ここから先に起こる事は
読者であるあなたに判断していただきたい
概要
プッチ夫妻の元に生まれた3人の兄妹を指す。
エンリコ・プッチとドメニコ・プッチが二卵生の双子、妹にペルラ・プッチという構成。
エンリコとドメニコは同じ日に生まれたが、その日のうちにドメニコは亡くなった。
本編にて(ネタバレ注意)
双子の誕生とドメニコの死から幾年が経過した。
エンリコは神学校の生徒として神父になるための修行を積んでいた。
ある日、教会の懺悔室に1人の夫人がやってきた。自分は神父ではないからと神父を待つようにエンリコは夫人に言うが、夫人は懺悔を始める。仕方なく、エンリコはその懺悔を聞くことにした。
ブルーマリン夫人は語り始めた。
その懺悔は「死んだ自分の赤んぼうとよその家の赤んぼうをすり替えてしまった」というものだった。夫人は身寄りもなく、夫にも逃げられ、赤んぼうだけが彼女の希望だったのだ。赤んぼうの死に呆然とした夫人は、フラフラと隣の双子の片割れと死んだ赤んぼうを取り替えてしまったと言う。すり替えた息子にさえ、孤独になるのを恐れて実の子ではないと告げられずにいたと、そう懺悔した。嫌な予感がしたエンリコは、その双子の家の名を問うた。女性は答えた。
「プッチさんという夫婦です となり町の大きな屋敷に住んでいる方です」
生まれたその日に死んでしまったと思われていたエンリコの弟のドメニコは、ブルーマリン夫人の息子として生きていた。
だが、神父だろうと見習いだろうと、懺悔で聞いた内容を口外することは絶対に許されない。エンリコは両親に真実を伝えられないままでいた。
それからまた幾年か。エンリコは神父になり、プッチ神父と呼ばれるようになった。そしてペルラに彼氏ができた。ひったくりを捕らえた際に出会った好青年だそうだ。ウェザー・リポートと呼ばれる彼の名は、ウェス・ブルーマリンであった。
ウェスはブルーマリン夫人の息子らしい。つまりペルラとウェスは、何も知らず兄妹で付き合ってしまっているのだ。兄妹同士での交際はキリスト教で禁じられている。掟により懺悔の内容を口外できないプッチ神父は、なんとか真実をばらさずに2人を引き離そうと、なんでも屋を雇って妹とウェスを別れさせてほしいと依頼した。
それが不運であった。なんでも屋はKKK(白人至上主義)の流れを汲む人間だった。そしてブルーマリン夫人は黒人系の人間と付き合っていたことがなんでも屋の調査で判明してしまった。
なんでも屋は、ブルーマリン夫人の子となっているウェスが黒人の血を引いていると勘違いし、集団で暴行を加えた。ペルラにお前の兄からの依頼だと告げて。あらかたリンチした後、海を望む崖の端に生えた一本の木にウェスの首を吊るし、なんでも屋たちは引き上げた。その光景を一部始終目の当たりにしたペルラは、ウェスが死んだものと思い、そして絶望した。ウェスを木から下ろすと、
「あたしの心の中にはもう…… 雨が降ることさえない」
と崖から海に身を投げた。ウェスにまだ息があることも知らずに…。
世が明けて、ペルラは海の中から遺体となって引き上げられた。そこへ駆けつけたプッチ神父は、ペルラに十字を切ることを許さなかった。
「呪われるべきはこのわたしだッ!」
と慟哭した。
「 君は「引力」を信じるか? 」
瞬間、プッチ神父を鏃が貫いた。それは、かつて出会った奇妙で美しい男から譲り受けた鏃だった。
時は少し戻って。目を覚ましたウェザーはペルラの後を追おうと崖から飛び降りた。だが、急に突風が吹いてきて失敗した。今度は海に入ったが、波に押し戻されてしまった。どうしても、ウェザーは死ぬことはできなかった。
その夜、街に異変が起きた。街を虹が包んだ。人間も犬も蝶々も、ほとんどの生物は皆なぜかカタツムリとなってしまった。
プッチ神父は理解した。自身が鏃に刺されて「能力」に目覚めた影響で、ウェザーにも「能力」が発現したのだと。
双子は対峙した。
「満足か?」
「あんたの妹ペルラはあんたの依頼でこうなったんだ」
「そして…怒りはおさまらない… このケリはつけさせてもらう」
というドメニコに、エンリコは
「違う」
「わたしはおまえの「兄」だからだ」
と答えた。混乱するドメニコの隙をつき、エンリコはドメニコの記憶を奪い、「能力」を封印した。ウェザー・リポートにプッチ神父は言った。
「 思い出のない人間は死人と同じだ 」
結末はいったい誰の罪なのか?
赤んぼうを取り替えた母親の罪か?
両親か?
プッチ神父か?
恋をした妹か?
何も知らないウェザー・リポートか?