地獄の騎士バルトス
まおうぐんさいきょうのきし
概要
ハドラーの禁呪法により生み出された6本の腕を持ち、そのそれぞれに刀を持って戦う骸骨姿のアンデッドモンスター。ハドラー率いる魔王軍最強と謳われた騎士で、魔王ハドラーの間へ通じる地獄門の番人を任せられる程の力量を持つが、敵に対しては強さのみでなくその姿勢にも敬意を抱く武人であると同時に、とても温厚で礼儀正しい性格の怪物。種族は『ドラゴンクエストⅢ』に初登場したがいこつけんし族の「じごくのきし(地獄の騎士)」。
20年前のある日、ホルキア大陸のある村で置き去りにされた人間の赤子を発見。仲間のオークが殺めようとしたところを制止し、しばらく赤子を見つめると情愛が生まれ「親に見捨てられたか……哀れな…」と抱き上げ、地底魔城へ連れ帰り、かつて魔界で名を馳せた剣豪の名前である「ヒュンケル」と名付けて育てていった。
「人間の子供を育てる」という魔王軍にあるまじき酔狂が許されたのも、バルトスが魔王軍最強の騎士としてハドラーから絶対の信頼を寄せられていたがこそであった。
ヒュンケルを城の外に出してあげる事はできなかったが、最初は戸惑っていた仲間モンスター達にも笑顔が溢れ、徐々に距離も縮まって一緒に遊んだりして実の息子のように接するようになった。
4年の月日が流れ、ヒュンケルから折紙で作られた【星の勲章】が贈られる。その際「ワシが初めて貰った勲章だぁ!」と喜び、大事に首から下げており、当時を詳細に描いたスピンオフ作品では任務の為に南海の孤島へ出発する同僚に笑顔で掲げて見せていた。
訪れた破局
ヒュンケルが6歳を迎え幸せな日々を送っていた二人だったが、一つの伝令が舞い込んできた。
『大変です、バルトス様! 勇者達が攻めて来ました!!』
遂に勇者一行が、地底魔城へと攻め込んで来たのだ。
勇者に討たれる運命が自分に来てしまったこと、そしてヒュンケルとの今生の別れが訪れたことを覚悟を決める。 地獄門の門番としての使命を全うせんとするバルトスは、ヒュンケルに、「この部屋から決して出るでは ないぞ? わしが死んでも強く生きるのだぞ…一人でな」と告げる。 無理矢理ついて来ようとするヒュンケルに「ヒュンケル、お前は地獄の騎士バルトスの息子だろう!? 涙を拭け・・・!」と宥めた後、ヒュンケルの姿を眼に焼き付け、哀しみを胸に戦場へと赴いた。
戦場へ到着すると勇者であろう者と交戦中の防衛部隊を目の当りにすると「退くな! 地獄門を死守しろ!! 魔王ハドラー様を御守りするのだ!!!」と部下達の士気を高め自らも抜刀、勇者に立ち向かった。
しばらくして魔王の断末魔が響いた直後、異変を感じて部屋を飛び出したヒュンケルの目の前で、身体が灰となって消滅した。
「我が息子…ヒュンケルよ…思い出を…ありがとう…」
ヒュンケルの育ての親であり、死してもなお彼が最も尊敬している人物である。
バルトスの教えはヒュンケルの人としての根幹となっており、人を恨み魔王軍に在籍してなお女性を殺さなかったり、卑劣な手段を嫌うのは彼が教えた騎士道に他ならない。
ハドラー率いる魔王軍の四名の幹部「ハドラー四天王」の一人として登場。勇者が魔王打倒の修行に出た段階でヒュンケルが作った星の勲章を既に身に着けている。
劇中ではガンガディアは呼び捨てにしているキギロから「さん」付けで呼ばれているため、魔王軍幹部の中でも古参と見られていた模様。
デザインも骸骨剣士そのものの原作の姿から手を加えられ、フード付きのマントを纏い、6振りの愛刀を背中に背負った現代風の姿となっている。
ただ勇者との戦いでそれら装備は剥がれ、決着時には原作の姿になった模様。
