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編集内容:**「三十数年前の出来事は、二度と起こってはならない悲劇です 無知と恐れが生み出した、不幸な事件と言えるでしょう 我々は、自らの過ちを知り、改めなければなりません」**

怪獣使いの遺産

かいじゅうつかいのいさん

怪獣使いの遺産とは、『ウルトラマンメビウス』の第32話。『怪獣使いと少年』の続編。

概要

2006年11月11日放送。

脚本:朱川湊人、監督:八木毅

帰ってきたウルトラマン』ひいてはウルトラシリーズ屈指の問題作『怪獣使いと少年』の続編。

朱川氏によるノベライズ版もあり、テレビ版では描写できなかった場面が補完されている。

予告

ビオ「野蛮で暴力的な地球人。俺たちの怒りと憎しみがある限り決して破壊と戦いをやめない」

リュウ「そんなに地球人が憎いか!?」

ビオ「ああ憎いね。殺されたメイツ星人は私の父だ」

次回『怪獣使いの遺産』

(テレビ版)

かつて誤解の末、人間に殺されたメイツ星人の息子が怪獣ゾアムルチを連れて地球に訪れた。

果たして彼の目的とは?

次回、新ウルトラマン列伝『メビウスとメイツ星人 怪獣使いの遺産』

(列伝版)

あらすじ

いつ頃からかは不明だが、河原の地面を掘り返す一人の少年がいた。

少年は何日も何日も、ただひたすら穴を掘り続けていた。ある日、一人の少女が少年に何をしているのか尋ねる。

少年は「円盤を掘っている」と返す。その時、少女を呼ぶ母親の声が。少年は少女に「お母さんが呼んでるよ!」と笑顔で伝え、少女は母親と手を繋いで帰っていった。

母親は娘に、あの少年は宇宙人であると噂され、怖がられていると教える。少女は宇宙人だからどうして怖いのか、と母親に尋ねるが母親は答える事が出来なかった。

「宇宙人だとどうして怖いの?」

時は流れ現代。地球に接近する正体不明の物体をGUYSがキャッチした。

物体の落下予測場所はタクマ山。そこには今日みやま保育園の園児たちが遠足に来ていた。

園児たちを守るためにGUYSはガンウィンガーで出撃する。テッペイの予測によれば、物体の中には生体反応があり怪獣が中にいる可能性がある。リュウトリヤマ補佐官は先制攻撃を主張するも、サコミズ隊長は来訪者の様子を見る事を命じた。

GUYSクルーは地上に降りて調査を開始。その時、ヒビノ・ミライの前にビオと名乗る黒衣の男が現れた。

ビオは地球と友好関係を結ぶ為に訪れた事を告げる。ビオはミライの正体がウルトラマンメビウスと知っており、GUYSの予測通り物体の中に怪獣がいる事を告げるが、これはあくまでも護衛用で、ウルトラマンを地球側の兵器とし攻撃に備えての事だった。

「我々にとっては、君も地球人の″武器″なんだよ」

そしてビオは三十数年前、地球で起こった悲劇を語る。

怪獣頻出期の時期に、地球の気候風土を調査するために一人のメイツ星人が降り立った。しかし星人が地球人に化けている事を知った人々は恐怖にかられ、ヘイトクライムの末に星人を殺してしまった。

殺された星人と同じメイツ星人であるビオにとって、地球との友好前にこの問題をどうしても解決しなければならなかった。

ビオはこの問題は地球とメイツ星人の問題とし、ミライに不干渉を要求する。ミライもまた平和的交渉を条件に要求を呑む。

しかし悲劇は繰り返された。間の悪い事にリュウがミライが宇宙人に襲われていると誤解し、発砲してしまった

「見たまえメビウス…!地球人は自分達と異なる者を…すぐに″敵″と考える…!」

その頃GUYS基地ではビオが語った事件についての確認が行われていた。「ドキュメントMAT」に確かにこの悲しい事件は記録されていた。

テッペイ「でも何となく分かりますよ……いやあの…普通、いきなり目の前に宇宙人が現れたら誰だって怖いと思うんですよ、良い宇宙人か悪い宇宙人かなんて見ただけじゃ分かんないわけだし」

サコミズ「だから、勇気をもって話し合う事が大切なんだ、話し合って、お互い知ろうとしなければ」

サコミズの言葉に、コノミが思い出したように言った。

「園長先生…園長先生がいつも、隊長と同じ事を言ってました!」

場所は変わってタクマ山。負傷したビオは平和的交渉を放棄し武力行使に出た。

手始めに前の事件の賠償責任として地球内陸部の20%を要求。宇宙船で街を攻撃し始めたのだった。同じ事件が繰り返された事に心を痛めたサコミズは街の人を救う為に宇宙船の攻撃を命令した。

