概要
アメリカ合衆国が開発し、1980年代より運用を開始した地対空ミサイルのシリーズ。開発国のアメリカ以外にも世界各国の軍隊に輸出されており、日本でも航空自衛隊が運用している。
端的に表現すれば、車載式の地対空ミサイルである。しかし採用された多機能フエーズド・アレイ・レーダーは一台で目標探索からミサイル誘導までこなせる高性能な分巨大であり、ミサイル発射機とは別にレーダーだけを専用車両に載せて発射地点で展開し使用する。さらに別車両を用意して、兵器管制コンピュータや通信リンク機能などを備え指揮官が搭乗する射撃管制装置、他部隊や司令部と通信し情報を共有するためのアンテナマスト・グループ、必要とされる膨大な電力を供給する電源車がそれぞれ専用車両で発射地点に配置される。以上の支援によりミサイル発射装置搭載車両5〜8両を運用するシステムとなっている。このシステム一揃いに整備小隊などを加えて一個中隊を構成する。なお、高射中隊は通常陸上自衛隊の特科(砲兵)に区分されるが、もっとも長距離の目標を担当するパトリオットの高射隊は航空自衛隊の高射群(連隊相当)に所属運用される。
シリーズには主として、
- 配備当初の初期型BASIC
- 初期型から耐電子妨害能力やソフトウェア等を改修したPAC-1
- 弾頭の破壊力などを向上させて弾道ミサイルの迎撃任務に対応したPAC-2
- さらなる能力向上で弾道ミサイルへの対処能力を本格化させたPAC-3、及びその能力向上型PAC-3MSE
があるが、BASICとPAC-1はすでに運用されておらず、主力はPAC-2/3である。
湾岸戦争ではイラク軍の弾道ミサイル迎撃に活躍したほか、日本では北朝鮮の弾道ミサイル発射試験に際して度々自衛隊のPAC-3がニュースに取り上げられることが多い。ウクライナ侵攻でもアメリカよりウクライナへ供与されており、2023年にはアメリカが供与した分を補間する目的で、日本がライセンス生産したPAC-3弾をアメリカが逆輸入することで決定している。
関連イラスト
基本的にはミサイル本体よりも発射機単体で描かれることが多い。