「酷い?いいか、酷いってのはこうだ!安売りスーパーの棚で他のオモチャが売れるのを寂しく眺めながら一生過ごすことだ!そんな日々もようやく報われる。それをオンボロのカウボーイ人形なんぞに邪魔されてたまるか!」
CV:ケルシー・グラマー/小林修(吹き替え)
概要
元々は『ウッディのラウンドアップ』という人形劇(劇中劇)に登場する金鉱掘りのキャラクターが人形になったもの。作中ではウッディの父親的存在(作中の「放蕩息子が帰ってきた」という台詞をそのまま捉えるなら実の息子という設定かもしれない)。
人形の方の彼は新品らしく未開封であり箱に入ったままとなっている。容姿は丸鼻に白いヒゲを蓄え、赤いシャツにオーバーオールを履いていて尻にはツルハシが刺さってできたつぎはぎがある。また付属品にそのツルハシがついており、ストーリー終盤でこれが印象的な活躍をすることになる。
英語ではプロスペクターの本名である“Stinky Pete”という名前で呼ばれており、アメリカ本国ではこちらの呼び名がメジャー。
一見すると人形劇でのキャラクター同様、面倒見がよくお茶目で陽気な性格の老人に見えるが、実は元々スーパーのおもちゃ売り場で他の玩具が売れていく中、ただ一人だけ売れ残りワゴンで投げ売りされていた過去とジェシーの半生を知っていることからおもちゃとして子供に遊ばれることに嫌悪感を抱き、博物館で展示され「永遠の命」を得ることに執着している傲慢で自己中心的な性格で本作の黒幕。
実は未開封というのは嘘であり、本人は度々箱から出てウッディがアンディの家に帰らないように暗躍、心の内がばれると豹変しウッディにお前は博物館に行く最後の駒だなんだとばかりに吐き捨てた。
他にも『ウッディのラウンドアップ』が打ち切られる原因となった宇宙物やSF物を嫌悪しており、バズ・ライトイヤーを「成り上がりの宇宙者」呼ばわりし、「バズライトビル」とわざと間違えて読んでいる。
(バズ・ライトイヤーのスペルは“『Buzz Lightyear』と、プロスペクターの発したバズライトビルは『Buzz Lightbeer』と書く。アメリカでは“Lightbeer”と言ったアルコール度数が比較的低いビールがあり、恐らくそれにかけた蔑称である。)
物語の途中でジェシーの過去が判明。以前の持ち主が成長してベッドの下に忘れ去られ、最後は箱に入れられ不要物として外に捨てられたという経験を聞かされてもまだ博物館行きを躊躇っていたウッディに「いつか捨てられるのを覚悟で家に帰るか博物館で永遠の命を得るか、お前の好きにすればいい」とうまく言いくるめて博物館に行かせようとする。しかしウッディはバズ達に説得され、『ウッディのラウンドアップ』から流れてきた劇中歌「君はともだち」の歌詞を聞いて「アンディが大人になるのは止められないがそれでも構わない!」と「遊ばれてこそおもちゃ」とおもちゃの存在意義を思い出し、プロスペクター含む博物館行きのおもちゃを全員連れて家に帰ると決心したためここで凶悪な本性を表し強行手段をとり、無理やり連れて行こうとする。
最後は空港の荷物ターミナル内でバズを殴り落としたことで激高したウッディと揉み合いになり、「選ぶがいい、カウボーイのまま行くかバラバラになるか、どっちだっていい、(所詮おもちゃだから)すぐ直してもらえるんだからな!」と迫り、それでもウッディはケースに戻ることを拒否したためツルハシでウッディをバラバラにしようとしたが、既の所で増援に間に合ったバズ達に他の荷物に入っていたストロボで目くらましをされて倒され捕えられ、「遊びの楽しさをそろそろ知るべき」と玩具に化粧するのが大好きな「自称芸術家」の少女、エイミーのカバンに入れられ、そのまま彼女の物になった。
余談
・末路こそいわゆる典型的なディズニー(ピクサー)作品のヴィランズなのだがジェシーやブルズアイとともにトラウマを抱えたおもちゃであり、哀しき悪役としても描かれている。
擁護するならウッディの事を考えない自己中心的な考えとはいえ、暗い倉庫の中でウッディの人形がアルの手に入る日を待ちながら長いこと過ごし、また持ち主に忘れられる事を恐れているジェシーのことを考えれば彼が博物館行きに固執するようになったのもある意味真っ当でもあるとも言える。
