「私があなたを支えるのは当然のことです」(Web版、書籍版、コミカライズ版共通)
プロフィール
概要
本編の主人公である魔法使いの青年《マグナス》がプロローグで追放された勇者パーティーでヒーラーを務める僧侶の少女で、常にですます口調の丁寧な喋り方で話す。
同じパーティーメンバーである勇者のユージンを《勇者様》と呼び慕っているのだが、それはヒルデが所属する教会で信仰されている『運命の神霊タイゴン』にユージンが勇者として選ばれたからである。そのためヒルデにとっては勇者であるユージンの助けや味方となり、サポートを行う事自体がタイゴンへの何よりの信仰の証なのである。
そのため、勇者であるユージンをやる気にさせるためならいくらでも煽て上げるし、自身の美貌や巨乳を用いることにも躊躇いがない。
なので、ヒルデのそんな本心を知っているマグナス曰く『もし仮にタイゴンが、「やっぱり、ユージンじゃなくてそこの下水道でドブ攫いをしてる子供を勇者にしよう!」なんて神託を後出しで言おうものなら、ヒルデはすぐにでもユージンを蹴飛ばし見限って自ら下水道に入って靴や服を汚しながらもドブ攫いをしてる子供に勇者様と媚び諂うだろう』とのことらしい。
そしてその一方で、後述の理由からマグナスをはじめとする魔法使いそのものをとても嫌っているが、マグナスに頼みごとをする時はそれを持ち出さずにキチンと立場をわきまえるようで、目的の為なら頭を下げて頼み込むこと……つまり平身低頭の姿勢もいとわない(もっとも本心では腸が煮えくり返るような屈辱はしっかりと感ているようだが…)。
ヒルデの所属する神霊タイゴン信仰教会について
20年ほど前から道徳的にくずれて不健全になっているため民に見放されており、権威も民からの信頼もなくなっている。
一方マグナスの育った魔法使いの学院は『自分達の研究で魔法が進歩し、人々の暮らしを便利にしており評判も鰻登り』ということもあって、ヒルデはそれが悔しく、プロローグにてマグナスがボス戦で活躍できなかった際にはここぞとばかりにあげつらう程である。
また、教会は「神霊タイゴンの愛は無限だ」という教えを広めているのだが、実際は『治癒の魔法で怪我や病気を治す代わりに、例え貧しい者からでも見返りとして大金をむしりとる』という生臭坊主のような事をしている集団である。
ちなみに値段は
- 怪我を治すなら金貨2枚
- 解毒の魔法は金貨5枚
- 病気を治すなら金貨10枚
といった感じである。商売ならそれでもいいのだが、無償ではないので愛は有限である。
なお、本作の世界《アルセリア》内における金貨1枚のレートは『本編のプロローグ~1章の終盤までの間ユージン達が拠点としていた酒場兼宿屋に十泊できる程の額』である。
当然ヒルデの場合も同様で、(勇者パーティのメンバーを除く)目の前で病や怪我に苦しんでいる人がいても無償で回復魔法を使って助けるということは自分からは決してしない。
そのため、教会は金の貯えがかなりあるらしく、作中でも『勇者パーティーが貴族から受けた依頼で探している武器《魔法の杖》をマグナスが持っており、交渉した結果それを売ってもらえる』という事になった時は対価の金貨1200枚をその日のうちに用立てできる程である。
この事からマグナスの方もこの教会の僧侶たちの事を「脳死しきった教会の僧侶共」、この教会の礎を築いた史上最高の聖者メルテールの事を「史上最高の詐欺師」と酷評し嫌悪しており、マグナスが第二章でアラバーナで出会った女僧侶のクリムからも「破戒しているのは教会の連中」と明言している。
後に魔王軍に寝返った勇者ユージンとヒルデを水牢及び処刑の罪を国外追放の罪に減刑させる形でバックアップした。表向きは「勇者は魔王を倒せる唯一の存在」というのが理由だが、「魔法の杖」などを入手できる人材には変わりはないからなのだろう。
ラクスタ王国が勇者水牢刑を諦める程度には厄介な組織なので小悪党な悪徳勇者より厄介かもしれない。
人物像
(厳密にはタイゴンは神ではなく階級としては神より一つ下の神霊だが)『神やタイゴンに仕える僧侶』という立場でありながら、モラルや良心は微塵も持ち合わせておらず『タイゴン様が選んだ勇者様こそが絶対』という狂信者的思考からユージンの発言や悪行を諫めたり、注意したりすることは全くせずむしろ、一緒に悪事を働く有様である。
(ほんの一例として、『ユージンが無銭飲食を働いても咎めたり代金を支払ったりすることはせず、むしろユージンと一緒に無銭飲食を行う』『ユージンが最低な理由で民衆に暴力を振るっても、これまた咎めたり暴力を振るわれた民衆を回復魔法で治さないどころか殴られた民衆を嘲笑う』といった有様である)
