概要
世界各地でテロ攻撃をするテロリスト組織とアメリカを筆頭とする「有志連合」との戦争の総称。正式には「テロとのグローバル戦争」。
ただし、「戦争」を国際法などで定義されている「国家もしくはそれに準ずる組織間の戦闘」とした場合、ISILのような国家として承認を受けていない組織を国やそれに準ずる組織として認めた事にもなりかねないと、「戦争」とはせずに「対テロ戦」等と呼ぶ場合もある。
これまで戦争は国家間で正規軍同士によるものだったが、基本的に姿を見せずテロとゲリラ戦で民間人も巻き添えにした無差別攻撃を仕掛けるテロリストでは、従来の戦い方に限界があり、軍事大国であるアメリカを翻弄。戦争形態も変化を見せるきっかけとなった。
1990年代
20世紀末。米ソのマルタ会談とその後のソ連崩壊により、半世紀近く続いた冷戦は終結した。これによって世界は平和な時代を迎えると思われたが、それは超大国というたがが外れただけの新たな動乱の時代の幕開けだった。
超大国はアメリカのみとなり、事実上世界秩序の覇権はアメリカが握ることとなったが、ソ連という一大勢力が失われたことで、各地で抑制されてきた民族や宗教による紛争が活発化。特に湾岸戦争以後、中東地域で反米・反ユダヤ思想を持ったイスラム教の過激派が活性化する。
2000年代
21世紀元年の2001年9月11日。ウサマ・ビンラディン率いるテロ組織・アルカイダはアメリカ同時多発テロを起こし、これが対テロ戦争の始まりとなった。アメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュは各国に協力を求め、「有志連合」を結成。国際的な対テロ作戦を進めた。
手始めにアルカイダを匿っていたアフガニスタンを攻撃、同国を支配していたタリバン政権を崩壊させた。続いてイラン・イラク・北朝鮮をテロ支援国家「悪の枢軸」と名指しで非難。
サダム・フセインのイラクに対して大量殺戮兵器の保有という疑いがかけられ、2003年にイラク戦争を開始。フセイン政権を崩壊させたが大量破壊兵器は見つからず、占領政策自体も泥沼化した。
その後もアルカイダ系テロ組織は、イギリスのロンドン地下鉄、スペインの列車、インドネシアバリ島の繁華街などでテロ攻撃を続けた。
2010年代
2009年にバラク・オバマがアメリカ大統領に就任。2011年には9.11の首謀者ビンラディンの殺害に成功し、テロとの戦いに一応の区切りをつけた。2010年から2011年にかけては、中東や北アフリカ各地で民主化運動「アラブの春」が広がり、対テロ戦争の終わりが見えたかに見えた。しかし、アラブの春に対する各国の独裁政権はこれを弾圧し、政権打倒できた国も混乱が続き、結果としてイラクも無法地帯となっていった。
そして2014年に、アルカイダに代わる新テロ勢力・ISILが出現。アラブの春の失敗による混乱に乗じシリアやイラクなどの地域を次々に制圧し、イスラム帝国復活を掲げ勢力を急拡大させた。
有志連合はISILとの戦いに入ったが、イランの台頭、シリアのアサド政権、覇権拡大のロシアや中国、中近東のトルコなどの存在で対テロ包囲網は複雑な情勢となり、さらにISILに感化したテロリストによるパリ同時多発テロを始めとするテロ攻撃が相次ぎ、世界中に混乱と危機が拡大した。
2020年代
ISILは壊滅状態となったものの、占領政策が泥沼化していたアフガニスタンではタリバンが勢力を取り戻していた。アメリカ大統領のジョー・バイデンは台頭する中国に集中するため、2021年にアフガニスタンの米軍を完全撤退させることを決定。首都カブールは陥落し、タリバン復権が確実となった。9.11を起因とするアフガニスタンでの戦いは20年目にして終結したが、ベトナム戦争の二の舞とも言える幕引きは後味の悪いものとなった。