「うるせえ! 不平をカマすな! 無能マグナス!」(コミカライズ版より)
「ふざけんな!〈勇者〉より優れた〈魔法使い〉なんているわけがねえ!!」(web、書籍版、コミカライズ版共通)
「うるせえ、バアアアアアカ! テンゼンはなあ、ウゼえテメエをぶっ殺すのを手伝ってくれる上に、オレも王国乗っ取りを手伝ったら、ラクスタの半分をくれるって約束したんだよお!羨ましいだろ? 美女も金も権力も、オレの思いのままになるってわけさ!」(web、書籍版より)
プロフィール
概要
本編の主人公である魔法使いの青年《マグナス》が、プロローグで追放された勇者パーティーのリーダーを務める16歳の勇者の青年。
だが、元々は第1章の舞台である『ラクスタ王国』の隣にある小国『ハリコン王国』で生まれ育ったごく普通の一般人であり、『ある日突然、運命の神霊タイゴンのお告げを受けた事で、魔王モルルファイを倒す運命を背負う事となった』という経緯の元、勇者になったのであって、物心ついた時から勇者として育てられた訳ではない。
そしてハリコンにて仲間を探し、最初に女僧侶のヒルデ、二番目にマグナス、そして三番目に女戦士のミシャをパーティーに加え、あちこちを冒険しながら旅を続けていき、二ヶ月かけてラクスタ王国の王都である『ラクスティア』に到着した。
ちなみにマグナスを仲間に加えた理由は、ヒルデと仲間探しをしている時に『マグナスは王立学院を15歳で卒業した天才魔法使い』という噂話を聞いたからである。
人物像
小説家になろうやカクヨム等のWEB小説で読める異世界もの(主に追放ものと復讐もの)では最早お馴染みの定番悪役となっている『悪の心とクズの性根を兼ね備えた悪徳勇者』にピタリと当てはまるような性格をしている。
勇者の肩書を持つのもあって常に上から目線で他者を見下しており、その上とにかく短気且つ血の気が多く、少しでも思い通りに行かなかったり、気に入らない事があると誰彼構わずに当たり散らすという、不良や暴漢を彷彿とさせる悪人面や三白眼な目つきも相まって、まさに勇者の皮を被ったチンピラである。
戦闘に於いても『命令させろ、俺に指図するな』という言葉を(文字通りの意味で)体現したようなスタイルを取っており、パーティーメンバーの良心と言える存在であるマグナスやミシャの意見を碌に聞き入れようとせず、その場の勢いや短絡的な思いつきだけで行動し、後先の事を考える事をまるでしない。
当然ながら礼儀や礼節の『れ』の字すら微塵も理解しておらず、自分が誰かに物を頼む時も、これまた上から目線な上に馴れ馴れしい不愉快な口調で接するせいで、相手を苛立たせたり機嫌を損ねて危うく交渉が破綻しかける事もしばしばある為、その度にヒルデがフォローに回っている(ミシャ曰く、これに関してユージン本人は、『偉大な勇者らしからぬ気さくさ』と自画自賛しているとの事)。
そんな人物なので、他者から自分の言動や態度を注意されても逆ギレする事など日常茶飯事であり、酷い時は『自分の思い通りにならない相手を暴力で脅して強制的に従わせる』と言う強盗紛いな手段も躊躇なく実行できる有様である。
その癖して、実力行使が通じない相手(武力的な意味では勿論の事、権力的な意味でも)と対峙したり、味方と言える者が全て居なくなってしまうと、媚びへつらってヘコヘコしたり、果ては敵前逃亡や命乞いも辞さない等、情けない腰抜けな一面もある。
そんな勇者らしからぬ極めて傲慢且つ醜悪な言動や、貪欲で器の小さい性格故、ヒルデとマグナスの後釜であるニャーコ以外の人間・亜人・魔人達からは軽蔑または嫌悪と総じて碌な印象を抱かれておらず、中にはナルサイやデルベンブロの様に腹を抱えて爆笑する程に堂々と嘲る者さえおり、最終的にはニャーコからも見限られている。
戦闘力
勇者なだけあって剣を用いて戦うのだが、前述の通り神霊タイゴンのお告げを受けるまでは完全な一般人であったが故に、それまで戦闘や剣の修行をまともにやっていた訳がない為、全体的な戦闘力は一般人に毛が生えた程度。
それが祟ったのか、後述のデルベンブロ戦の時点でのユージンのレベルは19と、勇者パーティーの中で最もレベルが低い(因みにヒルデとミシャはレベル22、マグナスの後釜として仲間にしたニャーコはレベル20である)。
この事からweb版・書籍版ではマグナスはユージン(を勇者に選んだ神霊タイゴン)を「●●●●に刃物を渡してしまったわけだな(※自主規制込み)」と評している。
また後述の通り『勇者専用魔法』も使えるらしいのだが、ユージン自身が極めて脳筋寄りな思考且つ、上記の通り碌に鍛錬をしていないせいで魔法を使いこなす程の実力や経験、知識が無かった事もあって、それが登場する事は最後までなかった。
所持スキル
- 武具覚醒
武器や防具に秘められた真価を発揮する勇者専用のスキルでレベル19で習得する。
普通に使っても強力だが『マジックアイテム』に分類される装備品ならば、その効果は更に上昇する。
ただし武器が粗悪品の場合、武具覚醒のスキルの力に耐え切れずに壊れる事が有る。
ちなみにユージンのこだわりなのかこのスキルを発動する際には必ず、「昂(たかぶ)ってきたっっっずぇええええええええええっっっっっ!!」と叫んでいる。
- 天命未だ尽きず
ユージン自身も所有していることに気付いていない勇者専用の隠しスキルで、詳細は後述参照。
装備品
武器
- 普通の剣(仮)
本編のプロローグでユージンが使用していた剣で、正式名称や性能をはじめとする詳しい設定は一切不明。
プロローグでのデストレント戦が最初で最後の出番で、その後どうなったのかは言及すらされていないが、恐らくは後述のミスリルソード及びフレイムソードを手に入れた事で御役御免となり、武器屋に売り渡して換金する形で手放したと思われる。
- ミスリルソード
『ドミダス』と言う貴族から「ランクCの武器(ランクC以上の装備品は、普通の店には出回らず、オークションやダンジョン探索等で漸く手に入る可能性がある程のレアアイテムである)『魔法の杖』を持ってきてほしい」と依頼され、探してる最中に再会したマグナスが、偶然にも魔法の杖を持っていた為、彼から金貨1200枚(本来の相場は金貨1000枚)で購入した魔法の杖をドミダスに献上し、その報酬として手に入れた剣。
金貨5000枚の値打ちがある貴重なランクBの代物で、わざわざ侮蔑と嫌悪の対象であるマグナスに大金を払ってまでして彼から魔法の杖を貰ったのも、自分達はそれ以上の価値がある武器を手に入れる事を本人の前で公言する事で、マグナスを悔しがらせる魂胆があっての事だったのだが、それよりも高ランクの武器を持っているマグナスにとってはどうでもいい取引だった為に失敗に終わった。
- フレイムソード
前述のミスリルソードと炎晶石(えんしょうせき)三個を素材として作成できる武器。
名前と素材で察しの通り所謂炎の剣で、装備者の意志に応じて刀身に炎を纏う。
ユージン曰く『金貨8000枚は下らないマジックアイテム』な武器で、本来なら強力な武器なのだが……
- 歴戦のフレイムソード
後述する事情でフレイムソードを失ったユージンが使用する剣で、その名の通りフレイムソードの上位互換にして、ユージンの(本編最新章の時点での)最終武器である。
防具
- 猛者の冠、黒銅の鎧、聖水のシャツ、獄炎鶏のマント、ビリビリズボン、深緑香ばしき靴
全て書籍版で名前が判明したユージンの装備している防具一式。
『冒険の途中で手に入れた強力な装備群』とのことらしいが、一貫性のないトンチンカンなコーディネートは、見る者の笑顔(という名の嘲笑)を誘う効果もあるらしい。
また、戦闘で破損してもその後のシーンでは何事もなかったかのように完璧に修復されているため、自己修復のような隠れた効果があるのかもしれない……
経歴
勇者は魔法使いを追放する
プロローグにてユージン率いる勇者パーティー一行は、ボスモンスターの『デストレント』の討伐に挑み、ユージンは『植物系の魔物には炎属性の攻撃が一番効くに決まってる』という安直な発想からマグナスに炎属性の攻撃魔法を放たせるも、全くダメージを与えられずに跳ね返されてしまう。
それを見たマグナスは「他の属性の攻撃魔法を試すべきだ」「理屈と現実が違うなら、疑うべきは理屈の方だ」と主張するも、ユージンは「黙ってオレに従え!」と全く聞く耳を持たず、根負けしたマグナスは炎属性の攻撃魔法を再度放つものの、やはり効果は無く、そうこうしている内に、ユージンはデストレントの攻撃を喰らって大ダメージを負ってしまう。
