概要
インドから中国に掛けてのアジア一帯や日本の伝承に伝わる獣人。
その名の通り人間が虎に変身するタイプの獣人で、虎人、ウェアタイガーと呼ばれる事もあり、性別によっては虎男や虎女などと呼ばれる事もある。
中国語では虎人と書いてフーレン(Huren)、上古中国語ではクラーニン(Qhlanjin, qʰlaːʔnjin)、広東語ではフーヤン(Fujan)と呼ぶ。タイ語ではスアサミン(Suea Saming)、ベトナム語ではグォイホー(Người Hổ)、マレー語ではハリマウ・ジャディアン(Harimau Jadian)と呼び、インドネシアにはマガン・ガドゥンガンもしくはマチャン・ガドゥンガン(Macan Gadungan)、台湾には虎姑婆、ミャンマーにはタマンチャー(Thaman Kyah)、インドのカーシ族にはクラ・プリ(Khla Phuli)、ガロ族にはマッチャドゥス(Matchadus)、ナガランド州にはテクミアヴィ(Tekhumiavi)という人虎の伝説が伝わっている。
ちなみにいわゆる人狼の虎バージョンだが、日本ではあまりなじみがない。
人間が虎に変身する理由としては病気や偶然などといった不可抗力によって半永久的に虎の姿のままになってしまうという非常に厄介な性質があり、中には虎の霊魂に取り憑かれて変身するという変わり種もある。
また縦しんば運よく人の姿に戻れたとしても以後自由自在に虎の姿になる事ができなくなることが多く、中には虎に姿の時に食い殺した人物の名前をうっかり漏らしてしまい、その家族に復讐されて命を落とした者や、凶悪に血走った目元だけは元に戻らなかったという例も存在するという。
なお人間に戻れなかった人物は当然虎の姿のままで一生を終えることになり、虎の姿の際は人間であった頃の記憶や思考は一切失われているのが普通だが、中島敦の短編小説『山月記』の登場人物の1人である李徴の様に時折人間だった頃の記憶を取り戻す者も存在しているようだ。
そのほか干宝が著した志怪小説集『捜神記』には自在に人から虎の姿へと変身できる“チュ人”という部族の話が掲載されているという。
なお、「人が虎に変身する」のとは異なる、「虎が人に変身する」伝承も存在する。詳細は虎人の項目を参照。