概要
「月刊アクション」で連載していた大西巷一の歴史漫画。正式名は『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ』。
15世紀の中央ヨーロッパにて激発した宗教紛争であるフス戦争を題材としており、戦争の暗黒面である民間人の虐殺・性暴力・内ゲバがこれでもかと描写されている。
全12巻。
作品名の『乙女戦争』はチェコに古くから伝わる伝説であり、男と女が凄惨な戦争をしたという内容のものである。女子供も大勢参戦したフス戦争をこの伝承になぞらえたうえでの命名であり、それを象徴するように、劇中では女性達が残酷で凄惨な戦いに身を投じる様が描かれている。
ちなみに、ももいろクローバーZの曲は「Z女戦争」。
物語
時は15世紀前半の中世ヨーロッパ。ボヘミア王国でカトリック派とフス派によるフス戦争が起こり、派遣された聖ヨハネ騎士団によってボヘミアは蹂躙されていた。辱めを受け生き残った少女・シャールカは行き倒れていたところを謎の武装集団の一行に救われた。彼らは最新兵器と奇策を駆使して戦う、ヤン・ジシュカが率いる傭兵部隊「トロツノフの隻眼巨人隊」だった。シャールカは最新武器であるマスケット銃を手にとり、仲間たち共にカトリック派騎士団を相手に戦いに身を投じる。
登場人物
シャールカ
本作の主人公。騎士団に家族を皆殺しにされ自身も陵辱されたが辛うじて生き残り、流浪の果てに老将ヤン・ジシュカに拾われ、彼の元で戦士となる道を選んだ。
優しく清らかな魂の持ち主であり、血で血を洗うフス戦争に身を投じながらもその善性を失うことは無かった。ヤン・ジシュカのもとで多くを学び、逞しく生きる術を学んでゆく。
フス戦争に参加したことで苛烈な人生を歩むことになり、心身ともに残虐な仕打ちを受け続けるが、それでも仲間達のため、そしてヤン・ジシュカの為に戦い続けた。
フス派主催の聖歌隊に所属しており、その可憐な容姿と歌声から人気を博している。
名前のモチーフはチェコの伝説『乙女戦争』に登場する女傑の名前である。
ヤン・ジシュカ
『騎士殺しのジシュカ』の異名を持つもう一人の主人公。歴戦の老戦士であり、天才的な戦術家である。常に薄ら笑いを絶やさない大胆不敵な男だが、同時に気さくで面倒見のいい性分の持ち主であり、配下からはオヤジと呼ばれ好かれている。傭兵らしい冷酷果断な男であるが、根底には騎士階級や教会勢力に対する反骨心を抱いており、その表れとしてフス派に属している。
フス戦争における中心的人物であり、数に勝る神聖ローマ帝国軍や十字軍を相手に新兵器や新戦術を駆使して戦い勝利し続けた。
行き倒れていたシャールカを拾い、彼女に最新火縄銃『笛(ピースチャラ)』を与え戦士としての生き方をたたき込んだ。彼女にとっては師匠であり、もう一人の父親とも呼べる存在になってゆく。
ある意味、この作品はシャールカという一人の少女の目を通して彼の生き様を描いていると言える。