CV:白熊寛嗣
概要
アラミゴ出身の元冒険者。フルネームは「イルベルド・フィア」。44歳。
不滅隊局長のラウバーンは同郷の旧友。
エオルゼア三国による「グランドカンパニー・エオルゼア」の結成に先駆けて設立された先行統一組織「クリスタルブレイブ」のメンバーの一人として選ばれ、同組織の総隊長に任命された。
ラウバーンに匹敵するほどの剣の腕と高い指揮能力、部下からの信頼を得るカリスマ性を併せ持つ。
光の戦士とは、写本師エリヌ・ロアユの調査などで行動を共にすることになる。
妻子がいたが、第七霊災の折に亡くなっている。
ゆえにガレマール帝国に占領されたアラミゴの奪還に対しては並々ならぬ熱意を抱いているが…
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ファイナルファンタジー14:新生エオルゼア アラミゴ ラウバーン
※以下、メインクエストのネタバレ
パッチ2.5「希望の灯火」
表向きは暁の血盟と同じくどこの国にも属さない中立組織を謳っていたクリスタルブレイブだが、イルベルドを含めた一部メンバーはウルダハの権力者である砂蠍衆の重鎮・ロロリト・ナナリトと結託し、彼の私兵となっていた。
ラウバーンが砂蠍衆の一員になったと知り、アラミゴ奪還に向けて動いてくれることを期待していたイルベルドだが、ラウバーンはナナモ女王への忠義からウルダハの内政を優先したため、イルベルドはラウバーンを「国を捨てた裏切り者」と断定。帝国の圧倒的な力に対抗する資金を得るため、ロロリトに取り入っていたのである。
テレジ・アデレジが画策し、ロロリトが利用していたナナモ女王暗殺事件にも加担し、クリスタルブレイブの部下を使って光の戦士を女王暗殺の犯人に仕立て上げ、ナナモ女王の死に激昂して暴れるラウバーンの左腕を切り捨てた。
なお、この際ラウバーンに「ナナモ女王を殺したのは俺だ」と告げているが、実際にナナモ女王を殺したのはロロリトの秘書であり、ラウバーンを煽るための口実に過ぎなかった。
蒼天のイシュガルド
実はナナモ女王は死んでおらず、ロロリトの筋書きでは一度暁の血盟とラウバーンを捕らえた後、テレジが真犯人であることを明かして彼を失脚させ、暁の血盟とラウバーンも解放する手はずだった。
だが、イルベルドは独断でラウバーンの処刑を決定し、彼の首をリトルアラミゴのアラミゴ人に見せしめにすることで、祖国奪還への想いを焚き付けると同時に国を捨てたラウバーンへの復讐を果たそうとしていた。
しかし、この独断行動が仇となってユウギリらドマの忍にラウバーンの居所を知られ、光の戦士らの手引きによってラウバーンの脱獄を許すという大失態を犯してしまう。
これらの騒動でロロリトはイルベルドを見限り、指名手配の対象を暁の血盟からイルベルドに変更。一転して国から追われる身となったイルベルドは腹心と共に身を隠し、トップを失ったクリスタルブレイブは空中分解。後に総帥であるアルフィノによって解散が宣言された。
パッチ3.5「宿命の果て」
リトルアラミゴ周辺に逃れたイルベルドは鉄仮面で素顔を隠してアラミゴ解放軍に潜り込み、そのカリスマ性で彼らを扇動してアラミゴ解放への機運を高めていった。
そして、解放軍を伴って黒衣森とギラバニアを隔てる帝国の施設「バエサルの長城」へと侵攻。解放軍にはエオルゼア三都市のグランドカンパニーの兵士の軍服を着せることで帝国にエオルゼアが総力を挙げて攻め込んできたと勘違いさせ、その混乱に乗じる形でバエサルの長城を攻め落とすことに成功する。
だが、イルベルドの狙いは長城の占拠ではなかった。
作戦成功に浮足立っている解放軍に、イルベルドは事前に鹵獲した帝国の魔導兵器の群れをけしかけ、皆殺しにしたのである。
一度得た希望が一瞬で奪われたことによる絶望。これこそがイルベルドの求めていたものであり、アラミゴ人の絶望と、アシエン・エリディブスを介して手に入れたニーズヘッグの竜の眼のエーテルを用い、信仰ではなく憎悪を糧とする最強の蛮神「神龍」を呼び出し、帝国を打ち倒すための力とすることを画策していた。
