概要
高等魔術の原理によると、この宇宙には地、水、空、火のそれぞれの精、いわゆる四大精霊が存在しているが、それに反して低俗魔術の世界には、もっと陰湿でドロドロとした気味の悪い、不吉な、怨霊の様な種族であるラルヴァが幅をきかせているといわれている。
つまり、闇に葬られた魂、若しくは地獄行きが宣言された様な呪われし魂などが、肉体が滅び消え去った後もなお生き続けようとした時、その執念や怨念がラルヴァとなって人々に様々な危害をもたらし苦しめるという。
ラルヴァが発生するには様々な場合があり、罪人が処刑された後、不潔な血や精液が土の上に流れると、そこからラルヴァが生ずることもあれば、女性の不浄の血、自慰や睡眠中に零された男の精液から発生することもあるとされる。
そして満たされることのない欲望や不健康な夢想、または恨みなどといった人間の隠された情念に敏感に反応するラルヴァ達は病人や妄想家、抑圧された人々などの周りにうようよと集まってくるといわれている。
尚、元々ラルヴァはローマの死霊信仰で生前の悪行によって冥界へと行く事ができない悪霊を指す言葉で、現在の邪霊として扱われるラルヴァはルネッサンス以降であり、その逆に生前に善行を行った者で冥界に行けない霊はレムレースと呼ばれていたとされる。
ただしレムレースといえど、彼らをもてなし、冥界に送らなければ、現世に残って様々に人々を惑わすとされており、そうならない様に5月にレムレースの祭りが執り行われていたという。
ラルヴァとレムレースは何れも人間の亡霊であるが、時間経過や条件によっては祖霊のマネスや家の守護霊であるラレルに変化するとされ、特にマネスは神の如き力を持つといわれており、人々はマネスの加護を得る為に、2月の祖霊祭では様々な捧げものをしていたが、ルネッサンスによってマネスやラレルは地獄に住む悪霊とされ、悪魔や獣の様な姿形へと変化する。そしてレムレースにいたってはラルヴァと混同されるようになり、最も低級な霊の1つに数えられるようになったとされている。
また、この新しいラルヴァは知能はなく、心の弱い人物や煩悩を持つ人物に実体化した上で取り憑くといわれており、実体化した後もその姿は流動的で、人間の胎児や動物、死体などといった悍ましい姿を次々と表し、一瞬でも同じ姿に留まっていないとされ、取り憑いたものを生かさず殺さずの状態に置き、何時までも生気を吸い続けるという。