスレイ不在なシナリオは本編からすると蛇足であり、「買わなくても本編だけで十分に楽しめるが、買えばさらに楽しめる」に値する物とも言える。「DLCがなければ、アリーシャについては完全に不完全燃焼」というのは主人公スレイを中心にした意見ではなく、あくまでアリーシャを中心にした意見である事は注意すべきである。
なおDLCのアリーシャのアフターエピソードは新たな問題や謎を提起したまま終了するためおそらくDLC「第一弾」にすぎない・・・かと思われたがDLCの続きはあるかわからないと攻略本のインタビューで明らかとなる。
ちなみに、DLCの無料期間は2月12日から2月28日までという記述だっただが実際は3月3日の午前11時20分前後まで無料期間は続いていた。告知なく無料期間を2日半ほど引き延ばしていたのではと一部で疑われたが、他のゲームでもPSストアの更新時期がズレる事はままあり、2015年3月1日は日曜日であったため無料期間の延長はPSストアの更新の関係だと推測される。
なお海外版では最初から製品版にDLCが追加されている。
なお、アリーシャ以外のキャラクターの補完や専用ストーリーはない。
前宣伝の問題点
本作は過去作と比べて発売前に報道された情報が非常に少なく、ヒロインについても同様だった。
馬場氏は、発売前から「(ヒロインは)ゲームを進めていくとわかるようになります」との一点張りで、その段階は明らかにはならないようだった。→『テイルズ オブ ゼスティリア』のヒロインは誰!?
公式設定資料集のアリーシャキャラデザの奥村氏のコメントによると、シナリオプロットやキャラデザが作られるよりも前、世界観やキャラの初期設定段階から、アリーシャはスポット参戦キャラクターだった。
攻略本のスタッフインタビューによると、開発段階にて一番はじめにキャラクターデザインをされたのはいのまたむつみのライラであり、「いのまたむつみのデザインが初期構想の起点となった」らしい。
製品パッケージでは「1000年生きた天族と1人の青年が出会うとき、物語は始まる。」「数多の遺跡探検を夢見る青年スレイは、浄化の力を持つ天族ライラと出会い、憑魔と戦う「導師」となって広大な大地へ旅立つ。」とあり、ライラがヒロインであるかのような紹介となっており、ライラ以外の女性キャラクターは紹介されていない。
ライラは重要な設定を持つキャラでもあるので、元々はアリーシャでもロゼでもなくライラがヒロインだったのではないかと推測される(中盤から天族は全員空気化してしまうが)。
発売前の馬場Pの発言にて、「アリーシャがヒロインだとは言ってない」といったものがあった。当時は炎上はしていなかったものの、実は発売前からファンの間では誰がヒロインなのかという論争が早くも起こっていた。
台北ゲームショウのトークショーにて「(ゼスティリアの)ヒロインはプレイヤーが決めてもらうもの」(自己判斷「誰才是女主角」)と説明している。
発売後にファミ通がインタビューしたところ、馬場氏は「ヒロインはロゼである」と明言しており、発売前にも雑誌編集者に教えていたという。また、開発スタッフが渡した資料にアリーシャをヒロインと表記したものは一つもなかったと編集者も証言している。『テイルズ オブ ゼスティリア』馬場英雄プロデューサーに訊く、“ヒロイン”のこと、シリーズの“これから”のこと。
だが、本作の開発班と宣伝部、アニメ制作のufotable、各報道機関の取材陣との間で意思統一が取れておらず、プレイヤーに提示される報道に大きなギャップがあったのは事実であり、多くの混乱を来してしまっている。
テイフェスの新作発表にアリーシャの中の人が参加しており、そのため女性キャラクターの中で最初に紹介されたキャラクターがアリーシャであった。
ジャンプスマートフォンアプリのソーシャルゲーム「テイルズオブアスタリア」に出演したアリーシャの解説に「テイルズオブゼスティリアのヒロイン」という記述があった。
このヒロインという記述が2月2日のアップデートにおいて「テイルズオブゼスティリアに登場」という記述に修正されてしまったのである。
同日、アリーシャのフィギュアの紹介サイトでも「ゼスティリアのヒロイン」であることを削除する動きが存在していた。電撃ホビーウェブで2014年10月28日に「『テイルズオブゼスティリア』ヒロイン、アリーシャも立体化!」と書かれていた記事が、『テイルズ オブ ゼスティリア』より、アリーシャが立体化!に差し替え。
また、発売前はフィールド上でパーティーメンバーを連れ歩くことができる「同行者システム」を「売り」にしていたが、実際のゲームでは他のパーティーメンバーを同行者にすることができず、ロゼのみが同行者固定・戦闘固定となる。
結局のところ、本作の宣伝は「誰も得しない」という最低の悪手となってしまった。
この件は数々なまとめブログにて紹介された。
スペシャルアニメ版におけるアリーシャへの優遇
2014年12月に発売前の宣伝として、ufotable制作のテレビアニメ『テイルズ オブ ゼスティリア 導師の夜明け』が放送された。シナリオはufotable代表取締役社長の近藤光がufotable名義で執筆している。
ゲームの販促アニメということもあり、序盤の導入部分のシナリオがアニメ化されたが、その中でアリーシャはゲームよりも出番が大幅に増えており、ゲームでは登場していなかったシーンでもスレイに同行している。また、ゲームにないコスチュームも追加され、雑誌でのアニメイラストや「ufotable cafe」のコラボカフェでもアリーシャが多いなど大変優遇されていた。
アリーシャが優遇された理由として、序盤のメインキャラクターの中では唯一の女性キャラクターであり、序盤で未登場のキャラクターは登場させられないこと、ゲームの宣伝の意味合いの強い作品のため作品内でアリーシャというキャラクターを紹介しないといけないことなどから、ufotableはアリーシャをヒロインとしてプッシュしたものと思われる。
アニメについては序盤の展開をうまく再構成しており、映像クオリティの高さも相まって関係者や視聴者からは高い評価を得ている。しかし、このアニメによりアリーシャをヒロインと強く認識する人がさらに増えてしまったともいえる。
シナリオへの不満
後味の悪すぎるシナリオ
本作の不評の原因として、シナリオの完成度の低さがあげられる。
コンプリートガイドにて、シナリオ担当である山本尚紀氏(以下:山本)は「現実味のある部分を描くからこそ」と説明している。だが、やりすぎた自覚もあるようで、「なんでこんなにかわいそうな話なの?って思います」とも語っている。
シナリオでは、前半は「浄化して穢れを祓えば憑魔を元に戻せる(ただしドラゴンは元に戻せない)」という設定である。しかし、後半でスレイ達は神殿で修行を重ね、霊応力はむしろ増しているにもかかわらず、「浄化ができず殺すことでしか憑魔を救えない」というエピソードが多発する。
穢れを浄化で祓えないのならば、神殿で修行する必要性もないし、作品の根幹をなす導師の浄化設定も意味がなくなるのではないか。導師であるスレイの存在感が後半は薄れるのも自明である。中盤から設定やストーリーラインが崩壊してしまっているのだ。