劇中ではデルムリン島に戦力増強のために赴く同僚のブラスをヒュンケルと共に見送った。
海底宮殿編の終盤では他の幹部が徐々に力をつけているのを感じ、城全体が異様な空気に包まれている事から軍の中で勇者達の存在感が増しているとしている。
基本的に他人を悪く言うような人物ではないが、ザボエラと名乗った者の自己顕示欲が強すぎる態度と性格の悪さには思わず気分を悪くしていた。
勇者一行が攻め込んで来てからは、ヒュンケルを避難させた後ハドラーの間へ続く地獄門へ赴く。
勇者一行が進撃する中、ハドラーが新たに生み出した禁呪法により生み出された新たな部下と会いその人格から今更ながらハドラーの変質に気づくことになる。
地底魔城の強豪たちを退き、地獄門へ辿り着いた者を称える。 その者は、『仲間達が自分をここまで進めてくれたからだ』と答えるが、それに対しても『お主に徳があればこそ。 信じるに値しない者には、仲間も身を投げ出さないだろう』と称賛。
自身の名を名乗ると、彼の者もそれに応えるように名乗った勇者アバンと・・・
戦闘力
6本の腕と剣から繰り出す己が鍛えた剣技のみで戦う純粋に強いハドラー軍最強の剣士。戦死した剣の達人六人分の腕には各々の得意とする技が宿っており、単体でも強力ながらそれらが他の腕を阻害せぬように鍛練を重ねており、そこから繰り出される変幻自在かつ剛と柔等を合わせた千差万別の剣技はきわめて強力。中でも地底魔城の通路を抉る強力な突き技は、勇者を戦慄させる。アバンの剣技や戦略も見抜くなど観察力も高く瞬時に対応していた。
小話
1991年版のアニメでは、『ドラゴンクエストⅢ』における地獄の騎士の配色であったが 2020年版は、がいこつ剣士の配色に変更されている。 部下の人数も1991年版では、がいこつ剣士やボストロール、オークなどで構成されていたが 2020年版では、ボーンファイターやギガンテス、ミミックなどの部下が増員されている。
1991年版でバルトスを演じた平野氏は、CDシアタードラゴンクエストシリーズにてハレノフ、武器屋を訪れた客、オジロン王などを演じている。
2020年版でバルトスを演じた渡辺氏は映像・舞台での活動がメインのベテラン俳優で、本格的なアニメ出演は2018年の『おしりたんてい』(ちなみに制作会社は『ダイの大冒険』と同じく東映アニメーション)からと声優としてのキャリアは浅いが、あまりに自然な演技だったことに加え事前の出演告知もなかったため、エンドクレジットを見た視聴者の大半を驚かせることになった。(ちなみに渡辺氏は勇者ヨシヒコと導かれし七人にもゲスト出演している)
2020版2ndED『アカシ』は、「心が疲れた時、故郷に魂だけでも帰りたくなるアバンの使徒たち」なるコンセプトで展開するが、ヒュンケルの魂は地底魔城の、バルトスが戦死した地獄門に戻っている。
人物関係
ハドラー軍
バルトスを禁呪法によって造り出した魔族にして、バルトスが仕える主である魔王。
『勇者アバンと獄炎の魔王』より遡る事5年前に、バルトスが見つけた置き去りにされた人間の赤子だったが、それを哀れんだバルトスが地底魔城に連れ帰り育てている。
血縁どころか種族さえも違うが、魔界で名を馳せた剣豪から名前を付けて愛情持って育てたり、そのヒュンケルからも手作りの勲章をもらうなどその親子仲は本物であった。
バルトスの同僚である幹部達(四天王仲間)。後にハドラーが指揮する魔王軍幹部とは違い全員との関係は良好。
