概要
正式名称はムエボーラン。伝統的にはパフユッ(シャム拳法)と言い、ルーツとされるインド武術のカラリパヤットにおける素手武術=パーフユッダからきているとされる。
タイの国技ムエタイが、競技化される以前から存在したタイ王国の古武術。
解説
インドの古典文学ラーマーヤナ(※タイでは「ラーマキエン(ラーマの栄光)」と呼ばれ、内容も若干違う)の主人公であるラーマ王子が始めたと言われる武術で、戦場での白兵戦でも使用された格闘術にムエタイを纏めたのが、アユタヤ王朝のナレースワン王だったと言われている。祖国を侵略者から護るために兵士が使用していたとされており、数々の伝説が存在する。
当時のムエタイは現代的なグローブ等全く無い時代だった為に、縄を腕や拳に巻いてグローブの代用にした。此方のグローブを別名「ムエチュクル」と呼ぶ。
又、近代になってキチンとしたグローブを使う前のムエタイは「ムアイ・カート・チュクル(縛る格闘技)」と呼ばれていた。
ちなみに、ムエチュクルや二の腕に巻いている腕飾りの様な紐には自分の母親や妻や恋人の衣服の切れ端や髪の毛を「遠方に居ても互いに守りあっている」と言う意味を含め、お守りの様に、それらの装備品に巻き込んで使用する事も多い。
同様に近代的なムエタイで見られる冠の様な頭飾りは「戦いの精霊を宿している」為、決して足元等に置く事は無い。K-1等でも殆どの場合「肩に引っ掛けている」場合も多い。
又、ムエタイをする前に「ワイクルー」と言う踊りを踊るシーンが見受けられるが、それらは師匠や戦いの神への「感謝や戦闘に勝てる様に等の祈り」を表現すると同時に、近代の戦争等で接近戦でムエタイを使う必要が無くなった世では完全にタイでのムエタイは公営ギャンブルの一つになっている為、観客は「選手のコンディションをワイクルー時に見極める」のもポイントにもなっている。
余談だが、ムエタイが時に優美さを持って見られる時があるのはフランス等で発達した踊り・バレエの動きとリンクする場合も多い為である。
また、競技におけるムエタイと同じく、仏教との結びつきも 強い。
タイ人アクションスター、トニー・ジャーが映画内で使っていたことでも有名。
流派
各地域に特有の構えとワイクルー(上述)、その他に技術の特徴があり、特にワイクルーは互いの流派の確認に重要で、同門同士の対決は禁じられた。教伝は軍人が出家し僧となって各寺院で行なわれていた。
- ムエ・コーラート(東北タイ)
- ムエ・チャイヤー(Chaiyaa-rat)(南タイ)
- ムエ・パーックラ(バンコク拳法)
- ムエ・ロッブリー(ロッブリー拳法)
- ムエ・マーヤーン(馬歩拳法)
- ムエ・アユタヤ(アユタヤ拳法)
動画
解説(※タイ語)
タイ映画『マッハ!』より