概要
TOHOシネマズは日本で業界第2位の映画館の数を持つシネマコンプレックス(シネコン)チェーン。東宝の完全子会社であるTOHOシネマズ株式会社が運営しているが、別の東宝系列(阪急阪神東宝グループ)の企業が同ブランドで運営している映画館も存在する。また、阪急阪神東宝グループには、TOHOシネマズと別に映画興行(映画館の経営)を行っている企業も存在する(後述)。
沿革
イギリスのヴァージン・グループ(傘下にヴァージン・アトランティック航空を持つ)が出資した「ヴァージン・シネマズ・ジャパン株式会社」として1997年に設立された。
以後、1999年のヴァージン・シネマズ トリアス久山(福岡県糟屋郡久山町。現、ユナイテッド・シネマ トリアス久山)を皮切りに日本でのチェーン展開を開始した。
だが、かねてよりグループ内の映画興行部門の再編を進めていた東宝が2003年に買収し、現社名に変更した。
東宝は戦後、自社に加え、主要都市を担当する「六部興行」と呼ばれていた傘下の映画興行会社6社や「六部興行」でカバーしきれない地方都市を担当する「共栄興行」4社によって配給網を拡大させてきた。ところが、時代の趨勢の変化もあり「六部興行」各社が個別にシネコンを開業させるほどの状態となったこともあり、前記の通りグループ内の映画興行部門の再編を進めていた折、ヴァージン・シネマズ・ジャパンの買収に打って出た。
以降、これまで東宝本体や「六部興行」各社で運営していたシネコンや在来の映画館については、「六部興行」の在来の映画館を淘汰しつつ企業やシネコンは順次TOHOシネマズにリブランド・編入を実施している。なお、東宝本体の映画興行部門は2006年にTOHOシネマズに移管した。
以降も現在に至るまで、東宝は「六部興行」由来の館の整理や下記のTOHOシネマズ以外での阪急阪神東宝グループ内企業による映画興行会社の再編をする一方、TOHOシネマズとしては積極的な出店を行っている。
前記の経緯から、同じTOHOシネマズであっても劇場によってそのルーツは異なる。
特色
ヴァージン・アトランティック航空を傘下に持つヴァージン・グループに由来することから、館内は航空機や空港をモチーフにしたデザインが基本となっている。また、有償鑑賞した映画の上映時間を航空機のマイレージサービスのマイルに見立てた独自の会員サービス「シネマイレージ」がある。
「大箱」(定員が400人以上のシアター)でのプレミアムシートの導入に積極的である。但し109シネマズが実施しているような全席プレミアムシートのものは、かつては「中箱」クラスのシアターに全席リクライニングシートの「Premier Screen」を導入していたが、現在は通常シアターへの転換で数を減らしている。
一部の館の「大箱」はTOHOシネマズ独自に"TCX"(TOHO Cinemas EXtra LARGE Screen)の名称を付している(TCXを導入したシアターのほとんどでDolby Atmosを導入している)。
また、音響を強化したシアターについては「轟音シアター」の名称を付している。
高品質シアターについては、IMAX・Dolby Cinemaのいずれも導入実績を持つ。
大手8社のうち、公式サイトでシアターのスクリーンサイズを開示している4社の一つである(IMAX・Dolby Cinemaを除く)。
4Dシアターについては、2015年のTOHOシネマズららぽーと富士見(埼玉県富士見市)を皮切りに国内の大手で唯一MX4Dの複数館への導入を行ってきた。一時は17館まで増えたが、2021年以降通常シアターへの転換を進め、その数を減らしている(ららぽーと富士見も2024年にMX4Dを廃止した)。
幕間の映像に、東宝「シンデレラ」オーディション入賞者(当然東宝芸能所属)の女優を起用した上映予定映画の紹介や、『紙兎ロペ』を用いたコマーシャルなどを上映している。
長く幕間のMCを務めた山崎紘菜