そして自らも竜の眼と共に長城から身を投げて命を落とし、糧となる憎悪の一部となったことで、神龍は召喚されてしまう。
だが、神龍が帝国よりも先にエオルゼア諸国やギラバニアに被害をもたらすことは明白であり、エオルゼア同盟は神龍の対処に追われることになる。
その後、神龍はパパリモの命がけの封印術によって一時的に拘束され、アウトロー戦区に眠っていた古代兵器「オメガ」と相打ちとなって行方をくらましたが、後にオメガの力で拘束されていたところを帝国に囚われる。
そして紅蓮のリベレーターのラストにて、ゼノス・イェー・ガルヴァスと光の戦士との私闘のために力を利用されてしまった。
結局、イルベルドが自身も含めた犠牲を払った力は、帝国を倒すどころか、その帝国の人間に私的に利用されるという皮肉な結末をもたらした。
元を正せば祖国の奪還という純粋な願いを抱いていたイルベルドだったが、妻子の死、ラウバーンへの失望、帝国の圧倒的な力を目の当たりにした絶望が入り混じった結果、その願いは妄執へと成り果ててしまい、それが彼を破滅へと導いてしまったと言える。
暁月のフィナーレ
既にアラミゴが解放された後も彼の妄執は星海を彷徨っており、「アイティオン星晶鏡」を訪れた光の戦士たちの前に「妄執のイルベルド」として無数の怨霊と共に立ちふさがる。
だが、名杖の姿で現れた賢人の魂の放った光によって怨霊もろとも消滅し、ようやく彼の怨念は完全に消え去ることとなった。
総評
ラウバーンの親友で、プレイヤーから見れば頼れるNPCと言った体で登場した物の、不穏な動きからの裏切りで、プレイヤーの状況をどん底に落とすと言う行動のせいか、大半のプレイヤーからの評価・好感度はジェットコースターの様に急降下してストップ安であり、マイルドに表現しても、『どべ』である事が多い。
特に「……俺は腕を売り、お前は仲間を売った。俺は決して、仲間を売らない。」と言っておいてプレイヤーを裏切っているので仕方がない。もっとも、彼にとってプレイヤーやクリスタルブレイブの人々は利用する駒であって、仲間じゃないと言う事なのかもしれないが。
彼の信念、志は帝国からのアラミゴ解放以外に無く、正直それ以外の事は「どうでもいい。」とすら思っており、それは自身の体、命すら例外では無い。
まさに理想のために何もかもを投げうち、外道に落ちても目的を達成すると言う憤怒に似た執念を持っている。
しでかした行動を見れば、志を同じにするアラミゴの若き同胞「ウィルレッド」の殺害に関わっている他、ラウバーンの片腕を切り落とし、光の戦士諸共、謀殺しようとし、更にアラミゴ解放軍を利用し、帝国へ戦いを挑もうとする志の人々をユユハセとローレンティスを使って凄惨な状況に追いやり、虐殺している。帝国側やアシエン以外の人物でこれだけの被害を出しているキャラクターは中々おらず、その評価も当然と言える。
彼からしてみれば、ウルダハに留まり砂蠍衆まで上り詰めたにもかかわらず、アラミゴ解放やウルダハに居留するアラミゴ貧民の救済に動こうとしないラウバーンに苛立ちを感じていた様で、裏切られたと感じていた。しかし、ラウバーンは共和派の多い中の唯一の王党派であり彼が動けば、共和派により邪魔されて満足な支援も出来ない可能性が大きかった。ラウバーンはナナモが王として権力を握った後にアラミゴ救済に動こうとしたと思われるが、それまでに何年かかるかわからず、中年のイルベルドが動ける内にアラミゴ奪還が成らない可能性もあった。
故国アラミゴを思うが故に、強引に事を起こしてしまったため、上記の迷走を繰り返したとも言えるが、ただ、そもそもとして、アラミゴの民や国家をウルダハが助けた所で、ウルダハに何一つ利益も無いので、共和派を説き伏せてアラミゴ奪還に向かわせるのは至難である。この辺はイルベルド含む、アラミゴの民の多くが苦境故に陥る独りよがりの思考に陥っている。
(この辺は、アラミゴ解放後にナナモが相対する現実として立ちはだかった。)
