概要
中国を発祥の地とする徒手格闘術の総称として日本で使われている語句。
日本では『徒手格闘』を意味する『拳法』の名が付いているが、実際は各流派によって差異はあるものの剣や槍等を用いた技法も研究・指導されるなど火器を除いた武器全般の使用技術も内包されており、分類上は所謂『武術』にあたる。
神秘性を含んだ伝説的な伝承ゆえ、漫画や小説などの創作描写では体得しているキャラクターが超人として描かれるケースも少なくない(例:水面を走るあの人)。
元々日本では「中国拳法」「カンフー」として一まとめにする大雑把な扱いをされていたが、創作作品にリアリティが求められる(それが作品の売りになる)ようになってからは、流派ごとの個性が強調されるようになった。日本では剣術等に流派があり、それらを扱った創作作品も既に普及していた為、そういった変化もすぐに受け入れられた。
中国拳法、およびそれに準ずる格闘技を使う架空のキャラクター
李・元(ストリートファイター)
雷武龍・凌暁雨・ジュリア・チャン・馮威・レオ(鉄拳シリーズ)
ジャン・リー・レイファン・ゲン・フー・クリスティ・ブラッド・ウォン・エリオット(デッドオアアライブシリーズ)
梁師範をはじめとする西派三十二門の皆様(新ジャングルの王者ターちゃん)
ウルトラマンレグロス(ウルトラギャラクシーファイト運命の衝突・ULTRAMANREGULOS)
中国拳法の主な門派
中国も広大な国土があるため、中国拳法もそのぶん多数の門派が存在しており、
それらを全て数える事は至難である。特徴を大別して「内家拳」(ナイカケン)、
「外家拳」(ガイカケン)という分類がある。
- 内家拳
筋力を細かく活用した独特の重心操作を行なうことで強烈な打撃力を作りだす。
決定的な威力を生むには安定した下半身を養うことが必須であり、
「立ち構えで長時間静止する」などの地道で過酷な稽古法を要する。
- 外家拳
強靭な五体と素早い動きを用いての直接的な破壊力を主とする。
主に香港系の武術アクション映画でもよく見かけるのはこちらの方だろう。
太極拳(タイキョクケン)
中国が明の時代、村落の地方に強制移住をさせられた「陳一族」が、
一族を守る実践格闘技として大成した武術を起源に持つ。
連綿とした柔軟な動作で技を続ける型稽古が特徴的。
近代になってからは華僑の海外進出によって世界的に知られるようになり、
技の型を極端に簡略化・低速化したものが健身法の体操として広域普及した。
- 主な使用キャラクター
チン・シンザン(餓狼伝説2)
形意拳(ケイイケン)
素朴な動きながら高い威力を秘めた、中国を代表する名門武術。
太極拳・八卦掌(ハッケショウ)とともに「内家三拳」に数えられ、
郭雲深、尚雲祥などの数多くの名人を輩出している。
陰陽五行説に対応した五つの基本拳技(劈・鑚・崩・炮・横)が特徴。
八極拳ブーム到来以前の日本でも「一撃必殺の武術」として注目されていたようだ。
- 主な使用キャラクター
エリオット(デッドオアアライブ4)
八極拳(ハッキョクケン)
中国の河北省・孟村を発祥地とする。知名度は高くはなかったが、
藤原芳秀の連載漫画・「拳児」によって「内家三拳」を凌ぐほど急速に有名になり、
漫画・ゲームなどの創作で多く扱われるほど日本ではかなり有名になった。
「二の打ち要らず」で知られる名人・李書文のエピソードは強烈である。
- 主な使用キャラクター
李典徳(ファイターズヒストリー)
八卦掌(ハッケショウ)
清朝末期、紫禁城を守ってきた董海川が編み出した拳法。八卦に基づいた掌を開いて円周上を回る様に動くのが特徴。弟子の尹福(イフク)程廷華(テイテイカ)から八卦掌は枝分かれしていった。
- 主な使用キャラクター
心意六合拳(シンイロクゴウケン)
回族(カイゾク、イスラム系中国民族)に伝わる、体当たりなどの接近戦を得意とする狂猛拳法。
他者へ妄りに漏らしてはならないほどの厳しい掟を持つ秘拳とされ、
全身の細かい部位をもフル活用しての突進力あふれる打撃は、
相手が絶命に至るほどの破壊力を持つ。
- 主な使用キャラクター
ワン・ジンレイ(鉄拳シリーズ)
少林拳(ショウリンケン)
インドの古流武術であるカラリッパヤットゥを起源とする説がある。
