CV:折笠愛(カセットブック)三石琴乃(劇場版・OVA)内山夕実(テレビアニメ)
小説
(1部)バルカシオン伯に従軍する男装少女兵でエトワールと名乗る、兜に収まる長さの褐色の髪をした少女。
パルス軍が聖マヌエル城に攻め入った際に捕虜となる。
頑なで生真面目、無謀なまでの勇気と正義感に溢れ、ひたすら前へ突進するかのような行動力を持つ。責任感が強く、同胞、祖国のための献身に生涯尽くした。
蒙昧なイアルダボート教信者であり、異教徒に激しい嫌悪を抱いていたが、パルス軍が敵の戦没者すら弔い捕虜を難民として保護する様子を見て「異教徒は虐殺すべし」という価値観に変化が現れる。
生き残った非戦闘員や傷病者の捕虜ら同胞を守るために奔走するが、その中で国家間の暴虐、また誤った権力がどのように弱者に向かうかということの残酷な答えを突きつけられ、それと向き合うことになる。
異教徒への侵略と虐殺を是とする教えを受けたために、広い世界を知る機会のなかったイアルダボート教徒の象徴のような存在。
アルスラーンとその仲間らと交流するうちに、本来の神の教え、信仰の根本に向かい立ち戻っていく。
また、彼女の言葉によってアルスラーンは、自分は一体誰なのか、というアイデンティティへの問いかけの答えを淡くであるが獲得することができる。彼女はアルスラーンにとって、ダリューンと並ぶ精神の支柱となっていく。
(2部)大戦後、帰郷して女騎士(セノーラ)の叙勲を受ける。荒廃したルシタニア再興の為ギスカールの帰国を求める陳情団に参加しドン・リカルドらとマルヤムに向かうが失敗しパルスに流れる。
赤い僧院(ルージ・キリセ)に収監されていたルシタニアの公爵の暴走によって瀕死に陥る。アルスラーンにひと目会いたいとエクバターナを目指すが…。
死に際しアルスラーンにドン・リカルドらを託し永眠。享年19歳。
荒川弘版
原作小説では4巻の聖マヌエル城攻防戦が初登場だが、コミカライズを担当した荒川弘が「重要キャラにしたかったので連載初回から出した」と語り、アニメ化に際してもエステルの描写には強くこだわった。
オリジナル過去エピソードに登場(その結果漫画アニメ両方でこの作品の主要キャラ3人間に時系列の矛盾が起きているがそれについての説明はない)
容姿も大幅に変更され金髪の長い髪と女性的な体をもち登場頻度も小説と比較にならないほど増え原作と比べると異教徒への攻撃性が若干薄くなっている。
初回で捕虜になった生意気なルシタニアの少年兵を懲らしめ(虐め)ようとして近づいてきたパルスの子どもを人質にし、子どもを助けようとしたアルスラーンを身なりが良かったので代わりに人質にとるという暴挙に及ぶ。アルスラーンのことはどこぞの金持ちの坊ちゃんであるとしか認識しておらず、パルスの王太子であるとは微塵も思っていない。(というよりパルスの王族は角が尻尾や生えている悪魔であると信じている)アルスラーンの素性を尋ねる程の深い会話はしなかった。
アニメ版では漫画版をもとにしていながら展開が漫画より早くなってしまったので、漫画版独自の要素を補完するためにいささか不自然な描写が散見される。
余談
アルスラーン戦記のガイドブック「アルスラーン戦記読本」のキャラ紹介の中では筆者が注釈で「いずれ戻ってきますって。アルスラーンは風の便りにエステルが亡くなったことを聞いた、ということにはなりません。いくら私でもそこまで読者を敵に回す気はないので」と言っており、ネットでは「もしかしたらエステルが最後の十六翼将なんじゃね」やら「パルスとルシタニアが血統で融合して(アルスラーンとエステルがくっついて)新たな時代の礎になるんじゃないか?」などの希望的観測が数多く見られていた。だが実際の展開は記事の通りである。
確かにエステルは戻ってきたし、亡くなるのはアルスラーンと再会した直後なので、死んだ事実を風の便り「には」聞いていない。
その点について筆者は何一つ嘘を言っていない(更に言えば「物語完結までは死なない」とも言っていない)のだが、何だかなぁ・・・。
そのシーンを読んだ多くの読者は「やっぱり田中芳樹か・・・」と慨嘆したという。