傷を負ったビオは地球人の姿になる。そこに保育士に引率された園児たちが通りかかった。ビオの傷口から緑色の血が出ている事を恐れる保育士達。

すると一人の女の子がビオに駆け寄り、ハンカチを差し出した。

「宇宙人だって怪我をしたら痛いよ!」

その言葉を受け、何人かの園児も続いてハンカチを差し出した。同行していた園長先生も園児達を立派と褒め、ハンカチを差し出す。

そこへリュウとミライが合流。最後まで平和的解決を呼びかけるが、既に地球人に失望していたビオには届かない。

地球とメイツ星。異なる二つの惑星の立場に板挟みになり苦しむミライ。すると、

「ミライ、何やってる!街が大変なことになってるんだぞ!!」

リュウの言葉に我に返ったミライはウルトラマンメビウスへと変身。結局ミライは地球を守るウルトラマンとして力を行使する事となってしまう。それを見たビオは物体の中の怪獣を覚醒させる。

それは以前メイツ星人が封印し、新マンに倒されたムルチを強化したゾアムルチだった。

そんなに地球人が憎いのかと尋ねるリュウにビオは答えた。三十数年前、地球人に殺されたメイツ星人が自分の父だった事を。

ゾアムルチはビオの脳波とリンクしており、彼の感情に合わせて暴れていた。それは「憎しみ」。最も暗く最も冷たく最も強い感情。

劣勢になるメビウスに勝ち誇るビオ。そんな彼に園長先生が近付いてきた。

「お会いしたかった…」

数十年前、河原で穴を掘っていた少年に話しかけた少女。その少女こそ園長先生だった。

園長先生はビオに語る。三十数年前に地球に来たメイツ星人は一人の地球人の少年と暮らしていた。少年はいつの日か地球とメイツ星の懸け橋となることを望み、メイツ星人もまたそれを望んでいた。

嘗てその少年、佐久間良からその事を聞いた若き日の園長先生は、その言葉を他の人に伝えたいと願い、保育園の園長になった。

「貴方のお父さんが地球に遺した″愛情″という遺産は、私の園の子供達が、しっかり受け継いでいます この子達が大きくなる頃、この星はきっと、今より優しくなっているでしょう」

「…この星が…今より優しくなるだって…?」

その言葉に衝撃を受け、手当てを受けた腕をじっと見つめるビオ。その目には、ハンカチを差し出してくれた少女の笑顔が焼き付いていた。

知らなかったとはいえ今回の事件の元凶となってしまったリュウは言った。

「なぁ、俺が言えた義理じゃねぇのは分かってる…けど…もういっぺんだけ、地球人を信じてみてくんねぇか…」

「…私の…父の遺産…」

いつのまにかが降り出していた。メビウスとゾアムルチの戦いは依然としてゾアムルチ優勢。

しかしそこにビオの咆哮が木霊する。

「…やっぱり…駄目なのかよ…」

「……あぁぁ…駄目なんだ!もう一度、地球人を信じてみようという気持ちが起こっているのに!すぐに憎しみが止められないんだ!!父の事を思うと…どうしても!」

「お願いだ!私の憎しみを消し去ってくれ!ウルトラマンメビウス!」

その言葉を受けたメビウスはメビュームシュートでゾアムルチを粉砕した。

雨は上がり、空には美しいがかかっていた。

ビオに握手を求めるリュウだったが、ビオは首を振り告げた。

「握手は、父の残した遺産の花を見届けてからにしよう……」

その言葉を残し、宇宙船でメイツ星へと帰っていくビオ。

かつてメイツ星人と共に暮らし、河原で宇宙船を掘り出すために穴を掘っていた佐久間良の行方は誰も知らない。

けれどどこか楽しそうに穴を掘り続けていた彼の姿は、あの日の少女の心に深く刻み込まれていたのだった。

「三十数年前の出来事は、二度と起こってはならない悲劇です 無知と恐れが生み出した、不幸な事件と言えるでしょう

我々は、自らの過ちを知り、改めなければなりません」

大まかな流れは同じだが、以下のような相違点がある。

  • メイツ星の事情についてが明かされている。

地球側に無断で気候調査をしていたメイツ星人が殺された事件は、地球だけでなくメイツ星でも闇に葬られなかったことにされつつあった。そのため父の存在を忘れられることを許せないビオは、両方の星の人間の心に刻み付けるために独断で地球に訪れる。そのためビオもメイツ星に戻れば死刑になるのは確実となっている。