プロデューサーである馬場英雄氏(以下:馬場)によると「「人を生かそう」とする主人公スレイに対し、ロゼは「仕事人として殺す」事に強い覚悟を持つ負の半身」である。ロゼの思想が「ひとつの正解」でもあるのならば、スレイの思想もまた「ひとつの正解」であるはずだ。
だが、作中でのロゼの「仕事人として殺す」=暗殺する主義ばかりが肯定され、主人公であるスレイの「人を生かす」=浄化する主義が否定され続けるストーリーは、「王道」を謡うRPGでプレイヤーが望んだものではなかった。
ロゼだけではなく、主人公スレイの「人を生かす」主義も尊重してやってこそ、よりリアリティが出るし、両方のキャラクターが輝くのではないだろうか。
だがこれは穢れの発生要因、理由を描写する意図があるため一概に否定するものでもない
(とはいえ、作中では大半の憑魔を浄化しており、殺した憑魔はごく少ない。)
過度のリアリティ偏重
山本+馬場コンビのTOHやTOX2や、過去のテイルズが好評だったのは、「現実味」があること・鬱展開であることが直接の理由ではない。シナリオの筋が通っていて、プレイして面白いゲームだったからだ。スタッフは過去の成功体験に囚われているのかもしれない。
システムでもシナリオでも、適度な「現実味」、つまりリアリティはゲームを面白くするかもしれない。しかし、やりすぎればリアリティの追求がかえってゲームをつまらなくすることもある。
リアリティにこだわることは、作る側は楽しくても、プレイして面白いかには個人差がある。
リアリティを追求し、シームレスバトルで戦闘システムを劣化させたり、シナリオへ問題が発生してしまうケースもある
キャラのバランス描写に失敗
自分の意志で悪と判断した人間を暗殺したキャラがいる作品として、TOZは過去作のTOVと比較されることがある。もちろん、TOVキャラクターがTOZスタッフの作った世界に来て、TOV時と同じようになるかどうかはわからない。この比較は、あくまで伝えやすくするための「たとえ話」であり、大事なことは結論部分に記載する。
TOZのロゼとTOVのユーリは、違いはあれど、どちらも劇中で「暗殺」に手を染めつつも許された人物であることは否めない。だが、プレイヤーの受けた印象に差があり、TOZとTOVの間には相違点も多い。
2作品の大きな違いは、暗殺を否定する存在がいるかいないかである。
TOV:親友フレンという「法で裁く」という思想を持ち、ユーリの「暗殺」を否定する相手がいる
TOZ:主人公スレイの「人を生かして浄化する」という思想は否定され、ロゼの「暗殺」は強く否定されることがない
ユーリは幼馴染のフレンが出世し、どんな悪も法で裁けるようになる事を望んでいるが、フレンが出世するまでに法で裁けない悪によって犠牲者が生まれることに我慢できず、その悪を殺してしまう。
ユーリの最終目標は「法による悪の断罪(つまり、ユーリの暗殺が不必要になること)」である。
殺した相手も「わかりやすい悪役」というプレイヤーの心情的に納得しやすい演出があった。
TOZでも、前半のスレイは憑魔を殺したザビーダに対して激しい怒りを感じている。
また、中盤でスレイは「ロゼに人殺しをして欲しくない」と言う。
枢機卿の話くらいまでは、生かして救いたいスレイの苦悩も、スレイの手は汚させないと言うロゼにも、プレイヤーは共感することができた。
だが、実際は後半から、神殿巡礼で霊応力は強くなっているにもかかわらず、浄化が無効化されることが多くなり、結果的にロゼやザビーダと同じように憑魔を殺さざるを得なくなってしまう。
馬場氏のコメントでも、「「人を生かそう」とする主人公スレイに対し、ロゼは「仕事人として殺す」事に強い覚悟を持つ負の半身」として設定されているが、シナリオでこの設定が生かされているとは言い難い。
TOZでは、ロゼの側の信念は語られたが、その反対の信念が語られないので、一方的な主張になってしまっているのだ。
TOZのシナリオ面での不評とは、主人公スレイとヒロインロゼの思想を両立して描ききれなかったことから来ていると言えよう。
ロゼのカウンターキャラはルナールがいるが、後日談の続編が作られなかったため中途半端になった事も大きいだろう。
誤解を招く台詞『真の仲間』
ここで、ゼスティリア炎上騒動でよく取り上げられる「真の仲間」という台詞についても取り扱う。
前置きでも少し触れたこの「真の仲間」という単語は、元々ゲーム内においてミクリオがスレイにとってロゼは良い仲間になると語ったのが元ネタ。
作中人物にとっては、人間の仲間であるアリーシャ・ディフダが離脱した後、ヘイダルフの「領域」によって天族との交信を断ち切られたスレイは孤立無援となり、憑魔となった兵士に囲まれるという絶体絶命の危機に陥るが、人間であるロゼの助けにより危機を脱する。何とか天族と再会した後、人間であるロゼを引き抜こうとした際の発言。
プレイヤーのメタ視点から言うと、アリーシャがプレイアビリティキャラを離脱した後、ロゼが操作キャラとして新たに加入した際の発言。
人間の操作キャラは主人公のスレイとロゼとアリーシャのみ。これ以降はロゼのみが戦闘固定・同行者固定となる。
導師のスレイのようにロゼは神衣出来るようになり霊応力も非常に高い。天族も見れるようになるが、アリーシャはスレイに失明のリスクを与える(ただし、この時点ではロゼにも天族は見えない)。
スレイにとって先に別れたアリーシャは、ロゼとは違って真の仲間ではない?(⇒アリーシャは偽の仲間?)という推測に繋がってしまうのではないかと指摘された。
また、アリーシャはパーティを離脱した直後「導師を利用した国政への悪評の流布」「ローランス帝国進軍を手引きした」という政敵バルトロの策略により身柄を拘束されてしまう。「導師スレイが戦争で戦えば容疑も晴れる」と言われた際、ライラがスレイが穢れないために戦おうと発言する。
また、戦争を終わらせ、ロゼを仲間にした後スレイたちはローランス帝国に入ろうとする。スレイがローランス帝国に入った事が知られたら、アリーシャへの疑惑が再び深まってしまう可能性があるのではないかとも思われるが、特に何事もなくいつの間にかアリーシャは身柄を解放されている。
というように、「真の仲間」発言の前後のストーリーの粗も指摘された。バルトロの嫌がらせやアリーシャの拘束エピソード自体が要らなかったのではないかと批判されている。
一連の台詞抜粋
ライラ「ロゼさんを私たちの旅に誘いませんか?」
スレイ「え、なに?突然」
ミクリオ「僕も同意だ。スレイにはいい仲間になると思う」
スレイ「ミクリオまで…」
ミクリオ「ジイジが言ってた『同じものを見て、聞くことのできる真の仲間』だよ」
スレイ「真の仲間か…」
エドナ「良いんじゃない?」
ライラ「ロゼさんの霊応力はスレイさんと比肩するほどのものです
アリーシャさんの時のように従士の代償でお互い苦しむこともないと思いますわ」
エドナ「それに人間がスレイだけだと時々面倒なのもわかったし」
スレイ「でも、導師の宿命に巻き込むわけにはいかない」
ミクリオ「やっぱり君が気にするのはそこなんだな」
