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「私は個人を信じる。組織だとか社会を後ろ盾にする人間は軽蔑する。個人があってこそ社会が成り立っているのだよ」

「まやかしの民主主義など欲しくはない!我々にとって必要なのは平等への真の解放です!」

CV:宮内幸平

概要編集

デビッド・サマリンとは惑星デロイアの独立運動を指揮している中心人物。クリン・カシムを地球連邦の人間である事を知りながら自陣営に誘い、ダグラムを与えた本作のキーパーソンである。

劇中ではサマリン博士と呼ばれている。このことでよく誤解されるのだが、サマリン博士は科学者ではなく歴史学者であり、彼がダグラムを作ったわけではない。ダグラム開発の音頭を取ったのがサマリン博士というわけである。

昔は農民の出身で、若い頃は苦労して大学に行っていたらしい(漫画作品『Gettruth太陽の牙ダグラム』では奨学金でメドール大学に通っており、また炭鉱夫だった両親が崩落事故で亡くなっている)。地球の圧政からデロイアを解放するために独立派ゲリラを組織し、デロイア各地を転戦しながら抵抗運動を続けていた気骨の士である。体制側である地球連邦にしてみれば紛う事なきテロリストの親玉だが、その優れたカリスマ性と深い見識から一目置かれており、クリンの父親であり連邦議長であるドナン・カシムからも敬意を払われている。ドナンとは直接対談を持ちかけられたこともあるが、互いの立場と思想が根本的に違ったこともあり、平行線に終わっている。


情熱を胸に秘めた理想主義者であり、個人の幸せを守れる世界を作り出そうと戦い続ける志の人である。一方で、理想を叶えるためにはしっかりと現実に向き合わねばならないことも理解しているリアリストであり、地球側の企業と連携を取ったり漁夫の利を狙う資本家を引き込むことにも躊躇わない泥臭い一面もあった。

デロイア独立運動についても「仮に独立しデロイア政府ができたとしても全てのデロイア人が幸福になるわけではなく、そこには新たな問題が生まれるだろう。」と語るなど現実的な視点からの未来像も見据えている。犠牲者が出る軍事行動よりも対話での交渉を重視する一方で、軍事行動の必要性も認めており、積極的な攻撃作戦を支持する一面も持っている。後にこの一面が自身と独立運動の運命を大きく変えることになるが、物語中では一貫して「地球とデロイアが対等な形で交流する」ことを望んでおり、決して武断路線のタカ派というわけではない。政治スタンスとしてはむしろハト派である。

ドナンの政策に対しても一定の理解を示しており、「多数のための少数の犠牲はやむなし」という父の言葉に苦悩するクリンに対しても「私が君の父親の立場でも同じ事を言っただろう」と諭している。

ある意味、革命というものが綺麗事では無いことを分かりやすく視聴者に説明しているキャラクターである。


ワインを愛飲しており、クリンへ様々な事を説く際に物の例えとしてワインを使うことが時々ある。


ドナンとは様々な面で対照的な点がいくつもあり、クリンにとってはドナンと並ぶ第二の父親のように大きな存在。分かりやすい例としては上記の政治に対する考え方の対比。

  • ドナンは「政治とは多数の人間が生き残るための方法」としつつ、「多数を幸福にするためにはどうしても少数の犠牲が必要になる場合がある」という思想。
  • サマリンは「政治とはどちらがたらふく食えるかという事に尽きる」としながらも「多数の意見の中に少数の意見を十分に取り込むことができる社会を作れば少数の犠牲を必要としなくて済む」という思想。

これは勿論どちらが正しい・誤っている、という事は無い。ドナンの思想は人間社会の維持に必要な労働力や資源の分配を意味し、サマリンの思想は人間社会の形成に重要な個人・集団の意識や心理を意味している。


本編の動向編集

作中前半はデロイア首都カーディナル近郊に潜伏しながら各地の独立派ゲリラの蜂起と連携を模索。この間にクリンと知り合い、ドナンの言葉やデロイアの現状を見たことで「地球人とデロイア人は同じ仲間なのになぜ争うのか」と悩む彼に、地球とデロイアの立場の違いなど現実目線の話を語る。傍ら、自身の進むべき道に迷うクリンの姿に”未来を真剣に考える若者”としての気骨を垣間見たサマリンは彼を秘密裏に開発したダグラムのパイロットとして推薦し、独立運動への参加も促した。

が、サマリンと接触している事に気付いていたドナン達地球連邦政府は彼の潜伏先を探し当てるためにわざとクリンを泳がせており、目論見通りにサマリンは逮捕されてしまう。逮捕時、ドナンと対面する機会を得るが、互いの主張は平行線を辿り、和解には至らなかった。(これがドナンとの唯一の対話となった。)


バラフ軍刑務所に連行されて軟禁状態となり、その後地球へと護送される予定だったが、サマリン解放による独立派ゲリラの糾合を画策したクリン達”太陽の牙”とJ・ロックバックスらによって刑務所から解放される。

自身が逮捕されている間に、士気の低下と軍の弾圧によってカーディナルやボナールといった主要都市の独立派ゲリラが弱体化・潜伏せざるを得なくなり、拠点を変えることを決定。デロイア独立による有利な取引を狙う実業家や地球側のデロイア独立を支持するコホード州・ミンガス州・ローディア州(総じて三州)とコンタクトをとりつつ、独立派ゲリラの活動がまだ活発なパルミナ大陸へと渡り、独立解放政府の樹立を目標に準備を行っていく。


