概要
境界性パーソナリティ障害、ボーダーライン(ボーダー、また更にそれを略してボダ)とも呼ばれる。英語では「Borderline personality disorder」といい、頭文字をとって「BPD」と呼ばれる。
パーソナリティ障害の一種で、不安定な気分や極化思想、他者との関係がうまく構築できない対人関係の障害などの特徴を持つ。
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症状の特徴
激しい怒り、悲しみ、不安、孤独、見捨てられたような気持ち、虚無感など、気分がめまぐるしく変化し、それら一つ一つのコントロールが難しいため、不安や葛藤について自分の中だけで処理することが難しくなっている状態である。また、自己同一性(アイデンティティ)に混乱を抱えているため、自分が不安を感じている一つの物事について、それだけに集中して処理しようとすることができず、どんな時でも不安を感じている。
極端な言動や衝動性
物事の捉え方やパターンに大きな偏りがあり、気分がとても変わりやすいため、衝動的で極端な言動をとる人が多い。
全てを「(自分にとって)良い」/「悪い」、「好き」/「嫌い」、「正しい」/「誤っている」と二極化し、それに合わせて物事を判断する。また、自分を「良い自分」と「悪い自分」に分けて捉え、自分にとって理想的でない「悪い自分」を切り離そうとする(自分がしてしまった都合が悪いことを他人に責任転嫁したり、なかったことにしようとしたりする)。
破滅的、破壊的な言動が多々見られ、性的に非常に奔放であったり、多額の浪費をしたりといった、体を傷つけているわけではないものから、アルコールや薬物の大量摂取、摂食障害などの直接体に害をなすものもある(依存症に至っているケースも多い)。より自己破壊的な行動として、リストカットのような自傷(もしくは自殺企図)行為を行う場合も多い。
そしてこのような行動を誰かに見せつけようとする(他者が見ているような場面でやる、やったあとわざわざ報告したり映像に残したりする)のが大半というのも特徴の一つである。
気分の中でも特に「怒り」のコントロールが難しいため、他者に対して極端に攻撃的な対応をする、加害の面がクローズアップされることも多い。
思い込みが強く、一度自分が攻撃されたと感じるとしつこくやり返そうとする。その尋常ではない怨念と執念、攻撃性は、ときに被害者がノイローゼになることもあるほど根深い。
人間関係のトラブル
「見捨てられ不安」を強く抱えており、他人や特定の物事に依存することがたびたびある。また、強く依存するために相手を極端に理想化し、相手が少しでも期待と異なる言動を取ると激しく怒り攻撃してくる、といったこともある。相手に対して度の過ぎた要求を行い、振り回すことがしばしばある。
見捨てられ不安から、美しくなって他人に振り向いてもらいたい、自分を意識し続けてもらいたいと、容姿を整えることに注力する者が多いとされる。しかし、自分の容姿を許容できなくなる醜形恐怖症や整形依存症などに陥り、コントロールできなくなることもある。
人間関係における距離感の捉え方が独特かつ敏感なため、初めて会ってから1、2回程度で「自分達は親友だ」と称したり、逆に相手が数分待ち合わせに遅れただけで「自分のことが嫌いになったから来なかったんだ」と激怒したりといった極端な言動が見られ、また相手の行動について「相手が自分のことをどう考えていたのか」に注視する傾向がある。
自分に自信がないため他人の評価に依存してしまう自己愛性人格障害にも似た傾向を示す。当然併発している場合もある。
「周りに苦労をアピールして助けてもらおうとする」という傾向が見られ、衝動性の強さや理想主義も相まって、うまくいっているはずの物事を急にぱったり辞めてしまう「リセット癖」が見られる場合がある。例えば卒業直前に退学してしまう、頻繁に更新していたSNSなどのアカウントを突然削除するといったことが挙げられる。
そのほかに多い症状、類似する障害
他の精神疾患や人格障害との合併症や、それらに類似する症状が多く見られるのが特徴の一つである。
過度にストレスが加わると短期的な記憶障害を引き起こす場合もある。とくに自傷行為の中で解離状態(自分で自分の行動を「今自分に起こっている事態」として認識できない)になる人もいる。また、統合失調症ほど顕著ではないが、(被害)妄想を起こすことがある。
感情の波が激しいこと、気分や感覚のコントロールが難しいことなどの共通点があることから、しばしば衝動性優勢型のADHDと混同されやすい。
また、発達障害との類似性が指摘されているハイリーセンシティブパーソンとも重複した過敏性があり、被害者意識も相まって「繊細チンピラ」として無関係の人まで巻き込もうとする傾向が見られる。
抑うつ(うつ状態)に陥っていることも多く、物事を空虚に感じ、自暴自棄な行動を取ってしまう。うつ病の患者が持つ「深い落ち込み」とは少し異なり、不安や怒り、悲しみが次々と現れるという特徴を持つ。ただし、併発していることも多い。
また、双極性障害と類似している症状も多いことから、誤診されやすい。こちらも併発する場合がある。
発症の原因
発症の原因は明確には判明していない。
親が発症している場合子供の発症率も高いという研究が存在する。これは、遺伝による先天的要因が大きく絡むと推測される一方、後天的な環境要因の影響も無視できず、幼少期に虐待を受けた経験があったり、現在進行形で配偶者や恋人からの家庭内暴力にさらされていたり、という場合も多い。過干渉で支配的な家族がいて「良い子」でいなければという抑圧的な幼少期を過ごしたことを語る人も少なくない。PTSDを抱えるケースも少なからずあり、上述のような精神疾患との併発も含め、精神的なストレスなどがトリガーとなっている可能性は高い。
単一の原因が定まっているわけではなく、先天的な要因と環境のどちらもがさまざまに絡み合い発症すると考えられている。
神経伝達物質の分泌異常などがたびたび見られ、脳機能障害の一種と推測されることがある。
対策
治療に際してはとにかく根気が必要で、時間をかけたカウンセリングはもちろんのこと、抗うつ剤、抗不安剤などの使用も検討される。
特にネット上では若い(おおむね10代〜20代)女性に多いと言われている。
20代の頃には情緒不安定であった患者が、30歳を過ぎる頃になると落ち着いて状態がかなり改善していることも多いとする当事者や精神科医の意見もある。
アメリカの調査では有病者数(病院に行って診断がついた人)は7割ほどが女性であるというが、一方で1:1の割合で男女両方に見られるという調査結果も存在する。
先述したように周囲への振る舞いが衝動的になりやすく、発症者に接触することにより周囲もストレスが貯まり、それが発症者への否定的言動につながってまたストレスが……という悪循環につながりかねない。
ストレスが飽和した結果犯罪が発生する悲劇的な結果につながりかねないため、素人が安易に手を出すべきではなく、早い段階で専門家に相談するのがお互いのためであると言える。
また「自分の味方をしてくれる人が正義」と相手を囲い込もうとする支配的な行動も見られ、親身になって相談を聞いているつもりが、争いに加担してしまうことも起こりうる。発症者の相談事に乗る場合は客観的で冷静な視点を持つ必要がある。
ネット上では「ボダ」などと呼ばれ、その衝動性や攻撃性ばかりが注目され、「精神疾患の当事者」から意味が拡大した「メンヘラ」の代名詞として尾ひれが肥大化しながら広がっている状態である。
くれぐれもネットの情報を鵜呑みにして「あいつはボダだ」などと他者を貶める目的で利用してはいけない。
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魔性…極端な言動や見捨てられ不安を関連付けられやすい
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