※「いっそこのままアリーシャが死んでしまえば簡単なのにね」との台詞が一時拡散されたが、このような台詞は本編にはない捏造である。それどころか「いっそこのままアリーシャのことぱーっと忘れちゃえば簡単なのにね」というセリフがこの会話の中で発言されたかのように記載され、拡散されてしまっているが、実際には「いっそこのまま」というセリフはなく「アリーシャのことぱーっと忘れちゃえば簡単なのにね」が正確であり、しかも会話よりもそれなりに前のシーンでの発言である。杜撰な情報を鵜呑みにして拡散しないように注意すること。
ミクリオ「僕たち天族は確かにスレイの仲間だ
だけど、スレイと同じものを見たり聞いたりできているのか正直わからない」
ロゼ「スレイだけが…人間だから?」
ミウリオ「そう。スレイには本当の意味で導師の宿命を共感できる人間の仲間がいないんだ」
上記のとおり「真の仲間」発言の直後にもミクリオは「仲間」という言葉を使っており、ミクリオが天族と人間を分ける意図で発言している事は明白である。
ミクリオ「アリーシャが仲間になったのもよかった」
ミクリオ「スレイはずっと天族の中で独りだったからね
人間の仲間がいればと思っていたんだ」
この「人間の仲間」という言葉はアリーシャに対しても使用されており、ミクリオはアリーシャをロゼと同様にスレイの「人間の仲間」だと認識している。
ジイジに対し「それでもスレイにとって初めて出会った人間だったんです」 と反論したミクリオが、アリーシャをスレイの仲間でないと思っているとは考えにくい。
状況として、標題のセリフは下記のイベントの直後で発言される。
①スレイが人間から化け物扱いされる
②スレイが霊能力を失い危機に陥る
ミクリオが「大丈夫、僕たち(天族)がついてる」と言った直後の霊応力喪失である。
天族はスレイの理解者にはなれるが、化け物扱いされるスレイと他の人間とのコミュニケーションの仲裁をしたり、霊応力を失ったスレイを助けてあげられるような同族となることはできないことを痛感せざるを得なかっただろう。
また、体の造りや寿命などどうにもできない様々な違いがある。
さらに、霊能力を失ったスレイを救ったこの時点でのロゼは、天族を見る事はできず普通の人間と変わりない。よって、「スレイと同じものを見ている」とは目で見る視覚的なことを意味しているのではない。
つまり、本編の描写内では、スレイにとって
天族の仲間=本当の意味で同じものを見たり聞いたりできるのかわからない仲間
人間の仲間=真の仲間
だとミクリオは考えているといえる。
各キャラクターの意図
上記のように、前後の場面と合わせてみると、あくまで「ミクリオとエドナはアリーシャがいなくなったことで、あらためて『人間の仲間』の必要性を感じた」という旨の発言をしている。
- ミクリオ・スレイ
スレイとミクリオはアリーシャとの契約中、アリーシャと長く契約できるよう努力している。スレイが右利き、ミクリオが左利きであるため、スレイの左隣がミクリオの定位置となっている。ただし、スレイの右目失明中はミクリオが常に右側に立ち、水神依時はミクリオが目になって狙いを付けるなどして、陰ながら密かにカバーしているのである。
ライラについては「従士の代償でお互い苦しむこともない」と発言しており、過去の経験から「主神」として導師の宿命に対し慎重になりすぎるという事情はあるものの、アリーシャに対して少々配慮が足りないのではないかとする向きがある。
だが、もともとアリーシャが契約する前、ライラは従士反動をスレイに伝えていたがアリーシャには伝えていなかった。これはライラがアリーシャを想ってのことではあるが、結果的にはスレイを失明させかえってアリーシャを落胆させてしまった。
このように「ライラがロゼを仲間にするよう進言したのは、アリーシャを想っての行動でかえって彼女を落胆させてしまった反省があってのこと」だという点は決して忘れてはならないだろう。
ロゼの霊応力についても説明はあり、「ロゼは長くデゼルに取り憑かれていたため、天族の力を通し易い体質になっている」という設定が明示されている。
また、本編内ではアリーシャは従士として十分な力を振るうことはできないが、後日談ではスレイが大地を浄化したため、アリーシャもロゼと契約し従士として活躍できるようになっている。
漫画版では
漫画版では、「天族はスレイと同じものを見たり聞いたりできない」という台詞が、「真の仲間」発言の直前に移動されているので、「天族は真の仲間ではない」とする発言の意図が明確になっている。
なお、漫画版は原作に沿うストーリーではあるが、キャラクター設定自体の変更が少なく、論理的な補足、セリフの追加によって、原作を肯定的・否定的に見る層どちらにとってもおおむね違和感の少ない作品との評価を得る場合が多い。
担当編集者および作者は長年のテイルズファンであり、ネーム時は毎度考察を重ね、雑誌掲載時でのキャッチコピーは全話歴代作品のオマージュとなっている。
ヒロイン論争について
ヒロイン詐欺疑惑
「ヒロイン」という言葉には「女主人公」「主人公の恋愛相手」「味方の女性キャラクター」「女性のライバル」「女性のキーキャラクター」「作品の象徴的存在」「看板娘」「マスコットキャラ」など様々な意味がある。恋愛展開があると単体としてのキャラクターの性格が変わってしまったり、かえってカップリングが狭まるという面もある。
TOZではロゼは本編の「主人公の相棒」としてのヒロインであり、アリーシャは後日談の「主人公」としてのヒロインである。本作はロゼとアリーシャ共に「ヒロイン」であるという構造を持っていると言えるだろう。
過去のテイルズ作品での恋愛要素の濃淡は様々であり、恋愛要素が薄い作品でもファンが好きなカップリングを想像して楽しんでおり、実際過去にここまでの炎上はなかった。テイルズはギャルゲーでも乙女ゲーでもない。スレイが誰とも恋愛しなかったからといって、一部のカップリングのファンだけが本作を批判しているのではない。
作品を楽しめなかった人をカプ厨扱いするのは思考停止と言わざるを得ない。このページでも説明されているとおり、そもそも作品全体に沢山の問題点があったという事実を逃げずに公式は認めるべきだろう。
離脱理由が微妙
アリーシャの離脱理由については媒体によって混乱が見られる。
テイルズオブマガジンでは「従士反動」、ディレクターである長谷雄太氏(以下:長谷)と山本氏とゲーム版を元にした漫画版と小説版によると「国を守るため」、馬場氏となるとコロコロ変わり発言に一貫性がない。
テイルズオブマガジン2015年4月号においては「まだ力の弱い導士(スレイ)」に「霊応力が十分ではない従士(アリーシャ)」が負担をかけて「従士反動」を起こしてしまったという設定が語られている。
これがアリーシャが離脱を決意した理由として語られており、長谷氏が公式コンプリートガイドで語った「国の為に離脱した」という記述と矛盾するのではないかという見解もある。
。
これだけなら後で力を身に付けたスレイとアリーシャが再会する展開になってもおかしくはないのだが、実際は一時的に再会しただけでそうならない。
この「従士反動」はアリーシャが離脱するための設定ではないのかと当初から突っ込まれている。
5月8日に行われた馬場氏のインタビューでは、ロゼを仲間にする際、つまり「真の仲間」発言の際については「ヘルダルフに敗北した後、性急でやや強引に思える行動も、挫折を経験したがゆえの焦りが原因」と説明している。