パルミナに渡ってからも各地を転々としつつ三州と本格的な連携を開始。かつて自身の護送・追撃任務にあたり失敗した事で失脚した元連邦軍少佐ジャッキー・ザルツェフを軍事参謀として迎え入れ、糾合したゲリラ達を『デロイア人民解放軍』として組織化する。更に敵である地球連邦軍デロイア州軍(第8軍)内部でのクーデター騒ぎを援護する事で正規軍の造反勢力を取り込むことに成功。勢いに乗って第8軍のパルミナ方面軍主力を撃破、パルミナ首都ドガ市を制圧し、デロイア人によるデロイアの政府『デロイア人民解放政府』の樹立を宣言、その首班となる。


次なる目標として「デロイアの完全なる独立」を掲げ、地球側との対等な形での交渉を行うための解放政府の政治的地位の向上と政治的実行力を示す手段として、主戦派が提案したデロイアの最重要拠点『北極ポート』の制圧作戦を支持する。(デロイア唯一の宇宙港である北極ポートを抑える事で地位的優位を手に入れ、地球側と独立承認を前提とした和平交渉を早期に結ぶことが目的だった。)

しかし、この選択が穏健派であった同志ヘシ・カルメルからの不信を買うことになる。カルメルは解放政府ができた時点で地球側との交渉を主張していたが、サマリンは政治的対等性が無ければ交渉は不完全に終わると固辞していた。

  • ただしカルメルには「これ以上同志の犠牲を強いる侵攻作戦は止めたい」という仲間を想う心もあり、サマリンも明確に口にこそしなかったが侵攻作戦によって生まれる犠牲を必ずしも肯定していたわけではなかったため、悲しいすれ違いが起きてしまったという一面がある。

解放政府の不和を突く形で地球政府の野心家ヘルムート・J・ラコックが密かにカルメルに接触。ラコックはカルメルを利用する形で解放軍の行動を遅滞させ、その間に北極ポートの防備を固めて侵攻を断念させることを狙っていた。交渉力で劣るカルメルはラコックの強硬な姿勢に押し負けて遂にサマリンを裏切り、サマリンは拘束・軟禁されてしまい、それを受けて解放軍も北極ポートを目前にして侵攻作戦を断念する。

  • ラコックの政治工作をもってしても解放軍は北極ポートへ着実に前進しており、駐屯軍の防備強化も未完了だった状態では解放軍を撃退できるとは言い切れず、ラコック自身も相当焦っていた。さらに後述の真の目的が第8軍司令のフォン・シュタインに露見したことで彼の反感を買っており、サマリンとの直接会談(つまり現デロイア州政府代表でもあるフォンがサマリン政権こと解放政府を政治な交渉相手として支持するという事)に向かおうとした彼をラコックが謀殺した事による指揮系統の混乱もあった。もしカルメルが裏切らなかった場合、北極ポート制圧は成功していた可能性が高い。

その後、カルメルの主導のもとで地球政府との和平・デロイア独立承認の交渉が進められたことで、不本意ながら自身の役目が終わったことを自覚し、そのまま歴史の表舞台から消えることを受け入れた。

  • 裏切りによって首班となったカルメルだったが、彼自身は首班の座を狙っていたわけではなく、当初は和平交渉が終わった後はサマリンに再び解放政府を主導してもらい、正式な独立承認と以降の政治運営を共同で行っていくつもりだった。しかしラコックは最初からサマリンよりも政治・交渉力で劣るカルメルを使って解放政府、ひいてはデロイアを傀儡にすることを画策しており、カルメルが踊らされてしまったことでサマリンが政治的に排除されてしまい、なし崩しに自身が首班に収まざるを得なくなってしまった。

だが、この顛末に納得がいかなかった太陽の牙に軟禁場所から救出される。しかし既にサマリンは「自身の役目は終わった」と意気消沈しており、解放政府に反抗しようとする太陽の牙の面々を説得できるだけの気力は持ちえなかった。自身たちを完全に排除しようとする連邦軍の追撃を受け、流れ弾によって重傷を負うが、理不尽に振りまわされようと未来への志を捨てたくないと抵抗するクリン達”未来を生きようとする若者”の姿を見て気力を取り戻し、せめて若者達だけでも救おうと重傷の身体を押してカルメル達の元へ交渉に赴き、クリン達の安全を確約させる。

その後クリン達の元へと戻り「ゲリラ活動に殉じるのではなく、未来を生き、新しい人間関係を持った社会を作ってほしい」と彼らを叱咤激励し、最期に自らの願いを若者が継いでくれたことに満足しつつ、充実した想いを抱いて息を引き取った。




Gettruth版では編集

太田垣氏による漫画版では、タカ派の革命指導者として描かれており、アニメ版とは異なるキャラクターとなっている。

若かりし頃から地球連邦政府による弾圧に苦しめられてきたことから、デロイア独立を切に願っており、その為なら戦いも辞さない主戦論者である。柔和で人間的であったアニメ版サマリン博士に比べ、無表情で人間性に乏しい硬骨漢といった風貌になっており、よりリアルな人物造形が成されている。

一方で、優れた見識と卓越した戦略性はアニメ版と同様であり、安易なテロリズムに走らず堂々と歴史を切り開かんとする誇り高い指導者である。

だが、その強行な革命指導は穏健派の同志から危険視されており…


関連タグ編集

太陽の牙ダグラム

ドナン・カシム

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