そこにヒルデが即座に回復魔法を発動した事で怪我は完治され、ユージンは「さっすがヒルデ!どっかのヘボ魔法使いと違って使えるぜ!」と、ヒルデを称賛すると同時に、彼女と比較する形でマグナスを、それもわざわざ本人に聞こえる様に罵倒する。
そんないざこざがありつつも、最終的にはミシャの物理攻撃が勝利の決まり手となり、デストレントの討伐には成功した。
その後、同日の夜に王都ラクスティアにある酒場にて、ユージンはデストレントのドロップアイテムであるステータス強化の果実をパーティーの面々に分配していき、自分やヒルデ、ミシャには各々の立ち回りに合った効果の果実を分けるが、マグナスに適した効果のある『魔力の果実』は『オレは勇者専用魔法が使えるから』という理由で自分の取り分とし、マグナスには一つも与えなかったのだ。
それに抗議するマグナスに対し、ユージンはヒルデと一緒になって彼がデストレント戦で禄に活躍出来なかった事を引き合いに出して詰った(※1)挙げ句(尚、常識人のミシャも働かざる者食うべからずと言う理由で、これには特に反対も批判もしなかった)、その事を理由に、マグナス本人だけでなく、彼の職業である魔法使いそのものにまで穀潰しのレッテルを貼り、終いにはマグナスに「お前もういらねぇわ パーティー抜けろよ」と戦力外通告及び追放を宣言する…。
それによりマグナスは勇者パーティーから脱退し、彼の後釜としてケットシー(ネコ人族)のニャーコをパーティーに加えた。
また、ユージンはこの一件で完全に魔法使いを見下す様になった事、更にはデストレント戦ではミシャの物理攻撃が大活躍した事で、元より脳筋な思考もあり、物理攻撃を重視する様になった為、上記の通り女武道家であるニャーコをマグナスの後釜に選び、これによって勇者パーティーは、回復要員であるヒルデを除いて、全員が物理攻撃をメインに扱うパーティーとなったのだが、このパーティー構成が後の戦いで勇者パーティーの首を締める事となる。
※1…マグナスは追放後に、酒場にて偶然自分達の会話の一部始終を聞いていた商人から攻略本を購入したのだが、その攻略本には『デストレントは植物系の魔物でありながら、炎属性の攻撃を無効化する』『弱点は雷属性』という情報が記載されており、実際の戦いに於いても、攻略本に記載されていた情報を基にデストレントを復活させたマグナスが、雷属性の攻撃魔法〈サンダーⅢ〉を発動した結果、(強化魔法によるブーストもあったとはいえ)デストレントは一撃で消滅した為、マグナスが役立たずなのではなく、ユージンの指示に問題があったせいでマグナスが実力を十二分に発揮できなかったのであって、ユージンとヒルデのマグナスへの酷評は完全にお門違いである。
目的は達成するも、目論見は失敗した勇者
ユージンがマグナスを勇者パーティーから追放してから一ヶ月と数日後……
勇者パーティー一行は貴族ドミダスからの依頼で魔法の杖を探すも、上記の通り魔法の杖はレア度の高いランクCの武器で、滅多に売りに出される事は無い為、一向に見つからず難航しており、「ここならば!」とラクスティアでも規模の大きい『マルム商会』に立ち寄るも、ここでも魔法の杖の手がかりすら得る事ができなかった。
収穫無しでマルム商会を出ると、そこで何と自分達が追放したマグナスとバッタリ鉢合わせする。
思わぬ再会を前に、両者共に気まずい空気が流れるが、マグナスは『無視するのは何だか負けた気分』と言う理由で自分達の事をジッと見つめてくる為、そんな彼の視線に不快感を覚えたユージンは、舌打ちをしながらマグナスを睨みつける。
そんなユージンとは正反対に、マグナスは堂々と「久しぶりだな。どうした? 何か買い物か?」と大人な対応で声をかけるのだが、マグナスの事を見下し嫌っているユージンが素直な態度で応答する訳が無く、「うるせーよテメーには関係ねーだろ」と邪険な態度で悪態をつく。
それにマグナスは「それもそうだな。それじゃ失礼、何か知らないが探し物が見つかると良いな」と自分達を横切ってマルム商会に入っていこうとするのだが、それに待ったをかけたミシャから『魔法使いのマグナスであれば、何か(魔法の杖に関する)情報を知っているのではないか?』と相談を持ち掛けられ、ヒルデもそれに賛同してきたので、「ヒルデがそう言うんならわかったよ」と発案した張本人であるミシャの気持ちを全く考えていない無神経極まりない事を言ってからマグナスに事情(自分達が魔法の杖を探していること)を話す。
それを聞いたマグナスが「あぁ……魔法の杖ね…(手がかりどころか実物が)あるな」と答えたのでユージンはその吉報にテンションが上がって食いつくのだが、ユージン達が魔法の杖を探している事は聞かされても、その理由までは聞かされていなかったマグナスからは、「あれは魔法使いにしか装備できない武器だぞ?(俺が抜けたせいで魔法使いがパーティーにいない)お前らが手に入れてどうするんだ?」と聞かれる。
それにユージンはドミダスからの依頼で探していることを話すも「……ってお前には関係のないことだろ、さっさと在処を教えろよ」と交渉の『こ』の字も理解していない事が窺える態度を取り出したのでマグナスが呆れていると、同じくそう思っていたヒルデが二人の間に割って入り「お願いします、マグナスさん。どうしてもあの杖が必要なのです。どんな些細な情報でも構いませんので知っていたら教えていただけないでしょうか」と深々と頭を下げて頼み込んでくる。
その立場をわきまえた態度が功を奏したのかマグナスから「…たまたまだが1本持ってる。(元々マルム商会で売り払う予定だった為、タダで譲る事は出来ないが)そんなに欲しいなら売ってやろうか?」という返事が貰えたのだが、またもやユージンは「マジかよ!初めて役に立ったじゃねぇかマグナス!」と余計なことを言いそうになったのでヒルデはそれを遮り「ぜひお売り下さい! (相場の)金貨1000枚……いえ、(相場以上の)1200枚出します」と必死に頼み込み、それにマグナスが「そんな大金本当に出せるのか?」と問うと、ヒルデは「勇者様の魔王討伐に必要なものですし、そのためなら私たちの教会は援助を惜しみません」とハッキリ言い切った為、マグナスが「(ヒルデの言い値である)金貨1200枚で手を打とう」と承諾した事で交渉は成立する。
そして金貨と魔法の杖のトレードが済んだ直後、ユージンはようやく手に入れた魔法の杖を抱きかかえると下卑た笑みを浮かべて『依頼人のドミダスからこの杖と引き換えにミスリルソード(金貨5000枚の値打ちがある貴重なランクBの武器)を貰う取引をしている』という先程は言わなかった真相を明かして、ヒルデやニャーコと共にマグナスを嘲笑う。
この時のユージンは、『曲がりなりにもランクCというレアアイテムである魔法の杖を手に入れるのには、マグナスも相当苦労しただろうから、苦労して手に入れた代物が大金と交換して貰ったとはいえ他人に取られた上に、その相手が別の武器と交換する形で杖をあっさり手放し、更にはその武器は杖よりも強力である事を知れば、盛大に悔しがるだろう』と思い、この後には「マグナスは『売るんじゃなかった』と大いに後悔し、あわよくば『お願いだ! やっぱり返してくれ!』と自分の足に縋りついて懇願する」という展開を予想していたのだろうが、当のマグナスは後悔するどころか、心底どうでもよさそうに「そうか、良かったな」と、寧ろ哀れむような眼差しで答えたので、ユージンもヒルデもあんぐりとしてしまう……(コミカライズ版では、困惑の余りユージンが情けなく口をパクパクさせる様子が加わった)。
実はマグナスは自分達に追放されてから、前述の攻略本に記載された情報を基に、魔法の杖やミスリルソードよりレア度も性能もずっと上の『大魔道の杖』、ミスリルソードの上位互換である武器『蒼雷の剣』、そして件のミスリルソードを入手しており(ミスリルソードに至っては6本も持っている)、更に言うとユージン達に渡した魔法の杖もその過程で手に入れた10本の内の1本(コミカライズ版では作画ミスで8本になっている)で、即ちマグナスからすれば『どうでもいい取引』に過ぎず、むしろダブって荷物になっていた低ランクの武器を相場よりも高値で買い取ってくれて好都合であった為、マグナスが損をする要素など何処にも無かったのだ。