従士に求める役割とは「従士契約についても補足しますと、憑魔(霊応力がないと見えない敵)と戦える人員を増やすことが従士契約の本意ではありません。人々から奇異な目で見られがちな導師が、一般の社会とコミュニケーションを取り、その関係を維持していくことをサポートしてもらうことが、従士を得るいちばんの目的となります。」と説明している。
この「従士反動」は登場人物にはどうする事もできない自然現象なので、登場人物を責めても仕方のない事ではないかとする意見もある。現実的に考えれば、スレイが戦闘面の前衛主力であり、天族がスレイなしでは人間社会との接触を持てない事などを考えると、様々な行動の要であるスレイが盲目のまま旅を続けるのは非常に厳しい。
作中この時点で従士反動への解決法は存在しない。
登場人物がやれることは、同行できる期間を少しでも引き延ばす事くらいである。
従士反動への具体的な解決法が提示されるのは物語終盤であり、スレイは「アリーシャのような従士が力を振るえるかもしれない」と発言し、マオテラスを浄化し大陸全土に霊応力を注ぐため、マオテラスの器となり眠ることを決断する。
アニメのコンテによると、天族たちは最終決戦の際ジークフリードによる死も覚悟しており、スレイが人柱となることをあわせて考えれば、国の未来を担うアリーシャを最終決戦に付き合わせるわけにはいかない。
しかし、後者の意見においてもゼスティリアの世界に「従士反動」が存在すること自体については擁護しきれない。メタ的な視点において、そもそもこの設定自体が必要であったのかどうか、この「従士反動」はそもそもアリーシャを離脱させるために製作者に作られた設定ではないのかという製作者の意図や思惑についての疑念は未だに残る。
離脱するにしても「従士反動」は心情的に納得しやすい理由ではないだろうし、ストーリー展開の強引さや演出力・セリフの不足を否定することはできない。
なお、後日談『瞳にうつるもの』ではロゼとアリーシャが従士契約をするが、ロゼには一切従士反動が起きない⇒ロゼ贔屓であると誤解される事がある。ただ、これはスレイが眠ったため大地の霊応力が上がったからであり、理由はしっかりと存在する。
長谷氏は「アリーシャのキャラクターを考えた場合、彼女はスレイ達との冒険よりも、王族として祖国を守る道を選ぶだろう」と説明している。
だが、後述のとおり本作は「あえてセリフで説明しない」という演出方針をとっていたため、キャラクターの心理描写が不足しているのである。
ハイランド国内での扱いへの不評
離脱後のアリーシャの国内での扱いだが、バルトロからの嫌がらせは「素直にアリーシャの道を応援できない」とプレイヤーに感じさせた。
アリーシャは後半では支援者が増えてくる。だが、それまでのバルトロ大臣の嫌がらせが執拗すぎ、離脱後のアリーシャの「国を守る」という行為の意義がプレイヤーに薄く見えてしまう。
単純に、「不愉快」「つまんない」「いい年したおっさんが若い女の子を毛嫌いするのが大人げない」など、生理的な嫌悪感を持つ人も多い。
後半にバルトロは失脚し、アリーシャが出世するが、それまでのストレスに耐えきれず「途中でゲームをやる気がなくなった」という人も多い。
アリーシャの成長を描くという目的ならば、ロゴスやドラゴン退治、後日談など専用エピソードで十分である。
キャラ贔屓について
本作で最も話題になるのが暗殺者ロゼというキャラクターである。
TOZの問題点をまとめるなら、アリーシャ関連は一部にすぎず、大きな問題点は主人公スレイよりも尊重されるロゼの価値観が受け入れ難いものだったことである。
ロゼの複雑すぎるキャラクター性
ロゼは多くのプレイヤーから「ロゼがわからない」「ロゼの思想が受け入れられない」などと言われることが多い。
発売前、発売後共に女性キャラの人気投票ではエドナが首位で、次にアリーシャロゼの順番であることが多く、ロゼの順位は安定して低い(希にアリーシャを抜くこともあるが)。
一方で、馬場氏によると、ロゼは、
「癖がなく誰もが好きになるようなキャラクター」
「僕に似ているかもしれませんね」
「(ロゼが)好きですね」との評である。
クリエイターがキャラクターに感情移入することは必ずしも悪ではない。
ただ、プレイヤーからは『馬場氏はロゼに自己投影しすぎている』という前提を踏まえた上で批判している人も少なくない。
ただし、「僕に似ているかもしれませんね」とは他のスタッフに「馬場さんはロゼと似ている」と言われた事に対するいわばリップサービス的な反応である。他のスタッフも「明るい性格が似てる」程度の軽い気持ちで発言した可能性が高く、そこまで深い考えのあったものではない。
馬場氏は「ロゼは、スレイたちの心理的、内面的なカウンターを担うキャラクターとして、彼らと対になるような形で描きました」「きびしい現実の中で「人を生かそう」とする導師が、必然的にぶつかってしまう大きな壁・・・スレイの純真さだけでは越えられない壁を打ち破るための鍵が、「仕事人として殺す」ことに強い覚悟を持っているロゼの存在」と語っている。
シナリオの山本氏はロゼを「感覚的に正しいことをつかめるキャラクター」「暗殺を肯定するようなずれた部分を持っているが、それは現実的に考えるとひとつの正解でもあるんじゃないか」ととしている。
馬場氏と山本氏が、人を生かそうとするスレイの対として、暗殺を肯定するロゼというキャラクターを作り、彼らの思想を両立して描く気があったならこのコメントは理解できる。
問題なのは、主人公スレイの「人を生かす」主義が否定され続け、ロゼの「殺す」主義だけが一方的に肯定された点である。
ロゼはヒロインではあっても主人公ではない。スレイの思想よりもロゼの思想が優先されるのは「やりすぎ」である。
また、暗殺を肯定するロゼの価値観は、現代の倫理観を持つプレイヤーに「感覚的に正しい」とはどうしても受け入れられ難い。
さらに、暗殺は必ずしも「リアリティ」がある選択ではない。現実的に考えるなら、暗殺は更に混乱を生み事態を悪化させることもありえるからだ。
ロゼは「そんなこと(殺し)をしなくてもよくなる世界が一番良い」と言っており、喜んで人殺しをしている訳ではないが、このセリフの回収がないため伏線が不自然に放置されている。
ゲーム中では、ロゼの価値観の持ち上げもさることながら、ロゼだけが戦闘固定・同行者固定となったことも更に余計なヘイトを生んだ。
せめて同行者会話なしでも、前宣伝どおり、他のパーティーメンバーも選べるようにするだけでも評価は違っただろう。
「お気に入りキャラを盲目的に賞賛させる」という手法は、クリエイター側が想定する以上にプレイヤーに大きなストレスを与える。
クリエイターが伝えたい作品テーマをキャラに盛り込んでも、それがプレイヤーに受け入れられるとは限らない。
程度によっては作品ブランドに致命的な傷を付けることもありえる。→■■■■■
後日談『瞳にうつるもの』
ゼスティリア本編の後日談にあたるDLCシナリオ『瞳にうつるもの』でも幾つか疑惑のシーンが存在する。
