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メルカバの編集履歴

2012-08-23 20:54:03 バージョン

メルカバ

めるかば

イスラエルがはじめて独自に開発した戦車。独自の考えに基づいた設計を多く凝らしてあり、フロントエンジンや車体後部ハッチなどが特徴である。ちなみに「メルカバ」とは古代の騎馬戦車の事である。

誕生経緯

イスラエルは周りを敵が囲んでおり、そのため過去に何度も戦争をしていた。

(1948年の第一次中東戦争~)


当然、戦車が活躍する。

イスラエル第三次中東戦争(1967)とフランスからの武器供給停止に対し、

イギリスとのチーフテンを元にした主力戦車の共同開発を申し出て契約が行われる。


しかし1969年以降のアラブ諸国からの圧力、

それに伴うイギリスの対中東戦略の見直しによりこの契約はキャンセルされた。


当時、イスラエルで使用されていた戦車は『ショット』(センチュリオン改良型)と、

アメリカM48、それとM4シャーマンの改造型『M50』『M51』位だった。

一応過去の戦争で鹵獲した戦車(Ti-67(チラン)など)が加わるものの、

次に起こる(であろう)戦争への備えは万全ではなかった。


そこでイスラエルは1970年、独自の主力戦車を開発することを決定する。

第四次中東戦争(1973)では西ドイツアメリカから導入したM60パットンを使っていたが、

なにぶん砂漠専用の戦車ではなく、何よりももっと防御力が欲しいとの教訓を得ていた。


防御力の要求

イスラエルには味方が居ない

少なくとも、周辺諸国で味方になってくれる国家は存在しない。

第4次中東戦争のように周辺の国が一丸となって攻めてきたら、ひとたまりもないのである。

(実際、かなり危ない所までいった)


そこで問題になるのは兵力である。

イスラエルは周辺諸国に対して人口では勝てるべくもなく、

よって兵士一人あたりの価値は相対的に高いのだ。


そういう訳で『戦車が大破しても、乗員は助かればまた戦える』という考えに至るのである。

実際、メルカバは生存性の向上に多くのリソースを割いている。

詳細は後述。


第四次中東戦争で持ちこたえた理由

公然の秘密となってはいるが、一応記述する。


アラブ連合軍の新戦術に対し、頼みのイスラエル軍は各地で打ち破られていた。

それまでの戦争で必勝パターンを読まれ、対抗策を取られたのだ。

陸軍は待ち構えた十字砲火でハチの巣に、

空軍すら新式の防空網の前には『お池のアヒル』同然にされてしまっていた。


エルサレムに届く戦況は「苦戦」「敗走」が並び、

いよいよイスラエルにも最期の時が近づこうとしていた。


だが、イスラエルには最大の『お友達』が残っていた。

アメリカの存在である。

何としてもアメリカの支援が欲しい。

しかし、アメリカにはイスラエルを助ける理由が無かったのだ。


そこで、イスラエルは極秘に開発していた『核兵器』を盾にした。

要はこう伝えたのだ。

『このまま敗北し、我ら流浪の民に戻るならば、ここに聖地もろとも十万億土へ旅立つしかない』と。

(つまり聖地を人質にとった)


効果は抜群だった。

続々と支援物資が到着し、イスラエルは土俵際で持ちこたえたのであった。

この時メルカバと同じく、独自装備としてガリルが導入され始めていた。

しかしこの時に急遽M16が大量に輸入され、結局「お蔵入り」になってしまうのだが、

それはまた別の話である。


その後?

一度は核兵器を盾にして支援を取り付けたイスラエルだったが、

その後は『核兵器?はて、そんな事言いましたっけ?』

とシラを切って現在に至る。


今なおイスラエルの核兵器保有疑惑は晴らされていない。

一番の後ろ盾にして支援者であるアメリカが査察に乗り気でない事が一因なのだが、

それはそのままイランイラク核兵器保有に向けての動きを後押ししているである。

(いわゆる相互破壊確証とも)



開発へ

タル将軍が率いる開発チームはイスラエルの戦場の独自性(砂漠)と、

これまでの戦訓に基づき、乗員の保護・生存性を重視した戦車の設計を行った。

初めての国産戦車「メルカバ」の開発は、1977年5月13日に承認されたのである。


特徴

開発において最優先にされたのが乗員の保護である。

そこで本来は後ろに搭載されるエンジンを、前方に搭載した。

エンジンは巨大な鉄塊なので、それも防御の役に立てようという訳である。


車体後部はこうしてがらんどうとなり、そこを「乗降ハッチ」とした。

普段はハッチまわりに予備の砲弾ケースを並べてあるのだが、

必要なら隙間に負傷者を収容することもできる。

もちろん、砲弾と引き換えに歩兵を同乗させることも可能である。


もちろん戦車砲だけではない。

地雷ロケットランチャーと言った対戦車兵器に対する備えも万全である。

戦車の底面は地雷路肩に置かれた爆弾(IED)を想定した二重底、

後部の砲塔基部すき間にもチェーンカーテンを垂らし、HEAT弾頭から弱点を守っている。


エンジンも今までの運用で実績を積んだ「コンチネンタルAVDS-1790系ディーゼルエンジン」である。

このエンジンはM48やM60といったアメリカ製戦車で一般的なパワーユニットである。


操縦席は前にあるので戦闘室とは隔離されており、どちらかは必ず生き残るようになっている。

また、エンジンが無いので車内後部にはかなり広い室内スペースが確保されており、

乗員のストレス軽減や相互連絡の円滑化、砲弾の積載能力などを高めている。

もちろん補給も楽で、そのうえ敵に前を向けたまま補給できる利点も大きい。


バリエーション

  • メルカバMK.1

1979年4月より運用の始まった最初の型。

主砲には105㎜の「L7ライフル砲」(イギリス製)が装備されており、

1982年のレバノンT-72を撃破して初陣を飾った。


  • メルカバMK.2

1982年の初陣で明らかになった教訓を反映させた改良型で、1983年登場。

市街戦に備えて装甲が強化され、

(市街戦では隠れる場所が多いので、どの方向からでも狙われる可能性がある)