また彼がアンディの家に行かずウッディを強制的に博物館に連れていく選択肢を取ったのも外の世界が危険であると認識しており、確実にアンディや他のおもちゃ達に受け入れられるとは限らないと感じたのであれば筋は通っており仕方の無いことである(これに関しては杞憂だったが)。
そもそも今回対立したウッディも1では新入りの「宇宙野郎」と対立、自分の居場所を取られたくないために空回りしつつも彼を妨害し、最後には暴力でバズに一泡吹かせようとした(想定外でやりすぎてしまったとはいえ)という経緯があり、これだけではプロスペクターだけを悪とみなすことはできない。(バズライトビル呼ばわりしたプロスペクターにウッディは怒りながら訂正していたが、ウッディも1で同じ呼び方をしている)
だがウッディは最終的に反省してバズと対話し、お互いに成長して和解し、2では強く信頼し合う友になっているので最後まで強硬手段を押し通し、譲ることも改心もしなかった彼とは対照的である。
結果論ではあるがもしも彼がもっと真摯にウッディとバズ達の意見に耳を傾けてアンディのおもちゃになることを選んでいたら…もしもバズも含めウッディの仲間たちとどうして博物館へ行きたいのか言葉を交わし彼らを説得していたら…もしかしたら結末は違うものになっていたかもしれない。…盗品であるウッディが博物館に飾られるのが物語として許されるかは別として。
末路に関しても彼にとって最悪の結果になったことは間違いないだろうが、続編の黒幕は哀しき悪役であることを忘れてしまうレベルのクズで権力を振りかざす独裁者として君臨。終始バズたちの前に強敵として立ちふさがり、散々与えられた和解のチャンスを尽く踏みにじって最終的にはウッディにすら「仕返しする価値すらない」と唾棄され、結果おもちゃとしての役割を終える末路を辿っている。
しかし彼に関しては手に渡ったのがおもちゃをかなりぞんざいに扱っているエイミーであるとは言え、初めて自分で遊んでくれる持ち主の手に渡り一応はおもちゃとしての役割を果たせる事になった。これはかつてワゴンの中で埋もれていたおもちゃに対してこれ以上無い恵まれた未来を与えられた捉えることもでき、認識を改めれば逆に救いになっている。
・ちなみに彼の台詞「アンディがお前を大学に連れて行くか?新婚旅行には…?」「アンディは大人になる。それを止めることはできない。」「馬鹿め!いずれガキ共に壊されるんだ!バラバラにされ、捨てられて!どこかの埋立地でゴミにまみれて腐っていく!!」は「おもちゃとは何か」という命題にもなり、続編トイ・ストーリー3ではそれらがメインテーマとして扱われ、アンディ・ウッディたち・サニーサイドのおもちゃたちが彼の代わりにそれぞれ自分たちなりの答えを出している。
これは箱の中からワゴンの中で他のおもちゃが売られていくのを眺めることしかできず、ジェシーの辿った遊ばれたおもちゃが迎えるあっけない最期を知り、『ウッディのラウンドアップ』に差した時代の斜陽を理解してしまった数奇な運命に振り回され歪んでしまった彼が発するからこそ重みが生まれた素晴らしい問いでもある。
・彼の呼び名である『Prospector』は“探鉱者”の意味だが、「~する人」といった動作の主体を表す言葉であるorを外した、『Prospect』の意味は“ 見通し,予想,将来性”を意味する言葉である。何と皮肉なことか。
・本編の悪辣ぶりに反し、NGシーンでは撮影開始に気づかずバービー人形を口説き続けたり、シリアスな場面で放屁して驚き、発信源が自分と気づいて(字幕では呼び名に放屁音を引っ掛け「これじゃプーロスペクターだ」、吹替では「だからよく言われるんだ、『おじん臭い』ってね」と)呆れながら自虐ネタを放つなど、本性を晒すまでのお茶目で陽気な性格がある意味地の様な振舞いを見せている。
・ウォーターヌース共々ハンス・ウェスターガードやドーン・ベルウェザー副市長の『一見味方にしか見えないキャラがヴィランズである』パターンの元祖となっている。