説明
海軍休日明けにフランス海軍が生み出した戦艦であり、フランス最後の戦艦の艦級となった。
その性能は攻撃力、防御力、機動力のどれをとっても高い水準でまとまっており、そのスペックはヨーロッパでも最強クラスの戦艦であった。
同時期に欧州で建造された英国のキング・ジョージ5世級戦艦、ドイツのビスマルク級戦艦、イタリアのヴィットリオ・ヴェネト級戦艦と比べても一歩先を行く先進的な戦艦であった。
特徴の1つに、戦後世界各国の艦艇に採用されたマック構造が取り入れられたことが挙げられる。
マックというのはマストと煙突の機能を一体化させた構造のことで、リシュリュー級のそれは先駆けであった。
四番艦ガスコーニュは設計に大幅な変更が加えられ、改リシュリュー級、すなわち「ガスコーニュ級」でもあった。
ガスコーニュとそれ以前のリシュリュー級の最大の違いは、主砲の集中配置を止めて主砲を艦の前後に1基ずつ、副砲が1番主砲塔と艦橋の間に2基、後部司令塔と2番主砲砲塔の間に1基配置されている点である(やっぱり後部方向にも強力な火力が欲しいという現場の声が強かったため)。
鹵獲した3番艦クレマンソーを調査したドイツ軍は自国の造船技術が20年遅れていることを知ったという。
攻撃力
4連装主砲の前面集中配置はダンケルク級から引き継がれたが、本級の主砲は新設計の45口径38cm4連装砲であった。
砲身長が長く、重量884kgの砲弾を初速785m/秒で発射出来るこの砲は、射距離20,000m台ならば舷側装甲393mmの貫通が可能だとされ、 「枢軸国の戦艦で耐えられるのは大和型だけ」 と言われる優秀な砲であった。
もっとも散布界は約20,000yardで1kmと劣悪で、装填速度もカタログスペック通り発揮できず、戦後に改修を受ける原因となった。
前級では両用砲だった副砲もリシュリューでは水上艦用と高角砲に分けられた。
搭載されたのは軽巡洋艦の主砲にも採用されている55口径15.2cm3連装砲。全基が後部測距施設の後ろに三角形に配置されているのが特徴的。
対空兵装として最大仰角80度で高度10,000m、13.5kgの榴弾を毎分10発発射可能の45口径10cm連装高角砲を6基、ダンケルク同様オチキス社製37mm機関砲を4基8門、13.2mm機関銃を16基32丁を備えていた。
これらの機銃は、1943年アメリカで完成した際にボフォース社製40mm機関砲16基64門に換装、1944年イギリスで更に同機関砲単装9基とエリコン社製20mm機関砲41基が追加された。
防御力
4連装砲と前部集中配置で排水量が浮いた分を防御力に費やせた為、優れた防御力を有している。水線下の防御区画に従来の液層や空層に加えてエボナイト・ムース、つまり発泡化した硫化ゴムを充填していた。
機関
新たに採用されたインドル・スラ式重油専焼水管缶はこれまでのボイラーとは全く異なる構造だがより小型で、より多く防御にリソースを割くことが出来た。
肝心の出力もリシュリューで150,000hp、最大速31ktと速力30ktの計画を上回る良好な結果を残した。
戦後5年経ってようやく完成した2番艦ジャン・バールに至っては出力170,000hpもあった為か、戦訓からバルジを追加した為に速力が落ちる筈がむしろ公試32ktを記録して周囲を驚かせたという。
同型艦
リシュリューは連合国軍の艦としか戦ったことのない連合国軍の戦艦と言われ、ジャン・バールは最後の戦艦と言われる。四番艦ガスコーニュは未起工。三番艦クレマンソーは未完成のまま侵攻してきたドイツ軍の手に落ち、ドックを空けるために大幅に設計を大幅に簡略化した上で建造を続行し浮き砲台として完成。ブレスト港の防空砲台として1944年8月に連合軍機に撃沈されるまで母港を守った。
5番、6番艦の建造も計画されていたが、ドイツ軍侵攻の影響により未竣工。 発展型のアルザス級戦艦も計画されていた。
一番艦リシュリュー
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二番艦ジャン・バール
起工:1936年12月12日
進水:1940年3月6日
就役:1949年
退役:1957年
除籍:1961年1月
名称の由来はフランス海軍の軍人ジャン・バール。
起工は1936年だが、ドイツのフランス侵攻から始まったゴタゴタの連続でアメリカに回航された後放置され、 起工から就役まで実に13年もかかった。
あまりに時間がかかり過ぎた為に世界で最後に竣工した戦艦となった。
完成度76%で本国を脱出したジャン・バールはフランス領カサブランカに逃げ込んだが、やがてそこには『トーチ作戦』を発動した連合軍上陸部隊が現れ、ジャン・バールも否応なしに戦闘に巻き込まれた。(カサブランカ沖海戦)
この時使える武装は1番主砲塔と対空兵装のみ、おまけに物資不足で工事が進まず主電源が頻繁に断線、水兵の大半が陸戦隊に回され、止めとばかりにボイラーはたったの1缶のみという状態であった。
一方アメリカ海軍の戦力は旧式空母レンジャー及びサウスダコタ級戦艦マサチューセッツであり、大和型に次ぐ戦闘力を持つ戦艦を相手にジャン・バールは決死の抵抗を試みたものの、ただでさえ強烈なスペック差の上に武器も人員も無いような状態でまともに戦える筈もなく、大破着底させられてしまった。
パーツだけ取られて放置されたジャン・バールだったが、終戦後にようやく回航されて1949年にやっと完成した。
その後は地中海艦隊に配備され、第二次中東戦争で出撃したのを最後に予備艦となり、1969年にはスクラップとして売却されて翌年に解体された。
三番艦クレマンソー
起工:1937年1月17日
進水:1943年2月
戦没:1944年8月27日
解体:1948年
未完成の3番艦。
名称の由来は19世紀の政治家でジャーナリストだったジョルジュ・バンジャマン・クレマンソー。
1番艦リシュリューの問題点を参考に副砲のレイアウトが変更されているらしい。
建造中にドイツが侵攻してきた為、完成度10%で放置されていたのを鹵獲され、ドックを開ける為に半端な状態での進水となった。
進水後は対空兵装を増設した浮き対空砲台として使用され、最終的にはブレスト港の出入り口を塞ぐ閉塞船として扱われた挙句に連合軍の空襲で撃沈されてしまった。
ちなみにクレマンソーの主砲はドイツがノルウェーに沿岸砲台として利用していたが、戦後に回収されてジャン・バールに積まれている。
四番艦ガスコーニュ
未竣工の4番艦。
本艦からはリシュリュー級の改良型の言わば改リシュリュー級、すなわち「ガスコーニュ級」でもあった。
リシュリュー級との最大の違いは、主砲の集中配置を止めて主砲を艦の前後に1基ずつ、副砲が1番主砲塔と艦橋の間に2基、後部司令塔と2番主砲砲塔の間に1基配置されている点。
本来は1939年9月に起工される予定だったが、資材収集が遅れて慌てている間に造船所がドイツ軍の手に落ちた為、ガスコーニュが建造されることはなかった。
創作関連
漫画「新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース」にてレムリア側のラ級艦として四番艦ガスコーニュが登場。
レムリア人から重力炉の提供を受けてフランスが開発したラ級艦であるが、完成後にレムリア人により奪われる。
主砲は50口径40センチ砲を10門有し、各砲塔に砲を二段重ねとしている。
ラ級艦は艦首にドリルを持つが、ガスコーニュのみが船尾にドリルを持つ。
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