さらに近接防御兵器である小型迫撃砲が内装式になった。


射撃統制装置を更新した「Mk.2A」、

レーザー・赤外線照準の逆探知装置を追加し、サイドスカートもMk.3仕様にした「Mk.2B」、

モジュラー式装甲を大幅追加した「ドル・ダレッド仕様」がある。


  • メルカバMK.3

1990年より配備が始まった新造型。

エンジン・トランスミッション・サスペンションが新型になって、さらに重量増加。(65t)

主砲も新型になり、国産の120㎜砲となった。


トップアタック兵器(対戦車ミサイルや上から撃ち下ろすRPGなど)対策として上面の装甲を強化、さらにNBC兵器を想定して空調装置を強化した「Mk.3B」や、

戦闘ヘリに主砲で対抗できるように火器管制装置を強化した「MK.3Baz(バズ)」、

Mk.2同様にモジュール式増加装甲を追加したMk.3「ドル・ダレッド」がある。


  • メルカバMK.4

現在の最新型。

2004年から配備が始まっている。

装甲はモジュール式が多用され、より大型になった砲塔が特徴である。



実際のメルカバ

しかし、一番特徴的なのは『戦車を相手にしない戦車』という事実である。

新聞の写真などでお馴染みのとおり、もっぱら暴徒鎮圧や都市制圧に使われているのだ。

そのために前述のような工夫をしているのであり、

通常の戦車などではまずお目にかかれない構造である。


つまり、対歩兵用戦車だと言える。

戦車を相手にする必要はなく、歩兵にとっての盾になればいいとの考えなのだ。

(それと周囲への威圧効果)

少なくとも戦車優先では作っておらず、『戦車と戦っても強い戦車』では無いとも考えられている。


海外ユーザーも存在しない。

メルカバは砂漠重視の戦車であり、砂漠のある場所はすなわち中東

有効に利用できる国家は敵しかいないのだ。


現在では当初重視された防御力にも不安が出てきた。

APFSDSなどの強力な砲弾が登場し、攻撃力が防御力をはるかに上回ったのだ。

こうなると前面すらエンジンブロック程度の構造物では防御できず、

むしろ構造上の不利が明らかになったのだ。

(エンジン整備の不便さ、重量バランスの悪さなど)


最新式のMk.4などは遠距離砲戦を重視した照準装置を装備しており、

これは『撃たれる前に撃破する』という考え方である。

この事は「撃たれても平気」という生存性の高さとは相反する考えであり、

(設計当初との)情勢の違いが明らかになっている事の証拠ともいえるだろう。


また、戦車としては最重量級なのも欠点である。

同世代の戦車としてはM1A2チャレンジャー2が62t、

ルクレールが56t、90式戦車の51tに比べても、かなり重いと言えるだろう。

(M-1やチャレンジャーはかなり重い方なのだが、それ以上に重い)


かつてドイツが証明したように、重い戦車は不都合が多い

対策はもちろん今までの戦訓を取り入れた新型の軽量戦車の開発であるが、

当然ながらどこの国もイスラエル戦車を売りたがらないだろう。

(イスラエルの味方はアラブの敵とみなされる=石油を売ってくれなくなるかも?)


次なる戦車も当然。イスラエル国産だと予想できる。

それがイスラエルが自ら背負った宿命であり、いわば呪いであるのだろう。


戦車×市街戦

チェチェンでは市街戦に投入された戦車がかなりの損害を出していたが、

使い方さえ心得ればかなり有効な歩兵の味方である。


戦車は強いが、外がよく見えないので携帯型対戦車兵器に弱い。

対戦車兵器を持った兵士なら戦車にも対抗できるが、どうしても動きが鈍るので歩兵に弱い。

歩兵なら動きの鈍い対戦車兵をカモにできる。ただし戦車の火力・防御力にはなすすべが無い。


要約すれば「三すくみ」となる。

実際に「ファルージャの戦い」(2004)では、

戦車が不足して装甲車が歩兵支援を補った海兵隊よりも、

十分な数の戦車歩兵を支援した陸軍の死傷者が少なかった。


要は戦車歩兵が密に連携し、対戦車兵を近づけるスキを作らなければいいのだ。

戦車は横や上が弱点だが、そこは歩兵が掃討しておけばいい。

残った正面は装甲が厚く、文字通り正面切って戦うのは非常に不利である。


また、戦車の火力は市街戦でも非常に有効に使える。

M-2ブラッドレーの25㎜機銃では、貫通力がありすぎて建物を何棟も貫通してしまう。

だがM1エイブラムスが主砲でHEAT弾を使えば、部屋1つだけを吹き飛ばすことが出来る。

市街戦では他にも、戦車は目立つのでいい陽動になる等の利点がある。


いつだって戦車歩兵と協調してこそ、真の力を発揮できるのである


関連タグ

戦車 イスラエル IDF

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