こうしてマグナスは、そんな事情などつゆ知らずに呆然となるユージン一行に「じゃあな。魔王討伐の旅、俺の分まで頑張れよ」と声をかけて立ち去っていき、マルム商会に入っていくのだが、そんなマグナスにユージンは「あ、ああ……」という力の無い返答をするのが精一杯であった……
悪徳勇者…暴走する
そんな出来事があってから数日後……
ユージンはマグナスを追放してから、『オレの言う事やる事に苦言を呈し、叱ったり諫めたりするうるさい奴がいなくなった』と精々していた事もあって、ミスリルソードの件でマグナスに面食らわすつもりが、逆に彼から面食らわせられた事などとうの昔に忘れ、寧ろマグナスというブレーキ役から解放された反動により、そんな彼の暴走はいよいよ顕著なものと化していく事となる。
ユージンは以前(少なくともマグナスを追放するより前)、ラクスタ国王の誕生日パーティーに招かれた際に出会い、意気投合した近衛騎士隊長のテンゼンから『嘗て秘術鍛冶師のバゼルフにミスリルソードをフレイムソードに強化して貰った事がある』と言う話を聞いていた為、自身もバゼルフにミスリルソードのフレイムソードへの強化を依頼するも、上から目線で態度がなっていない事を理由にバッサリと断られ、前述の魔法の杖の時のようにヒルデがフォローを入れつつ色仕掛けや巧言令色を試みるも、彼女はバゼルフのタイプでは無かった(そもそもバゼルフ……もといドワーフの『ふくよかさのある女性が好み』という価値観を基準にして見るとヒルデは不細工に位置する為、全くの無意味であった)事もあって、一切通じなかった。
…が、そこで何とニャーコが「こいつ、所詮は穴掘りチビの分際で、ごちゃごちゃやかましいにゃー」とバゼルフに暴行を加えたのをきっかけに、ユージンもまた彼を暴力で脅してミスリルソードをフレイムソードに強化させ、剣が完成すると『お前はもう用済みだ』と言わんばかりに彼の仕事場である工房を滅茶苦茶に荒らす。
尚、剣の強化の対価は一銭も払っておらず、それどころかバゼルフから仕事道具である愛用の金槌を奪う(※2)という野盗も同然の乱暴狼藉を働き、見かねたミシャから非難されるも、逆ギレするばかりか、『勇者パーティーに所属して彼等と共に魔王退治と言う功績を上げる事で、冤罪で家名に泥を塗った父親の汚名を濯ぐ為にも、パーティーを抜ける訳には行かない』と言うミシャの弱みを突く形で、ヒルデと共に彼女を嘲笑。
ミシャの訴えを同調圧力をかける事で捻り潰し無理矢理黙らせると、意気揚々とバゼルフの工房を去って行った(因みにバゼルフは、後から入れ違いでやって来たマグナスに助けられ、より高性能な金槌を受け取る事で秘術鍛冶師として再起する事が出来た)。
余談だが、コミカライズ版では工房内における一連の暴挙は、バゼルフの回想一コマ分に省略される形でカットされてしまっている。
※2…ユージンが金槌を取り上げた理由は、ヒルデから『口止め料』という口実で金槌を奪うよう進言されたからである事がweb版・書籍版にて描写されていたが、口止め料というのは本来、『自分の悪事の被害に遭った、若しくは自分の悪事を目撃した人物に対し、周囲にそれについて他言しない事を条件に渡す物』である為、そうなるとこの場合、ユージン達がバゼルフに口止め料として何かを渡すべきであり、ヒルデの主張は的外れそのもの(敢えて訂正するのであれば、人質ならぬ『物質』と言うのが正しいのであろうが、当然ヒルデは『金槌を返して欲しければ、工房での事を他言するな』等といった対価条件をバゼルフに提示する事もしておらず、単に自分の言い分が根本から間違っている事に気がついていなかった模様)である。
悪徳勇者、功を焦る
それから更に数日後、勇者パーティー一行は高名な学者のナルサイから研究用としてブナビア洞窟に咲いている珍しい花の採取の依頼を受けていたものの、依頼を受けたユージンがド忘れしていたせいで依頼を受けてから1ヶ月も過ぎているというヘマをしでかし(更に言うと受けていた依頼を思い出したのはユージンではなくヒルデで、ブナビア洞窟で件の花を見かけた彼女が「せっかくだから持ち帰って、報酬をいただきましょう」と進言しなければ、ユージンの頭の中では依頼の事は確実に忘却の彼方になっていた)、ようやく依頼の品を届けた時には、ユージンが忘れていた間に別口で依頼を引き受けた“親切な御仁”が、その日の内に依頼を達成したばかりか、既に花の研究も終わった事を告げられてしまう。
それに腹を立てたユージンは「忙しい勇者のオレ様がわざわざ摘んできてやったんだぞ! いいから感謝しろ!」等と恩着せがましくゴネまくり(一応、自分が依頼を引き受けている真っ最中なのにも拘らず、何の相談も無く一方的に自分との契約を無効にし、他人と新たに契約を結んだ事に怒るのも無理は無いかもしれないが、流石に1ヶ月間も、それも大して困難という訳でもない依頼の達成が遅延してしまえば、依頼人から信用を失うのは当然な上、遅れた理由も『どうしても外せない用事が重なった』等なら兎も角、ただ単に忘れていただけとなれば、完全にユージンの自業自得である)、しまいに依頼を代わりに達成した『親切な御仁』を『邪魔したヤツ』呼ばわりし、その人物が誰なのか問い詰めると、ナルサイの口から『偉大なる魔法使い マグナス殿』という名を出され、ヒルデと共に驚愕する。
まさかの自分が見下していたマグナスの名前が出てきた事が信じられず「マグナスだと!? どうしてあの戦力外の役立たずが!?」と動揺するユージンだったが、ナルサイからは「おやおや、これは奇妙に聞こえますなぁ。どこかの勇者?(いわずもがなユージンの事である)よりもマグナス殿の方が遥かに優秀で仕事も早いですぞ?」と言い放たれてしまう(web版や書籍版では、『名ばかりの役立たずな勇者』と露骨にユージンに対する嘲りの感情と意趣返しを強調した物言いになっている)。
当然、納得がいかないユージンは冒頭部二段目にある(自らの身勝手極まる)持論である迷言を喚き立て、終いにはバゼルフの時と同様に暴力で脅して(事実上の依頼失敗であるにも拘わらず)報酬を無理矢理ふんだくろうとする(コミカライズ版では単に『勇者である自分をコケにした』という理由から暴力に打って出ようとした)が、逆にナルサイから「『ラクスタ王家に七代に渡って仕えてきた学者の家系である私を脅してきた』と、国王陛下に報告させていただきますが、よろしいのですね?」と権力で脅し返されて脂汗を流して狼狽えてしまうが、幸いにもヒルデが割って入ってフォローしてくれたため、『今のは冗談』という事にして許してもらえたが、自分が平身低頭で媚び諂う羽目になっただけでなく、全て見透かしていたナルサイからは完全に見縊られ、高笑いされるという恥辱を受ける事となった。
結局、一文も報酬を貰える事なくナルサイの屋敷から酒場兼宿屋への帰路についた勇者パーティーであったが、ユージンは知らぬ内にマグナスに(本来なら自分が得る筈だった)手柄を奪われ面目を潰された上に、ナルサイからも散々バカにされた事で彼等への怒りと苛立ち、憎悪が収まらず、ストレスが絶頂に達していた。
そこへ運悪く鬼ごっこをして遊んでいた子供の一人が自分にぶつかってしまい、堪忍袋が切れたユージンはなんと、
「おらガキてめぇ、ぶっ殺されてぇのか!?」
と怒りに任せて子供を思い切り蹴り飛ばして大怪我を負わせる(コミカライズ版では「ガキ! ぶっ殺されてぇのか!?」とセリフが少し変化しており、また、暴行の描写に関しても、蹴り飛ばされた子供はその勢いのまま地面を水切りの石のように跳ねる形で数回も地面に叩きつけられた挙げ句、積んであった木箱の山に衝突して頭から血を流す程の大怪我を負うという、ユージンの外道ぶりを強調した物に変更されている)。
幸いにも子供は命に別状はなく、気絶と大怪我を負うだけで済んだため、ミシャが直ぐ様その子供に駆け寄り、彼女の頼みでヒルデが回復魔法で治癒したため大事には至らなかったが、ユージンは子供に謝るどころか、悪びれる様子も見せなかった。
すると、この一部始終を見ていたラクスティアの住人達から勇者パーティー一行は市民の白眼視と嫌悪を買い、仕舞いには群衆達の間から…
- 武器屋の店主に因縁をつけて商品の鎧をタダ同然で強奪する(詳しくは作中で語られていないが、十中八九バゼルフの時と同じ様なパターンでのやり取りを繰り広げたのであろう)。
- レストランで無銭飲食を一ヶ月に渡って働く(それも、高額な料理が多いので女店主に抗議されたが、『オレが世界を救ってやるんだから、これくらいの小さなツケでガタガタ抜かすな』と逆ギレ同然の態度で一蹴)。