  • 事件が起きた町の名前は「河野崎」

ロケ地である川崎市に由来する。

  • 地球側に請求した賠償責任にメイツ星人殺害にかかわった当時の容疑者全員の引き渡しが追加されている。
  • 当時の事件の鎮圧を担当したMAT隊員は殉職したと語られている。
  • 良少年のその後について語られている。

30年前の事件後は施設に入れられたものの、何度も脱走して河川敷で穴を掘り続けており、施設職員の観察付きで黙認されたものの彼が18歳になったころのある日突然いなくなってしまった。

そして唯一良にパンを売ってくれたパン屋の娘が事故で亡くなった時に、残された彼女の一人娘にお金を援助してくれた「足長おじさん」なる存在がいて、それが良だったのではないかと推測されている。

また良をいじめていた不良少年の一人だった布団屋の店主が登場。良をいじめていた理由は「何を聞いても無視するかつっけんどんな態度を取ったことに腹を立てたためだった」と語っている。

メイツ星人を撃ってしまった警官はその後は平穏に過ごし定年退職したことが語られている。

  • ゾアムルチの由来

金山の同僚のメイツ星人が、連絡が取れなくなった金山を探しに地球に来訪した際に発見した金山の思念派の影響でスペシウム光線でも焼き切れなかったムルチの細胞片を形見として受け取ったビオがゾア(メイツ星の言葉で「憎しみ=憎悪」を意味するとされる)の念を籠めて培養した擬似超獣になっている。最後も倒されることなく「元々地球の怪獣だから」とかつて初代ムルチが現れた河川敷の地底で眠りにつくことになった。

園児たちに手を挙げた姿が攻撃しようとしたように見えたためだが、わざと大袈裟な動きをしてカナタに自分を撃たせようとしたことが示唆されている。

そのため映像作品におけるリュウとビオの会話はリュウがカナタに置き換わっている。

カナタはビオの境遇を知ってからはかつての自分を重ね地球人の子どものために命を落とした優しいメイツ星人の話を語り「真実は別の方法で明かして欲しい。自分一人の命で済ませて欲しい」と自分の心臓に向けてトライガーショットの引き金を引く。しかしビオはそれに興醒めし、カナタが本気だったことはわかったと銃身を吹き飛ばしてゾアムルチを封印する。

  • ラストシーンの園長の言葉について

映像作品のラストシーンで園長は「少年(良)が楽しそうに穴を掘っていた」と語っているが、放送当時ファンの間で物議を醸した。『帰マン』第33話では良は明らかに地球人に失望し、地球を旅立つために円盤を探している描写があった。

小説版ではコノミが園長から聞いた話としてこの話題に触れ、ジョージが「彼は地球人に失望してさよならしたかったんじゃないのか」と疑問を抱く。

ミライはパン屋の娘のその後について話し、良は心の底から地球人を憎んではいなかったのではと締めくくっている。

余談

脚本を務めた朱川湊人は、この回はリュウがミライの正体を知る前に放送されると思っていたといった主旨のコメントを残している。仲間を守るためとはいえ躊躇なく宇宙人に発砲したのはその名残だろうか。

過去の事件の回想シーンは新撮され、メイツ星人役はビオ役の吉田智則が兼ね役している。

佐久間良役は蒲地竜也中根大樹

みやま保育園園長役は斉藤とも子田中明(回想シーン)。

後にYouTubeの公式チャンネルで展開されている「ウルトラ情報発信部」でも本エピソードが紹介された。

だが、事件の元凶になってしまったリュウを悪者扱いするわけにはいかなかったからか、動画では一貫して「GUYSの隊員」と説明され、顔も映さない様に意図的にカットされている。

また、この回ではトリヤマ補佐官が当時からの防衛隊員としての視点から物事を語っており知っていると更にこの話が深く読み解ける。

関連項目

怪獣使いと少年:前日談。

デスレムのたくらみ:同じ前日談からウルトラマンジャックが得た答えが語られるもう1つの後日談。

バット星人小森セイジ:ビオと似たような行動に走った地球在住の宇宙人。こちらも最終的に改心したものの、のちに新たな憎しみを生み出す事となった。

狙われない街:本作と同様に狙われた街の後日談・完結編として描かれたエピソード。

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