→ Fateシリーズのキャラクターについては「イースのライダー」及び「ダユー(Fate)」の記事へ。
ダユー伝説
イース(イス)は、5世紀頃にフランスのブルターニュ地方南端、海に面した低地に存在していたとされる伝説の都市。
栄華を誇っていたが大洪水により一夜にして海に沈んだとされる。
当時、ブルターニュにはコルヌアイユという王国が存在し、グラドロン王の善政によって繁栄していた。
グラドロンは森で出会った聖コランタンに感銘を受け、キリスト教に改宗する。グラドロンは首都カンペルレに教会を建てるなど、熱心にキリスト教布教に努めた。
グラドロンには“ダユー”という一人娘が居た。ダユーは類まれな美貌の持ち主であったが、欲深く放蕩な女性であった。
グラドロンはダユーを溺愛していたが、ダユーはキリスト教布教に尽力するグラドロンに不満を覚え、自分のための都市を創って欲しいと懇願する。グラドロンはその願いを聞き入れ、コルヌアイユの西端にイースという都市を創り、遷都して自らもそこに移り住むこととなった。
イースの創られた土地は窪地で、ダユーは津波や洪水から守るための堤防を作るようグラドロンに求めたが、グラドロンは教会の建設を優先した。
ダユーはキリスト教徒に迫害され、近くのサン島で暮らしていた巫女たちの力を借り、彼女たちが使役するコリガンという妖精の力で堤防を建設する。またダユーは、コリガンの力でドラゴンを呼び出し商船を襲わせて金銀財宝を略奪した。
コリガンの力で得た富によりイースは繁栄するが、人々は享楽に溺れ堕落した。
ダユーも毎晩祝宴を開き、気に入った男がいると誘惑して一夜をともにし、飽きれば魔法で殺して海に捨てていた。
コランタンは暴虐非道ぶりを見かね、ランデヴェネックの修道士である聖ゲノルに、人々を改心させるよう依頼するが、イースの人々はゲノルの説得に全く耳を貸そうとはしなかった。
ある時、ダユーの祝宴の席に全身赤ずくめの貴公子が姿を現す。どんな誘惑にも一切動じないこの貴公子にダユーは興味を抱くが、貴公子はダユーに「堤防の水門の鍵をくれたら妻に迎える」と告げる。ダユーは最初は拒否したものの好奇心が勝って水門の鍵を貴公子に渡してしまう。
しかしこの貴公子はイースを滅ぼすために差し向けられた悪魔で、水門が開かれてしまう。
直後に大洪水が発生し、イースはたちまち海の底へ没していった。逃げ出したのはグラドロンとゲノル、そしてグラドロンの馬に乗せられたダユーだけだったが、馬は何故かなかなか前に進めない。原因がダユーにあると察したゲノルはダユーを杖で突き落とし、それによって2人は洪水から逃れることができた。
こうしてイースは海底に没したが、水没時の姿のまま海底に在ると言い伝えられている。
グラドロンの教会でミサが行われ、ミサが終わればイースは再び地上へと戻ることができるが、正しい答唱をできる者が無くいつまで経ってもミサが終わらないという。また人々にかけられた呪いによって、町の住人は水没する直前にやっていたことを延々と繰り返しているとも言われる。
余談
フランスの首都パリの語源は「イースに匹敵する」という意味の「Par-Is」から来ているという説があるがこれは俗説で、現在のパリの位置に都市を築いたケルト系部族のパリシイ族を意味する「Parisii」から来ている。