ブラスとは彼がデルムリン島に向かう際にはヒュンケルと共に手を振って見送りをするなど仲は良好。『(バルトスが)ハドラー軍の幹部としては先輩である』という事情でもあるのかキギロからは『さん付け』で呼ばれている。ガンガディアとはハドラーがアバンによる封印の策によって封印状態かつ行方不明で不在の間は、バルトスは地底魔城の防衛、ガンガディアは軍の運営という形で共にハドラー軍を守った。
最終決戦間近に新たに生み出された幹部。禁呪法で生み出された為、弟にあたる。
あまり性格がいいとは言えないため他の幹部の様に好感は抱かなかった。
関連タグ
【これより先、彼の未来と真実が記載されているため 閲覧には注意されたし】
強き者 地獄の騎士バルトス
命運を賭けた1VS1の戦闘は、力と技の応酬。最も優れた身体を持つ剣士の身体に、突き、力、斬り、払い、受け流し、居合いに長けた剣士の屍の腕で変幻自在・千差万別の太刀筋でアバンを翻弄。
多くの戦場を潜り抜け、鍛錬を重ね続け育てた技量でアバンを打倒しようとするが、相手は瞬時に分析し各々の剣に対応した剣術で反撃に出てきたのだ。
苦戦を強いられることを想定し、刃の防御を取るもアバンの力の必殺剣は反撃に備えていた残る2本の剣も防御に費やさねぱならぬほど強力で、追撃による技の必殺剣の連続技で所持していた剣を全て払われてしまった。
武器を全て取り払われ、討たれる運命を悟るが・・・
『もはや、これまで・・・ハドラー様、御許しを・・・!』
【武具】
- 鋼鉄の剣
- 鋼鉄を鍛造して製造された剣。刀身が反身になっているのが特徴。6振りを携えるために専用の鞘が設計・製造されている。
- ひのきの棒
- 檜を棒状に加工したもの。軽量のため身体能力が優れぬ者から歴戦の戦士達の訓練用装備としても愛好される。 木刀剣状に加工し、ヒュンケルに剣術の稽古をつけるために使用した。
【技】
- 不動地獄剣
- 所持する武器を絞り込み、一撃の威力を増幅させて相手を迎撃する防御の形。作中では1本の剣に対して2つの腕で握り、3本の剣を構えてアバンの一撃を一刀で受け止めて残る二刀で反撃することを想定していた。最後の番人が持つ刃の防御。
- 急所突き
- 相手の急所を貫く突きの技。突きの名手の剣士の腕に己が鍛えた力と技の力量が上乗せされた事で壁を大きく穿つほどの威力を持つ。
【重要装備】
- 星の勲章
- ヒュンケルが作った紙細工でできた勲章。肌身離さず身に着けている。
真実の父の声
ダイ、ポップ両名と激戦を繰り広げていたヒュンケルは、マァムからもたらされた魂の貝殻に残されたメッセージで真実を知る。
あの日バルトスは、地獄門の門番として勇者を迎え撃ったが、歯が立たず敗北し、死を覚悟した。ところがなぜかアバンはとどめを刺そうとせず、剣を収める。
「情けをかけるのか?」と憤慨するバルトスだったが、アバンはバルトスの首にかかっている【星の勲章】を指差し斬らない理由を教える、「貴方には、貴方の帰りを待っている人がいるでしょう? それは、明らかに子供が作った物。まさかとは思ったのですが、あなたにも家族が…と。一瞬そう考えたら…斬れなくなりました」と語る。
邪悪な闘気を斬り裂く精神の必殺剣がありながらもバルトスを無闇に傷付けず、出来れば生かして戦いを終わらせたかった心情の吐露に、バルトスは武術だけではなく精神においてもアバンに完敗したことを認めた。
アバンに地獄門を通らせる前に、「この人ならば息子を託せるかもしれない」と確信したバルトスは、ヒュンケルを拾って育て上げた顛末をアバンに伝え、魔王と共に滅ぶ運命を背負う自分に代わって『ヒュンケルを【強く正しい戦士】に育て上げて欲しい、【本当の人間の温もり】を与えて欲しい』と願いを告げ、それを快く引き受けてくれたアバンに地獄門を通らせ、そのまま静かに自分の運命を待った。