その序盤でロゼとアリーシャが喧嘩するシーンで、ロゼは「仲間じゃないよ。とっくにもう別の道歩いてる」と言い、アリーシャが「わかるわけがない」「ロゼが何も言わないから」と言い返す。
一悶着を経て彼女らは和解し、協力して敵を倒すことになるが、その後での会話。
ロゼ「ミクリオがさ、あたしを旅に誘ったときに言ったんだ。
同じものを見て、聞くことができるのが真の仲間だって」
ロゼ「あたし、アリーシャとは仲間になれないと思ってた。
だってあんたはお姫様で騎士で政治家で女の子。ふつうに考えてあたしと違いすぎるっしょ」
ロゼは「お姫様で騎士で政治家で女の子(アリーシャ)と、戦災孤児・暗殺者である自分(ロゼ)とは、同じものを見て聞くことができない(別の道を歩いている)から真の仲間になれない」と考えていたが、それを改める。
ロゼとアリーシャの違いとは、「別の道歩く」こと=体験を含めた見識の違いであり、霊応力の違いを言っているのではない。
よって、作中で言われる「同じものを見て聞くことができない」こととは、 視覚的なものの見方や、単純な霊応力の違いを表しているとは読み取れない。
ただ、厳しい意見としては、ロゼはマオクス=アメッカ(笑顔のアリーシャ)というスレイから与えられた真名を一方的に奪い取り、イスリウィーエブ=アメッカ(そぞろ涙目のアリーシャ)という渾名をつける。 アリーシャ自身はそれが「そぞろ涙目」という意味だと知らない。
最終的にアリーシャは師匠の幻影を自分で刺し殺す事に抵抗を覚えなくなる。
なおDLCシナリオラストバトルにおいてロゼはアリーシャのことを「神依も出来ない役立たずは下がってて」と言う。
(この発言に対する真相は「瞳にうつるもの」のページを参照。)
このような描写からいじめの現場みたいだと厳しく批判する声もある。
フォローとしては、ロゼがアリーシャにこの時厳しい態度をとるのは「アリーシャがスレイの現状を知ったらショックを受けるからあたし一人で何とかする」という理由あっての事であり、あえてアリーシャから嫌われるために厳しい言葉を吐いている面もある。
また、ロゼからアリーシャに友情を感じている描写もある。アリーシャもロゼに親愛を感じており、最終的に彼女達は和解する。
ただし、ロゼとアリーシャのファンからも「もうちょっとロゼとアリーシャが仲良くしてる場面を見たかった」「ファン同士が非常に神経質になっているところに、あえて挑発的な物言いをさせるメリットはない」という声は多い。
また、ゲーム本編のロゼはアリーシャに優しかったのだが、後日談での急なキャラの変化にプレイヤーがついていけない。
良かった点としては、DLCのシナリオの最初、アリーシャはスレイの事をずっと仲間だと思っていたが、ハイランド王国の政治家・姫としてそんな気持ちは迷いなのではないかと考えていた。
そして、シナリオの最後で自分のスレイを想う気持ちが間違ってはいないと自信を持つことができた。
という「アリーシャがスレイを想っているシナリオ」の大筋であるスタートとゴール……言い方を変えるならばロゼが関わってない部分はそこまで異常なものではない事があげられる。
良い意味でも悪い意味でも「アリーシャが真の仲間になってしまった」とも一部では言われている。
なお、アリーシャ以外のキャラクターの外伝などはないそうだ。
問題点論議にそこまで熱心ではないものの「もうちょっと上手くやれなかったものか」「もったいない」と感じたプレイヤーも多いだろう。
声優に対する中傷
下記はあくまで参考のために記載する。あなたがこの意見を真実だと信じるか、特定の個人に対する下劣な中傷だと思うかは自由である。
馬場氏は小松未可子氏(以下:小松)のファンである(ただし、この発言も単なる社交辞令である可能性がある)。
そして馬場氏の小松氏への「情熱」から、ロゼと担当声優の小松氏には共通点があるとも炎上当時はまことしやかに噂された。あくまで一つの仮説として置いておく。
- ロゼと小松氏の身長は両者とも160cmである。
- 小松氏の座右の銘:I am me.(私は私) ロゼの真名『ウィクエク=ウィク』の意味は『ロゼはロゼ』
- 小松氏は男みたいな女みたいなキャラが得意だと自負している。
- 小松氏は『名探偵コナン』のアニメをよく見ていており、演じてみたかったまたは憧れていたキャラとしてヒロインの毛利蘭を挙げているが、毛利蘭とロゼは幽霊嫌いという共通の設定を持つ。
- 小松氏が好きな映画は『名探偵コナン』劇場版の『瞳の中の暗殺者』。後述するゼスティリアのDLCサブタイトルは『瞳の中に映るもの』でロゼを指すという解釈がある。またロゼは『暗殺者』である。
- 当映画においては『左利きの銃』と『傘』が重要なキーアイテムである。ゼスティリアではザビーダは左手で銃を撃ち、エドナは傘を持つ。
- 当映画において蘭が記憶喪失になるが、デゼルも記憶喪失である。
- 当映画の主題歌『あなたがいるから(小松未歩)』において「もしもこの世に汚れがなければ姿を変えずに愛し合えたのに」という歌詞が存在する。ゼスティリアにも「穢れで姿を変える」という概念が重要である。
- ゼスティリアにおいて『コナン皇子』というローランスの第二皇子が登場。彼はロゼに求婚しようとした人物だった。しかしコナン皇子は憑魔になって始末される。
- 小松氏の曲に『情熱』というものがある。ゼスティリアのジャンル名は「情熱が世界を照らすRPG」である。更に「薔薇(フランス語でRose)」の花言葉の一つに『情熱』がある。
- 同じアルバムに『THEE Futures』(あなたの未来)というアリーシャアフター的な名前の曲がある。歌詞に「そぞろ」って言葉が出てくる。これはそぞろ涙目のアリーシャを彷彿させる。
- 小松氏の好みのタイプは「心が豊かな人」 ゼスティリアは「zest」からの造語でファミ通の馬場英雄氏インタビュー曰く人が持つ「心の豊かさ」を掘り下げたかったため入れたかったという発言。
- 小松氏の声優としての活動期間は2010年4月の『HEROMAN』のジョーイ役がデビュー。ゼスティリアの発売は2015年で声優としての小松氏は5年目の活動となる。一方ロゼの所属している『風の骨』が暗殺ギルドとして活動を開始して『5年で100人殺している』という発言がある。小松氏も風の骨も5年目の活動。
- 小松氏は声優を行う前はアイドル活動を行っていた。風の骨で暗殺ギルドを行う前は傭兵ギルドを行っており「別の仕事」を行っている。
- デゼルの名前の元ネタはファッションブランドの「ディーゼル(Diesel)」ではないかと言われており、このブランドは馬場氏のお気に入りである。更にイベントで馬場英雄Pが来ていた服と帽子は、デゼルが着ていた衣装とほぼ同じである。この事からデゼルのモデルは馬場氏ではないかという意見も存在する。そしてデゼルはロゼを庇って死ぬ。
- 小松氏は以前ネコキャラをやっていた。ロゼの魅力として出ている「にゃんこっぽい口」……まさかね。流石に、これはこじつけだろうが、本作の映画版では、デゼル役の小野氏のキャラとネコが相棒という関係になっている(アニメ本編では仲が悪いが……)。
- 上記のアニメのwebラジオでは、小松氏とザビーダ役の津田氏がパーソナリティを務めている。デゼルの後釜にザビーダが入ったのは何か関係があるのだろうか?
