大友(アウトレイジシリーズ)
あうとれいじのたけし
演:ビートたけし
ビートたけしこと北野武監督のアウトレイジ三部作に登場する主人公であり、昔ながらの武闘派ヤクザである。当時は関東最大暴力団『山王会』傘下「大友組」の組長に就任しており、部下やシマ、シノギも多数抱えていた。
下の名前は明かされておらず、年齢も不明だが、外見から恐らく50代半ばから60代前半。生まれ育ちは上野で、当時戦後間もない上野の闇市首領で現在は韓国フィクサーのボスである張とは恩師でもあり、古くからの付き合いがある。
また、大学時代はボクシング部に所属しており、その後輩には現マル暴の片岡も在籍しており、その伝手でヤクザと刑事の間で互いに情報を共有している。
しかし、事あるごとに親分や組織全体、敵組織に振り回されて、貧乏くじばかり引かされる不遇なヤクザで、誰も彼については重要視しておらず、謂わば駒扱い同然の身である。
実の親分でもある山王会幹部の池本から彼の兄弟分でもある村瀬組を妨害させるように池元から厄介な仕事ばかりを押し付けられるばかりで自身で手を下したくない池元によって、村瀬組を締める役目を押し付けられる。
自ら率先して動き、二度にわたる村瀬組との抗争では、村瀬に直接手を下している。
池元や本家の命令によって、村瀬と抗争したにもかかわらず、詫び金一千万円は池元に掠め取られ、そのうえ破門される事態に陥る。電話で池元に対し怒りを露わにし、詫び入れの為にケジメとして指を詰めて関内の元に赴く。その際に、関内から唆された大友は池元を殺害するが、同じく関内に唆された小沢との抗争が始まる。本家の支援を受けた池元組との組織力の差から、大友組の組員達が次々と殺害され、徐々に追い詰められていく中で若頭の水野や幹部全員を逃がすも、部下の石原の裏切りによって結局石原以外の部下は全員殺され事実上大友組は壊滅。悩んだ末に自身は旧知の刑事・片岡を頼り、敢えて服役することで難を逃れようとする。しかし、最終的に自分も刑務所内で先に服役していた村瀬組若頭の木村に刺される。その際、片岡は「大友は刑務所で死亡した」と公表した。
…と思われたのだが、
前作から5年後、死んだと思われた大友は実際には生きており、山王会から狙われるのを防ぐ為にあえて片岡はデマを流していたのだ。前作と比較すると、態度はやや丸くなっており、過去の木村に対する仕打ちや武闘派故の行き過ぎた行為を反省し、模範囚として大人しく刑期を過ごしていた。しかし、現在の山王会は国の財政にまで手を着ける凶悪組織にまで巨大化しており、警察からの要請で弱体化を狙う片岡によって早期の仮出所を受ける。出所後、以前より交流のあった張の元へ挨拶に向かうが、後に片岡の仲介で木村と再会し互いに相手への行為を謝罪して和解する。そして、片岡から自分達を破滅にまで追いやった山王会相手に復讐するよう焚き付けられるが、大友本人は既にヤクザ稼業に対して嫌気がさしており、張の世話を受けて堅気の生活に戻ろうとしていた。だが、それから間も無く自分の部下だった石原に差し向けられたヒットマンに腹部を撃たれて重傷を負わされ、後に自分を助けてくれた木村の子分の嶋・小野が加藤を殺そうとして山王会幹部の舟木に返り討ちに遭い、惨殺されるに及んでついに山王会への復讐に乗り出すことを決意、木村と共に行動を開始する。
山王会の兄弟分でもある関西最大規模の花菱会の助力を得た後は、木村と共に舟木の拷問を行ったり、裏切り者の石原を誘き出して殺害するなどして山王会への報復を行う。加藤の引退で一区切りついた後は木村からお互いに組を持たせてくれるという話(大友組の復活)を聞かされるも「自分は木村組の若い衆でいい」とヤクザに対する意欲は無く、抗争の手柄をすべて彼に譲った。その後は一連の抗争を山王会と木村組の手打ちで終わらせた花菱会の策略によって木村組を破門されるが、本人はそれを承知しそのままヤクザから手を洗う。そして、引退した元会長の加藤がパチンコを打っているところに現れ、張会長の腹心の李と共に加藤を自らの手で刺殺し、遂に山王会への復讐を果たした。ところが、この加藤殺しが原因で元の抗争相手である木村組に警察の手が入り、その直後の隙を狙って片岡にけしかけられた加藤の元側近が木村を殺害してしまう。その後、彼の葬儀の場に現れるが、大友を待っていた片岡に暗に花菱会へ報復を行うよう唆される。しかし、一連の騒動の元凶が片岡だったことに既に気づいており、花菱会構成員を始末するためにと片岡から渡された拳銃で逆に片岡を射殺する。
その後、大友は再び狙われるのを恐れ、日本を離れ張の伝手でそのまま韓国へ渡って行った。
それから数年後、韓国の済州島に渡った大友は張グループに所属し、用心棒として済州島の歓楽街を裏で仕切る。そして、新たな舎弟として張グループに所属する市川が加わり、事実上兄弟関係として行動する様になる。今作ではサングラスを常に着用する様になり、ヤクザからマフィアとしてのイメージが強くなっている。
物語序盤で前作より更に規模を拡大し、かつての山王会を乗っ取った花菱会の幹部の花田が張グループのホステスに手を出したことから徐々に大友らとの抗争事件に発展する。
更に、東京では張大成会長が花田の手下の丸山らに襲撃されるに至り、度重なる暴挙に怒りを募らせ、前作の抗争に乗じて自分を亡き者にしようとする花菱への報復を決意。張の部下でありブローカーのゴンを通じて偽造パスポートを入手し、日本へと渡る。
しかし、帰国早々に片岡の元部下でもある新マル暴繁田らによって加藤、木村、片岡殺害の容疑で警察に拘束されてしまう。それでも張会長の根回しによって釈放され、遅れて日本にやって来た市川ら若衆と合流すると、手始めに山王会の白山たちの手引きで木村組の組長である吉岡以下数人を銃殺する。しかし、その後野村が差し向けた刺客の韓国人ヒットマン達と撃ち合いになり、二人の若衆を失い、市川と二人だけになってしまう。ヒットマンが持ち込んでいたM4カービンで武装し、ビルの屋上駐車場にて若頭の西野、補佐の中田らと対面し、花菱会幹部の出所祝いパーティーで出てくる新会長の野村を狙う様依頼される。しかし予定と異なり、野村が出席しないとなり、西野自身は襲撃を止めさそうとするが、会場に市川と共に乗り込んでM4を乱射し、その場にいた花菱会構成員の殆どを殺害する。その後も西野の陰謀に協力する形で約束通り連れて来られた野村を生き埋めにして轢殺させ、同じく西野の手引きでSMプレイ中の花田の元に乗り込み、彼の口に爆弾を詰めて爆殺する。
しかしこれらの行動が原因で、張会長に対し警察・花菱の両方から圧力がかかり、この事態を重く見た李は、前作で弟分の木村を殺害した元山王会組員でもあるスクラップ工場長ら二人を手に掛けた後、大友を殺害するという決断を下す。最後は李から「これ以上会長に迷惑かけないで下さい」と銃を向けられるが、それに対しケジメは自分で付ける答え、「会長に宜しく」と恩師でもある張に遺言を言い残し拳銃自殺を遂げた。
最後の最後に大友は、今までの事件で手にかけてきた部下や親分、殺された組員、舎弟らに対するケジメをつけ、ヤクザとしての人生に幕を下ろした。