勇者の精神を目の当たりにした事で、魂の差を感じ取り魔王軍が敗北する事を痛感しながら・・・
しばらくしてハドラーの断末魔を聞いた彼は、己の創造主であるハドラーと共に消える時が来たと悟り、観念する。
……ところが、『・・・まだ生きている!? 確かに、魔王ハドラーの断末魔が聴こえたのに・・・!?』
状況がわからぬまま困惑するバルトスの前に、血塗れの身体で息絶え絶えのハドラーが現れた。ハドラーは勇者アバンに討たれたが、死の瞬間に魔界の神の大魔力によって一命を取り留めたのだ。
そして、バルトスを『くだらぬ【騎士道精神】を持ち合せ、人間のような【情愛】に現を抜かす!!挙句には地獄門を潜らせる大失態とは・・・!!!』と糾弾し、『新たな魔王軍結成の時は、お前のような不良品は・・・・絶対に、作らぁぁぁぁんっ!!!!』と怒りを込めた拳で彼の頭にあるコアに致命傷を与えて城から姿を消す。
その直後ヒュンケルがやってくるも、バルトスにはもはや事の顛末を伝える力すらも残されてはいなかったのだった。
ハドラーのこの八つ当たりじみた行為について非難する向きもあるが、バルトスが最も重要な門番としての仕事を放棄して敵を素通ししてしまったのは事実であり、ハドラーからしてみればれっきとした裏切り行為である為、制裁自体は正当といえる。
ハドラーの方も、人間を育てる事を許すほど預けていた信頼を裏切られた結果となったため、怒りと失望を向けるのも無理はなかった。
恐らく、このバルトスの行動と合わさって自身が敗北した理由を「アバンを妙に気に入り、魔王の立場にありながら彼と一対一で勝つことに拘ってしまった甘さ」と判断し、それを捨て去ろうとしたことが、フレイザードの人格生成に繋がる要因ともなった。
15年後にアバンを打ち取り、改めてこの方針で行動しようとした結果、自分らしさと目標を見失ったせいで数度のパワーアップを遂げながらも15年もの間迷走することに繋がったとすると皮肉である。
また、バルトスが生存していれば、即ちハドラーの生存が勇者たちに知られ、ひいてはバーンと新たな魔王軍の存在が明るみに出ていた可能性が高い。そのため、バルトスの処刑は次の戦いのために片付けておかねばならぬ後始末という意味合いもあった。
バルトス自身もそのことは理解していたようで、今際の時にも主への恨みは一言も残していない。
アバンと相交えた時点でどっちみち自身の消滅は確定しているようなものであったため、アバンがヒュンケルの保護を約束した時点で、既に自身の生に対する執着はなかったのかもしれない。
崩れ落ちた彼の魂は、最後の力で一連の出来事とアバンとの間に交わした約束を【魂の貝殻】に込めた。何時の日か、真実を知って正しい道を歩いてくれることを願って…。
『ヒュンケルよ、どうか人間らしく生きて欲しい。そして、アバン殿を決して怨んではならぬぞ!怨むのなら…魔物の分際で人間の子を育ててしまった…このワシを怨め……このワシを!』
『だが、ワシは幸せだった。短い時間ではあったが、冷たい骸の身体に温もりが戻って来たかのようだった……最後に、もう一度だけ言わせてくれ…』
『想い出を…ありがとう…』
関連タグ
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???:情愛を色濃く受け継いだ戦士
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