前記の通り、シネコンを運営する一方で歴史的経緯から旧来の映画館を運営してきたが、このうち旧来の映画館は2018年に開業したTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)と入れ替わりに営業終了したTOHOシネマズ日劇(同。有楽町マリオン)を最後に消滅した。ただし、同所近傍にはミニシアターのTOHOシネマズシャンテがある(シャンテも当初は日比谷開業と同時に閉鎖される計画だった)。
長らく東北から九州にかけての展開だったが、2023年11月に札幌市中央区の「TOHOシネマズすすきの」で北海道に初出店した(もっとも、札幌駅の札幌シネマフロンティアの共同企業体の主管であり、また2015年までは恵庭市に「六部興行」の北海道東宝が運営するシネコン「恵庭・東宝シネマ8」があった。なお、北海道東宝はTOHOシネマズに編入されず清算の形で会社が消滅している)。
全国の映画館で過去の名作映画を上映する企画「午前十時の映画祭」に参加している映画館が最多のチェーンである(主催者の川喜多記念映画文化財団は東宝の傘下で洋画配給を行っている東宝東和の創業家の財団)。
…と、日本最大の映画配給会社の傘下の規模と過去の歴史があるだけに、いろいろとやっている企業であるが、悪い方向でも影響力を発揮しているのが欠点。
2022年に、映画配給会社へ自社への優先配給について圧力をかけている疑惑が発覚した。これとの関係があるかは定かでないが、セカンドラン興行に極めて消極的である。
また、映画鑑賞料金の改定は、近年の大人1800円→1900円、1900円→2000円の引き上げの際は、真っ先にTOHOシネマズが発表・実施し、他社はそれに追随する流れになっている。
TOHOシネマズ以外で映画興行を行う阪急阪神東宝グループの企業
株式会社東京楽天地
1937年から東京都にて錦糸町駅前などで映画興行を行っており、自社のレジャービルである「楽天地ビル」にてシネコン「シネマ8楽天地」を経営していたが、2006年に北側の商業ビル、オリナス錦糸町に出店した「TOHOシネマズ錦糸町」も運営するようになり、この際シネマ8楽天地はスクリーン数を半減して「楽天地シネマズ錦糸町」に改称した。後の2018年に楽天地シネマズは改装してTOHOシネマズ錦糸町の別館となっている。
オーエス株式会社
1946年から大阪府、兵庫県で映画興行を行っている。神戸市内にてシネコン「OSシネマズ」2館を運営し、これと別に西宮北口駅前にある「TOHOシネマズ西宮OS」をTOHOシネマズと共同で運営している。なお、OSシネマズの会員サービスはTOHOシネマズとの互換性はない。
関西共栄興行株式会社
島根県松江市のイオン松江ショッピングセンターでシネコン「松江東宝5」を運営する、東宝の完全子会社。上記の「共栄興行」4社の再編・淘汰を経た生き残りで、商号が「関西」なのはかつて関西で映画興行を行っていた名残。こちらも会員サービスはTOHOシネマズとの互換性はない。
この3社のうち、東京楽天地とオーエスは、2024年に阪急阪神東宝グループ内の映画事業の再再編のため、東京楽天地は東宝、オーエスは阪急阪神ホールディングスのそれぞれ完全子会社となっている。なお、オーエスも東京楽天地と同じく東宝が筆頭株主であったが、これにより直接の資本関係は途絶した。
余談
メイン画像は東京都中央区にあるTOHOシネマズ日本橋のロビーを背景にした『ラブライブ!』のりんぱなの二人だが、同館はそのりんぱな達の聖地・秋葉原から最も近いりんぱなの出演映画の上映館である。
関連イラスト
関連タグ
イオンシネマ:業界最大手。ちなみにTOHOシネマズは(イオン側・東宝側それぞれの歴史的経緯から)いくつかのイオンの店舗に出店している。
MOVIX・ピカデリー:他の映画配給会社系列のシネコン。松竹系。
外部リンク
TOHOシネマズ:映画館サイト
TOHOシネマズ株式会社:企業サイト