また、小説版ではユージンやニャーコがバゼルフの工房で引き起こした暴挙に際し、「口止め料」を名目にバゼルフの愛用の金槌を奪うようにユージンに進言する(口止め料というのは本来、「自分の悪事の被害に遭った、若しくは自分の悪事を目撃した人々に対し、周囲にその事を他言しない事を条件に渡す物」である為、そうなるとこの場合、口止め料を払うべきなのはユージン達の方であり、ヒルデの主張は根本から間違えてしまっている)など、時に一般常識を含んだ教養にも欠けている一面も見せていた。
(Web版・書籍版では)マグナスは彼女の事は『世界一綺麗かもしれない美女だが、もしかしたら世界一醜悪かもしれない歪な心の持ち主。出会って以来、見た目の美醜で人を判断することをやめた。その教訓を得られた一点だけ(反面教師として)知り合った価値があった』と評している。
一方、ユージンが交渉には不向きすぎる事や、その行動が時折無鉄砲極まる事は自覚しているようで、彼が上から目線で頼み事をしてしまった際、彼やニャーコが実力行使に出るなどして交渉が完全に拗れる前であれば、割って入ってフォローしようとしたり、ユージンが相手を怒らせるなどして勇者パーティー側の旗色が悪くなった際には「勇者様…冗談(おふざけ)はその辺にしておきましょう」と弁解したりしている。
また、ユージンがマグナスへの反骨意識だけで、当人はおろかヒルデをはじめとするパーティーメンバーのレベルさえも十分でない上に、ロクな対抗策も打たないまま、デルベンブロとの戦いに赴いた折には、自分達だけでは実力不足と察し、それまで見下していたマグナスに対して、勇者パーティーへの復帰を提言した共闘を持ちかけようとする等、必要に応じて妥協や譲歩した提案を打つ事もできる。
ユージンのストッパーしての役割により、国外追放時に(もし再びここにいる町人に危害を加えたら今度こそマグナスに殺されてしまうのは目に見えているという理由で)ユージンに町人虐殺を諦めさせる等、勇者ユージンを生かす為ならユージンに我慢させる事もある。
ユージンとの関係
ヒルデにとっては自分の信仰しているタイゴン様が選んだ勇者だからという条件の元でユージンに従っているが、ユージンからすれば自分の言う事やる事を全て肯定してくれて俺を慕うイイ女ということで相当に信頼しているらしく、マグナスやミシャの言う事にはまるで聞く耳を持たないが、ヒルデの言う事は素直に聞き入れており、デルベンブロとの戦闘中に敵前逃亡を行った際にはヒルデだけは手を引いて連れて行っている。
また、漫画版ではデルベンブロからの「勇者よ、私の部下となれ。さすればラクスタの半分を貴様にやろう」という誘いに対して、ユージンがかなり乗り気で食いついた場面では、(ミシャと共に)珍しく彼に対してドン引きする様子を見せていた。
戦闘力
僧侶及びヒーラーであるため、自力で敵と戦う攻撃手段は皆無である。
そのため戦闘では回復魔法や強化魔法等を用いてのサポートを行う。
そして腐っても僧侶なためか、ナイフや短刀のような武器になるような刃物は持っておらず、人質を取る際にはその対象の背後に回って、いつでも首絞めができるように両手を添えて行う。
所持スキル
- 天使の加護
強化魔法の効果を50%アップさせる。
本来なら僧侶がレベル25になった時に習得するスキルである。
- 女神の慈愛
回復魔法の効果を50%アップさせる。
こちらも本来なら僧侶がレベル30になった時に習得するスキルだが、ヒルデは天才(スキルや魔法等を習得する職業レベルに到達する前にそれらを習得する者を作中ではこう呼ぶ)であるため、それらより低いレベルであるにもかかわらず前述の『天使の加護』と共に習得している。
魔法
回復魔法
- ヒーリング
回復魔法の一種で傷や怪我を治す効果がある。
- キュアディジーズ
病気を治す効果のある治癒魔法。
前述の通り(勇者パーティーのメンバー以外なら)金貨10枚を積まねば受けられない魔法だが、本編開始前の時系列で立ち寄ったエンゾ村にてミシャのしつこい説得に根負けして村長の孫娘メルの病を救うために無償で使用するも、その病は『あるボスモンスターを斃さなければ解けない呪い』と言う特殊なものだったため失敗に終わった。
強化魔法
作中でヒルデが使用する強化魔法は全て名称が不明である為、マグナスが使用する同じ効果のものと照らし合わせて記述する。
- ストレングス
- 対象の攻撃力をアップさせる。
- タフネス
- ???