ただ、炎上中はまことしやかに上記の説が信じられたが、熱が冷めた今となっては「こじつけがすぎる」「本気で言ってるの?w」といった感想を持たれる事が多い。
実際、上記の項目に「~イベントで馬場英雄Pが来ていた服と帽子は、デゼルが着ていた衣装とほぼ同じ(以下省略)」という部分があるが、これはゼスティリア発売前にニコニコで行われていた開発者生放送内の企画アンケート「某所でのゼスティリアの発売イベントで馬場氏が着ていく服装は何のキャラがいい?」という質問に対する当時のニコニコユーザーが生み出したカオス回答(太った馬場氏に対してスリムなデゼルの格好という悪ノリ)も一因であるため、一概に馬場氏のせいだけとは言えない。
これらの憶測から一部の過激派した層で噂がエスカレートし、声優や故人に対して口にするのも憚られるような下劣な中傷が行われた。
忘れてはいけないこと
声優はむしろ巻き込まれた被害者ともいえるので、この件を理由に声優への批判を行ってはいけない。
また、この事件は全ての関係者やキャラクターにとって不幸な事であり、勝利者はいないとも言える。
また、アリーシャに対する同情心や感情移入、あるいは自己投影が行き過ぎて、他のキャラクターの行動を過度に否定的なフィルターでしか見られなくなっている人も多い。「先鋭化するアリーシャファンに付いて行けない」「面倒な人に関わりたくない」など、徐々にだが確実に反応が変わってきているのも事実である。
スレイや他キャラクターのことを中傷しながらも、スレイ×アリーシャや他のキャラクター×アリーシャのカップリング妄想は持ち上げ、それをアリーシャのファンが諫めるのではなくむしろ積極的に参加した事も、他のファンは何も言わず静かに、だが決定的にファン間の断絶を深めていった。
騒動に対する公式側の反応
スタッフの解説
公式コンプリートガイドのインタビューで馬場氏と長谷氏による解説もあるが、まさかの「(DLCの)続きは作ってない」「作っていいと言われたら考えます」との表記。
DLCまでやっても物語は未完で終了?というファンの悲観的予測を斜め上に超えた結末を見せた。この先続編が作られる可能性はあるが、まだ各方面での承諾を取ってはいない状態のようだ。
と思いきや、DLCクリア時の「to be continued…」は『ゼスティリア』本編のエンディングへ続くという意味だという言い訳が後のファミ通インタビューでされた。
というのも「to be continued…」とはファンの間であると信じられていた、言わば都市伝説染みた存在しない単語であり、その事に言及せずに上記の言い訳をするというゲーム内容を制作側が理解せず、平気で嘘をついたというとんでもない事実が発覚しただけに終わっている。
また「こういった冒険ものでお姫様が登場すると、一緒に旅することもある。立場的に許されるなら問題ないけれど、アリーシャには背負わなきゃいけないものがある。アリーシャのキャラクターを考えた場合、彼女はスレイ達との旅よりも、王族として祖国を守る道を選ぶだろう(長谷)」と語っている。
問題なのは、「説明しすぎるとかっこ悪いというか興をそいでしまうので、大事なところは秘めています(長谷)」と述べており、本作全体の演出方針として世界設定やパーティーキャラクターの心理描写についてあえて掘り下げず、心情をセリフで説明する努力をしなかった点である。
このシナリオの説明不足については大きな批判を受けており、発売後の馬場プロデューサーは「これからはよりストレートに描写することを志向していきます」と、描写不足をほぼ認める発言をしている。
漫画版、小説版では尺が短い面はあるものの、本編の補完本として一定の評価を受けており、漫画版・小説版の作者はともにあとがきやツイッターで「わざわざセリフ(文章)にして全部説明するようにした」という主旨の発言をしている。
クリエイターが頭の中で何かを考えていても、作中で説明されなければプレイヤーには伝わらないのだ。
公式インタビュー
このような事態を受けて、ファミ通webにて馬場氏によるインタビューが行われた。
『テイルズ オブ ゼスティリア』馬場英雄プロデューサーに訊く、“ヒロイン”のこと、シリーズの“これから”のこと。
このインタビューを読んだ上でどのように感じるかは各自にお任せする。
なお、ヒロイン以外の問題点に関するフォローは未だない。
事態はテイルズオブ史上稀有な方向へ
本作品の広告方法や、内容やDLCの販売方法の瑕疵から、馬場氏に対してプロデューサー業務解任を求める署名活動も行われ、ネット上で5000件の賛同を目指し3027件の賛同が集まった。
この数字は署名サイトの中では比較的少ないものの、テイルズオブシリーズで署名活動が行われたこと自体が異例とも言える。
上記の署名が影響したかどうかは不明だが、実際に馬場氏はバンダイナムコゲームスを退社した。
馬場氏は次回作であるベルセリア(2016年8月発売)のIP総合プロデューサーを務めたが、その後2016年10月にスクウェア・エニックスに入社した。
その後、2017年にスクウェア・エニックス・ホールディングスは株式会社スタジオイストリアを発足し、馬場氏は同社の代表取締役となって、スクエニ側の新規RPGプロジェクト「Project Prelude Rune」の開発に取り組んでいたが、開発中止となり、馬場氏も2018年12月にスタジオイストリアの代表取締役を退任、2019年3月にはスクウェア・エニックスも退社している。また発足した株式会社スタジオイストリアは現在閉鎖されており、事実上の解散となっている。
なお、『テイルズオブシリーズ』の新しいプロデューサーについては、馬場氏がバンナムを離れる前に深谷泰宏氏がプロデューサー業務を引き継いでいる。
ゼスティリアの「ゲーム」自体は上記の『馬場氏の解任』という著名を口実にした証拠隠滅に近いかたちで無理やり丸められたと言っても過言ではない。
「アニメ化」という次の展開
その後、ゼスティリアという「物語」そのものについてはゲーム発売から2年後にアニメ『テイルズオブゼスティリアザクロス』を放送というかたちで、公式から比較的ユーザーの後味が良いゼスティリアが提供された。
アニメ化に至った経緯と変わったもの
