あたしの腹は底なしの沼……満足にはまだ、ほど遠い……。
だから、もっともっと酷くしてあげる。
お前さんたちの泣き声と、哀れに地を這う醜態で、
この耳と目を慰めておくれよ。
CV:伊藤静
概要
ガレマール帝国軍第XII軍団の支配下にある辺境国家"ドマ"の代理総督。
フルネームはヨツユ・ゴー・ブルトゥス。
ミドルネームの「ゴー」は属州総督の身分を示すものだが、軍人ではなく政務職に分類される。
長く艶やかな黒髪に艶ぼくろ、漆黒と真紅の着物風衣装をまとい、常に煙管をくゆらせている。
妖艶な美貌を持つ女性だがその性格は残忍極まりなく、「粛清」という名目でドマの領民に悪逆非道な仕打ちを繰り返す。
ドマの地で生まれ育ったにもかかわらず、誰よりもドマを憎んでいる彼女。
そうなった理由には、どうやら彼女の生い立ちが大いに関わっているようだが……。
NHKの総選挙における人気投票では92位を記録。
関連タグ
FF14 ファイナルファンタジー14:新生エオルゼア ガレマール帝国軍第XII軍団
ネタバレ
元々彼女はガレマール帝国統治下のドマの出身だった。
幼少期に実の父母を亡くし、生母の妹の居るナエウリ家に引き取られた経緯を持つ。
だがそこで待っていたのは養父母による冷遇であり、教育を受けることすら許されず、家に押し込めて家畜のように働かされるようになる。
彼らの溺愛していた義弟(従弟)のアサヒが帝国内で出世すると、ヨツユの存在が家の名声に影響を及ぼすのを恐れ、早々にサシハイ家に嫁がされる。しかしそこに愛はなく、傍若無人な夫の家庭内暴力に苦しめられた。そして程なくしてその夫が亡くなると、今度は厄介払いとして遊郭へと売り払われてしまった。
不遇な人生を歩む彼女をドマの人々は見て見ぬ振りをするばかりで、手を差し伸べる者は誰一人居なかった。
上述の帝国式教育の件でも、帝国兵がアサヒをスカウトしに来たときたまたま帝国兵の目にヨツユも止まったのだが、帝国兵も「彼女にもきちんと教育を受けさせているのか?」と形だけでもヨツユの事を案じていたのに、両親を含めたドマ人は全く何もしなかった。
そんな境遇の元、彼女はドマという国そのものへの憎悪を募らせることになる。
彼女が帝国の諜報に身を置くようになるのには大した理由はいらなかった。
生まれてから一度も自分のために誰かが何かをしてくれた事は無かった。親からは消耗品のように扱われ、厄介払いで嫁に出され遊郭に売られ、誰一人として自分の価値を認める者はいなかった。
そんな中、初めて彼女に「美貌と諜報の才能」を見出し彼女自身に金という対価を払ってくれた帝国にこそ恩義を感じるようになるのだった。
転機が訪れたのは、属州のお飾り元首だったカイエンが反乱を起こす少し前の頃。
当時のドマを監督していたガレマール帝国高官(ゼノスの政敵)が、視察に来たゼノスの暗殺を企てた時だった。
遊女として働きつつ、ドマのレジスタンスに帝国の情報を流す振りをしてレジスタンスを監視するガレマール帝国諜報部の二重スパイとして身を立てていた彼女は、視察にきたゼノスの接待を行うこととなる。
そこでゼノスを狙った暗殺者の集団が襲いかかるが、苦もなく返り討ちにしたゼノスの圧倒的な力がドマに向けられた場合を想像し、歓喜を覚える。刺客の血にまみれながら笑う彼女を見たゼノスは、その身の内に燻ぶり続ける底なしの憎悪を見抜き、興味を抱く事となった。
時が経ち、当時のガレマール帝国のドマ監督官が反乱によって失脚し、ゼノスが代わって統治者となる。
ゼノスは自らが狩るに足る「獲物」が現れる事を目的とし、ドマ人のガレマール帝国への憎悪を燃え上がらせ、その反乱の芽を育てる為、また他の属州への見せしめとする為に、ドマに苛烈な仕打ちをすると見越してヨツユを代理総督へと抜擢する。
ヨツユはゼノスの思惑通り、苛烈な統治と言う名の「復讐」によってドマの反感を育て、やがてエオルゼアの助力を得たレジスタンス達によって討滅された。ドマの象徴であったドマ城と、ヒエンの腹心であったゴウセツを道連れにして。
結局のところ、彼女はまたも個人の思惑に利用され、消費されるだけの存在でしかなかった。
だが数奇なことに、彼女はゴウセツと共に生き残っていた。
しかも記憶喪失となって。
ねぇ、ここのお団子、美味しいよ!