- 特に罪もない市民に『ブサイクなツラが気に入らねぇ』という理不尽な因縁をつけて殴り飛ばす(仲間の方もユージンを諫めたり被害者の男性に謝罪したりはせず、ヒルデとニャーコに至ってはそれを見てゲラゲラと嘲笑っていた)。
という勇者は愚か、最早野盗すらをも通り越した強盗の如き所業を行っている事を陰口にして(主に読者に)晒されてしまう。
既にラクスティアの人々からの勇者パーティーの信頼や評判がどん底に落ちているだけでなく、更には彼等からあてつけの如く、自分が『戦力外』『役立たず』『無能』『穀潰し』として追放した筈のマグナスが、
等々(攻略本に記載されている『クリアすると経験値やアイテム等が得られるサブクエストだから』という主な理由があったとはいえ)、ラクスタ王国のあちこちで人助けをしている事や、
- メゴラウスの大坑道を占領するボスモンスターを討伐して数百年ぶりに解放する。
- 更に大坑道の採掘場までのルート開拓にも成功する。
等の大功績を挙げた事、更には、
- その事に大喜びした国王から貴族に勧誘されるも、『魔王退治の旅の途中だから、どこか一国に仕える訳にはいかない』と、玉の輿に乗ったりはせずに、申し出を断る。
という誠実さや真面目さを見せた事を吹聴され、自分とは真逆といってもいい程に民衆から圧倒的な支持と信頼を得ているという現実を受け入れる事ができず、激しい屈辱心と反骨心に苛まれたユージンは、持論である『勇者より優れた魔法使いなどいない』事を証明して、自分はマグナスより格上である事を民衆に知らしめる為、魔王軍の幹部である八魔将の一人『魔拳将軍デルベンブロ』を討伐する事を決意する。
しかしこの時、ユージン自身は言わずもがな、勇者パーティー全員がデルベンブロと戦うにはレベルが全く足りてない上、突発的な思いつきによるものだった為、碌に対策を考える事さえもしておらず、この決意は無謀どころか自殺行為にも等しい(当然悪い意味での)蟷螂の斧そのものな行動であった(後にその話をナルサイから聞かされたマグナスも「……ユージン……愚かな」と呆れて閉口する他無かった)。
こうして、名声欲しさの虚栄心だけで分不相応な挑戦に乗り出したユージンは、あちこちでわざわざ『今から討ちに行くぞ』と恩着せがましく喧伝してから、仲間達を引き連れてデルベンブロの居城がある死の山に向けて王都を発つのだった……
勇者にあるまじき愚行
デルベンブロの居城である魔城に到着した勇者パーティーは、道中で出くわす魔物に苦戦しながらもデルベンブロの居る最上階に向かう途中の魔城五階の迷宮まで辿り着くが、そこにいたのは何とマグナスだった。
更に本人の口から『自分達と同じくデルベンブロの討伐の為に来た』『しかもバトルゴーレムであるグラディウスを連れて来ただけなので、実質ソロ』と言う事を聞かされ、『魔法使いの一人旅』いう信じがたい話(しかも自分達とは違って、攻略本をしっかり読んでちゃんと対策を立てていたお陰で、特に負傷・消耗した様子も無い)に、ヒルデやニャーコ共々動揺し、狼狽えてしまう。
その間にマグナスは先に行こうとしたのだが、ヒルデは『自分達が力量に合わぬ無理や無茶をしている』という自覚があった為、それを制止し、彼に勇者パーティーへの復帰をダシにしてまで共闘を要請する(当然ユージンは「勝手に決めるな!」と抗議するも、デルベンブロを倒す事で頭が一杯のヒルデは珍しくユージンの言葉を無視した。)。
しかし、それもあっさりと断られた挙句、「お前たちでは戦力にならない」とかつて自分達がマグナスにした戦力外通告を、今度は逆に自分達がマグナスにされるという屈辱を味わう(一応フォローすると、マグナスは『デルベンブロと戦うには実力不足のユージン達を救う為』と言う理由でデルベンブロを討伐しに来たので、戦力外通告もまた、ユージン達に現実を突きつけ、デルベンブロ討伐を諦めさせる目的があっての事で、ユージン達を見下す意図があって言った訳ではない)。
それにプライドを傷つけられたユージンは逆上して、道中で見てきたトラップを利用し、仕掛けを起動させてマグナスを奈落の底に続く落とし穴に落とすという卑劣な手段に出る。
そして落ちて行くマグナスを見下ろしながらユージンは
「思い知れマグナス! 勇者より優れた魔法使いなんざいねぇんだよ! ギャーハッハッハ!」
と嘲笑うのだった(尤もマグナスからすれば、飛行魔法である『フライト』を習得しているお陰で、何時でも落とし穴から脱出可能なので、トラップに嵌められた事は大した痛手にはなっておらず、それどころか、攻略本の情報で落とされた先の地下牢にデルベンブロ討伐に必須なマジックアイテム『デルベンブロの心臓』が隠されている事を知っていたものの、非生命体であるグラディウスではトラップを起動させる事が出来ず困り果てていたが、ユージンに落とされた事で心臓を見つける事ができた為、かえって好都合な結果となり、ユージンは図らずもマグナスのデルベンブロ討伐に大きく助力する事となってしまった)。
マグナスを卑劣な手段で排除した(と思い込んだ)ユージンは、仲間を連れてようやく最上階の玉座の間に到着し、討伐する相手であるデルベンブロと対面する。
だがレベル40のデルベンブロからすれば、ユージン達は取るに足らないレベルと力量の無謀な挑戦者に過ぎず、対峙早々に『雑魚共』と嘲笑されてしまう。
「ざ…雑魚だと!? このオレたちが!?」と激昂するユージンにデルベンブロは更に追い打ちをかけるように「〈レベル〉と〈ステータス〉を見れば、一目瞭然ではないかね? 余程運が良いのだろうな。〈勇者〉というのは」と堂々と皮肉る。
当然それに憤慨するユージンであったが、不意にデルベンブロから某RPG作品の一作目のラスボスの如く、「勇者よ、私の部下となれ。さすればラクスタの半分を貴様にやろう」という誘いを告げられた事で(正統派な勇者なら断る場面なのにも拘わらず)、ユージンは直前までの怒りを忘れて「え、マジで!?」と嬉しそう且つ乗り気で食いつくという醜態を読者に晒してしまう(コミカライズ版ではミシャは言わずもがな、何時もならどんな時でも彼を支持しているヒルデでさえもドン引きするような眼差しをユージンに向けていた)。
だが、デルベンブロはすぐに「魔王様の指示でそう言っているだけで、(既に自分達魔王軍の傘下にある、各国の有能且つ利己的な重鎮とは違い、ただ単に貪欲なだけの極めて愚かで無能な)貴様など本気で欲しがるわけがないだろう。ここで今すぐ死ね」とバカにしているかの如く直ぐに掌を返す。
どこまでも見くびられ、弄ばれていると自覚したユージンは激昂し、デルベンブロに一斉攻撃を仕掛ける。
しかし力の差は歴然であり、ダメージを与えるどころか対面した時からずっと玉座に腰掛けていたデルベンブロを玉座から立たせることすら出来なかった。
デルベンブロの異常な防御力の高さの前にミシャとニャーコの攻撃はおろか、ヒルデからかけてもらった強化魔法と勇者専用スキル『武具覚醒』を発動したフレイムソードの一撃すらも効かず、それどころか『武具覚醒』によってかかる負荷にフレイムソードが耐えられなかった事が原因で、フレイムソードの刃が折れてしまう。
何と、そのフレイムソードは粗悪品だったのだ(デルベンブロ曰く『優れた匠は自分が作った渾身の逸品である造形物には銘を刻むもの』だが、バゼルフはせめてもの抵抗にと、ユージンには銘を刻んでいない手抜きのフレイムソードを作り、渡していた)。
ユージンはその事をデルベンブロに嘲笑された挙げ句、レベル30以降の敵は魔力を帯びていない物理攻撃は碌に効かなくなる(しかしながら、後に登場する剣士が、デルベンブロの同僚に魔法剣でダメージを与えていた事、フレイムソードは武具覚醒時に刃に炎を纏っていた事を考えると、粗悪品でさえなければダメージを与えられたと思われる)事、パーティー内に(自分に唯一ダメージを与える事ができる)魔法使いがいない事を指摘され「なんともバランスの悪い哀れなパーティーだな」と徹底的にこき下ろされてしまう。
一方、自身のフレイムソードが粗悪品だった事が未だ信じられずに硬直したままのユージンだったが、その隙を突かれてデルベンブロからデコピン一発で大広間の壁際まで吹っ飛ばされてしまう。
ヒルデは瀕死のユージンを回復しようと駆け寄るのだが、あろうことかユージンはヒルデの手を取りこう言いだした。
「駆け落ちしよう」
まさかの一言に流石のヒルデも意味がわからず困惑する中、ユージンは彼女の手を無理矢理引き、ミシャとニャーコを置き去りにして敵前逃亡するという勇者とは思えぬ愚行を犯したのだった。