上記アニメ、「テイルズオブゼスティリアザクロス」は元々『テイルズオブシリーズ20周年記念』アニメという名目で製作された。
ufotableの代表取締役社長である近藤光が「導師の夜明け」と同様に自らストーリーディレクター・脚本を務めてシナリオ部分が極力見直されてつくられている(また、近藤はプロデューサー、音響監督、音楽演出、主題歌監修、一部絵コンテなどを担当し、監督は映像面の責任者、近藤Pはシナリオ・音響面の責任者として作業を分担する制作方針が取られた)という力の入れよう。
シナリオはアニメの尺に収めるため原作の色々な要素を剥いだ結果、「災厄の時代、導師が世界を浄化する」というストーリーが残り、穢れや浄化についての探求を中心に物語が再構成された。原作を例として、ロゼとアリーシャの扱いを取り上げると、
- 二人のキャラをより掘り下げるタイミングを確保
第1期の中盤で「暗殺者とターゲット」というかたちであるものの、グレイブガント盆地突入前にゲーム中では登場しなかったロゼとアリーシャが接触するシーンがオリジナルで追加されている。
しかも「瞳にうつるもの」のようなドロドロした展開ではなく、真っ直ぐに互いの信念をぶつけ合い、認め合って共闘する約束を取り付けるという内容になっている。
アリーシャサイドの方は、ゼスティリア本編と前後して第1期最終回に従士契約をもっていったことで、離脱後も繋がりが出来た(下記参照)ため、アリーシャの行方がゲーム本編みたいにいい加減な憶測にならずに済んでいる。
別れる前に従士契約を結んだことでアニメオリジナル設定である従士の能力「導師との遠隔対話」が発動し、離れていてもお互いのことをある程度把握出来るようになっている。
第2期では、最初は別行動をしつつも「レディレイクのドラゴン」の一件でスレイと遠隔対話でやりとりをしながら次第に合流し、終盤のレディレイクで正式にパーティ加入した。
ロゼサイドの方も、序盤の「ローランス編」で「届かない理想より目の前の正義」という親代わりだったブラドの信念を引き継いでいることが明かされ、更にスレイの憶測というかたちであるもののゲームでは謎だった暗殺家業を続けてきても穢れなかった理由が『誰かのためになると信じて、穢れを受け止めてきたから』という風に明確に描写された。
セキレイの羽と風の骨の二足のわらじを履いている点もゲーム同様だが、スレイとライラの話を聞いて世界を正すための己の正義と暗殺という手法が根本的な解決にならないことに対して葛藤し、最終的には己の信念のために従士になることを決意するシーンが追加され、より加入経緯に説得力が増した。
上記のような大幅な背景描写の追加によって、ゲームでは説明不足だった『どのような気持ちで「暗殺業や従士の仕事をこなす覚悟」を決めたか』が分かりやすくなっている。
これらの大幅な描写によって視聴者がアリーシャとロゼの両方に感情移入しやすくなった。
これについて、近藤Pはインタビューにて「シナリオ変更には不安があったが、11話のロゼとアリーシャのやり取り(グレイブガント盆地突入前)の脚本を制作しているときにその後の展開への覚悟が決まった」と語っている。
- 能力格差の平等化
ライラを始めとした天族達が不自然にロゼを持ち上げだすきっかけとなったゼスティリア本編での二人のあからさまな能力の格差も解消されている。
新たにアリーシャの神依化が追加されたことや、その神依を発動する修行過程でアリーシャとロゼの両人が神依に苦戦する様子などが描かれた。
ロゼの方も「長期間のデゼルの干渉によって霊応力が高く、恐怖心を取り除いた後は自力で天族が見える」という点はゲーム同様であるものの、ゲームではすんなり発動出来た神依をアニメでは苦労して発動し、更に解除後もアリーシャ同様に負担がかなりかかっていた。
このように、ゲーム版程2人の実力差が開かずに済んでいるため、ダブルヒロインのような扱いがしやすくなった。
- 物議をかもした「真の仲間」イベントを削除
アニメの「ザクロス」においては従士契約そのものの設定が見直され、アリーシャとの契約と離脱に関わる経緯、ロゼ加入に関わる経緯、アリーシャとロゼの関係性などの要素が大幅に変更されたことで、「真の仲間」イベント自体が完全消滅している。
その後、二人が互いの信念をぶつけ合って和解し、アリーシャを含めた8人での最終決戦が描かれるなど、原作への不満を表明していた層にとっては「いつか夢見た世界」(第22話サブタイトル)が実現したと言える。
という状況である。
また、主人公であるスレイについても、
- 導師と従士の違い・穢れについて
アニメでは従士契約のリスクとして「導師が死ねば共に命を失う」というオリジナル設定が追加され、更に「従士自らが浄化の力を使うことは出来ず、導師が受け止める穢れを軽減する」というオリジナル制約も追加された。
これによって「真の仲間」の原因が取り除かれ、同時に『導師と従士の違い』がより視聴者の目に分かりやすく映るという副効果も得た。
ちなみに、契約の際にアリーシャとロゼ双方ともこのことを聞いた上で承認し、契約を行った。
アリーシャの方はスレイが力を使い過ぎて気絶していたもののライラに直接聞いており、ロゼの方もスレイと一緒にライラから聞かされている。
- スレイの性格
ゲーム中では比較的常識的で達観した性格だったため、プレイヤー側の一部にはスレイ自身の主体性が無くなったような印象を与えていた。
ゼスティリアザクロスでは良くも悪くも後先を考えない感情的な性格となっており、歴代主人公のような勢いでトラブルを解決する展開もブレンドした。
アイゼンを浄化するためのドラゴンの浄化方法もメーヴィンに尋ねたりして調べ、最終的に「ドラゴンの穢れを受け止める」という答えを導き出している。
また、ゲーム本編よりも感情表現が豊かになったため、主人公としてより親しみを持ちやすくなっている。
- アリーシャの描写
あまり手放しで称賛されていない箇所である。
原作のアリーシャはどちらかと言うと平凡な少女的精神の持ち主である。窮地には戸惑うし危険には怯えるし困難を前に涙を流す場面もある。一応貴族といっても末席の末席で軽んじられており、誰より天族に憧れながらも天族に関わる際には恵まれていないというのもまた悲劇的であった。
こうした要素が「ザクロス」では完全に反転している。
