概要
自動車大国と称されるアメリカを代表するセダンタイプの乗用車。
日本では公用車としても活躍するクラウン(トヨタ)に相当する車種で、奇しくも同じクラウンの名がつけられている。
本国では「Crown Vic (クラウン・ビック)」の愛称で親しまれている。
本車両の特徴としては、やはり伝統的な車両設計だろう。
全長は5,385mm、全幅1,965mmと日本のミニバンよりもビッグなボディを支えるのは、伝統的なFRレイアウトを組み込んだラダーフレーム、パンサープラットフォーム (Ford Panther platform) 採用した。これはフォードのハイエンド車種で30年以上の長きにわたって使われ続けたが、技術的には決してハイエンドではなく、登場当時ですら旧態化のそしりは免れなかった。重量、ねじり剛性、振動・騒音など、操縦安定性や居住性のすべての面でモノコック構造に対して劣勢となるが、アメリカの保守層には根強い人気がある。
そして搭載されるのは大排気量のV型8気筒SOHC自然吸気エンジンと、これでもか!というくらいに古き良きアメ車のお手本を詰め込んでいる。
生産はすべてカナダオンタリオ州セントトーマスに所在していたフォード・カナダの工場で行われた。
個人よりも法人向けの販売に注力した為、タクシーやパトカーとしてよく使われる事が多い。
特にパトカー仕様は「ポリス インターセプター」という専用グレードが設定されており、駆動系統の強化やエンジンチューンによる出力向上が車両に施され、オプションでドアパネルを防弾仕様にすることが可能であった。
ちなみに、日本では正規輸入はされていない。しかし、前述したパトカー仕様を中心に並行輸入で少数が上陸している。
1992年の販売開始から、長きにわたってアメリカ国民(特にタクシードライバーや警察官)に愛された車だったが、2011年に生産終了を迎える事となった。
なお、直系の後継車種はないが、フルサイズセダンとして2007年の北米自動車ショーで発表されたリンカーン・MKSや、フォード・トーラスおよび派生モデルのフォード・ポリスインターセプターが実質的な後継車種となった。
初代
フォード・LTDから完全に独立し、1991年に1992年モデルとして登場した。 フォード・トーラスやセーブルが大ヒットしたためLTDとは違い、丸みを帯びたエアロダイナミックなデザインへと変貌した。ただ、グリルレスは不評であったために1993年の中期型からはグリルが追加され、1995年の後期型からは新規グリルとリアコンビネーションランプが追加されナンバー取付位置もリアライトの中央に移動させた。
2代目(P7X型)
1998年モデルイヤーでフルモデルチェンジ。ラジカルなエアロルックを持った先代から、大きなヘッドライト、バンパー、グリルなど全く違うデザインとなった。これはボディをマーキュリー・グランドマーキーと共用化したことによるもので、両車のデザイン差異は先代と比較してかなり少なくなっている。
サスペンションはフロントにダブルウィッシュボーン式が、リアにはワッツリンクを用いたソリッドアクスル式が採用された。その中でもグレードによりリアに調整式エアサスペンションを備えたグレードと従来のスプリング式のものが存在する。エンジンは先代に引き続きV型8気筒SOHCエンジンのみが搭載され、1998年のデビュー時でカタログスペック200馬力(オプションのデュアルマフラー搭載時は215馬力)を発揮した。組み合わされるトランスミッションは自社製の4速ATのみが設定された。
グレードによりシート構成が異なり、前席がベンチシートのものと通常の独立したシートのものが存在する。またシフトレバーについてもコラムシフトのモデルとフロアシフトのモデルが存在している。
グレードは先代を踏襲し、ベースグレードに加えて上級グレードのLXおよび法務執行機関用フリートセールス向けのポリスインターセプター(Police Interceptor)グレードとタクシーなどの用途を想定した商用グレードが当初ラインナップされた。これに加えて最上級グレードとなるLX Sportが2002年から2007年の間生産された。
2003年にはフロントのサスペンションを中心とした大幅な再設計が施された。それまでボール・ナット式を採用していたステアリング機構はラック・アンド・ピニオン式へと変更され、リアサスペンションもツインチューブに代わりモノチューブが採用されるなど、ハンドリングの大幅な改善が行われた。
フルサイズセダンを代表する車種として長く親しまれてきたが、2011年9月15日にカナダのセント・トーマス工場で最後の1台(サウジアラビア向け)が出荷され、生産終了となった。