- 対象の耐久力をアップさせる。
- アジリティ
- デクスタリティ
- 対象の器用さを上昇させる。
狂信者ヒルデ
デルベンブロの時はユージンの魔王軍勧誘承諾に関してドン引きしていたが、最終的には『モラルよりも(タイゴン様が選んだ)勇者の味方をする事の方が大事』というのがヒルデの行動原理となった。ユージンが「私利私欲で世界の平和を脅かす魔王軍に味方する」という最低最悪の愚行を犯した場合でもそれは変わらずであり、1章の山場にてマグナスが倒したデルベンブロと結託してラクスタ王国を乗っ取ろうとしたラクスタ王国近衛騎士隊長のテンゼンにユージンが味方しており、そのユージンとマグナスが交戦している際にマグナスから「そいつ(ユージン)は魔物に魂を売った男だぞ?」と指摘されても「神やタイゴン様の御心は深淵で、私達人間の考えの及ぶところではありません。この方はタイゴン様が選んだ運命の勇者なのです。ならばこの方の行いにも必ずや神霊タイゴン様の、深謀遠慮に満ちた思し召しがあるはずです。私はそれを支え、お仕えするのみ……」と断言する程で、マグナスと戦うユージンを勝たせるためならば、マグナスの恋人である少女アリアを人質に取るという卑劣な手段もためらわず行っている。
その結果、マグナスの逆鱗に触れる事となり、マグナスが『屍竜の王錫』で使役した「アンデッド・デルベンブロ」の攻撃で、ユージン共々マグナス(の使役したアンデッド・デルベンブロ)に一生分のトラウマを植え付けられる事となった。
人物関係
勇者パーティー
自分が所属する勇者パーティーのリーダーであるヒルデが慕う勇者。
彼が『神霊タイゴンに選ばれた勇者だから』という条件こそあるものの、ユージンの言動は全て肯定し、いついかなる時でも味方をしている。
同じパーティーの女戦士にして、勇者が率いる仲間としては3番目に当たる(1番目はヒルデで、2番目はマグナス)。
どういうわけか、1章クライマックスにてヒルデはミシャに「勇者様に色目を使っている」という的外れにも程がある逆恨みをしていることが発覚した。
マグナスの後釜として仲間にしたケットシーの女格闘家。
『超が付くほどの短気で暴力的』と言うこともあってユージンとは気が合うようで、ヒルデは彼女の乱暴狼藉は一切咎めないどころか、一緒に乱暴狼藉等の悪行を働く有様である。
しかし、ユージンがデルベンブロとの戦いで敗走する際にはミシャ共々見捨ててしまう。
マグナス一行
プロローグまでの間勇者パーティーに所属していた魔法使い。
ヒルデとは同い年の18歳かつ、片や『神霊タイゴンを信仰する教会の僧侶』片や『その商売敵とも言える魔法使い』という立場もあってかお互いに嫌っている関係である。
自分達勇者パーティーが拠点としている王都ラクスティアで一二を争う商会『マルム商会』の一人娘。
そしてマグナスの恋人兼婚約者でもあり、1章のクライマックスでは彼女のマグナスとの関係を見抜くとマグナスがテンゼン=デルベンブロとの戦いに意識が行っている隙を突いて彼女に背後から忍び寄り人質にするという卑劣な手段を用いた。
その他
王都ラクスティアに店を構える『秘術鍛冶師』を務めるドワーフ。
勇者パーティー(特にユージン)の戦力アップが目的で『フレイムソード』の制作を依頼するも、例の如くユージンが礼節を弁えぬ馴れ馴れしい口調で依頼したため、慌てて割って入り奇麗事を並べ立てたり、胸の谷間を見せつける等の女の武器を行使するもドワーフであるバゼルフの異性の好みで考えればそれに外れていたため、失敗に終わった。
だが、ニャーコが彼に暴行を加えたのをきっかけにユージンが暴力で脅して無理やり剣を作らせると、上述したとおり、『口止め料』という的外れそのものな言い分で彼から愛用の金槌を強奪した。
王都ラクスティアにある屋敷に住むラクスタ王家に七代に渡って仕えている学者の家系の男性。
『ユージンが彼から依頼を受けるも1ヶ月も経過していた事』と『その間にマグナスが別口でナルサイから依頼を受けてその日の内に達成した事』から依頼の無効を言い渡されると、逆上したユージンがバゼルフの時のように暴力で脅して報酬をふんだくろうとするも、ラクスタ王家との繋がりを用いた脅しを逆にかけられたため、ヒルデが割って入ってフォローしたため、許しては貰えた。
だが、その際にナルサイがユージンにダメ押しと言わんばかりに嘲笑ってバカにした事で、ユージンのマグナスとナルサイへの逆恨みと憎悪の感情を募らせる一因となった。