「怯まずに進め、我が子よ!」
概要
勇者として生まれながら歴史に名を残す事ができず、この時代のリンクに技を授け、彼をハイラルを救う光の勇者へと導く亡霊。
リンクと同様に狼の姿に変身することができ、こちらは金狼の姿になる。利き手もリンクと同じ左利き(左右反転のミラー世界になっているWii版では右利き)。
容姿
スタルフォスの亜種のような姿で、一般的なスタルフォスとは違い片目だけが赤く光っている。
正体
その正体は、かつてハイラルを救った時の勇者の成れの果て。
簡潔に言えば、『時のオカリナ』や『ムジュラの仮面』の主人公として登場したこどもリンクその人である。
「勇者として生まれながら後世に名を残せなかった」のも『時のオカリナ』のエンディング後、子供時代に戻った彼はゼルダと共にガノンドロフの野望を事前に阻止し、「勇者と魔王の戦い」が起こらない世界をつくった為、「時の勇者伝説」が存在しない本作の世界観と一致する。
(逆に大人時代の世界では「時の勇者伝説」が存在し、その未来の世界では伝承として語り継がれている)
元の時代に帰還したリンクだが、その運命は悲哀に満ちたものであった。
父と母を失い、コキリ族として育ちながらハイラルを救う勇者としての宿命も背負わされ、7年後の大人時代でガノンドロフを倒しハイラルを救った後、7年前の元の時代に帰還。
しかしハイリア人であるため、大人に成長してしまうが故に第2の故郷であるコキリの森へ帰ることはできず、初めてゼルダ姫に出会った時間軸に帰還したため、冒険の中で知り合った人々とも初対面の関係になってしまい、ダルニア達ゴロン族にはキョーダイと呼ばれず、ルト姫にも好意を抱かれない。
ちなみにコキリ族にして幼馴染みのサリアは以前からリンクの正体に薄々と気づきつつも想いを寄せていたが、前述の事情が原因で最終的に身を引いた可能性が高い。
唯一関係が変わらないのは、ハイラル城へ侵入する前に必ず出会い、続編でエポナを譲ってもらう事になるタロンとマロンくらいである。
ナビィとも別れた後の『ムジュラの仮面』では、時のオカリナを持ってハイラルから遠ざかるようゼルダ姫に言われたためにハイラルを去る事になり、異世界のタルミナでも危機を救った後も、スタルキッド達に別れを告げただけで、人知れず元の世界へ帰ってしまう。
そのタルミナですら、ムジュラの仮面の魔力によって、スタルキッドの記憶と妄想が生み出した幻の世界であり、エンディング後に世界そのものが消滅していた事が『ハイラル百科』で明かされている。
結局、時の勇者としてのリンクの活躍を覚えている者はほとんど皆無であり、勇者として名を残せないどころか、自分の存在を誰一人として知る者がいない世界に取り残されるという、孤独と悲しみに押しつぶされそうになるほどの不憫な末路をたどっていたのである。
これでは死後に未練が残り亡霊になるのも仕方ないだろう。
『トワイライトプリンセス』のリンクのことを「勇者の血を引く者」と呼ぶが、『ハイラル・ヒストリア』で『トワイライトプリンセス』のリンクは古の勇者(時の勇者)の子孫であることが判明している。
勇者として名は残せなかったが、奥義を子孫に受け渡し、自分が生きた証を立てる事が出来たことが彼にとって最大の救済なのかもしれない。
漫画版
姫川明先生の漫画版ではかつて「時の勇者」であったことを明言しており、キーキャラクターのひとりとして活躍している。
一部設定が変わっており、時のオカリナの戦いでガノンドロフを封印した後、ゼルダ姫が奏でた時のオカリナによって7年前に時間を戻されている。彼もまた『リンク』であり、時オカのゼルダ姫の記憶を持つ現ゼルダ姫とは思い合っている。またリンクとの血縁関係はないが「息子」として見ている。
