概要
『どぶ鼠作戦』の企画段階で関沢新一が書いた脚本『愚連隊突撃せよ!』が原点。
監督を谷口千吉に交代し、当初は谷口監督のアクション映画『紅』シリーズの1作として、後に『どぶ鼠作戦』のヒットから同作の姉妹編として制作された。この経緯から愚連隊シリーズでは唯一のカラー作品である。
愚連隊シリーズのうち本作以降の岡本喜八以外の監督がメガホンを取った作品は『作戦シリーズ』と区別されることもある。
伊吹徹のデビュー作である。
あらすじ
ゲリラが跳梁跋扈する北支戦線。最前線を死守する大田原部隊に新任の将校平良少尉と若菜少尉が赴任してきた。
若菜少尉は親日派の商人・李の移送護衛任務、平良少尉は軍旗違反のならず者ばかりが集う最前線の落とし穴監視哨の指揮にあたるが、ゲリラの奇襲に遭いふたりを残して隊は全滅してしまう。
敵襲があったときに監視哨にいなかったとして敵前逃亡の嫌疑をかけられた平良少尉。若菜少尉はともにゲリラ討伐の任務にあたっていた一色中尉とともに平良の行方を追ってゲリラの本拠地を目指す。
スタッフ
製作:田中友幸
脚本:関沢新一
音楽:佐藤勝
助監督:秋山正
監督:谷口千吉
キャスト
一色中尉:佐藤允
若菜少尉:夏木陽介
中国少女:星由里子
芸者染丸:水野久美
平良清少尉:伊吹徹(新人)
李洪白:田崎潤
大田原忠雄少佐:中丸忠雄
張副指令:堺左千夫
黄:林沖(リン・ツオン)
浅野伍長:田島義文
高石一等兵:中谷一郎
天堂中佐:平田昭彦
いさみ亭親父:沢村いき雄
意気のいい奴:砂塚秀夫
ねじり鉢巻:中山豊
ゲリラ:天本英世
落とし穴監視所の兵:大村千吉
黒田一等兵:大木正司
運転兵:加藤春哉
杉中尉:山本廉
野村伍長:宇野晃司
ゲリラ・崔:長谷川弘
B中隊長:古田俊彦
助手兵:小川安三
トラックの機関銃手:鈴木治夫
歩哨:大前亘
竜将軍の急使:草川直也
ゲリラ:桜井巨郎
落とし穴監視所の兵:広瀬正一
A中隊長:三井紳平
(役名不明):細川隆一
落とし穴監視所の兵:荒木保夫
ゲリラ:成田孝
ゲリラ:久野征四郎
芸者ちどり:清水由記
少年兵:久保明(ノンクレジット)
帽子をかぶったゲリラ:篠原正記(ノンクレジット)
余談
監督が谷口千吉に交代してからも本作の制作は二転三転した。
当初は加山雄三、佐藤允、夏木陽介の3人が活躍する『紅』シリーズの1作『紅の荒原』として制作が決定、後に脚本第3稿でタイトルは『紅の荒野』に改められた。
しかし『日本一の若大将』の撮影が遅れ、さらに『箱根山』の撮影も迫っていたため加山雄三のスケジュールが確保できなくなってしまった。
そこで前年に第2回オール東宝ニュータレントで選ばれた伊吹徹が起用され、デビュー作にしていきなりメインの役柄に抜擢された。
文字通りの新人で当時の報道でも「演技経験皆無」とまで書かれていた伊吹だったが東宝は加山に次ぐスターとして伊吹を売り出すことにした。
このころに『どぶ鼠作戦』のヒットからタイトルが『はりねずみ作戦』を経て『やま猫作戦』に変更され、愚連隊シリーズの1作となった。
タイトルは何度も変更されたが大まかなシナリオは『愚連隊突撃せよ!』からほとんど変更されていない。ただしラストシーンはタイトルと同時に何度も変更されている。
『愚連隊突撃せよ!』時代はゲリラと刺し違えて戦死した一色中尉を悼みゲリラの本拠地で盛大な葬儀が行われるが、その陰で死屍累々としているゲリラ、そして序盤で若菜少尉が助けた少女が映し出され、少女の手から鈴が転がり落ちるというラストになっていた。
『紅の荒野』では一色中尉の葬儀が行われるというラストは同様だが、弔砲の音がゲリラの本拠地に響き渡るという形になった。
完成作品では少女は生き延び、生き残ったゲリラが投降する場面と、葬儀を終えた平良と若菜が少女を連れてゲリラの本拠地を去るラストシーンが追加された。
完成作品でも少女がゲリラの親玉・龍に撃たれ負傷する、倒れている少女の足元を火薬の火が通りすぎるなど少女が死亡する展開だった名残がみられる。
中盤の大田原部隊が前進するシーンのトラックはトヨタKB型(BM型)を除きすべて戦後型のトラックだが、本作でしか姿を見られない日産380型トラックが複数台登場している。
伊吹徹は本作で印象に残ったシーンとして、ゲリラに捕らえられ縛られたまま水をもらう場面を挙げている。夏場の撮影だったため水をおいしく感じたと語っている。
佐藤允の長男である映画監督の佐藤闘介は、愚連隊シリーズでは唯一のカラー作品であり、佐藤允が演じる主人公の葬儀で終わることから、佐藤允追悼企画として開催された愚連隊シリーズの一挙上映イベントで後続2作を先に上映し本作を最後に上映したと語っている。