多数の部下を厳粛に統制する軍人然とした言動が頻繁に見られ、突発的な窮地にも果敢に立ち向かう勇敢さを備え、妾の子とは言え王の直接の子ということになり、天族を感知する才能も与えられた。
極めつけに戦闘力は達人という境地を越えて人間離れすらしており、襲撃した憑魔ルナールを一切の異能なしに制圧し、短刀を2本携えて奇襲したロゼを短刀1本で圧倒するなど常軌を逸した活躍を見せている。
確かに原作のアリーシャの描写が上手くいっていたとは言い難いわけだが、アニメはそれを全部ひっくり返してしまったのみであり、贔屓の対象がロゼからアリーシャに変わっただけだという批判は多い。
- テイルズオブベルセリアとの関連
本作ではテイルズオブベルセリアに関連する描写が多数見られ、特に第1期の6話(#05)と7話(#06)は当時発売前であったベルセリアの序盤部分がアニメ化されている。これは番宣も兼ねたバンダイナムコからの要望であり、ゼスティリアの物語とリンクする形でベルセリアの物語が挿入された。そのため、ベルセリアにあるシーンをオマージュした演出や一部作品のネタバレとなるシーンも存在する。
これらの他にも幾つかの「シナリオや設定の描写不足や矛盾等の問題」が解消されている。
しかし、放送時間が決まっているというアニメならではの制約からか、出番が大幅に減ってしまったキャラクターもいる。アニメ版では特に「人間視点での穢れの世界」の描写に力を入れているため、結果として天族関連の描写は減少している。本作は声優陣にも好評であり、インタビューや舞台挨拶にて、ゲームで成し遂げることができなかったドラゴンの浄化に成功したことに対して喜びの声を上げていた。
ただし神アニメとまで持て囃す動きは、ほとんどミーム化したといっていい原作に対する批判への反動という面が大きい。
RPGを2クールに凝縮したがゆえにテンポが早すぎる脚本、同様に多すぎる登場人物の掘り下げ不足、あからさまに商業的な動機で挟まれたベルセリアのエピソード、アリーシャの過剰とも言える改変など、批判される点も多々ある。
なお、アニメ化に際し新たに制作されたオリジナル設定(神威、穢れ関連)やシナリオはufotableが提案し設定制作を行っているが、新たな設定・シナリオについてはバンダイナムコスタジオと協議をしたうえで決定されている。また新衣装やキャラクターデザインはバンダイナムコスタジオが制作を担当している。これは近藤Pの意向によるものであり、「全員と合体して、全員の力を借りて戦う終盤のスレイのように、ゲーム制作者も含めみんなの力で作りたい」という提案をバンダイナムコスタジオが受け入れた結果、今回のアニメ作品がつくられた。
- ちなみに
アニメ放送中にネット上では「これが本来のシナリオだったのではないか?」という噂が広まったがゲーム及びアニメ関係者はこれを否定している。また、ゲーム開発の企画段階ではufotableが開発初期から参加する計画もあったが、ufotable側の都合により途中からの参加となったためゲーム版のシナリオ制作にufotableは関わっていない。
また、「シナリオ変更は炎上騒動や馬場Pのプロデュースに納得のいかなかったゲーム及びアニメ関係者の判断」という意見もみられたが、シナリオ変更に関しては上記の通りアニメの尺に収めるため原作の色々な要素を剥いだ結果であり、インタビューやイベントでもゲーム及びアニメ関係者はゲーム原作を否定する発言はしていない。また、馬場Pも(放送中にバンナムを退社したため)1期のみであるがスーパーバイザーを務めているため本作の変更には合意しているものと思われる。ちなみに、馬場Pとアニメ版のシナリオを担当した近藤Pは互いに懇意の仲である。炎上騒動後の馬場Pを最初に表舞台に連れ出したのは近藤Pであり、馬場Pもufotable関連の作品・イベントに応援メッセージを送るなどアニメ放送後も良好な関係が続いている。
以上の事から馬場Pのゲームにおけるプロデュースや炎上騒動とアニメのシナリオ変更に関係はないと思われる。
そして月日は流れ…。
このテイルズオブゼスティリア炎上騒動から約1~2年後に『テイルズオブベルセリア』が発売された。
ここと上記の「ゼスティリアザクロス」で災禍の顕主のことや穢れのこと、天族のことなど、前回曖昧になっていた幾つかのことに対して補足説明(という名のテコ入れ)がなされた。
更にそこから5年以上の歳月が経ち、25周年目の作品として『テイルズオブアライズ』が2021年9月に発売された。
アライズの開発コンセプトはテイルズオブシリーズの「継承と進化」であり、プロデューサーも富澤氏が新しく就任した。
当記事は元々ゼスティリアに関する記事であるため、詳細は『テイルズオブアライズ』の個別記事に譲るが、「発売間隔が短すぎてマンネリ化していたシステムの改善」や「主題歌に恒例になっていたベテラン勢ではなく、比較的最近デビューしたアーティストを起用」…など、馬場氏の時に「当たり前」になっていた諸々のシステムや流れにメスが入れられた。
「心の黎明を告げるRPG」という固有ジャンルを持つ本作であるが、まさに「テイルズオブシリーズの黎明を告げるRPG」として充分な役割を果たした。
最後に
この『テイルズオブゼスティリア騒動』によってテイルズオブファン、作品関係者に刻まれた傷はとてつもなく大きい。癒えることは並大抵のことでは不可能であると思われる。
また、関係者全員にとって、キャラクター展開のバランスの難しさを認識させる事になっただろう。
今後もシリーズが続いていくのであれば、製作者側には当然ではあるがファンのことを考えた真摯な作品作りを心がけてもらいたいものである。
また、ゲーム原作やアニメ版のどちらにも作品を肯定的に見ているファンは多い。また、声優陣や参加スタッフの多くはどちらの作品も肯定的に見ている発言を残している。作品に対する複雑な感情を持つ者もいるだろうが、それが関係者や作品を楽しむファンに対して誹謗中傷を浴びせて良い理由になるわけではない。そのことを忘れずに作品を楽しむことが大事である。
また、これほど炎上したにもかかわらず、ゼスティリアの注目度とキャラ人気は未だに高い。「メディアミックスの良い所取りをした、みんなが幸せになれる『完全版ゼスティリア』あってもいいのよ」という声も聞こえるが、実現するのかどうかはバンダイナムコゲームスのみぞ知る。