これにはミシャも「ここまで……ここまで意気地のない男だったなんて……!」と怒りを通り越して茫然自失になるしかなく、デルベンブロからも「あれが本当に〈勇者〉かね?〈臆病者〉の間違いではないのかね?これはケッサクだ!」と腹を抱えて大笑いされる始末だった(ちなみにその後、ニャーコは酷い目に遭い、ミシャも危うく同じ目に遭いかけたが、すんでのところでマグナスが現れ、彼がデルベンブロを討伐することで救われた)。
堕ちるとこまで堕ちた勇者の裏切り
『名声欲しさの虚栄心でデルベンブロに挑むも全く歯が立たず、手負いになると仲間を見捨てて敗走する』という惨敗を喫しただけでなく、結局は『デルベンブロ討伐』の手柄さえもマグナスに取って代わられてしまったユージンだったが、実は上記の近衛騎士隊長であるテンゼンは、デルベンブロと内通してラクスタ王国の侵略に手を貸すという裏切り行為を行っていた事が発覚し、経緯は不明だが、彼に『王国乗っ取りを手伝えば、憎い相手であるマグナスの抹殺に助力し、ラクスタの領土の半分を渡す』と唆され、ユージンは上記の事から、最早勇者としての自分の面目に後が無い事を悟っていた事もあって、ヒルデ共々あっさりとその契約に乗り、テンゼンと手を組んでしまう。
そしてマグナスがデルベンブロを討伐してから五日後。
ラクスタ王国の王城の中庭広場にて行われるデルベンブロ討伐を祝う晩餐会へヒルデ、テンゼンと共に乗り込んだユージンは、ラクスタ国王をはじめ晩餐会に集っていた人々の前で『マグナスの正体はデルベンブロ』という無理矢理な妄言を突きつけ(コミカライズ版ではテンゼンが言っている)、困惑するマグナスを「随分と顔色が悪いじゃねぇか?」「テメェの正体こそが『魔拳将軍』だってバラされて、すっかりブルっちまったかい?」と嘲笑するが、マグナスからは「疲れてるだけさ」と一蹴された挙げ句、逆に自分がデルベンブロ戦で手も足も出ず、あまつさえ仲間を見捨てて敵前逃亡した事を暴露されて動揺し(ユージンの演技力の無さも有って)、言葉の至る所で噛み噛みになったり、マグナスの事を『デルベンブロ』ではなく『マグナス』と本名で呼んでしまったりと、早くもボロを出しかけてしまう。
そこでテンゼンが代わりに、ラクスタ国王に《人物鑑定》のスキルを使うよう進言し、国王もそれに従った結果、マグナスのレベルは36で、ステータスに関しても魔力が271と、人間の域でない事が白日の下に晒され、テンゼンはその事を理由にマグナスの正体が人間ではないと追求し、当初は信じられなかった国王や大臣、晩餐会の出席者達も、マグナスに疑念を抱く様になる(上記の通り、デルベンブロのレベルは40なので、それより低いレベル36のマグナスがデルベンブロな訳が無く、更に歴史上の偉人には、マグナスと同等の実力者達など数多く存在している為、レベルやステータスを理由に『マグナス=デルベンブロ』だと立証するのは難しいが、それ等はあくまでマグナスと攻略本の情報を共有している我々読者からすればの話であって、作中の人々の視点からすれば、それ等は攻略本に記載されている、マグナスしか知らない情報であり、何なら国王が今までに《人物鑑定》で見た最も腕の立つ魔法使いですら、レベル17止まりの宮廷魔法使いである為、彼等がテンゼンの話を信じてしまうのも無理は無い)。
当然、先程マグナスが言った『ユージンが旗色が悪くなるや見捨てた仲間』その人であり、尚且つマグナスがデルベンブロを倒した瞬間を目の当たりにしていたミシャは、ユージン達が彼を陥れようとしている事を見抜いてマグナスを弁護するも、ユージンは「あいつはデルベンブロに誑かされた、愚かな淫売なのです。あんな女の言うことを真に受けていたら、国を危うくいたしますぞ!(コミカライズ版では「~淫売なのです」以降は「真に受けてはなりません!」のみと簡潔になっている)」と、とうとうミシャをも辱めにしてこき下ろしてしまう。
更にヒルデもそれに便乗して、「そうです、勇者様と彼女の言葉……どちらが信頼できるかなど考えるまでもありません それこそ(勇者様を疑うなど)神霊タイゴン様を疑うようなものです」と周囲を煽り、ミシャは晩餐会の参加者達に疑惑の眼差しを向けられてしまう。
一方、マグナスは攻略本の情報で、テンゼンこそデルベンブロの依代及び後釜である事を既に把握しており、その正体と八魔将の力の継承システムの全貌を皆の前で明かしながら、論より証拠と言わんばかりにテンゼン目掛けてデルベンブロの弱点である雷属性の攻撃魔法〈サンダーⅣ〉を放つ事で、その醜悪な魔物としての正体を公衆の面前で晒させ、自らの潔白を証明すると共にユージン達の悪行を明白にするのだった(ちなみにテンゼンのすぐ隣にいたユージンはというと「うわあああああああ 死にたくねええええ」という小物な悪党感全開な台詞と共に必死に走って逃げたため巻き添えを食わずに済んでいる)。
こうして化けの皮が剥がされ、魔物『テンゼン=デルベンブロ』となったテンゼンに対峙しようとするマグナスだったが、その前に何故かユージンが立ちはだかる。
その勇者としての真逆の行いに「念のために聞くが……何をしている?……ユージン」とマグナスが問うと、ユージンはニヤついた顔でテンゼンから借りた『歴戦のフレイムソード』(こちらはデルベンブロ戦で折れたユージンのフレイムソードとは違って、まだ権力に目が眩んでいなかった頃のテンゼンの正しい心を見込んだバゼルフによって丹精込めて作られている業物で、銘も刻まれている)を構えて「決まってんだろ」と返す。
明らかに矛盾した状況にマグナスから「……どう見ても、お前が刃を向けるべき魔物はあっち(言うまでもなくテンゼンの事)だと思うがな……勇者ユージン(コミカライズ版では『勇者様』)?」と指摘されるが、ユージンは冒頭三段目の台詞と共に勇者でありながら、自らの(美女も金も権力も全て自分の思いのままにしたいという)私利私欲で世界の平和を脅かす魔王軍と結託して守るべきラクスタ王国を売った事を、国王達やミシャも居る前で自分から堂々と打ち明ける。
そんな最早勇者の面汚しとしか言いようのない愚行に、マグナスからは「…愚鈍だとは思っていたが……堕ちるところまで堕ちたな……」と心底呆れ果てられ、一方のユージンもその台詞が「ンだとぉ!? マグナス!」と癇に障ったようで「テメエのその気取った態度が、昔っっっから気に食わなかったんだよぉ!!」と怒りを爆発させて襲い掛かり、遂に〈勇者〉と〈魔法使い〉は直接対決へと発展する。
ユージンは『魔法使いのマグナスが相手なら呪文を唱える隙さえ与えなければ勝てる』という浅知恵(しかしながら、ユージンは先程の〈サンダーⅣ〉を目の当たりにしている為、『魔法使いのマグナスを相手に距離を取って戦うのは愚策』という判断自体は決して的外れではない)から接近戦に持ち込むのだが、何とマグナスはユージンの『歴戦のフレイムソード』を用いた斬撃を歯牙にもかけず、そのまま彼の顔面に大魔導の杖を用いた杖術によるカウンターをお見舞いする。
倒れ伏せたユージンは、有り得ないと言わんばかりに唖然とするも、簡単な話だった。
何故なら上記の通りユージンのレベルは19なのに対し、マグナスのレベルは36である事に加えて、全種類のステータス強化の果実の恩恵(しかも効果が発揮される限界である50個ずつ食べている)によって、魔法系は勿論のこと力や素早さといった物理系のステータスに於いてもユージンより遥かに格上なのだから。
その為、ユージンの斬撃は全て回避され、逆にマグナスの杖術は全てユージンに命中してしまう。
それでもユージンはヒルデの回復魔法や強化魔法による助力もあってガムシャラな攻撃をしつこく続けるが、グラディウス(晩餐会の前日に、マグナスからテンゼンの正体について聞かされ、協力を要請されていた恋人のアリアが、会場のオブジェに紛れこませていた)に阻まれ狼狽える。
そしてマグナスは戦う相手をテンゼン=デルベンブロに変更して激戦を繰り広げるが、その隙を突いてヒルデが卑劣にもアリアを人質に取った事で形勢逆転し(当然それを見たミシャも助太刀に入ってアリアを助けようとするが、テンゼンが用意した彼と同じく魔物化した部下達に囲まれ阻まれてしまう)、勝利を確信したユージンは武具覚醒を使用して『歴戦のフレイムソード』でマグナスにトドメを刺そうとするが、グラディウスがマグナスを庇うように立ちはだかった為、ユージンは「邪魔だ クマああああああああ!!!!!!」と勢いそのままに『歴戦のフレイムソード』を振り下ろし、グラディウスをバラバラに粉砕してしまった……。