おじいちゃんも食べる?
記憶を失ったヨツユは「ツユ」と名づけられ、自分を助けてくれたゴウセツに懐き、幼子のように無邪気に振る舞う。
同時に負傷によって弱ったゴウセツを「おじいちゃん」と呼び慕い、気遣う優しさをみせた。
ユウギリはあまりの豹変ぶりに当初は演技を疑う。
しかし一人になっても無邪気にままごとで遊ぶヨツユの姿を見て、潜入工作のプロの観点から「忍びでもここまではやらない」と判断し、記憶喪失を認めざるを得なかった。
その後、彼女はヒエン達によって保護されたが、そこにやってきたのが帝国の特使として現れた従弟のアサヒだった。
その時点では記憶は戻らなかったものの、床に臥せるゴウセツが柿を食べたいと零したために単身ナマイ村に赴く。しかし村人が恐怖と憎悪を自分に浴びせた事に怯え、どうやら過去の自分が「悪い事」をした事に気づかされる。
その後アサヒの策略によって、彼女は記憶を取り戻してしまう。
一度は殺そうとしたゴウセツやヒエンたちの優しさに触れ、自分の存在が帝国に利用されようとしていること気づき、自殺をも考えた。
思い出さねば、生きられた……。
恨まれるだけでも、生きられた……。
でも、引き金引いた男に優しくされちゃあ、
もう生きてやいられない……。
だが寸前の所でアサヒが連れてきた養父母と遭遇。
彼らの理不尽な物言いによって再び憎悪の念が蘇り、彼らをその手に掛けた後にアサヒのもとに下る。
これよりこの地に、明けは来たらず。
我が腹より満る闇に呑まれ、とこしえに夜見の国となろう。
そこにあたしは輝く……冷え冷えとした月のごとく!!
ここに咲きたる月下美人は、我が身を送る彼岸花……!
そしてアサヒの「ドマは蛮神を召喚しないという協定を破らせる」策略に乗って、「蛮神ツクヨミ」をその身に呼び降ろす。
ツクヨミとの戦いでは、過去に彼女を虐げた養父母、彼女を罵るドマ人の亡霊や帝国軍兵士、彼女を嘲笑うアサヒの幻影、そして最後に彼女を裁こうとするゼノスの幻影が現れる。
そんな中でゼノスの攻撃を受け止めて弾き返したのはゴウセツの幻影。
驚くヨツユに対してゴウセツは「ツユよ、生きるのだ!生きねば償いも、恩返しもできぬのだから!」と叫ぶが、ヨツユは「そうかい、でもね……もう遅いのさ……」と返して慟哭、戦いは佳境へと突入する。
激闘の果て、ヨツユは光の戦士に敗北。
瀕死の所をアサヒに撃たれた挙句、何度も足蹴にされ続ける。
だが彼女は最後の力を振り絞り、「最も憎かった無関心な弟」の体を剣で貫く。
アサヒ……お前は……
あたしがどうなろうと、見て見ぬふりを続けてくれたね……。
それでこそ……あたしが最初に恨んだドマ人だ…………!
全権大使の権限を振りかざして光の戦士を煽り、得意絶頂にあったアサヒの命を自らの手で奪うことで、念願の復讐を果たしたのだった。
光の戦士からゴウセツの名を聞かされたヨツユは、ほんの僅か、純粋無垢な「ツユ」としての顔を取り戻し、呟く。
あの……じじいかい……。
嗚呼……あの柿……おいしかった……かな………………
常に誰かの思惑の犠牲となり、消費されるだけの人生だった彼女は、最後の最後で自分のやりたかったことを成し遂げ、満足げな表情で安らかに散った。
その後、ゴウセツは出家して坊主となる。
そしてヨツユを含めたすべての犠牲者の菩提を弔う為、旅に出ることを選ぶのだった。
ヒエン曰く、ゴウセツは先のドマ反乱の折に妻子を失っており、娘が生きていればヨツユと同じくらいの年齢だったという。
そして僅かな間ではあったが、「ツユ」という女は確かに存在し、彼女もゴウセツも、間違いなく幸福であっただろう、とも。
NHK総選挙におけるツクヨミの順位は14位。