時が巻き戻された事で「時の勇者と魔王の戦い」は現在の世界にとってなかったことになった。しかしトライフォースを通じて次元を超えた記憶と因縁が現在のゼルダやガノンドロフにも受け継がれてしまい、リンクを巻き込む事となってしまった事を語った。
死後は制限はあるものの時間・空間・次元を渡る力を得て、金色の狼の姿で影の世界を見張っていた。ミドナとは金色の狼の姿での交流があり、王女として気の休まる時がなかった彼女にとって数少ない理解者となっていた(ただしミドナは彼が死者であることを含めて、正体までは知らなかった)。
ザントが反乱を起こした際に消滅させられたとのことだが生存しており、後にザントに敗北したリンクの窮地を救った際に驚かれた。その時は威圧するだけでザントを怯えさせ撤退させた。
かつてリンクが“ガウロフの剣(影の世界を封印する蓋)”を引き抜き、故郷もろとも影の世界に引きずり込まれそうになった時に骸骨の剣士の姿でリンクだけを光の世界に戻した。しかしリンクは「死神に引きずり込まれそうになった」と勘違いし、故郷を失ったショックもありトラウマになっていた。
世界の異変の後は技量・精神共にまだまだ未熟なリンクを叱咤激励しながら鍛えつつ、リンクやミドナの旅を助け支えている。
その実力は、マスターソードを手にして「俺は最強の戦士」と舞い上がっていたリンクを圧倒するほど。リンクに奥義である回転斬りを伝授しようとしたが、まだまだ不十分だとして一度は見送った。
最終巻ではリンクとガノンドロフの一騎討ちの最中、最後の味方として参戦。リンクはガノンドロフから「魔王は何度倒されても蘇る。つまり勇者は魔王に勝てない」と聞かされ精神力が弱り、隙を突かれていた。颯爽と現れて救った後は「ガノンドロフも魔力の源を失い魔法が使えなくなっている」ことを指摘し、逆にガノンドロフを動揺させた。
直後、リンクと共にはなった師弟回転斬りでガノンドロフにダメージを与え膝を突かせる。愛弟子の成長を見届けたことで無念は晴れ、「血の繋がりはなくともお前は息子だ」と言葉を送り、最後にゼルダ姫に見送られながら昇天していった。
エンディングでは密かに復活したのか旅立つリンクを茂みの中から見つめ、餞別の咆哮を上げた。
余談
- 「時のオカリナ百科」のスタッフによれば、時オカエンディング後のリンクがどうなるのかについては「リンクはガノンドロフと戦うという輪廻を繰り返す。みんなは7年後も生き続けるがリンクだけそれができない。人のために生きる、それが勇者としての使命だから」と推測している(飽くまでもリンクがどうなるのかは彼次第であり、これらはスタッフの希望である)。古の勇者は繰り返す輪廻には入らなかったが『人のために生きた』結果、無念だけが残って亡霊となってしまったのだ。
- Pixivでは半壊したオカリナを持つものがあり、上記の理由から時のオカリナを生涯持ち続けた可能性があるのであながち間違いでは無いだろうが、死に際に持っていたという設定は無いので、あくまでも二次創作の範疇を超えないものである。
- 『時のオカリナ』『ムジュラの仮面』でディレクターを務めた青沼英二は本作も担当しており、当時のインタビューで「僕自身は、ゲームの中に「これがオレだ」というのを入れたいところがあって(中略)今回は彼が僕の分身なんです(笑)」と答えている。
- ティアーズオブザキングダムでは、全ての祠をクリアすると報酬として「古の勇者の魂」という名の装備を入手できる。ただしこちらはリンクとも骸骨剣士とも似ても似つかぬ、ゾナウ族とハイリア人の間のような異形の姿をしている。その姿や周囲の反応から正体は1万年前に厄災ガノンを封印した当時の勇者であり、こちらの古の勇者とは無関係である可能性が高い。