そしてそれに呆然としたのか沈黙したマグナスに、ユージンは「よけるなよマグナス! よけたらあの女が死ぬぞ~?」「ほーら死んじゃうぞ~~~~~~っっっ???」と盛大に挑発しつつ、今度こそトドメを刺そうとするも、先程自分がグラディウスを破壊した事で、『決して怒ってはいけない』という学院の開祖レスターの金言を破る事も覚悟の上で激怒したマグナスにより、カウンターで渾身の一撃を顔面に叩きこまれてしまう。
強烈な一撃を叩きこまれたユージンは「マグナス、テメエエエエエエエエエエエエ!?」と逆上し、「ヒルデ、殺れえええええええええええ! このバカに後悔させたれええええええええっっっ」とヒルデにアリアを殺すよう命令するのだが、そんなユージンにマグナスは「生憎だが……バカなのも……後悔するのも……お前たちの方だ」と吐き捨てると、この時の決戦に備えて用意していた切り札である決戦兵器……即ちマグナスが倒し、その後『屍竜の王錫』でアンデッドとして使役していたデルベンブロこと『アンデッド・デルベンブロ』を呼び出す(コミカライズ版では、既にマグナスによって倒された筈のデルベンブロが生きている事に唖然となるユージンを、マグナスが先程の『随分と顔色が悪いじゃねぇか?』というユージンの発言への意趣返しとして、「随分と顔色が悪いじゃないか?ユージン」と嘲笑うシーンが追加されている)。
そしてアリアを人質にしていたヒルデは、アンデッド・デルベンブロの強烈な一撃で吹き飛ばされて失神(コミカライズ版では、ヒルデがアンデッド・デルベンブロに気を取られている隙を突いてアリアが逃げ出し、それに気づいたヒルデがもう一度アリアを人質にするべく彼女の手を掴むが、その瞬間にマグナスの「アリアに汚い手で触るなヒルデ」と言う言葉と共に繰り出された、アンデッド・デルベンブロの重く素早く鋭利な攻撃を叩きこまれて吹き飛ばされ、失神に加え失禁と少し異なっている)。
その光景を目の当たりにしたユージンは状況を理解できず「どうしてデルベンブロがここにいるんだよおおお!? なんでマグナスが使役してんだよおおおお!?」と恐怖に怯えて錯乱する中、マグナスからは「俺の正体がデルベンブロだと言ったのはおまえだぞ?当然、デルベンブロと戦う事も視野に入れた上で、そう糾弾したのだろう?」と皮肉を吐かれるが、最早唯一の味方であるヒルデも戦闘不能となって四面楚歌の状態となった今、ユージンにできる事は「うるせええええっ!! オレは聞いてねええええ! そんなん聞いてねえええええええ!!」と駄々をこねる子供の様に喚く事だけであった。
尚、コミカライズ版ではこの時、魔物化したテンゼンに向かって「テンゼン! なんでだっ! どうして(アンデッド・デルベンブロの存在を)教えてくれなかった!?」と筋違いな詰問をするも、当然テンゼンはそんな事を知っている訳がなく、予想する術すら無い為、呆れの余り無視された。
そして「己の愚かさを後悔し――清算しろ」というマグナスの言葉を合図に、かつて自分を瀕死にしたデルベンブロが突進してくると、ユージンは恐慌して無様な姿を晒しながらマグナスに向かって「オレが悪かったあ、マグナス!止めてくれっ!オレたち一緒に旅した仲間じゃねえかよっ!なっ?」と自分の方から一方的に断ち切った関係を引き合いにして命乞いを実行するが、マグナスからは「もう仲間ではないはずだが?」と冷淡に一蹴され、尚も「もう二度とテメエにはちょっかい出さねえ! 誓う!!だから許してくれよおおなあああ!!」とゴネるも、マグナスにとっては自分が勇者パーティー在籍時代にユージンやヒルデから受けた仕打ちについては最早『どうでもいい』と割り切っており、そんな事よりも『自分にとって大切な人であるアリアの命を脅かした事』(コミカライズ版では『バゼルフに造ってもらってからの付き合いこそ短いが相棒と呼べるほどに愛着が湧いたグラディウスが破壊された事』も理由に加わっている)が彼の逆鱗に触れていた為、恐ろしい形相で「絶対に許さん」と凄まれる事となる。
情に訴えかけた命乞いが通じる余地がないと悟ると、今度は半ば開き直ったかの様な態度で「オレは勇者だぞ!? 世界を救う運命を背負った男だぞ!? 勇者を殺したら世界終了だぞ!? テメエ責任とれんのかよ!?」と(自分の方から私利私欲の為にその運命を放棄しておいて)自分の立場を鼻にかけた上から目線の命乞いを実行するも、ユージンに追放され、手に入れた攻略本の真価を知った時に『自分が勇者(ユージン)に替わって魔王を倒し世界を救う事』を自分自身に誓っていたマグナスがそんな命乞いに心を揺さぶられる筈がなく、「お前程度が世界を救えるものか」「責任?あぁ取ってやるさ」と反論され、彼の指示を受けたアンデッド・デルベンブロに鋭利で重い腕による猛攻を30発以上も延々と叩き込まれてしまい、それはユージンが今までにしてきた悪事の報いと言わんばかりに、肉体が原型を留めない程に潰されたのだった。
ユージンの終焉
だが、ユージンはしぶとくも死んではいなかったのである。
それは以下のスキルの効果によるものだったのだ。
天命未だ尽きず |
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勇者の職業を持つ者だけが所有している隠しスキルで、このスキルの持ち主は魔王モルルファイが生きている限り、いかなる手段をもってしても絶対に死なない(HPが必ず1残る)という効果……即ち(条件付きながら)死ぬ(HPが0になる)ことは決してないというまさしく反則級の効果を秘めている。 |
しかし、死なないのは確かだがこの手の不死身の能力には珍しく『自己再生や自動回復等で傷やダメージを癒す効果』は備えてはおらず、瀕死や戦闘不能にならない訳ではない。
つまり、瀕死状態にした上で水牢に閉じ込めたり、生き埋めにする等といった方法で、魔王討伐までユージンを無力化する事自体は可能。
その為、そこから復活するにはヒルデや教会等の他者から回復魔法等で治癒・治療してもらう必要があるが、そうすればどんなに体が目を背けたくなるような惨い状態でも肉体は完璧に復元・完治するためチートそのものなスキルである事には変わりない。
こうしてユージンは勇者でありながら、罪もない大勢の民衆を苦しめ傷つけただけでなく、『魔王軍に魂を売り、国家転覆を企んだテンゼンに私利私欲を理由に加担する』という大罪を犯した(オマケに、国王や大臣を始めとする、晩餐会の出席者達にその犯行を目撃されてしまっている以上、言い逃れも出来ない)事から、本来なら極限まで拷問や責め苦を行い痛めつけてから公開処刑されるべきなのだが、このスキルのせいで(上記の通り無力化する事は可能だが)殺す事が出来ない為、水牢に永久幽閉される筈だった。
しかし、ヒルデの所属する教会の僧侶達(旧弊であるためラクスタ王家にも影響力がある)が
「ユージン殿は、神霊タイゴンに選ばれた勇者である」
「もしその勇者を幽閉すれば、いったい誰が魔王を討つのか?」
「諸外国が許すと思うのか?」
「王は責任を取れるのか?」
と言った感じに(ユージンが犯した悪行を棚に上げて)唾を飛ばしながら大いにゴネたため、国王は大いに悩んだ末にユージンとヒルデに『国外追放』(極刑や投獄には処さない代わりに、ラクスタ王国からの即刻追放は勿論、今後は隣国からラクスタ王国への入国、並びに国境の越境も永久禁止で有り、二度とラクスタ王国の地を踏む事は禁ずる)という処罰を下し、ユージンとヒルデはラクスタ王国から追放された。
web版・書籍版では、アンデッド・デルベンブロに惨敗したシーンを最後にユージンとヒルデの出番は終わっているが、コミカライズ版ではその後の様子が少しだけ描写されており、ラクスティアの裏町を逃げる様に歩きながら、あれだけ散々やらかしておいて「なんで勇者のこのオレが国外追放なんだよ!おかしいだろ!」と苛立ちながら愚痴を溢し、ヒルデから「こんな無礼な国(自分達の今までの悪行三昧を、完全に棚に上げての発言である事は言うまでもない)さっさと出てしまいましょう」「私はいつでも勇者様の味方ですわ」と慰められ、2人で悦に浸っていた。
……が、そこへ以前、ユージンが八つ当たりで暴行した子供の父親に「この前はよくも息子を蹴飛ばしてくれたな!」と掴みかかられたのを皮切りに、それまで自分達が危害を加えたり、迷惑をかけまくった民衆達から
