プロフィール
概要
本編の主人公《ルード》が所属する勇者パーティーのリーダー及び勇者を務める金髪の男。
プロローグにて『迷宮探索の最中にルードの外皮※1が不自然に減少するのはルードの持つ詳細不明のゴミスキルが原因だ』という思い込みからルードの後釜となる二人の女冒険者を勇者パーティーに加入させ、それと同時にルードに役立たずの烙印を押し付けて彼から得物の魔剣を取り上げると同時に嘲笑しながら追放した。
しかしそれが結果として勇者パーティーの本調子を悪くし、挙句の果てに自分の首を絞めることになるとはこの時のキグラスは知る由もなかったのだ……
※1:本作で用いられる概念で、HP(体力・生命力)とは別に存在するバリアのような存在であり、これがあると攻撃を受けることによる痛みや負傷としてのダメージをなくすことができる。当然外皮が0になると完全な無防備となり、受けた攻撃の分痛みや負傷を受けることになる。
ライフバースト
自分の全能力を底上げすることで、高火力の攻撃が叩き出せるようになる切り札とも言える自慢のスキル |
……とキグラスは思い込んでいたようだが、実は『発動の際にはスキル所有者の外皮を消耗し、消耗した分だけ効果がアップする』という隠された効果と代償があり、それをルードが持つ《犠牲の盾》※2のスキルで(無意識に)ルードがフォローと強化していたことをルードもキグラスをはじめとする勇者パーティーも知らなかったのである。
そして、それを知らずにルードを追放した結果キグラスはというと……
※2:『スキル所有者が仲間と認識した者』が戦闘やスキルの効果等で外皮が消耗する場合、スキル所有者がそれを肩代わりする効果と自分を含めた味方全員をバフする効果を持つ。
経歴
最強タンクを追放した勇者の末路
《犠牲の盾》のスキルと外皮9999を兼ね備えたルードを「いくら硬くても突然外皮が激減する謎のデメリットを抱えた不安定なタンクは使えない」と勇者パーティーから追い出した結果、ライフバーストを発動するための外皮減少のリスクはキグラス自身が背負う羽目になる。(先述の通り「突然外皮が激減する」のはキグラスが「ライフバーストでゴッソリ外皮を持っていくから」である。常に一定なら「実質その数値を引いて計算する」などの対処法があったがキグラスがライフバーストの正確な内容を把握できていなかったせいで力加減が適当だったからか毎回減る外皮の数値がランダムに散っていた事も事態の把握の難しさに拍車をかけた)
更にルードの後釜として勇者パーティーに加入させた女冒険者二人はルードの替わり(タンク役)を務めるには力不足であり、勇者パーティーは迷宮攻略に連戦連敗を重ねてしまう…
そして、それに伴って落ちていく評判に功を焦ったキグラスは迷宮探索の最中での魔物との戦闘で無計画にライフバーストを乱発して自分の外皮をいたずらに消耗し、その不意を突かれて魔物から痛恨の一撃を喰らって致命傷を負い、挙句の果てに逃げ惑って醜態を晒した(コミカライズ版では粗相をしている)挙句、リリアに担いで助けてもらい、リリィのスキル《ダンジョンウォーク》で迷宮を脱出するという形で尻拭いをしてもらう。
だがそれでもキグラスは自分の落ち度を決して認めず、それどころか新入りの女冒険者二人に責任転嫁して当たり散らした結果、ニンをはじめとする他の勇者パーティーメンバー全員に愛想を尽かされてしまい勇者パーティーは解散……一人残されたキグラスは「重傷を完治させたらすぐさま名誉挽回してやる」という非常に困難な理想を負け惜しみのように嘯くのだった……
元勇者の最強タンクへの贖罪
……その後は実力不足として勇者の称号を剥奪され、完治とまでいかないもののある程度は身体が治ったキグラスは、リリアとリリィ(この二人はギルド職員で厳密には勇者パーティーではないので助力を得ることができた)、そして迷宮調査のために教会から派遣された教会騎士のシュゴールを連れて再度迷宮攻略に挑むのだが、5階層で迷宮の守護者と遭遇するというアクシデントが発生。そして再度迷宮攻略に失敗して撤退した所、キグラスは自分が追放したルードと再会する。
