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PTSDの編集履歴

2024-12-03 00:41:27 バージョン

PTSD

ぴーてぃーえすでぃー

危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事の後に起こる、心に加えられた衝撃的な傷が元となる、様々なストレス障害を引き起こす疾患のことである。

概要

Post Traumatic Stress Disorder(心的外傷後ストレス障害)の略称。


命が脅かされるような出来事により負った深い心の傷により、長期にわたって恐怖や苦痛を感じ、またそれが突然よみがえったり、よみがえることを恐れて行動が制限されてしまったりする障害のこと。

「心の傷」は、心的外傷またはトラウマ(本来は単に「外傷」の意だが、日本では心的外傷として使用される場合がほとんどである)と呼ばれる。


地震洪水火事のような災害、または事故戦争といった人災や、テロ監禁虐待強姦いじめを含む犯罪の被害、流産など、多様な原因によって生じうる。

トラウマのうち、突発的な事件事故によるものは「単回性」、虐待やいじめなど長期的なストレスから来るものは「反復性」と分けられるが、PTSDの中核にあるトラウマ体験は主に単回性のものを指す。

強烈なストレス、トラウマになるような出来事が発生してからすぐに発症し、症状が1カ月以内に消失する「急性ストレス障害」と類似しており、急性ストレス障害から連続して起こる場合もあれば、出来事の直後はなんともなかったのが、数カ月経ってから起こる場合もある。


症状

PTSDの患者は、おおむね以下の4つに分類される症状を抱えている。

  • 侵入症状
  • その出来事を思い出させるあらゆる物事の回避
  • 思考や気分に対する悪影響
  • 覚醒レベルと反応の変化

侵入症状とは、心的外傷・トラウマになっている出来事の記憶が本人の望まない形で何度も繰り返し再生されてしまう症状である。悪夢や記憶として思い出すだけでなく、体験そのものを「現在進行系で起こっていること」として思い出してしまうフラッシュバックが起こることも多い。

このトラウマを思い出す(苦痛を再度味わう)ことを避けるため、特定の物事を見聞きするのを避けたり、自分から少しでも想起させるような内容を話さないようにしたりといった「回避」行動や、他の記憶に異常はないものの、トラウマとなる事象に関する記憶が思い出せなくなる記憶障害(解離性健忘)も特徴である。


また、うつ病との併発や(それに伴う)感情の麻痺、物事が「自分の身の回りで実際に起こっていること」とうまく認識できなくなる解離症状が多々見られる。論理的・客観的でない考えに固執してしまう、いわゆる「認知の歪み」も深刻で、例えば、多くの死者を出した事故に巻き込まれたが助かったという人が「周りを犠牲にして生き残ってしまった」と罪悪感を抱え、そのような考えにとらわれてしまうといったことが挙げられる。

悪夢の影響もあって不眠症など睡眠障害に陥りやすく、不安、焦燥感を抱えて集中力を保つのが難しくなる。さらに、些細な物事に過敏に反応してしまう過覚醒が起こる。


苦痛から逃れようと、薬物やアルコール、性やギャンブルなどの依存症に陥りやすい。


認知されるまでの歴史

欧米では第一次世界大戦後、戦争に参加した元兵士たちの間で症状が顕著であったことから研究が開始された。


一方、日本では専門のはずの精神科医ですらこの問題にほとんど興味を示さず、「神経症」として片付けられてしまい、災害や戦争で心に傷を抱えた患者たちが顧みられることはなかった。

日本においてPTSDが注目を集めたのは1995年に発生した阪神・淡路大震災においてであり、この大災害をきっかけとしてようやく研究が進められることとなった。


アメリカでは1970年代から80年代にかけて(※)ベトナム帰還兵のPTSDが深刻化し、2000年代以降もイラク戦争アフガニスタン戦争をはじめとする対テロ戦争に投入されたアメリカ軍兵士の間に多く見られ、再び社会問題と化している。


※1973年までアメリカは徴兵制があったため特に兵役を終えてベトナムから帰還した兵士はPTSDの影響で社会復帰が非常に困難となり、ホームレスになったり銃乱射や立てこもりといった犯罪に走ったりなど社会問題になった。


治療

原因となる出来事は個人によって全く異なることから、全員に同じような効果のある療法がなく、精神療法・心理療法を中心に、抑うつや不安、不眠等の諸症状に対する薬物療法が行われている。

心的外傷、トラウマやそれらのストレスを「外部からの介入で治す」というよりは、「本人が適応して処理できるようにする」という部分が重視されており、治療は長期に及ぶ。


PTSD・トラウマ用の心理療法プログラムも開発されており、例えば比較的簡単に、ある程度誰でも取り組むことができる簡易的なトラウマ処理法としては近年開発が進んでいる「TSプロトコル」などがある。



複雑性PTSD

長期反復的なトラウマのあとに見られるストレス障害の一種。世界保健機関が発行する疾病及び関連保健問題の国際統計分類 (ICD)では、2018年の第11版(ICD-11)にて初めてPTSDと区別する形で掲載された。


幼児期からの虐待や洗脳カルト宗教による支配、偏った思想などの教育)、DV拷問、戦争による民族虐殺など、長期的に受けた(対人による)心的外傷によるものと考えられており、トラウマを負うのが「特定の場面」ではなく複数の、連続しない場面であるという視点に基づく診断名である。


フラッシュバック、睡眠障害といったPTSDと共通する症状が見られることが診断の基準となり、また感情の制御が難しくなる、自罰的・自暴自棄な言動、人間関係の維持が苦手など、特に対人関係の問題を抱えている。

未だ臨床調査の過程にある概念で、現状では中長期的なストレスが原因のパーソナリティ障害(特に自己愛性人格障害境界性人格障害など)、うつ病や気分変調障害といった他の精神疾患と診断される、あるいは併発していることも多い。

子供の頃からの長期的なストレス体験により発症する「発達性トラウマ障害」と並んで研究が進められている。


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