その武術が編み出した「七十二芸」は、現代スポーツにも通じる実践性を持つ。
「少林寺」シリーズを代表とする中国格闘映画で、主にジェット・リーが使っていたことで有名になった事もあり、おそらく「中国拳法」の動きとして安直にイメージできるのがこの門派と思われる。
- 主な使用キャラクター
レイ・フェイ(バーチャファイター4)
蟷螂拳(トウロウケン)
中国北方に存在する有名門派の技術を集大成したとされる山東省の拳術。
嵩山少林寺にて奥義を学んだ武術家・王朗が、カマキリがセミを捕らえる動きからヒントを得て
拳法の技術へと昇華した。剛柔を兼ね備えた素早い技の攻防を駆使し、
独特な腿法(蹴り技)は実践的との評価が高い。
片手逆立ちしながらの蹴り「穿弓腿(センキュウタイ)」はこの門派の技。
- 主な使用キャラクター
リオン・ラファール(バーチャファイター2)
劉飛鈴(ファイターズヒストリー)
長拳(チョウケン)
中国拳法の北派(ホッパ)と呼ばれる分類のうち、査拳(サケン)、
華拳(カケン)、炮拳(ホウケン)、弾腿(ダンタイ)門など、
動きに伸びと躍動感のある技が多いものを総称した門派名。
「動きは派手だが実戦性が薄いもの(花拳繍腿)」と意見されることもあるが、
長拳の原型である前述の各門派は実戦的な伝統武術であることは否めない。
素早く伸びのある基本技が多く、跳躍・回転などの速い動きがあることから、
児童~青少年が体力を養い拳術の基本を習い始めるには最適な門派である。
洪家拳(コウカケン)
中国南部に普及している五大門派(洪・劉・李・蔡・莫)のうちの筆頭門派。
中国の清代末期において、技術の習得に即効性があるために軍人や秘密結社の間で広まり、
洪家拳の名人である黄飛鴻の存在により英雄視される扱いもあって人気は高い。
サモ・ハン・キンポージャッキー・チェンなどの映画スターがアクションに使用していることもあり、
おそらく世界でもっとも有名な門派と思われる。しかし、日本の創作ものではあまり見かけない。
その内の代表的な拳として、工字伏虎拳、虎鶴双形拳、五形拳、鐵線拳があり、
これらを総称して「洪家四宝」といわれる。
- 主な使用キャラクター
雷武龍<五形拳>(鉄拳シリーズ)
蔡李佛家拳(サイリブツカケン)
中国南部・広東省の“南拳十三名拳”の一つに数えられる大門派。
瞬時に長距離を踏み込む歩法と素早く伸びのある技が特徴で、
実戦的ながら動きが華麗であり、健康増進のエクササイズとしても
世界各国の華僑に普及しており、世界的に有名な門派のひとつである。
ブルース・リーも「多人数戦に適した戦闘術」と評価している。
白鶴拳(ハッカクケン)
中国南部の福建省で興り、対岸位置にある台湾でも隆盛している門派。
伝説では、この門派の創始者はわずか16歳の方七娘(ホウシチジョウ)
という少女であるが、動きや技は男性的なほどに素朴かつ豪強であり、
最短距離を最速で打つ一打必倒を理想とする。
空手の源流のひとつになったという説がある。
詠春拳(エイシュンケン)
中国南部・広東省に端を発する南派武術の一つ。上記の洪家拳とは姉妹拳である。
創始者は女性で、飛んだり跳ねたりといった派手な技は一切なく、
他流派と比べると見劣りするものがあるが、無駄な動きを省き、隙の少ない非常に精密な動きをする実践的な武術となっている。
中でも、チェーンパンチと呼ばれる両拳を縦回転さ相手に絶え間なく叩き込む技が有名。
素手の他に、刀や棒を使った武器術も存在する。
また、稽古に木人椿(もくじんこう)という特殊な木人を使うことでも知られており、
有名な使い手として、葉門(イップマン)がいる。
アクションスター・ブルースリーの師にあたる人物であり、映画化もされている。
ブルースリーはこの葉門詠春拳をベースに截拳道を作った。
三皇砲捶(サンコウホウスイ)
北京最大の縹師(盗賊から荷物を守るボディーガード)の集まり・会友縹局が作り出した。北京を代表する拳法である。習得が困難で覚えるのに八卦掌と相性が悪い
その他の門派
・・・etc
余談
中国の歴史にあやかり「中国拳法は四千年の歴史を持つ」とも言われることもあるが、実際はそこまで長くはなく、中国拳法最古である少林拳も菩提達磨が存命であった6世紀頃に発足とされている。