概要
ヴァンガードは英国海軍の伝統ある艦船の名前である。現行の原子力潜水艦で11代目。「ヴァンガード」を名乗る英海軍の戦艦としてはセント・ヴィンセント級戦艦も存在するが、本記事では英海軍最後の戦艦となった9代目を扱うものとする。
世界で最後に起工され完成した戦艦でもあり、リシュリュー級戦艦の2番艦ジャン・バールと並んで第二次世界大戦後に竣工した数少ない戦艦である。ヴァンガード、ジャン・バールは、世界で最後まで現役だったアイオワ級戦艦4隻と並んで最後の戦艦とも呼ばれる。
解説
本艦は第二次世界大戦中に既存の15インチ砲塔を流用して建造されたいわゆる「戦時急造艦」であり、主砲の火力は38.1cm砲4基8門と控えめである。防御面でも（急造であるがため）やや旧弊な設計が目立ち、他国の新戦艦と比べれば劣るものであった。だが、先行するキング・ジョージ5世級の問題点であった航海性能をはじめ、現場からの改良要求を意欲的に盛り込んだ結果、従来の英国戦艦のバランスの悪さ（英国面）を克服したトータルバランスに優れたものとなり「英国戦艦の集大成」「英国海軍史上最良（最強ではない）の戦艦」と呼ばれる。
しかし…この艦は「遅れてやってきた」。竣工した1946年には第二次世界大戦はとっくに終わっており、空母機動部隊、そして核兵器が登場した時代にあっては「抑止力」たる戦艦の戦略的意味も失われ、もはや衰退した大英帝国の威信を示す意味しかなかった。
1960年に除籍され、解体処分された。