そしてどこからか聞いたのかルードの『迷宮の秘宝で妹マニシアの不治の病を治したい』という事情を察したキグラスは「ルードに迷宮攻略の役目を押し付けて自分は楽がしたい」という名目で後を(自分が連れていたリリアとリリィ、シュゴールと共に)託し、自分のしでかした『自分の思い込みによるルードの勇者パーティー追放』という大きな過ちに自分なりに落とし前をつけたのだった……なおルードから取り上げた魔剣は返却しなかった模様。
補足
キグラスは本作における悪徳勇者ポジションではあるものの、彼の場合デメリットを踏み倒し続けた事によるスキルへの誤解とそれにのって肥大した自意識からくる横暴位しかやっておらず、本編開始から最新話までの間に後述のような悪徳勇者の定番行為は一切行っていない。
- 主人公への逆恨みの憎悪を燃やして、無関係な者達を巻き込んだり犠牲にした復讐劇を企んで実行する
- 勇者の肩書に胡坐をかいて、『自分は何をやっても許される存在だ』という思考の元、罪も落ち度もない民衆に迷惑や危害を加える。
- 自分の醜く身勝手な色欲のために、卑劣な手段を行使して主人公に好意を寄せたり親しいヒロインや女性に決して癒えぬ心の傷を負わせる。
- 『富や名誉(地位)、女を自分の思うがままにしたい』といった私利私欲で魔王軍などの世界の平和を脅かす悪に加担する。
そのため、キグラスはポジティブな言い方をすれば『人としての道は踏み外さなかった』、悪い言い方をするなら『読者(アニメ版も含めるなら視聴者)が義憤の感情を燃やすには物足りないヴィランもどき』と言える。
また、キグラスは勇者パーティーに大きく貢献していたルードのことを頑なに認めなかったが、ルードは《生命変換》※3というスキルも持っていたことが後に発覚したため、もしキグラス……ひいては勇者パーティーがルードの持つスキルを全て把握していれば、
- キグラスがルードの高い外皮を消耗して高威力になったライフバーストで敵を攻撃する。
- ルードがキグラスのライフバーストで消耗した外皮の分だけ威力が増した生命変換で攻撃する
という高威力攻撃の連携技も実現していたため、(完全な事後諸葛亮のたられば話になるが)キグラスはルードを追放すると同時に自身の……ひいては勇者パーティーの順風満帆を自分から潰して首を絞めてしまったと言えるだろう。
※3:スキル所有者(この場合ルード)が戦闘で消耗した外皮の分だけ、威力が増加する攻撃スキル。
また、キグラスがルードを勇者パーティーから追放したのは、『《黒竜ノ牙》のサブリーダーのアイクの助言を受けて』というのが真相である、そう考えるとこれまた事後諸葛亮になるが、キグラスの順風満帆はアイクのせいで途絶えてしまったとも言える。
余談
概要を読んでわかる通り、キグラスは追放ものではお約束の『自分の独断で勇者パーティーから主人公を追放した悪徳勇者』というポジションであるのだが、本作より先にアニメ化が実現して、作中での所業で視聴者のヘイトを大いに買った他作品の悪徳勇者の後に続くかの如くアニメ版の公式サイトのキャラクター紹介のページではキグラスのことは全く紹介されていないという憂き目に遭っている。
アニメ版最終回では、他の冒険者達と同じくクラン(町に所属する複数の冒険者パーティーをまとめる団体)のリーダーとなったルードが拠点とするアバンシアの街に侵攻する魔物の大軍を食い止める防衛戦に参戦する形で登場。前述の女冒険者二人と言葉を交わすのみならず、自分の代名詞たるライフバーストも使って奮闘し、外皮のペース配分を覚えたのか、ライフバーストによる外皮の消耗をある程度コントロールできるようになったのかは不明だが以前のような外皮が0になるミスはしなかった(これまでがデメリットを踏み倒した分不相応な無法すぎる強化倍率だっただけでこちらが本来の使い方であるといえる)
関連タグ
悪徳勇者:キグラスの立ち位置及び特徴を表す語句であるが、《悪徳》としてはこいつらのような外道やクズの域に達する程ではない。
不器用:「言葉で謝って終わりではなく、割りの良さそうな仕事を取ってくる(迷宮の秘宝入手のチャンスを提供する)」という有能かつ誠実なムーブをしていることから、彼の総合的な評価はこちらになると思われる。