概要
イランの古典「シャー・ナーメ」(王書)に登場する。
屈強な人間の男性の両肩から大蛇が生えていると言う気味の悪い姿をしている。
元々はイラン辺境にある小国の王子だったが、父王を殺して王位を簒奪し、国を乗っ取った。その後、隣国の王・ジャムシードが慢心から臣民の信頼を失った隙に乗じて攻め入り、ジャムシードを殺してイランを征服、凡そ千年もの間独裁者としてイランに君臨。イランを支配すると同時に残虐な本性を露わにし、日にふたりの人間を殺して脳味噌を奪い、自分の肩の大蛇に喰わせて居た。
その後、ペルシアの英雄ファリードゥーンによって退治された。
その体内にはあらゆる悪性が詰まっており、いわば生きたパンドラの箱であるため、ファリードゥーンも殺すに殺せず、封印するしかなかった。
ゾロアスター教の伝承に登場する凶悪なドラゴン、アジ・ダハーカと同一視(または化身)される事もある。
アルスラーン戦記
ササン朝ペルシアをモデルとした田中芳樹の小説『アルスラーン戦記』にも登場する。
大まかな人物像は原典と一致するが、討伐したのはファリードゥーンではなく「カイ・ホスロー」という人物になっている。
デマヴァント山に封印されるが、300年の時間をかけて復活のための力を蓄えてきた。
パルス王国の国民にとっては恐怖の象徴であり、幼児は例外なく「いい子にしていないと蛇王がさらいに来るよ」と躾けられて育つ。
そのため、どんなに勇猛な戦士であっても「蛇王」の名を聞くだけで身構えるという。
ただし、それはパルス人である限り、であり、異国人のジムサやジャスワント、エステルにはなぜそれほど恐ろしいのかが理解できない様子。