「魔物に魂を売った極悪人め!」
「今までは勇者だからって我慢してきたが、もう言いなりにはならないからな!」
「この国にアンタの居場所なんかないよ!」
「さっさと出ていけ!」
とブーイングを浴びせられ、憤慨して『歴戦のフレイムソード』を抜きかけるも、ヒルデに「勇者様!ここで騒ぎを起したら今度こそマグナスさんに…(殺されてしまいます)!」と制止され、自身もマグナス(が使役したアンデッド・デルベンブロ)から受けた徹底攻撃がフラッシュバックして顔面蒼白となり、悔しそうにラクスタ王国から出て行くのだった(尚、ユージンはそれでも懲りもせずに『別の国ではオレ様を崇め讃えるに決まっている! オレ様は勇者だからな!』と根拠のない自信を豪語していた)。
因みに、ミシャは『デルベンブロとの戦いでユージンが自分とニャーコを見捨てて逃げた』件と『身勝手な私利私欲の為に魔王軍と手を結んだ』件でユージンに対して完全に愛想を尽かし、同時に自らも魔王軍と戦うには力不足であると痛感した事で、これからは故郷の魔物退治で地道に汚名を返す形で貢献していく事を決め帰郷。
ニャーコもまた『デルベンブロ戦で見捨てられただけでなく、そのせいでデルベンブロに犯されかけた』事もあってか死の山から生還後、ミシャと同様ユージンに愛想を尽かした事から縁切りを決めるも、自身もそれまでユージンに便乗して散々乱暴狼藉を働いていた事が仇となって投獄され、勇者パーティーは事実上の解散状態となり、そのまま物語からフェードアウトした。
更に、国王はユージンの悪事を余さず国内に公布するだけでなく、諸外国にも使者を送り伝えたらしく、ユージンとヒルデの悪行三昧は風聞となってアルセリアの世界各地(ラクスタ王国やハリコン王国は勿論、アラバーナ帝国、カジウ諸島連盟、聖地ウーリュー、ルクスン大公国、ヴィヴェラハラ、リーンハルター帝国、etc.)に伝えられ、マグナスの予想や考えは以下の通りであった。
- 世界中のどこへ行こうと、(二人は)石を投げつけられ、今後一生迫害され続ける
- ユージンは勇者である為、改心して善行を重ねれば、汚名を返上出来るだろうが、あいつが周りから馬鹿にされるのを我慢して世のため人のために尽くすなど、まるで想像もつかない(現にユージンは上記の通り、他国でも悪事を働く気満々だった)
- 死んだ方がまだマシな目に遭うが、ユージンはなまじ死ねない分悲惨な事になる
- いつの日かタイゴンに勇者として選ばれたことが、実は祝福ではなく呪いである事に気付く
- 自分がしでかした罪と愚かさのツケを清算するだけ
人物関係
勇者パーティー
同じパーティーの女僧侶。
自分が『彼女が信仰している神霊タイゴンに選ばれた勇者』という事もあって彼女からは慕われており、それどころか自分の言うことやること決めたことは全て肯定してくれるのでとても信頼している。
その為、彼女の進言や助言にはマグナスやミシャと違って素直に聞き入れている。
同じパーティーの女戦士。
マグナスとは違って攻撃面で役に立っているため冷遇こそしないものの、それでも彼女からバゼルフの工房での暴挙を咎められても聞き入れもしなかった事からも分かる通り、彼女の言う事にもまた基本的には耳を貸さず、それどころか(彼女が勇者パーティーに所属しているのは『勇者パーティーの一員として活躍して、冤罪で家名に泥を塗った父の汚名を濯ぐ』という事情がある為)「マグナスみてぇにパーティーを追放されてぇのか!」と脅迫して黙らせている。
デルベンブロ戦で彼女をニャーコ共々見捨てた後は、マグナス同様に見放したかの様な態度をとっている。
自分が追放したマグナスの後釜として仲間にしたケットシーの女格闘家。
『超が付くほどの短気で暴力的』という事もあって彼女とは気が合う(更に言えば、ユージンが子供を蹴り飛ばした際、直ぐに子供に駆け寄ったミシャや彼女の頼みとはいえ子供を治療したヒルデとは違って、ニャーコはユージン共々気怠そうな態度を取っていた事から、彼女もユージンと同じく、気に入らない事があれば子供にも暴力を振るう主義である事が察せられる)ようで、彼女の乱暴狼藉は一切咎めないどころか、一緒に乱暴狼藉等の悪行を働く有様である。
しかし、デルベンブロ戦では彼女をミシャ共々躊躇なく見捨てて逃げ出した為、あくまで気が合うから馴れ合っているだけであって、所詮彼女への信頼や仲間意識などその程度の物であるという事が窺える(尤も、ニャーコもニャーコで、いざ見捨てられれば、「ユーシャ様に愛想が尽きたにゃー」と、それまで自分もユージンと一緒になって市民達に悪事の限りを尽くしていた事を棚に上げてユージンだけを批判した挙げ句、彼と縁を切る事で自分の罪から逃げようとしていた為、どっちもどっちであるが)。
コミカライズ版では国外追放となったユージンが彼女を探していた(その際に「あいつ逃げやがって!」と特大ブーメラン発言をしていたが)事から、デルベンブロ戦で見捨てた後は実質勇者パーティーから除外扱いしていたミシャと違って、まだ多少は仲間意識が残っている事を窺わせる様子を見せていたものの、ニャーコが後に勇者パーティーを脱退宣言した際、乱暴狼藉その他諸々の罪を被害者達から改めて訴えられて投獄された事をヒルデから聞かされるとすぐに掌を返し「使えねえ!」と悪態をついていた。
憎悪の対象
プロローグまで自分が率いる勇者パーティーに所属していた魔法使い。
自分より二つも年上で、自分の言うことやること決めたことに苦言を呈していたためとても煩わしく思っており、本編のプロローグにてデストレントとの戦いで特に活躍してなかった(実際は上記の通り、ユージンの指示が間違っていたせい)事を理由に、彼や魔法使いそのものをヒルデと共に散々侮辱して嘲笑った挙句、追放した。
だがナルサイの屋敷での一件や、その後の街で起こした騒動から『(全てユージンの自業自得だが)自分は民衆からの評判がとても悪いのに対し、マグナスは民衆からの評判がとても良い(それも「これじゃあどっちが勇者様かわからんな」と民衆に当てつけの如く言われる程)』事を知らされた事で、ユージンは彼に逆恨みな憎悪を募らせることになる。
尚、マグナスはパーティー追放の時点ではレベル23(コミカライズではデストレントをソロ討伐して膨大な経験値を獲得してレベル24になる描写があるが、討伐前のレベルは不明)と、デルベンブロ戦の時点での勇者パーティー全員を上回っていたのに対し、ユージンはレベル19、それもデルベンブロ戦の時点であり、即ちパーティー追放の時点ではもっと低かった可能性もある為、ユージンがマグナスを追放した時点では、少なくとも彼とはレベル4もの差があった事になる。
それなのにも拘わらず、自分より遥かに格上のマグナスをそんな事も知らずに見下し嘲笑していたと考えると、非常に滑稽である。
自分達勇者パーティーにブナビア洞窟の調査を依頼した学者。
依頼を忘れて1ヶ月も放ったらかしにしていたユージンと違い、依頼を受けたその日の内に達成したマグナスを高く評価しており、尚もマグナスを『役立たず』と罵ろうとするユージンに対して、上記の通り正面からマグナスを称賛し、彼と比較する形でユージンをこき下ろし、乱暴者のくせに権威には弱い彼の器の小ささを露骨に嘲笑うなど頭から馬鹿にしている。
その結果、ユージンはマグナスだけでなく彼に対しても憎悪を募らせる事になる。
魔王軍
運命の神霊タイゴンからのお告げによって魔王討伐の使命(と勇者関連の職業やスキル等)を授かった事でユージンが討伐すべき最終目標である世界の平和を脅かす魔王……なのだが、ユージンは前述通りデルベンブロとの戦いで惨敗し、更には魔王軍に加担する形でその使命を放棄したため、その使命はマグナスが引き継ぐことになる。
魔王モルルファイに仕える幹部『八魔将』の一人。
ユージンはマグナスへの反骨精神から手柄を求めてデルベンブロの討伐を目指すのだが、デルベンブロからは実力(レベル、ステータス)は勿論の事、知識(レベル30以上のモンスターには物理攻撃は完全に無効化される、レベル31以下の相手を拘束状態にする『フィストバインド』、デルベンブロを倒すには『デルベンブロの心臓』の破壊が必要不可欠)すら碌に備えていないユージンのことをトコトン見下し嘲笑している(しかし上記の通り、魔力さえ纏っていればレベル30以上のモンスターにも物理攻撃は通用する為、勇者であるユージン、そしてミシャやニャーコも上記の魔法剣及びそれに似た攻撃スキルを習得する可能性がないとは言い切れない)。