光の戦士たるプレイヤーに関しても、イルベルドから見れば、ぽっと出の英雄だったのもあり、実力や評価も半信半疑であったと思われる。ロロリトらと共謀し、彼にとっては最善の策である光の戦士を陥れ、ラウバーンを権力の座から引きずり下ろし、ロロリトを利用してアラミゴ奪還を企んでしまったのがケチのつきはじめである。しかし、ロロリトはそもそもアラミゴになんの感慨も無く(強いて言えば、ロッホ・セル湖の塩がある程度)、ロロリトの利にならないのであればイルベルドに協力する必要が無い上に、そもそもラウバーンを殺すつもりも無かった。事実、手綱を取れず、暴走しているイルベルドの知らぬ所でロロリトはラウバーンと手打ちを行っており、ロロリトからの資金援助も途絶えて、放浪し正体を隠してアラミゴ解放軍に転がり込むことになってしまった。(この行動があるからこそロロリトは今も尚生き永らえてると言えるが。商人らしい立ち回りである。メタ的に言えば、ロロリトの性格、行動は新生までと、それ以降で結構変わっている。陰険で金の亡者と言うイメージだったロロリトは、動かし易いようにシナリオで調整されたと思われる。)
その後の行動は追い込まれた人間のそれであり、他人や自身の命すら道具にして神龍を呼び出すという蛮行に及んでしまった。
長く付き従ってきた、ユユハセやローレンティスの後の事など当然考えておらず、彼らは紅蓮のリベレーター内であやしい帝国兵として追われ、ついには捕らえられバエサルの長城の虐殺実行犯として、事件に関する裁きを受ける事となってしまった。ここにプレイヤーが一票を投じる様なシーンはあるものの、極刑が視野に入っており、どちらにせよ軽くない刑罰を受けるのは確定的になっている。
また上記の通り神龍は皮肉にもゼノスによってプレイヤーとの私闘に使われる事となってしまうが、その一方では、彼が起こした事件が引き金となり帝国領アラミゴの解放の機会と見て三国のグランドカンパニーが動き、事実としてアラミゴの早期解放を成し遂げたので(「行動・理念・信念」は褒められた物ではないが)、そう言う意味ではアラミゴ解放の影の立役者と言えなくもない。
しかし、そのアラミゴ解放を直接行い、ドマ・アラミゴを圧制する総督のゼノスを討ったのは彼を幾度も邪魔し、心底恨み忌み嫌う「光の戦士」だったのは実に皮肉である。
この事実を死んでエーテル界を彷徨う怨念は当然ながら知らず、アイティオン星晶鏡では恨み言を吐いていたが、光の戦士のお陰でアラミゴの解放が成ったと知ったら、彼はどんな顔をしただろうか。光の戦士も含めて誰もかもを利用するつもりだったが、結果としては利用されていたような立ち位置でもあり、悲しいピエロに見えなくもない。
一方で、能力は非常に高く評価されており、三国の各部隊や志願兵からなる練度がバラバラの人々を組織としてまとめ上げる手腕はアルフィノや所属していた隊員たちも認めるところである。彼がいなければクリスタルブレイブと言う組織は立ちいかなかった可能性が高い。苦境で叩き上げられた剣術も本物で、バエサルの長城ではプレイヤーを苦しめる事となる。
アラミゴ解放戦争に前後の回想シーンでは、まだひねておらずラウバーンと理想を語り合うシーンもある。
他方、政治の世界には向いていないようで、小賢しい政治の世界をどこか見下していたようでもあり、武闘派の彼からしてみれば、スムーズに目的を進められないのは、実に歯痒かったのかもしれない。しかし、見下していた政治に片足を突っ込んだために、ズルズルと転落していく事になってしまう。
そう言う意味では、戦士か中隊長レベル位の立ち位置が向いていたとも言え、将軍や政治家には向いていないと思われる。
若い頃の熱い理念が妄執に変わってしまったのは、ラウバーンによる(イルベルドの一方的な思い込みに寄る)裏切りがあったせいではあるが、イルベルドはイルベルドで、政治を知らずラウバーンのウルダハ政界の立場、苦境に理解を寄せる事も無かった。
目的のためには手段を選ばず、最短を突っ走ろうとする姿勢であり、結局のところ彼の思考・思想は独りよがりであり、他人を信じる事をせずに破滅していくキャラだったとも言える。
なお、ちょっと渋い雰囲気を序盤に醸し出していたからか、ニッチな人気があるのもまた事実であり、過ちを犯さなければ頼れる味方となっていた可能性もあるため、その最後に関しては残念がるプレイヤーもいる。