・・・・・・臭い
声優
概要
田中芳樹の小説『アルスラーン戦記』に登場するルシタニアの国王。
本編開始の一年前にマルヤム王国を滅ぼして併呑し、次いでパルス王国に侵攻。大陸公路最強を謳われたパルス軍を打ち破って王都を占領した。
経歴だけ見れば比類なき覇者であるが、実務を取り仕切っていたのは弟を初めとする部下たちであり、彼本人はろくに仕事をしていない。
イアルダボード教を熱心に信奉しており、これまでも異教徒や背信者、異端者など何百万人も虐殺を命じてきた。その一方で政治など宗教以外についてはほとんど無関心で、面倒ごとも含めて弟のギスカールに投げっぱなしにしている暗君。現状を見ない勝手な決定を下したり、宗教に傾倒しているために教会の好き勝手なようにさせたりと滅茶苦茶な采配が多く、臣下からの信頼は低い。
体格は良いが、体力は貧弱で、馬に乗ることもできず、輿に乗ってルシタニアからパルスまでやってきた。また、酒を飲まない代わりに砂糖水を飲むという凄まじい食生活を送っている。
容姿はOVA版と荒川弘版とで異なり、前者では細身で生気の欠けた病弱なイメージが強いが、後者では丸々と太り、愚昧な上に呑気さが増している。良くも悪くも性格は純粋。荒川版においてはほとんど座っているか、輿に乗ってしか動かない。一応短距離なら自分で動くことはできる。
性格
宗教に傾倒しすぎており、ある意味で純情とも言える。国王の自覚はあるものの、厄介事は何でも弟に押し付けてしまい、傍らみずからはイアルダボート神に対して、必死に祈りを捧げているだけという始末だった。一方でタハミーネに対する想いは他者の追随を許さず(寧ろ追従したくもないだろうが)、誰の進言をも受け入れずに結婚を宣言するなど、頑迷な部分も持ち合わせている。また純情である反面、乗せられやすい所もあり、自らアンドラゴラスを倒すように差し向けられてしまう。
一個人としては善良であり、難民たちを守って王都まで連れてきたエステルをねぎらい、保護と昇進を約束するなど、イアルダボード教徒に対しては慈悲深い。
人間関係
良好な関係の人間は皆無といってよい。弟を信頼しているものの、その弟本人は兄に心の奥底から呆れ果て、うんざりされている事に気付いていない。また宗教に傾倒するためボダンに対してすべてを一任していたものの、タハミーネの一件から関係は修復しえぬ程に悪化。王である自分に対して罵声を浴びせかけてくるボダンに狼狽えている。肝心のタハミーネとは何ら進展の一つもない。ひたすらアピールしても無視されるだけであった。
経歴
パルスやマルヤムなど版図が拡大し、ルシタニアを王国から帝国に、自ら皇帝になろうと望んでいる。パルスを征服し、王都エクバターナの王宮に入城したが、捕らえられたタハミーネに一目惚れして結婚を望み、異教徒との結婚に反対する周囲を押し切ろうとする。
大司教ボダンを信任しているが、さすがにボダンの無茶振りに困惑することもあり、とくにタハミーネとの結婚の点については不一致が起こった。
ちなみに当のタハミーネは、イノケンティスのアプローチには全く無反応。
アルスラーンやアンドラゴラス三世などのパルスの反撃が始まって、ヒルメスに処断されかかり、狂信に付き動かされてしまう。王都が奪還され、アルスラーンが王城でアンドラゴラス三世と対峙していた際、アンドラゴラスを羽交い絞めにした状態で、塔の上から落ちるという最期を遂げた。このことは「最弱の王が最強の王を倒した」として語り草になる。
これによりアルスラーンはアンドラゴラスとエクバターナの覇権を争わずに済んだ上に「弑逆者」の汚名を被ることなく王位を継承することになり、アンドラゴラスの方も(本人は甚だ不本意であったことは間違いないが)「息子と王位を争い、国を分裂させた愚王」ではなく「侵略者の首領と刺し違えて国を救った殉国の王」として人々の記憶に残ったので、結果的に彼のこの行動がパルスを救った、というのは何とも皮肉な話である。