協力者
- テンゼン/テンゼン=デルベンブロ
ラクスタ王国の近衛騎士隊長。
かつてはラクスタ王国への忠義厚く、理想に燃えていた正しい心を持つ騎士だったのだが、今では権力等に対する欲に目が眩み、デルベンブロのラクスタ王国侵略に手を貸す程の悪に堕ちてしまった(デルベンブロが『優れた匠は自分が作った渾身の逸品には銘を刻む』と言う事を知っていたのも、恐らくはテンゼンの入れ知恵だと思われる)。
ユージンとは本編開始前(恐らくはマグナスが追放される前の頃)に開かれたラクスタ王国の国王の誕生パーティーに招かれた時に初めて会って意気投合する。
そしてその時に彼から『バゼルフにミスリルソードをフレイムソードに強化してもらった』という話を聞き、それがバゼルフに依頼するきっかけとなった。
前述の通りデルベンブロがマグナスに討伐された後はデルベンブロの後を継ぐようにユージンを唆してデルベンブロ討伐を祝う晩餐会の時に国家転覆のため行動に移し、マグナスと対峙した時に魔物に変貌した肉体を自分の本性と共に晒した。
その後はユージンと共にマグナスと交戦するが、最終的に彼の攻撃魔法によって跡形もなく消滅してしまった。
しかし、デルベンブロと結託し異形の怪物と化す事に一切の躊躇いを見せない程にまで欲深いテンゼンが他人に、それも自分より格下のユージンにラクスタの領土の半分を渡すとは到底考えられない為、恐らくはユージンの事はデルベンブロを撃破した要注意人物であるマグナスを排除する為の即戦力兼捨て駒兼鉄砲玉としか見ておらず、クーデター計画が完了し用済みとなれば、約束を反故にして(上記の理由で、戦闘不能にする事は可能だが殺す事は出来ない為)水牢にて永久幽閉するか、肉体をバラバラにした後生き埋めにするか、マジックアイテムや魔術を用いて魂や肉体を封印するか、記憶を消す等の方法で始末していた可能性が高い。
- 神霊タイゴン信仰教会
魔王軍に寝返ったユージンとヒルデの処刑や終身刑を阻止し、国外追放の罪に軽減させる形でバックアップした組織。
怪我や毒、病気等の治療に金銭を要求するのは(法外な値段を要求する生臭坊主であることに目を瞑れば)ある意味普通の人間の組織と変わらないが、唯一魔王を倒せる存在である勇者への信仰が強すぎたが故に、その倒すべき魔王に寝返ったユージンとヒルデを生かすきっかけになってしまった。
教会を見限った僧侶からも、教会がこのように腐敗している事を認識しつつも、信仰心が無くなっても神から回復魔法を取り上げられていない事に「不思議な事もあるもんだね」と皮肉じみた事を言われている。
2章以降
アラバーナ帝国の皇帝。
一言で言えばユージンの愚かさに懐古主義の思想が加わった様な存在。
側近にヒルデの様なイエスマンのみを集めて気に入らない事は忌避していた点も共通している。
デルベンブロに魂を売ったテンゼンのクーデター計画に加担し、それでも尚終身刑を免れたユージンとは真逆に、デルベンブロの同僚と裏で繋がっていた息子のクーデターに恐れをなし、保身を理由に皇位を禅譲し新しく女帝となった娘の勅令によって、『帝族専用のいと尊き牢獄』とされるアラバン宮殿の西の塔の牢獄にて果物やクッションが大量に置かれているが両手両足を錠で繋がれた状態となり、一生を牢の中で過ごす事となった。
〈武勇の神霊〉プロミネンスのお告げにより『魔弾将軍カリコーン』討伐の使命を背負う事になった《光の戦士》である14歳の少年。
『元々は一般人だったが神霊に選ばれて魔王軍と戦う事になった』と言う経歴こそ共通するが、レイの場合はユージンとは正反対に謙虚な性格且つ善の心の持ち主で、マグナスに鍛えられた事で『魔王軍にとってはマグナスに次ぐ非常に厄介な存在』と言える程に心技体が成長した為、『ユージンのアンチテーゼ』及び『もしもユージンがマグナスの助言にキチンと耳を傾ける男だったらのif』とも言える存在である。
また、本人の個別記事を見れば分かる通り、レイの仲間達は平気でパーティーを裏切って依頼の報酬である金目の物を持ち逃げしたり、ユージンと同じく強敵を相手に虚勢を張って挑むも、勝てないと判断した事で保身の為にレイを置き去りにして敵前逃亡した挙げ句、逃走後は何喰わぬ顔で脱税や無許可営業等の犯罪行為に手を染めたり、あろう事かユージンやテンゼンと同様に自らの欲や野心の為に魔王軍に寝返ったり(後述)と、ヒルデやニャーコの様な、レイに対して仲間意識を抱く者や、マグナスやミシャの様な、常識的な考えを持つ者は誰一人としておらず、そう言った点でもユージンとは対照的である。
レイと同じくプロミネンスのお告げによりカリコーン討伐の使命を背負う事となった光の戦士である騎士の家系の少年。
手短に説明すればユージンにテンゼンの特徴を掛け合わせた様な人物であり、パーティーのリーダーであるのにも拘わらず自分達が助けた姫との逆玉という身勝手極まりない理由でカリコーン討伐の使命を放棄した後は、自分がルクスン大公国の第一公女であるベアトリクシーヌ姫に取り入れる上での障害であるレイに卑劣な方法を駆使して決闘に挑むが、実力で敗北してしまい、それ以降はレイの個別記事に記した通り、ユージンやテンゼンと同様に祖国であるルクスン大公国を裏切って魔王軍に寝返った。
ユージンとの相違点を挙げるなら『幼少期から騎士としての教育を受けてきたのもあり、戦闘能力は光の戦士の中で最も高かった』『作中で唯一の一国に壊滅的な被害を与える一因になった元人間の悪役』『《天命未だ尽きず》の様な(条件付きでも)不死身になる隠しスキルを持ち合わせていなかった為、最期はマグナスに討たれる形で死亡した』と言った所である。
その他
ラクスタ王国の王都ラクスティアでも一、二を争うマジックアイテムを扱う『マルム商会』の長である豪商マルムの一人娘。
ユージン達の知らぬところで『彼女が奴隷商人一味に攫われて倉庫に幽閉されていた所をマグナスによって発見・救出された』と言う経緯もあって、マグナスに大きな信頼と好意を寄せている。
それもあって、マグナスの口から『ユージンによって彼が無能の烙印を押されて勇者パーティーから追放された』ということを聞いた際には、ユージンを『勇者様』と三人称でこそ敬称であるものの、『彼女の尊敬と好意の対象である優秀な魔法使いであるマグナスを追放した張本人』ということもあって『バカ』呼ばわりで嫌悪している。
後にマグナスとはデートを経て相思相愛の恋人兼婚約者となるが、前述の通り『マグナスにとって最も大切かつ最愛の女性』である彼女をヒルデが人質にしてしまった事が、マグナスのユージンへのオーバーキルな徹底攻撃の直接的な原因となってしまった(尤もマグナスは上記の事もあって、復活した後もユージンの命を執拗に狙ったりといった事はせずに、世界中の人々にユージンの裁きを任せる事にしたが)。
ラクスタ王国の王都ラクスティアにて店を構える名工。
ユージンからは暴行で脅されてフレイムソードを無理やり作らされ、店も荒らされた挙句対価も一銭もないどころか愛用の金槌も奪われる(この金槌はその後どうなったのか不明)と散々な仕打ちを受けるが、後から店に来たマグナスに助けられ、彼からサブクエストをこなして入手した最上級の金槌『オリハルコンスミスハンマー』を受け取る事で鍛冶師として再起して彼の助けとなっている。
まだマグナスが勇者パーティーに在籍していた頃にユージンが立ち寄ったエンゾ村の戦士。
容姿こそユージンに似て強面だが、仲間を何の躊躇もなく平気で見捨てるユージンとは違って、彼は愛する女性の為に命を賭けられる勇気ある人物であり、マグナスも『どこかの運命(の神霊タイゴン)に選ばれただけのバカとは違う』と、ユージンと比較する形で『本物の勇者』と称賛している。
余談
作中で度々口にしていた迷言から、ユージンの元ネタは『北斗の拳』に登場する『ジャギ』だと思われる。
しかし、教会がゴネたとはいえ、ユージンが国外追放程度の罰で済まされたのは、ユージンはジャギ程邪悪で狡猾ではない小悪党且つヘタレだったのと、マグナスが主人公の様に敵に情けをかけるという詰めの甘さが無かった(ユージンが虐殺できる筈の民衆に手を出せずに逃走したのは、ヒルデに静止されたのもあるが、それ以上に不死身でなかったらユージンは粉々の粉砕死体と化していた事実とその時に味わった激痛がトラウマになった為)事でアリアや民衆達を死なせずに済んだからだろう。